売れない役者が女装をして人気者になりながら思いを寄せる人の愛を掴むまで姿を描く、製作、監督シドニー・ポラック、主演ダスティン・ホフマン、ジェシカ・ラング、テリー・ガー、ダブニー・コールマン、チャールズ・ダーニング、ビル・マーレイ、ジーナ・デイヴィス共演によるドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ポラック
製作総指揮:チャールズ・エヴァンス
製作
シドニー・ポラック
ディック・リチャーズ
原案
ラリー・ゲルバート
ドン・マグワイア
脚本
ラリー・ゲルバート
マレー・シスガル
撮影:オーウェン・ロイズマン
編集
フレドリック・スタインカンプ
ウィリアム・スタインカンプ
音楽:デイヴ・グルーシン
主題歌:スティーブン・ビショップ”It Might Be You”
出演
マイケル・ドーシー/ドロシー・マイケルズ:ダスティン・ホフマン
ジュリー・ニコルズ:ジェシカ・ラング
サンディ・レスター:テリー・ガー
ロン・カーライスル:ダブニー・コールマン
レスリー”レス”ニコルズ:チャールズ・ダーニング
ジェフ・スレイター:ビル・マーレイ
ジョージ・フィールズ:シドニー・ポラック
ジョン・ヴァン・ホーン:ジョージ・ゲインズ
エイプリル・ペイジ:ジーナ・デイヴィス
リタ・マーシャル:ドリス・ベラック
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1982年製作 116分
公開
北米:1982年12月17日
日本:1983年4月
製作費 $22,000,000
北米興行収入 $177,200,000
■ アカデミー賞 ■
第55回アカデミー賞
・受賞
助演女優賞(ジェシカ・ラング)
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ダスティン・ホフマン)
助演女優(テリー・ガー)
脚本・撮影・編集・録音・歌曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク。
演技指導者のマイケル・ドーシー(ダスティン・ホフマン)は、自身役者でもあるが、演出家との意見の相違などが続き役が付かずにいた。
ある日マイケルは、同居人のジェフ・スレイター(ビル・マーレイ)やガールフレンドのサンディ・レスター(テリー・ガー)らに誕生日を祝福されて感激する。
パーティー後、サンディの人気TVドラマのオーディションの演技指導をしたマイケルは、翌日も彼女に付いて行くことになる。
オーディション会場で、サンディは外見だけで落とされてしまい、何とか台本だけでも読ませてやろうとしたマイケルだったが、ある番組で、自分に来るはずの役が他の役者に代わったことを知る。
焦ったマイケルは、サンディを置き去りにしてエージェントのジョージ・フィールズ(シドニー・ポラック)のオフィスに向かう。 フィールズに抗議したマイケルだったが、トラブルメイカーの自分がこの世界から敬遠されていることを懇々と聞かされる。 芝居を上演するための資金が必要なマイケルは、意地を張って自分で稼いでみることをフィールズに宣言する。 そしてマイケルは、とんでもないアイデアで、ショウビジネスの世界に殴り込みをかける。 マイケルは、”ドロシー・マイケルズ”と名前を変えて女装し、サンディの落ちたTVドラマのオーディションを受ける。 ディレクターのロン・カーライスル(ダブニー・コールマン)に、いきなり容姿で落とされたマイケルは、要求されたタフな女性を”演じ”憤慨してその場を立ち去る。 それを見たプロデューサーのリタ・マーシャル(ドリス・ベラック)は、マイケルを呼び戻し彼のテストが始まる。 マイケルは、スタジオで看護師役のジュリー・ニコルズ(ジェシカ・ラング)に出会い心惹かれてしまう。 そして、テストでリタに気に入られたマイケルは、見事に採用が決まる。 その後、マイケルはドロシーのまま、ランチを取ろうとしていたフィールズのテーブルに座り正体をばらす。 