1999年に発表された、ウォルター・カーンの小説”Thumbsucker”を基に製作された作品。 常に不安と悩みを抱える少年とその家族の日常を描く、監督、脚本マイク・ミルズ、主演ルー・テイラー・プッチ、ティルダ・スウィントン、ヴィンセント・ドノフリオ、キアヌ・リーヴス、ベンジャミン・ブラット、ケリ・ガーナー、ヴィンス・ヴォーン他共演のコメディ・ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マイク・ミルズ
製作
アンソニー・ブレグマン
ボブ・スティーヴンソン
製作総指揮:アン・ケリー
原作:ウォルター・カーン”Thumbsucker”
脚本:マイク・ミルズ
撮影:ホアキン・バカ=アセイ
編集
ヘインズ・ホール
アンガス・ウォール
音楽:ティム・デローター
出演
ジャスティン・コッブ:ルー・テイラー・プッチ
オードリー・コッブ:ティルダ・スウィントン
マイク・コッブ:ヴィンセント・ドノフリオ
ペリー・ライマン:キアヌ・リーヴス
マット・シュラム:ベンジャミン・ブラット
レベッカ:ケリ・ガーナー
ジョエル・コッブ:チェイス・オファーレ
ギアリー:ヴィンス・ヴォーン
アメリカ 映画
配給 ソニー・ピクチャーズ・クラシックス
2005年製作 95分
公開
北米:2005年9月16日
日本:2006年9月23日
製作費 $4,000,000
北米興行収入 $1,328,680
世界 $1,919,200
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
オレゴン州。
郊外住宅地に住む、悩み多き17歳の少年ジャスティン・コッブ(ルー・テイラー・プッチ)は、その歳になっても親指を吸う癖(サムサッキング)があった。
登録看護師の母オードリー(ティルダ・スウィントン)は、俳優のマット・シュラム(ベンジャミン・ブラット)に夢中だったが、それを知らないスポーツ・ショップの店長である父マイク(ヴィンセント・ドノフリオ)は妻を愛していた。
高校の対論クラブで、心を寄せるレベッカ(ケリ・ガーナー)の意見に賛成してしまったジャスティンは、教師のギアリー(ヴィンス・ヴォーン)に反論するよう言われる。
ジャスティンは、心を許せる歯科矯正医ペリー・ライマン(キアヌ・リーヴス)の治療を受けていた。
ニューヨークの大学への進学も考えていたジャスティンは、地元にいるべきで、都会の大学が求める学生のイメージは違い、出願しても失望すると言うオードリーの考えが不満だったために、席を外して指を吸う。 その態度が許せないマイクはジャスティンを叱るものの、オードリーは厳し過ぎると意見する。 弟ジョエル(チェイス・オファーレ)を家に残しオードリーとショッピングに出かけたジャスティンは、ドレスを買おうとする母が、”マット・シュラムとのデート”に応募したことを知り驚く。 その後も、指を吸うことを止めるようマイクに言われたジャスティンは、親指に”MFC”と父の名前の頭文字を書かれ、努力していると答える。 レベッカと親密になりかけたジャスティンだったが、”MFC”の意味を聞かれ、それに答えられないままその場を去る。 両親は相変わらず癖のことを話し合い、ライマンのクリニックに向かったジャスティンは、矯正を諦めて他の方法を考えると言われる。 指を吸う癖を治したいと思っているかをジャスティンに確認したライマンは、催眠術をかけると言って彼をリラックスさせる。 ジャスティンは意識の中で、不安や孤独を感じた時は守護獣を呼ぶよう指示され、指への興味は薄れると言われる。 目覚めたジャスティンは、指が苦くなるとライマンに言われたため、それを確かめる。 その後ジャスティンは、討論クラブでギアリーに指名され、動揺して席を外してしまう。 教室を出たことも”MFC”のこともジャスティンが話そうとしないために、レベッカは彼を見限る。 指は吸う気にならなくなったものの、ライマンに連絡して逆効果だと伝えたジャスティンは、守護獣を呼ぶようにと言われただけだった。 苛立つジャスティンはライマンに裏切られたと考え、ジョエルを誘い、自転車レースに参加するライマンを妨害して、警官に補導されてしまう。 両親と共に学校に呼び出されたジャスティンは、校長とギアリーと話し合い、”ADHD”注意欠陥多動性障害と診断され、薬物治療を勧められる。 マイクはそれに反対するが、ジャスティンは自分が病気である可能性を考え、父の意見を聞かずに薬を飲むことを決心する。 その効果は直ぐの現れ、ジャスティンは1日で”白鯨”を読破し、ジョエルに自分が変わったことを伝える。 