サイトアイコン That's Movie Talk!

ザ・ヤクザ The Yakuza (1974)

友人のためにヤクザとの問題を解決しようとした男がかつて関係した元ヤクザの協力を得て組織に立ち向かう姿を描く、製作、監督シドニー・ポラック、脚本ポール・シュレイダー、主演ロバート・ミッチャム高倉健ブライアン・キースハーブ・エデルマンリチャード・ジョーダン岸恵子他共演の犯罪ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト
監督:シドニー・ポラック

製作:シドニー・ポラック
製作総指揮:俊藤浩滋
原作:レナード・シュレイダー
脚本
ポール・シュレイダー
ロバート・タウン
撮影:岡崎宏三
編集
ドン・ガイデス
トーマス・スタンフォード
音楽:デイヴ・グルーシン

出演
ハリー・キルマー:ロバート・ミッチャム
田中健:高倉健
ジョージ・タナー:ブライアン・キース
オリヴァー・ウィート:ハーブ・エデルマン
ダスティ:リチャード・ジョーダン
田中英子:岸恵子
東野:岡田英次
田中五郎 :ジェームス繁田
加藤二郎:待田京介
田中花子:クリスティーナ・コクボ
田中四郎/スパイダー:郷鍈治
村田実:汐路章
老人:植村謙二郎
ナイトクラブの歌手:ヒデ夕樹

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1974年製作 112分/122分(日本)
公開
北米:1975年3月19日
日本:1974年12月21日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ロサンゼルス湾、第156埠頭。
ヤクザの組長、東野(岡田英次)の指示を受けた加藤二郎(待田京介)は、海運会社のオーナー、ジョージ・タナー(ブライアン・キース)に会う。

東野と交わされた武器の密売契約を守らないタナーは、娘が誘拐されたことを加藤から知らされ、話をつけるようにと言われる。

タナーのボディーガードのダスティ(リチャード・ジョーダン)が加藤に銃を向けるが、タナーにそれを制止される。

旧友であるハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)に協力を求めたタナーは、4日以内に日本に行かないと娘の命が危ないと伝える。

かつて、駐留軍として日本滞在中にヤクザの田中健(高倉健)に恩義を売ったことがあるキルマーは、彼に頼めば協力してもらえるとタナーに言われる。
...全てを見る(結末あり)