驚くフィールズに、マイケルはドラマ出演が決まったことを自慢して、彼から洋服を買う金を借りる。 その夜。マイケルの奇行を知らされたジェフは、芝居のための資金稼ぎだと言う彼に感謝するが、特別な”趣味”があるのではないかと疑いをかけたりもする。 サンディが落ちたオーディションだったために、マイケルは彼女には遺産が入ったと伝える。 そして、番組の収録は始まり、管理部長エミリー役で出番を待つマイケルは、病院長役のジョン・ヴァン・ホーン(ジョージ・ゲインズ)が、自分にキスしようとしていることを知り、それを阻止する演技をする。 しかし、次のテイクに移る前に、マイケルはジョンにキスされてしまう。 その後、スタジオを去ろうとしたマイケルは、ジュリーとロンが関係していることを知り苛立つ。 番組が進むに連れて、ドロシー(マイケル)の知名度は上昇しテ人気も出てくるが、それと同時に、ジョンの”彼女”に対する熱も上がる。 そんな時、マイケルはジュリーに誘われ彼女の部屋で稽古をすることになる。 ジュリーに子供がいることを知ったマイケルは、ロンのことなども聞く。 ジュリーとの楽しい一時を過ごしたマイケルは、サンディとの約束を果たさなければならなかった。 3時間も遅れてジュリーの元に現れたマイケルだったが、彼女は、憎きドラマのドロシー役を批判し始める。 それを聞いたマイケルは、次の収録で過激なアドリブで役を演じてしまう。 ロンら番組スタッフは困惑するが、視聴者にはそれが受け、ドロシー(マイケル)は時の人となってしまう。 フィールズに招待されたパーティーに、サンディと出席したマイケルは、ロンに同伴していたジュリーを見かける。 ロンが他の女性と親しげに話す姿を見て、彼が信用できなくなったマイケルは、ベランダでジュリーを捕まえテ言い寄るが、見事にふられてしまう。 ドロシー(マイケル)のお陰で、演技も好調なジュリーは、”彼女”を父親レスリー(チャールズ・ダーニング)の牧場に誘う。 自分の大ファンだというレスリーに歓迎されたマイケルは、身近に接するジュリーとの時間に時の経つのを忘れる。 そんなマイケルは、レスリーが自分に好意を持っているのを知り、それを何とかかわし、ジュリーと同じベッドに入る。 ニューヨークに戻ったマイケルはリタに呼ばれ、ロンと衝突することなどを注意されるものの、その人気と番組への貢献度を評価され、1年間の契約延長を言い渡される。 このままでは女装を一生止められないと、フィールズに愚痴をこぼすマイケルだったが、そのまま演じ続けるしか方法がなかった。 ジュリーに子供の子守を頼まれたマイケルは、彼女が自分に感化されロンと別れようとしていることを知る。 ロンと出かけたジュリーが戻り、マイケルは気落ちする彼女を気遣う。 マイケルは、ジュリーを慰めるつもりで彼女にキスしようとして、二人は動揺してしまう。 レスリーがドロシー(マイケル)に会いに来ることになり、気が進まない彼だったが、ジュリーにロンのことを父に話してくれと頼まれる。 そしてマイケルは、レスリーに求婚され動揺して逃げ帰ってしまうが、自宅に戻った彼は、待っていたジョンに迫られてしまう。 そこに、ジェフが帰ってきたためジョンは引き上げるが、今度はサンディが現れる。 焦って男に戻ったマイケルは、レスリーから贈られたチョコレートをサンディに渡し、それに添えてあったカードを見た彼女は憤慨する。 サンディに、他の女性に恋したことを正直に話したマイケルだったが、彼女は取り乱して帰ってしまう。 多くの人を傷つけている、”ドロシー”を演ずることに嫌気が差したマイケルは、フィールズに番組を降ろすよう迫る。 翌日、マイケルは、レスリーにロンのことを言えなかったことをジュリーに謝ろうとする。 ジュリーは、”ドロシー”が同性愛者で自分との関係を期待していると思い込み、”彼女”を拒んでしまう。 収録の都合で、ドロシー(マイケル)のシーンがライブになり、”彼女”の登場シーンが始まる。 悪い予感を感じたロンの予想は的中し、ドロシーのアドリブが始まってしまう。 