頭がスッキリしたジャスティンは、高校での発言も積極的になり、その気持ちや行動の変化をギアリーに話す。 ジャスティンの才能に期待するギアリーは、退部したレベッカの後任に彼を指名する。 女生徒三人と共に討論大会に出場したジャスティンは、ギアリーに励まされ、”テレビにおいての暴力”ついての討論を始める。 見事に自分の意見を主張できたジャスティンは満足し、ジョエルと共に会場にいたオードリーは、息子を誇りに思う。 薬を飲み続けながら順調に討論大会を勝ち進むジャスティンらは、地区大会に出場するためにホテルに宿泊する。 男女に分けて部屋をとった付き添いのギアリーは、同年代同士で過ごしたいと言うジャスティンが、女生徒と同じ部屋に泊まるのを認める。 部屋でくつろぐジャスティンは、俳優のマット・シュラムが、コカイン中毒により療養することをニュースで知る。 女生徒達がビールを飲みたいと言い出し、ギアリーにそれを頼んだジャスティンは、認めて貰えるはずがなかった。 しかし、討論のためになるかもしれないと言うギアリーは、ジャスティンらにビールを差し入れる。 ジャスティン達は騒ぎ始め、現れたギアリーから苦情があったと言って叱られるものの、ジャスティンは気にしない。 翌日、ジャスティンは優勝し、学ぶことよりも勝ち進んでいることだけに満足している彼の様子がギアリーは気になる。 優勝したことを喜び、帰宅したオードリーにそれを自慢げに伝えたマイクだったが、一度も自分の討論を見に来たことがない父に不満をぶつける。 オードリーが、転職してリハビリ看護をすることになったことを知ったジャスティンは、有名人専用の施設だったために、誰が患者なのかを尋ねる。 守秘義務があると言うオードリーに対し、家族よりも患者が大切なのかを母に問うジャスティンは苛立つ。 シュラムが療養することを知っていたジャスティンは、それと関係があるのかをオードリーに聞くが、気晴らししたいだけだと言われる。 ニューヨーク大学への願書を提出することを決めたジャスティンは、両親が心の病で悩んでいることなど間近に見て、それをテレビ・ジャーナリズムの世界で役立てたいという考えを書き綴る。 ジャスティンの態度が気になるオードリーはマイクに相談し、彼が州大会決勝を見に行くことになる。 願書を出しに行った店でライマンに出くわしたジャスティンは、お互いが変わったことを確認する。 ジャスティンのお蔭で妙な心理学から解放されたというライマンは、彼に感謝する。 親指のことを聞かれたジャスティンは、”ADHD”が原因だったため、今は薬を飲んでいることをライマンに伝える。 翌日の州討論大会のことを話したジャスティンは、薬で根本的な解決に至ったとは思えないと言いたげな、ライマンの言葉が気になる。 州大会決勝会場のトイレで、ライバルから、薬がコカインと分子が3つしか違わないと言われたジャスティンは動揺する。 結局、負けてしまったジャスティンは、見に来てくれたマイクに慰められるものの、保護者の振りをしてほしくないと言って退部することを伝える。 退部の件をギアリーに伝えたジャスティンは、様々な欠点を指摘され、引き止められもしなかった。 帰宅したジャスティンは薬を捨ててしまい、翌日、それをオードリーに伝える。 マイクと話したジャスティンは、苦しんでいる時に助けず、対処方法も語らないと言って父を批判する。 閉じ篭ったジャスティンの部屋に向かったマイクだったが、何も話すことはできなかった。 久し振りにレベッカに話しかけたジャスティンは、以前とは変わった者同士で話したいことを伝え、彼女が吸っているマリファナに興味を示す。 その夜、レベッカの友人と共に、ジャスティンはマリファナを吸って楽しむ。 帰宅したジャスティンは、オードリーが、シュラムからメッセージ入りのサインを貰っていることに気づく。 レベッカと親交を深めるジャスティンは、彼女を恋人として考える。 しかし、今後、本気で恋するための実験台として相応しい相手だったとレベッカに言われたジャスティンは、ショックを受ける。 帰宅してマリファナを吸ったジャスティンは、ガレージを片付けていたマイクの手伝いをさせられる。 ふらつくジャスティンは、(レベッカのことが)全部見せかけだったと言ってマイクには理解できない話をする。 ジャスティンに不幸だと言われ、分かっていると答えるマイクは、何とかする気はないのかと聞かれる。 かつて怪我でフットボールを諦めたマイクは、オードリーの期待を裏切ったことを気にしていた。 それを考えても仕方がないことを伝えたマイクは、オードリーが転職した理由を知っているかとジャスティン聞かれる。 その後、眠っているジャスティンの部屋に向かったマイクは、シュラムの写真を見たことを伝える。 