田中の妹で恋人だった英子(岸恵子)の話もしたキルマーは、今回の件を引き受ける。

ダスティを同行させると言うタナーは、翌日、日本に向かうということだった。

ダスティと共に東京に着いたキルマーは、軍友で歴史の講師をしているオリヴァー・ウィート(ハーブ・エデルマン)に迎えられる。

ウィートの家に向かったキルマーは、終戦後の面影がない近代国家となった日本に驚く。

コレクションの日本刀に触れただけで手を切ってしまったダスティは、キルマーが出かけた後でウィートに傷の手当てをしてもらう。

ウィートは、キルマーが、かつての恋人、英子に会いに行ったことと二人の関係をダスティに話す。

戦時を幼い娘と共に逞しく生き抜いた英子は、進駐軍のキルマーと出会い愛が芽生え、戦地から戻った彼女の兄健に妹親子を救ったことで感謝された。

しかしキルマーは、敵国の男に対する借りを返すため、けじめをつけて英子と別れたのだった。

その後、健はヤクザとしてのし上がり、キルマーは、除隊時にタナーから5000ドルを借りて、英子のバーを開店させた。

バー”キルマーハウス”が今でも営業していることを知ったキルマーは、健を捜すためにその場を訪ねる。

営業が終わっていた英子は、現れたキルマーに気づき動揺する。

英子の娘花子(クリスティーナ・コクボ)と再会したキルマーは、彼女を抱きしめる。

気持ちがほぐれた英子は、キルマーと共に昔話に花を咲かせる。

健に会いたいと英子に伝えたキルマーは、昔と気持ちは変わらないため、結婚したいことを彼女に伝える。

戸惑う英子は答えられず、剣道場で講師をしているという健が京都にいることを知らせる。

去ろうとするキルマーは花子へのプレゼントを英子に渡し、帰国する前に寄ると伝えて店を出る。

京都。
健に会ったキルマーは東野の件を話し、留学生を誘拐する彼の組は、ヤクザの風上にも置けないと言われる。

今回の件には武器の密輸が絡み、取引していたタナーが、東野に送るはずの荷をなくしてしまったことが原因だとキルマーは健に話す。

東野はタナーを信じていないため、武器が送られてこない場合は娘が殺されることをキルマーは伝える。

タナーは親友で、英子の店の資金も貸してくれたとキルマーに言われた健は、東野と話しタナーが武器を持っていないことを伝えてほしいと頼まれる。

既に足を洗っていると言われ、それでは頼めないと伝えたキルマーだったが、話はつけると健に言われる。

東京に戻ったキルマーは、ウィートの銃を借りて、健とダスティと共に組員を殺し、拘束されていたタナーの娘を救い出す。

現れた加藤は、東野に知れると健に警告してその場を去る。

到着していたタナーに娘を引き渡したキルマーは感謝され、帰国するよう指示される。

元ヤクザの健が関わったことで、彼が東野に命を狙われることをキルマーは心配する。

自分を狙うには他の組の合意が必要で、東野が頭を下げるとは思わない健は、タナーが話をつければ問題ないと話す。

帰国の準備をしていたキルマーは、現れた英子と散歩をしながら話し、見せに現れた健の様子がおかしかったことを知らされる。

健には、ヤクザの幹部で相談役でもある兄五郎(ジェームス繁田)がいることを英子から知らされたキルマーは、京都で国際会議に出席していた彼に会う。

東野が健を狙うことを確認したキルマーは、ヤクザ同士の争いを鎮めようとしている自分が動き出すのを待っている組長達の考えを、五郎が承知していることを知らされる。

そうなれば東野が黙っていないため、健があえて自分を避けていることを五郎はキルマーに伝える。

健が東野に詫びを入れるしかないと言う五郎は、それができなければ、黙って殺されるか殺すかだとキルマーに伝える。

義理を返した健に借りができても、返す必要がないと五郎に言われたキルマーは、自分が手を打つしか方法がないことを悟る。

東京に戻ったキルマーは、このまま残ることをウィートとダスティに伝える。

東野に会ったタナーは、金を払ったにも拘らず約束を守らなかったために娘を誘拐したことを伝え、組員を殺されたことで組長としての示しがつかないと言われる。

実は資金難で困っていたタナーは、受け取った金で投資に失敗してしまい、武器を手に入れていないことを東野に話す。

健は始末するが、知り過ぎたキルマーは任せると東野はタナーに指示する。

クラブで健に会ったキルマーは、京都で元の生活に戻ると言う彼に、英子の身が心配であることを伝えて席を立つ。

キルマーの命を狙うヤクザ村田実(汐路章)らと話した健は、自分の身内だと伝える。

かつて世話になった親分(植村謙二郎)に会った健は、東野とタナーの取引を表ざたにするよう助言される。

浴場でヤクザに命を狙われたキルマーは、タナーに命令されたことを知り、相手を刺し殺す。

ウィートの家に戻ったキルマーは、英子に傷の手当てをしてもらう。

義理についてを健に尋ねたダスティは、その世界に生きる者達の考えが理解することができない。

タナーが裏切ったことでショックを受けていたキルマーを、英子は慰める。

ダスティから、護衛ではなく監視だったことを知らされたキルマーは、タナーと東野は、揉めていると見せかけて裏で手を組んでいると言われる。

相談役を五郎から奪うことが東野の目的で、それを見破られないように自分が監視役となったことをダスティは話す。

帰国するようキルマーに指示されたダスティは、残って協力したいことを伝える。

健と出掛けて話しをしたキルマーは、英子の安全を確保してもらいたいだけで、残る必要はないと言われる。

押入って来た東野組のスパイダー(郷鍈治)らに銃を捨てるよう指示されたダスティはそれに従う。

隙を見て抵抗したダスティは日本刀で刺されてしまい、戻って来たキルマーと健が相手を倒す。

