1960年に発表された、ハーパー・リーの小説”To Kill a Mockingbird”の映画化。 幼い少女の目に映る偏見や大人達の理不尽な行いと人々の触れ合いや絆を描く、製作アラン・J・パクラ、監督ロバート・マリガン、主演グレゴリー・ペック、メリー・バダム、ロバート・デュヴァル他共演のヒューマン・ドラマの傑作。 |
・グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・マリガン
製作:アラン・J・パクラ
原作:ハーパー・リー”To Kill a Mockingbird”
脚本:ホートン・フート
撮影:ラッセル・ハーラン
編集:アーロン・ステル
美術・装置
アレキサンダー・ゴリツェン
ヘンリー・バムステッド
オリヴァー・エマート
音楽:エルマー・ バーンスタイン
出演
グレゴリー・ペック:アティカス・フィンチ
メリー・バダム:ジーン・ルイーズ”スカウト”フィンチ
フィリップ・アルフォード:ジェム・フィンチ
ブロック・ピーターズ:トム・ロビンソン
ジョン・メグナ:ディル・ハリス
ロバート・デュヴァル:アーサー”ブー”ラドリー
フランク・オーヴァートーン:ヘック・テイト保安官
ポール・フィックス:テイラー判事
エステル・エヴァンス:カルパーニャ
ジェームズ・K・アンダーソン:ロバート”ボブ”ユーウェル
コリン・ウィルコック:メイエラ・ヴァイオレット・ユーウェル
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1962年製作 129分
公開
北米:1962年12月25日
日本:1963年6月22日
製作費 $2,000,000
北米興行収入 $13,129,850
■ アカデミー賞 ■
第35回アカデミー賞
・受賞
主演男優(グレゴリー・ペック)
脚色・美術賞(白黒)
・ノミネート
作品・監督
助演女優(メリー・バダム)
撮影(白黒)・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1932年夏、アラバマ州、メイコム。
世界恐慌で不況にあえぐ時代、弁護士アティカス・フィンチ(グレゴリー・ペック)は、妻に先立たれ、10歳の息子ジェム(フィリップ・アルフォード)と、6歳の娘のジーン・ルイーズ”スカウト”(メリー・バダム)とで暮らしていた。
彼らは幸せではあったが、アティカスは貧しい人々のために無償で弁護をしていたために、決して裕福とは言えなかった。
好奇心旺盛なジェムとスカウトは、夏の間、おばの家を訪れている、7歳にしては小柄でひ弱な少年ディル・ハリス(ジョン・メグナ)と仲良くなる。
三人は、近所に住む、障害があるために父親に監禁されているアーサー”ブー”ラドリー(ロバート・デュヴァル)に興味を持つ。 アティカスは、ブーをそっとしておいてあげるのが思いやりだと、スカウトに言い聞かせる。 子供達を寝かしつけたアティカスは、二人が母親のことを語っているのをポーチで静かに聞いていた。 そこに、テイラー判事(ポール・フィックス)が現れ、婦女暴行事件で起訴された、黒人の小作農トム・ロビンソン(ブロック・ピーターズ)の弁護をアティカスは依頼されて、それを承諾する。 トムの事情聴取に立ち会ったアティカスは、暴行を受けた少女メイエラ(コリン・ウィルコック)の父親ロバート”ボブ”ユーウェル(ジェームズ・K・アンダーソン)に呼び止められる。 ユーウェルは、本気で弁護をする気かとアティカスに言い寄るが、彼は職務を遂行するのみと相手にしなかった。 その夜、子供達三人は、どうしてもブーを一目見ようと、彼の家に向かう。 しかし、ジェムがブーに見つかり、三人はその場から走り去る。 おばに呼ばれたディルは、ジェムとスカウトに来年の夏の再会を約束して、別れを告げて家に戻る。 夏も終わり、やがて、学校に通うようになったスカウトは、貧しい家の子供とトラブルを起こす。 ジェムはそれを制止し、親同士が知り合いということで、相手の男の子を夕食に招待する。 スカウトは、そこでも男の子を傷つける言葉を口にしてしまい、家政婦のカルパーニャ(エステル・エヴァンス)に叱られてしまう。 拗ねてしまったスカウトだったが、アティカスは、人とうまく付き合う方法を、彼女に優しく教え込む。 ある日、狂犬病の犬が通りに現れ、カルパーニャが危険を感じてアティカスを呼び、彼はライフルの一撃でそれを射殺する。 その後、ジェムとスカウトは、父アティカスが黒人であるトムの弁護をすることが、公平さを示す道だということを少しずつ理解する。 そんな時、ジェムとスカウトは、ブーの家の木の穴に、自分達に似た手作りの人形が置いてあるのに気づく。 その穴はブーの父親に埋められてしまうが、ジェムは以前から、そこに置かれていた物があったことをスカウトに知らせ、それを見せる。 その他にも、不思議なことがあったことなどを話しながら、その後はブーのことは忘れてしまい、そして夏が訪れて、二人はディルと再会する。 安全のために、よその町に拘留されていたトムは、裁判のために町につれ戻されるが、ヘック・テイト保安官(フランク・オーヴァートーン)は、騒ぎが起きることを心配する。 危険を感じたアティカスは留置場を見張り、トムをリンチにかけるために現れた人々に対し、一人でそれを阻止しようとする。 そこに子供達が現れ、アティカスはジェムに家に帰るようにと伝えるが、彼はそれを拒む。 スカウトが、喧嘩をして家で食事をさせた男の子の親を見つけ話しかけると、人々はその場を引き上げていく。 翌日、テイラー判事の下で裁判は始まり、アティカスは事件の状況を聞いた上で、被害者メイエラの父ユーウェルが左利きだということを確認する。 