ジャスティンはその件を知っていたことを謝罪し、シュラムのような虚像に対抗できないと言ってマイクは嘆く。 自分が母の気を引けるのは息子だからだとマイクに伝えたジャスティンは、オードリーが夜勤中の療養所に向かう。 窓の外から内部を覗いていたジャスティンは、外に出ていたシュラムに声をかけられたために患者を装う。 仕事中のオードリーを自分の守護天使だと言って褒めたシュラムは、彼女とは深い関係だと語る。 シュラムは、スタッフにこの場に入れられた際、肛門にコカインを隠してきたことを話す。 それを取りだすことに失敗した際に、助けてくれたのがオードリーであることを、シュラムはジャスティンに伝える。 命の恩人であるオードリーのお蔭で、現実を直視することができるようになったとシュラムはジャスティンに語る。 家に戻ったジャスティンは、心のしこりが取れたような気分になり、両親やジョエルまでもが、自分のことで苦労していたことを知り弟に謝罪する。 ニューヨーク大学からの郵便をオードリーから渡されたジャスティンは、合格したことを知る。 オードリーは出願していたことに驚くものの、ジャスティンと共に喜ぶ。 仕事場に現れたジャスティンからその件を知らされたマイクは、ようやく父子の関係になれたのにとしか答えられなかった。 常に想像してしまう場所に旅立つ息子のことを思うと、悲しいことしか考えられない辛い思いをオードリーから伝えられたジャスティンは、母の気持ちを理解する。 ライマンの新しいクリニックを訪ねたジャスティンは、子供の頃、よくニュースキャスターの真似をしていた時のことを話すライマンから、それを目指すなら、ニューヨークは最適な場所だと言われる。 やがて再び不安が襲うとジャスティンに語るライマンは、親指のことで色々言ったことを謝罪する。 調べた結果、医学的にも心理学的にも全く問題ない癖だと話すライマンは、どこも悪くないと言って、解決策を探し過ぎたことがその原因だったのだろうと語る。 答えを求めずに生きることが大切だと、ライマンはジャスティンに伝える。 空港に向かったジャスティンは、家族に見守られながら旅立つ。 機内で眠ったジャスティンは、ニュースキャスターになった自分の夢を見る。 寝言を言いながら目覚めたジャスティンは、親指を吸っていることに気づき、隣の席の女性にそれを見られてしまう。 笑われてしまったジャスティンは、女性に自分の名前を伝える。
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*(簡略ストー リー)
オレゴン州。
悩み多き17歳の少年ジャスティン・コッブは、親指を吸う癖(サムサッキング)があった。
看護師の母オードリーとスポーツ・ショップ店長の父マイクは、癖を治すために歯科矯正医ライマンのクリニックにジャスティンを通わせる。
ある日ジャスティンは、今までの治療を止めたライマンから催眠術をかけられる。
その効果も実感できないジャスティンは、ライマンに裏切られたと考えてトラブルを起こし、”ADHD”注意欠陥多動性障害と診断され、薬物治療を勧められる。
その薬のお蔭で悩みなどが消えたジャスティンは、高校で積極的な発言を始め、所属していた討論クラブでその才能を発揮し始めるのだが・・・。
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世界的なミュージック・ビデオ・ディレクターであり、グラフィック・デザイナーとしても知られる、マイク・ミルズの初の長編映画。
不安を抱え、それをコントロールできない悩める少年、その家族も対処法に困り、遂には”ADHD”注意欠陥多動性障害であるとあっさり診断され、それが、”特効薬”により一瞬にして改善していくという展開は、いかにもアメリカ的だ。
そんなアメリカの複雑な社会問題を、一家族を通して象徴的に描く、マイク・ミルズの鋭い視点が見所の作品。
実力派人気スター達を相手に全く臆することなく、難しい役柄である悩み多き少年を見事に演じ、10代でベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した、ルー・テイラー・プッチの繊細な演技は絶賛された。
*マイク・ミルズは同賞の金熊賞にノミネート。
人気俳優に憧れる看護師である主人公の母親ティルダ・スウィントン、悩む主人公に適切な助言ができない父親ヴィンセント・ドノフリオ、主人公の理解者でもある歯科矯正医キアヌ・リーヴス、麻薬依存症の俳優ベンジャミン・ブラット、主人公が心惹かれる少女ケリ・ガーナー、討論クラブの担当教師ヴィンス・ヴォーン、主人公の弟チェイス・オファーレなどが共演している。