一人を射殺したダスティは息絶え、英子は花子も死亡したことを知り、健と共に悲しむ。

警察が近づいたためにその場から逃れたキルマーは、五郎の元に向い、東野とタナー両者の仕業だと伝える。

そこに現れた健は東野を始末することを伝え、キルマーがタナーと片を付けることを五郎は承知する。

久し振りに五郎に再会した健は丁寧に挨拶し、三人は戦いの準備を始める。

五郎は、大学をやめてヤクザになり東野組にいる、息子四郎/スパイダーを見逃してほしいとキルマーと五郎に伝える。

健は、四郎を守ることを五郎に約束する。

その後、健と英子が夫婦であることを五郎から知らされたキルマーは驚く。

終戦後、妻が外国人と同棲していることを知った健は激怒するが、彼女の命の恩人でもあることで苦悩したのだった。

英子も同じように苦しんだことを理解するキルマーは、亡くなった花子が健の娘だったことで、その悲しみを察する。

タナーの宿泊先のホテルに向ったキルマーは、彼を始末する。

ウィートが様子を見ている英子のことを健に伝えたキルマーは、東野の元に向かおうとする彼に同行しようとする。

自分の問題だと言う健は、キルマーの気持ちに感謝する。

帰る訳にはいかないと言うキルマーは、タナーを殺したことを健に伝える。

屋敷の敷地内に侵入し内部の様子を確認したキルマーと健は、内部に押入る。

健は東野に襲い掛かり日本刀で刺殺し、キルマーが銃で加勢する。

手下を次々と倒した健は、向かってきたスパイダーも殺してしまう。

現れた加藤と相対する健は、彼も刺殺する。

花子も眠る先祖の墓前で手を合わせた健は、父に謝罪する。

帰国することを英子に伝えたキルマーは、何一つ秘密はなくなったと言われる。

女に秘密はつきものだと英子に伝えて頬にキスしたキルマーは、彼女を抱きしめてその場を去る。

その後キルマーは、タナーと東野の商売上のトラブルが原因の抗争だったと、警察が判断したことを五郎から知らされる。

責任を感じてけじめをつけようとした健は、五郎に制止される。

死ぬことだけは思い止まってほしいと健に伝えた五郎は、息子を失っただけで十分だと言って彼を納得させる。

謝罪した健は、指を詰めてけじめをつける。

帰国することを伝えたキルマーは、京都に戻ると言う健に別れを告げる。

花子は健の娘であり、彼と英子が夫婦だったことをウィートに話したキルマーは、タクシーで空港に向かうものの引き返す。

健の家を訪ねたキルマーは、迎え入れてくれた彼がお茶を入れている間に指を詰める。

キルマーは、過去と現在に対し苦しめてしまったことを健に謝罪し、自分を許せるなら英子も許してあげてほしいと伝える。

健は指を受け取り、これ以上の友情はないことをキルマーに伝え、同じ言葉を返したキルマーは激痛でうずくまる。

空港に向い健に見送られたキルマーは、彼に一礼をする。

健が頭を下げる姿を確認したキルマーは、機内に向かい旅立つ。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
ロサンゼルス
日本のヤクザと手を組み武器の密売をしていた海運会社のオーナー、ターナーは、荷を送らなかったために娘を誘拐されてしまう。
組長の東野と話をつけるため、タナーは、かつて進駐軍で日本に滞在したことがある旧友ハリー・キルマーに協力を求める。
ヤクザの田中健に恩義を売ったことがあるキルマーは、彼の妹英子と愛し合った過去があった。
タナーの部下ダスティを護衛につけて日本に着いたキルマーは、軍友のウィートに迎えられて、自分が資金援助して開いた英子のバーに向かう。
戸惑う英子と昔話をして健の居場所を知ったキルマーは、彼に会いに京都に向かう。
ヤクザから足を洗っていた健は、苦しい時代に妹英子と娘の生活を支えてくれたキルマーへの義理を果たすために、東野と話をつけようとするのだが・・・。
__________

かつて恩義を売ったヤクザの手を借りて、組織に立ち向かう男の戦いを描く”ネオ・ノアール”犯罪・ドラマ。

既に約10年のキャリアがあり、いくつもの話題作を世に出していたシドニー・ポラックが、日本のヤクザ社会を描いたことで注目された作品。

日本人の目から見ると、どうにも納得できない描写などがあるのは致し方ないが、ヤクザの世界をそれなりに表現はしている。

その後、数十年経ってもほとんど変わっていない、西洋人が見る日本観、全く発展性がない日本の映画界などを嘆かずにはいられない、そんなことを確認できた作品でもある。

当時の日本人で、まともにハリウッド作品に起用される俳優はほぼ皆無であり(三船敏郎くらい)、ヤクザ映画なので当然のごとく高倉健が出演することになったのだが、ヒロインの岸恵子を含めて、ぎこちない演技が気になって仕方ない。

ガン・アクションなどもB級作品並で、ポール・シュレイダーの脚本もチグハグであり、シドニー・ポラックの演出も今一冴えない作品で、一般客には特異な世界観が受けたのか、まずまず受け入れられたものの興行的には失敗に終わり、批評家には酷評されてしまった。

スティーヴン・セガール主演で2005年に公開された「イントゥ・ザ・サン」は本作のリメイク。

戦中戦後の混乱の中で、進駐軍として日本社会と深く関わった男を、いい雰囲気で演ずるロバート・ミッチャムの好演は光る。

主人公に恩を返し協力する元ヤクザの高倉健、主人公の旧友で、ヤクザと手を組み武器を密売する海運会社のオーナー、ブライアン・キース、その部下で主人公を監視するリチャード・ジョーダン、同じく主人公の軍友で日本に滞在しているハーブ・エデルマン、かつて主人公と愛し合ったヒロインの岸恵子、組長の岡田英次、ヤクザの相談役ジェームス繁田、組長の部下の待田京介、ヒロインの娘クリスティーナ・コクボ、相談役の息子である組員の郷鍈治、組員の汐路章などが共演している。


モバイルバージョンを終了