そして、マイケルはかつらを取り、”ドロシー”のメイクを落とし、カメラの前で自分が男だったことを暴露してしまう。 それを知ったジュリーはマイケルに近づき、彼を殴りその場から走り去ってしまう。 その後、レスリーに指輪を返したマイケルは、ジュリーを愛していることを彼に伝え、わだかまりも消える。 ジュリーに会ったマイケルは、仕事のためにやったことで、人を傷つける気はなかったことを彼女に伝える。 さらにマイケルは、女装をして成長した自分を理解して欲しいこともジュリーに伝える。 そしてジュリーは、そんなマイケルを受け入れる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
トラブルメイカーのために役が得られない売れない役者マイケル・ドーシーは、仕方なく女装をして人気TVドラマに採用される。
マイケルは、看護師役のジュリーに心惹かれるが、彼女は番組ディレクターのロンと関係を持っていた。
女性としてジュリーと付き合うしかないマイケルは、もどかしさを感じながら”女優”を演じ人気者になる。
やがてマイケルは、仕事のためにやったこととはいえ、多くの人を傷つけていることに気づき、女装を止めようと決意するのだが・・・。
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主人公が、女優に変身していくまでのコメディ・タッチ、それを継承しつつ、叶わないロマンスを描く中盤、そして貧しい役者の挫折から生まれる、成長に至る終盤からクライマックス、流れるような場面展開で観る者の心を掴むシドニー・ポラックの演出は絶妙で、彼自身も大監督となるきっかけとなった、ラブ・コメディの傑作と言っていい作品。
第55回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、ジェシカ・ラングが助演女優賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ダスティン・ホフマン)
助演女優(テリー・ガー)
脚本・撮影・編集・録音・歌曲賞
1998年、アメリカ議会図書館が国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
北米のみでも約1億7700万ドルという大ヒットとなった。
原題の”Tootsie”とは、ドラマのセリフにも登場するが、やや女性を軽蔑して呼ぶ俗語。
いまいち野暮ったい、昼ドラ作製の裏舞台も楽しく描写され、デイヴ・グルーシンの軽妙な音楽も、ドラマに見事にマッチしている。
中盤過ぎに、ヒロインの実家で主人公が、彼女の姿に見とれながらバックで流れるスティーブン・ビショップの歌う”It Might Be You”の心地よいメロディも忘れ難い。
そのシーンで、J・ラングを見つめるD・ホフマンの眼差し、そして彼女を見つめるC・ダーニングらを映す、”やわらかい”描写が素晴らしい。
当時、大いに話題になったダスティン・ホフマンの女装での熱演は見事であり、ややどぎつくセンスも悪いが、それが、画面上で”彼女”に視線を集中させる効果を上げているのは確かである。
男なら誰もが、守ってあげたくなってしまうような女性を演じたジェシカ・ラングの魅力、飛び切り美人でもない素朴な演技は絶賛されアカデミー助演賞を受賞した。
ヒステリックだが、愛嬌もある主人公の女友達を熱演してオスカー候補にもなったテリー・ガー、プレイボーイの番組ディレクター役のダブニー・コールマン、主人公に求婚してしまうヒロインの父チャールズ・ダーニング、主人公の同居人で芝居仲間、彼らしいとぼけた演技が印象的であるビル・マーレイ、俳優としても彼のキャリアでは最高と言える、主人公のエージェントをいい味を出して演じているシドニー・ポラック、大根役者として、その実力を発揮する、番組の病院長役のジョージ・ゲインズ、端役ながらその美しさが目に留まる、番組の出演者役ジーナ・デイヴィス、番組プロデューサーのドリス・ベラック等が共演している。