サイトアイコン That's Movie Talk!

仔鹿物語 The Yearling (1946)

1938年に発表され、翌年ピューリッツァー賞を受賞した、マージョリー・キーナン・ローリングス同名児童文学を基に製作された作品。
開拓民一家の過酷な生活を描く、監督クラレンス・ブラウングレゴリー・ペックジェーン・ワイマン、息子役クロード・ジャーマンJr.がアカデミー子役賞を受賞した名作ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(家族愛)

グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:クラレンス・ブラウン

製作:シドニー・フランクリン
原作:マージョリー・キーナン・ローリングス
脚本:ポール・オズボーン
撮影
アーサー・E・アーリング
チャールズ・ロシャー
レナード・スミス
編集:ハロルド・F・クレス
美術・装置
セドリック・ギボンズ
ポール・グロッセ
エドウィン・B・ウィリス
音楽:ハーバート・ストサート

出演
グレゴリー・ペック:エズラ”ペニー”バクスター
ジェーン・ワイマン:オリー・バクスター
クロード・ジャーマンJr.:ジョディ・バクスター
チル・ウィルス:バック・フォレスター
フォレスト・タッカー:レム・フォレスター
クレム・ビヴァンス:フォレスター
ヘンリー・トラヴァース:ボイルス
ドン・ギフト:ファダウィン・フォレスター

アメリカ 映画
配給 MGM
1946 年製作 128分
公開
北米:1946年12月18日
日本:1949年6月28日
製作費 $4,000,000


アカデミー賞 ■
第19回アカデミー賞

・受賞
美術(カラー)・撮影賞(カラー)
子役賞(クロード・ジャーマンJr.
・ノミネート
作品・監督
主演男優(グレゴリー・ペック
主演女優(ジェーン・ワイマン
編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1878年4月、フロリダ
数年前に、この湿地帯に移り住んだバクスター一家は、厳しい自然と戦いながら、農業で自給自足の生活をしていた。

働き者のエズラ”ペニー”バクスター(グレゴリー・ペック)は一日中仕事に精を出し、妻オリー(ジェーン・ワイマン)も、ペニーの頑張りを助けてはいるが、何人もの子供を亡くしていた。

そのため、遊び盛りの11歳の一人息子ジョディ(クロード・ジャーマンJr.)に優しい言葉をかけてやれない、辛さを秘めた母親だった。
ある日、ペニーとジョディは、家畜を殺した熊の退治に出かけ、肝心な時に役にたたない銃のおかげで熊を逃がしてしまう。

...全てを見る(結末あり)