アティカスは、左腕が不自由なトムが暴行できると思うかをメイエラに問うが、彼女は取り乱してしまい退席する。 トムが証言席に座り、アティカスは、彼が逆にメイエラ誘われていた事実を確認する。 ユーウェルの証言に反論できる、十分な証拠をアティカスは提示し、公正な判断を陪審員に訴えるが、判決はトムの有罪となる。 アティカスは、望みを捨てぬようトムを励し、控訴することを約束する。 二階席で傍聴していた黒人達は、その場にいたジェムやスカウトらと共にアティカスに対して敬意を表する。 その後、子供達と自宅に戻ったアティカスは、移送中に逃亡したトムが、射殺されたことをテイト保安官から知らされて愕然とする。 トムの家族に、彼の死を告げに行ったアティカスは、そこに現れたユーウェルに侮辱されるのだが、相手にせずに立ち去る。 10月。 それを助けてくれた人物が、怪我をしたジェムを家まで運び、スカウトがそれを追いかける。 現場では、ユーウェルの刺殺された遺体が発見され、子供達を救ったのは、ジェムの部屋にいたブーだったことが、テイト保安官からアティカスに知らされる。 ブーに対面できたスカウトは、彼の手を取り優しく語りかけ、アティカスの様子を見にポーチに向かう。 動揺するアティカスだったが、保安官は、ブーやジェムを人前にさらすことを避け、ユーウェルが転んだ拍子に自分を刺してしまったことにすることで解決しようとする。 スカウトもそれに賛成し、かつてアティカスが話してくれた、害にならない”マネシツグミ”を殺すのは、罪だという話しを思い出す。 アティカスはブーに感謝し、そしてスカウトと彼の友情は始まる。 スカウトは、その時のジェム、ディル、ブー、トム、そしてアティカスの思い出を胸に成長していくことになる。 そしてアティカスは、目覚める息子ジェムを迎えるために、娘のスカウトを抱き寄せながら、彼の傍らで朝を待つ。
...全てを見る(結末あり)
町は元の静けさを取り戻し、ジェムとスカウトは再びブーの姿を追うようになり、ハロウィン・パーティーの夜、二人は何者かに襲われる。
*(簡略ストー リー)
世界恐慌で不況にあえぐ時代、貧しい人々に無償で弁護をする、妻に先立たれた弁護士アティカス・フィンチは、息子ジェムと娘のスカウトとで暮らしていた。
母親を亡くしながらも、快活で好奇心旺盛な子供達は、夏の間、町を訪れている少年ディルと仲良くなり、障害があるために監禁されている男性ブーに興味を持つ。
アティカスは、婦女暴行事件で起訴されていた、黒人青年トムの弁護を受けることになる。
被害者の父親から軽蔑されながら、公平な立場で職務を遂行するアティカスの行動を、子供達も理解する。
その後も、ブーに興味を持つ子供達だったが、ある日、彼からの自分達への贈り物に気づく。
そしてアティカスは、人々の偏見から被告トムを守りながら、裁判で彼の無実を訴えるのだが・・・。
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1960年に発表された、ハーパー・リー自身の家族や周囲の人々との触れ合いや体験などを綴った小説” To Kill a Mockingbird” の映画化で、彼女は翌年ピューリッツァー賞を受賞いている。
ドラマ中の少女スカウトは、原作者であるハーパー・リーがモデルで、隣人の少年ディルも、後に小説家となるはトルーマン・ カポーティがモデルである。
1995年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第35回アカデミー賞では作品賞以下8部門にノミネートされ、主演男優(グレゴリー・ペック)、脚色、美術賞(白黒)を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
助演女優(メリー・バダム)
撮影(白黒)・作曲賞
クライマックスで、少年ジェムやブーがさらし者になることを避けるために、害ではない、”マネシツグミ(モノマネ鳥)を殺す”(原題)ようなことはしない方がいいことをスカウトが悟ることで、伝統的なアメリカ的民主主義を表現している。
婦女暴行や人種差別という、子供には理解しにくい問題を、あくまで彼らの視点で描き、大人達を側面から描写する作風となっている。
子供達の確かな演技力を引き出し、人間の尊い考えを教え込む父親像をシンプルに表現した、ロバート・マリガンの見事な演出も光る。
当時、西部劇や戦争映画で大活躍していたエルマー・バーンスタインの、イメージを一新した、情愛がこもったテーマ曲も印象深い。
誰もが認める大スターではあるが、演技力の面でいま一つという評価しか得られなかったグレゴリー・ペックは、偏見や人種差別、または貧困と闘う理想の父親を見事に演じ、ついにアカデミー主演賞を獲得した。
彼が演ずる主人公”アティカス・フィンチ”は、2003年、アメリカ映画協会(AFI)の選出で”映画におけるヒーロー”において堂々No.1に輝いた。
映画監督ジョン・バダムの実の妹でもあるスカウト演ずるメリー・バダムは、千人もの候補者から選ばれただけあり、感受性豊かで多感な少女を見事に演じ、アカデミー助演賞候補にまでなった。
父親を尊敬する彼女の兄役フィリップ・アルフォード、無実の罪で有罪となり絶望して命を落とす黒人青年ブロック・ピーターズ、ジェムとスカウトの夏だけの友人ジョン・メグナ、異常者扱いされる心優しい隣人ロバート・デュヴァル、保安官フランク・オーヴァートーン、判事のポール・フィックス、主人公の家の家政婦エステル・エヴァンス、被害者コリン・ウィルコック、その父親ジェームズ・K・アンダーソンなどが共演している。