インドネシアのスカルノ政権失脚のきっかけとなる”9月30日事件”までの混迷するジャカルタを舞台に、赴任した野心家の記者と知的なカメラマンの友情と信念を貫こうとする姿をロマンスを絡めて描く、監督、脚本ピーター・ウィアー、主演メル・ギブソン、シガニー・ウィーヴァー、リンダ・ハント他共演の社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ピーター・ウィアー
製作:ジェームズ・マッケルロイ
原作:クリストファー・J・コッチ”The Year of Living Dangerously”
脚本
デヴィッド・ウィリアムソン
ピーター・ウィアー
クリストファー・J・コッチ
撮影:ラッセル・ボイド
編集:ウィリアム・M・アンダーソン
音楽:モーリス・ジャール
出演
メル・ギブソン:ガイ・ハミルトン
シガニー・ウィーヴァー:ジル・ブライアント
リンダ・ハント:ビリー・クワン
マイケル・マーフィー:ピート・カーティス
ビル・カー:ヘンダーソン大佐
ベンボル・ロッコ:クマール
ドミンゴ・ランディホ:ホルトノ
クー・レデスマ:タイガー・リリー
ノエル・フェリアー:ウォリー・オサリヴァン
ポール・ソンキラ:ケヴィン・コンドン
オーストラリア 映画
配給 MGM
1983年製作 114分
公開
オーストラリア:1982年12月17日
北米:1983年1月21日
日本:1984年7月14日
製作費 $13,000,000
北米興行収入 $10,278,580
■ アカデミー賞 ■
第56回アカデミー賞
・受賞
助演女優賞(リンダ・ハント)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1965年6月25日。
オーストラリアの記者ガイ・ハミルトン(メル・ギブソン)は、インドネシアのジャカルタに特派員として赴任する。
支局のクマール(ベンボル・ロッコ)とホルトノ(ドミンゴ・ランディホ)に迎えられたハミルトンは、ホテルに向かう。
ハミルトンはホテルで、フリーのカメラマンのビリー・クワン(リンダ・ハント)に出会い、記者仲間のピート・カーティス(マイケル・マーフィー)やウォリー・オサリヴァン(ノエル・フェリアー)らに紹介される。
ハミルトンはクワンと街を歩き回り、貧困と抑圧の中で耐え抜く国民の惨状を知らされ、中国とオーストラリア人の混血で知的なクワンを気に入る。
そんな状況下で、共産党(PKI)は民衆の支持を拡大し、それに危機感を感じるスカルノ政権との間に、緊張感が高まっていた。 西欧人記者は疎外され、まともな取材ができないでいたハミルトンは苛立つが、個人的なコネがなければ取材できないと、クワンに忠告される。 クワンはハミルトンが望むPKIリーダー、アイディットとのインタビューをセッティングし、彼の専属カメラマンとしてコンビを組むことになる。 ハミルトンは特ダネを手に入れて記事を書き、一躍記者仲間から注目されるようになるが、先走る彼の行動を批判する者もいた。 ハミルトンと親交を深めたクワンは、イギリスの陸軍武官ヘンダーソン大佐(ビル・カー)と、その助手で、3週間後にロンドンに帰る予定のジル・ブライアント(シガニー・ウィーヴァー)を紹介する。 アメリカ大使館に、PKIのデモ隊が集結しようとするのを知ったハミルトンは、クワンとクマールそしてホルトノを伴い現場に向かう。 足を怪我したハミルトンは、クワンの家で治療を受け、偶然、自分を含めた同僚の調査ファイルを見つけてしまい、彼はクワンがスパイではないかと考える。 クワンは、川沿いに住む養女に食料を渡し、病気で寝たきりの彼女の子供を見舞い、医者に診せるよう金を渡す。 川の水に病原菌がいることを教えても、彼女らはそれを理解することが出来ず、習慣を止めようとせず、何も出来ないもどかしさにクワンの心は沈む。 ハミルトンとジルは、お互いを意識し合うようになるが、すぐに旅立つ彼女は面倒を避けようとする。 クワンがハミルトンとジルの仲を取り持ち、イギリス大使主催のレセプション会場で出くわした2人は、外出禁止令を無視し、車を飛ばし、その後結ばれてしまう。 