しかし、ジョディには良い経験になり、その様子を語り合いながら、同じベッドで父子は眠る。

それを聞いていたオリーは、二人の関係を羨ましく思いながら床につく。

銃を手に入れなけらばならなくなったペニーは、隣人であるフォレスター一家に、飼い犬と猟銃を交換してもらおうとする。

体の弱いフォレスター家の末っ子ファダウィン(ドン・ギフト)は、ジョディと仲良しだった。

主人のフォレスター(クレム・ビヴァンス)をはじめ、一家の男達は、ペニーの熊退治の失敗談を大いに楽しみ聞き入る。

ペニーは飼い犬を手放したい素振りを見せず、役立たずだと言いうのだが、フォレスターの息子レム(フォレスト・タッカー)が、その犬に興味を示す。

レムはどうしてもペニーの犬を欲しがり、イギリス製の2連発銃と交換することになる。

数日後、ジョディを連れて町に行ったペニーは、レムの兄バック(チル・ウィルス)らに出くわす。

レムは、役立たずの犬のことで憤慨しているとのことだったが、レムの恋人のことで揉めている彼らの喧嘩に加わり、ペニーとジョディは顔にアザを作って帰宅する。

二人の行動を責めるオリーだったが、買い物を節約して買った布地をペニーからプレゼントされる。

素直に喜べないオリーは、二人の前では嫌味を言うが、思わず嬉し泣きしてしまう。

数日後、犬の腹いせで、フォレスター兄弟にブタを盗まれてしまったペニーは、銃を持ってフォレスター家に向かうのだが、途中で毒蛇に噛まれてしまう。

その時、ペニーは咄嗟に目の前の雌鹿を撃ち、その内蔵で解毒を試みて家路を急ぐ。

しかし、その雌鹿には生まれたばかりの仔鹿がいた。

ペニーは家に引き返し、ジョディはフォレスター家に助けを求める。

フォレスター家の協力で、医者の治療を受けたペニーは一命を取り留める。

ジョディは、父ペニーが助かったのは、親鹿のお陰だと言いって、可哀そうな仔鹿を飼いたいことをペニーに伝える。

ペニーの了解を得たジョディは、仔鹿を家に連れて帰り、今回ばかりはオリーも大目に見ることになる。

兄弟のように仔鹿を可愛がるジョディは野山を駆け巡り、夜もベッドで仔鹿と一緒に寝た。

ジョディは、仔鹿の名付け親になってもらうために、フォレスター家のファダウィンの元に向かう。

仔鹿を連れて行ったジョディは、バックから、病気だったファダウィンが急死したことを知らされる。

ジョディは、”自分なら尻尾が旗のような仔鹿に”フラッグ”と名付ける”と、ファダウィンが生前話していたとバックから聞き、その名を付けることにする。

ファダウィンの葬儀を済ました後、何日も雷雨が続いたため、バクスター家の農作物が全て腐ってしまう。

苛立つオリーは、肉を食べようとしたフラッグに八つ当たりしてしまい、ペニーがそれを非難する。

その時、雨は上がり安堵する一家だったが、荒れ果てた畑を見てオリーは愕然とする。

しかし、ペニーは、試練に立ち向かう覚悟を決め、家族を励まして陽の光に感謝する。

ペニーとジョディは身を粉にして働き、トウモロコシの種とタバコの苗を植えて希望を取り戻す。

友人の結婚式に出席した一家は、久し振りに家族で町に出かけて英気を養う。

数日後、フラッグがタバコの苗を食べてしまい、それを育てて売った資金で、井戸が出来ることを楽しみにしていたオリーはショックを受ける。

ジョディは、フラッグがわざとやったのではないとペニーに弁明する。

ペニーとジョディは仕方なく残った苗を植え直すが、井戸を掘るための資金を得るために、綿の栽培を始めることを考える。

しかし、ペニーは無理がたたり、ヘルニアで寝込んでしまう。

ペニーに仕事を任されたジョディは、急に大人びた口を利いてオリーに叱られるが、彼女は頼りになる息子を頼もしくも思う。

ある日、狩から戻ったジョディは、トウモロコシ畑の苗が、殆どフラッグに食べられてしまったことを両親から知らされる。

素直にフラッグのしたことを認めたジョディは、畑を元に戻して種を植えて、柵を高くすることをペニーに命ぜられる。

疲労困憊で精根尽き果てながらも、仕事を続けるジョディを見て、さすがに感心したオリーは力を貸す。

そんな二人の努力も虚しく、成長したフラッグはその柵を簡単に飛び越え、再び苗を食べ尽くしてしまう。

ジョディはペニーに呼ばれ、自分達が生きていく為には仔鹿を殺さなければならないと説得される。

ジョディは已む無くフラッグを森に連れて行くが、撃ち殺すことは出来なかった。

フラッグはジョディの元に戻ってきてしまい、オリーが撃ち殺そうとするが急所を外れる。

それを見たジョディはオリーから銃を奪い取り、両親を恨み罵り、自分でフラッグに止めを刺して家出してしまう。

森でさまよう空腹のジョディだったが、そんな時に想うのは、やはり一度は憎んだ母親だった。

奇跡的に蒸気船に助けられたジョディは、無事に家に戻り父ペニーに謝罪する。

辛い体験で、ペニーはジョディが大人へと成長しことを知り、優しく語りかけ、頼もしくなった息子を誇りに思う。

一人息子まで亡くしたかと心配し、ジョディを捜し回っていたオリーも帰宅する。

ペニーから、息子が成長して、もう”一年子”ではないことを知らされたオリーは涙する。

オリーは、久しぶりに見せる笑顔で息子ジョディを強く抱きしめる。

そしてジョディは、フラッグと野山を駆け巡る夢を見ながら深い眠りに就く。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
フロリダ

湿地帯に暮らすバクスター一家は、貧しくも力を合わせ暮らしていた。
ある日、家畜を殺した熊を退治するため、ペニー・バクスターは、隣人であるフォレスター家に、飼い犬と猟銃を交換してもらう。
その犬が役立たずだと知ったフォレスター兄弟にブタを盗まれてしまい、ペニーは銃を持って彼らのに向かうが、途中、毒蛇に噛まれてしまう。
ペニーは咄嗟に目の前にいた鹿を撃ち、内臓で解毒して命は助かる。
ペニーの息子ジョディは、父を救った鹿の子供である仔鹿を飼うことを許される。
だが、鹿は一家の生活を支える作物を食い尽くしてしまう。
生きるために、仔鹿を殺すことをペニーに命ぜられたジョディは、已む無く自ら止めを刺す。
しかし、ペニーや自分に優しい言葉をかけてくれない、辛さを秘めた母オリーを理解できない失意のジョディは、家出してしまう・・・。
__________

家族の絆や、大人になるために避けては通れない辛い現実、貧しくも逞しく必死に生きる開拓民の生活を描く、クラレンス・ブラウンの、流れるような繊細な演出は見事だ。

第19回アカデミー賞では、作品賞をはじめ8部門でノミネートされ、美術(カラー)、撮影賞(カラー)、子役賞(クロード・ジャーマンJr.)を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(グレゴリー・ペック
主演女優(ジェーン・ワイマン
編集賞

フロリダの美しい大自然を映し出した、アーサー・E・アーリングチャールズ・ロシャーレナード・スミスらの撮影も素晴らしい。

ハーバート・ストサートの、心洗われるような美しい音楽も印象に残る。

また、ペットになる仔鹿が、ジョディに懐いてる様子なども実に微笑ましい。

オズの魔法使」(1939)などと同様、家族や故郷の大切さを教えてくれる作品でもある。

撮影当時まだ20代の若々しいグレゴリー・ペックは、息子に対して、説得力ある言葉で人生の厳しさを教える、理想の父親を見事に演じている。

ジェーン・ワイマンは、子供を亡くした辛さから、人に優しく接することができない妻を、グレゴリー・ペック以上の熱演で支える。

なんといっても、アカデミー賞の特別賞(子役賞)を受賞した、クロード・ジャーマンJr.の、輝くような可愛らしさは強烈に印象に残る。

個人的には、当時11歳だった彼が、わずか4年後に「リオ・グランデの砦」(1950)では、なんとジョン・ウェインとあまり変わらない身長になっていたのに驚いたものだ。
リオ・グランデの砦」で、息子役である彼の伸びた身長をウェインも驚き、テントの中で比べる場面もある。
この時のクロード・ジャーマンJr.フォード一家の面々に可愛がられて好演している。
*同作には、本作のチル・ウィルスも出演している。

隣人フォレスター家の息子チル・ウィルスフォレスト・タッカー、主人のクレム・ビヴァンス、末息子ドン・ギフト、雑貨店店主役ヘンリー・トラヴァースも共演している。


モバイルバージョンを終了