ハミルトンとの情事を繰り返すジルは、PKIの武器を積んだ船が、シンガポールを出向したことを彼に知らせる。 それを傍観できないハミルトンは、何とかそれを阻止しようとするが、クワンは、それを危険を顧みない無謀な行為だと非難する。 さらに、同僚のクマールと妻のタイガー・リリー(クー・レデスマ)もPKIだと分かり、ハミルトンは詮索は止めるようにと忠告される。 クワンは、養女の息子が死んだのを知り、国民を苦痛から救えないスカルノを恨むようになる。 記者のカーティスが、サイゴンに赴任することになり、浮かれている仲間達を見て、なぜ真実を伝える記事を書かないかとクワンは怒りを露にする。 クワンを追ったハミルトンは、 自分がクワンに操作され、作り上げられた存在だと言われる。 絶望したクワンは、今何をすべきか自分に問い質して、ホテルに篭り、窓からスカルノ批判の垂れ幕を降ろし、押し入ってきた警官に気づき窓から身を投げる。 クワンは、笑みを浮かべながらハミルトンの腕の中で息を引き取る。 ハミルトンとジルは、クワンが収集した情報ファイルを確保するため、彼の自宅に向かう。 1965年9月30日。 ハミルトンは軍隊に傷を負わされ、ホルトノの運転で空港に向かおうとするが、途中、クワンの家で傷の手当てをする。 クマールが現れ、自分達の今後に絶望するものの、彼は、ハミルトンを空港に送り届ける。 ハミルトンはクマールに別れを告げ、取材機器なども置き去りにして、機内で彼を待つジルの元に向かう。
...全てを見る(結末あり)
軍左派によるクーデターが起き、政局は一気に混迷し、同時にPKIの粛清が始まる。
*(簡略ストー リー)
1965年6月。
インドネシア、ジャカルタ。
特派員として赴任したオーストラリアの記者ガイ・ハミルトンは、現地でフリー・カメラマンのクワンに出会う。
ハミルトンはクワンから、貧困と抑圧に苦しむ国民の惨状を知らされる。
共産党(PKI)は民衆の支持を拡大し、危機感を感じるスカルノ政権との間に緊張感が高まる中、クワンと組んで、特ダネを掴んだハミルトンは注目を集める。
そんな時ハミルトンは、クワンからイギリスの陸軍武官の助手ジルを紹介され、2人は次第に惹かれ合うようになるのだが・・・。
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1978年に発表された、クリストファー・J・コッチの小説”The Year of Living Dangerously”の映画化。
主人公に協力するカメラマンが知る、悲惨な国民の生活などをリアルに描き、自らを、無力な傍観者としか思えなくなる心情など、訴えるべきものが多いドラマではあるが、一方で、特派員とイギリス外交官女性とのラブロマンスなども、ピーター・ウィアーは、濃密な演出で描き切っている。
第56回アカデミー賞では、助演女優賞(リンダ・ハント)を受賞した。
今回は、独特の彼のイメージを感じさせないが、音楽はモーリス・ジャールが担当している。
記者としての活躍よりも、ドラマの中で友人クワンに言われるように、彼及び国情に翻弄されて、なすすべがないという感じながら、それでも、記者としての職務を全うしようとするところが人間味を感じる、メル・ギブソンにとっては、アクション俳優から、実力派として認められるきっかけになった作品でもある。
女優だと知らない方は、言われなければ気づかないであろう熱演を見せるリンダ・ハントは、圧倒的な支持で、見事にアカデミー助演賞を受賞した。
見るからに知的な言動の彼女の演技の中で、”どんなに優秀でも、この容姿なら妬まれることはない”というセリフが印象に残るが、小柄ながら、彼女は他を圧倒する存在感を示している。
「エイリアン」(1979)でブレイクしていたものの、まだキャリアは浅かったシガニー・ウィーヴァー、その上司ビル・カー、主人公に比べると呑気なベテラン記者のマイケル・マーフィー、主人公の同僚でPKIのメンバーのベンボル・ロッコと妻役のクー・レデスマ、運転手ドミンゴ・ランディホ、などが共演している。