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ウィッカーマン The Wicker Man (1973)

1967年に発表された、デヴィッド・ピンナーRitual”の小説を基に製作された作品。
独自の宗教観に支配される島で少女失踪の捜査を行う警官の異様な体験を描く、監督ロビン・ハーディ、主演エドワード・ウッドウォードクリストファー・リーダイアン・シレントイングリッド・ピットブリット・エクランド他共演のホラー。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


スリラー/ホラー


スタッフ キャスト ■
監督:ロビン・ハーディ

製作:ピーター・スネル
原作:デヴィッド・ピンナーRitual
脚本:アンソニー・シェーファー

撮影:ハリー・ワックスマン
編集:エリック・ボイド=パーキンス
音楽:ポール・ジオヴァンニ

出演

ニール・ハウイー巡査:エドワード・ウッドウォード
サマーアイル卿:クリストファー・リー
ミス・ローズ:ダイアン・シレント
司書:イングリッド・ピット
ウィロー・マグレガー:ブリット・エクランド
アルダー・マグレガー:リンゼイ・ケンプ
港長:ラッセル・ウォーターズ
庭師:オーブリー・モリス
メイ・モリソン:アイリーン・サンタース
ローワン・モリソン:ジェリー・カウパー

イギリス 映画
配給 British Lion Films
1973年製作 87分
公開
イギリス:1973年12月
北米:1975年6月
日本:1998年3月21日
製作費 £500,000
北米興行収入 $61,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
スコットランド西岸、ヘブリディーズ諸島
ニール・ハウイー巡査(エドワード・ウッドウォード)は、行方不明の少女ローワン・モリソン(ジェリー・カウパー)の捜索のためにサマーアイル島に向かう。

水上飛行機を着陸させたハウイーは、港長(ラッセル・ウォーターズ)に声をかけて上陸することを伝える。

私有地だと言ってそれを拒む港長だったが、島民から行方不明者の捜査願いが出ているため上陸することをハウイーは伝える。

ボートを出してもらえたハウイーは、領主にまず会ってもらいたいと言う港長に、ローワンの写真を見せる。

その場にいた老人達は、見たことがない少女だとハウイーに伝える。
...全てを見る(結末あり)

ローワンがメイ・モリソン(アイリーン・サンタース)の娘だということを手紙で確認して彼女の所在を尋ねたハウイーは、思い出したと言う港長から、それが郵便局だと知らされる。

港長に写真の子がメイの娘でないと言われたハウイーは、それならばこの子は誰だろうと答えてその場を去る。

郵便局兼雑貨屋のメイを訪ねたハウイーは、写真の子は娘ではなく、その場で絵を描いていたマーテルが自分の娘だと伝える。

ローワンを知っていると言うマーテルは、走ることが好きなので野原にいるとハウイーに伝える。

それが野兎のことだと知ったハウイーは、メイにお茶をご馳走になる。

宿屋兼パブの”グリーンマン・イン”に宿泊しようとしたハウイーは、主人のアルダー・マグレガー(リンゼイ・ケンプ)から、娘のウィロー(ブリット・エクランド)が部屋に案内すると言われる。

若くて美しいウィローのことで客達に冷やかされたハウイーは、彼らに自分が島に来た理由を説明する。

ローワンの写真を見せたハウイーは、客達に情報を求める。

ウィローが用意した食事が全て缶詰の材料だったために、食べる気にならなかったハウイーは、外に出てみる。

岸辺で愛し合う者達や全裸で墓石を抱きかかえる女性を目撃したハウイーは、異様な光景を見て驚き宿に戻り部屋に向かう。

敬虔なクリスチャンであるハウイーは祈りを捧げてベッドに入るのだが、全裸で誘惑する隣の部屋のウィローの歌声が気になる。

翌朝、ウィローに起こされたハウイーは、部屋に来てくれなかったことについて聞かれ、婚約者がいることを伝える。

五月祭が近づき島ではその準備が始まり、メイポールを男性の象徴として崇拝することを少女達に教える教師ローズ(ダイアン・シレント)にハウイーは声をかける。

この島で行われていることはわいせつ行為だと言って、報告することも考えるとハウイーはローズに伝える。

少女達にローワンの写真を見せたハウイーは、彼女の名前を黒板に書き、心当たりがないかを尋ねる。

ローズはハウイーを迷惑に思うが、空いている席に気づいたハウイーは名簿を調べようとする。

領主サマーアイル卿(クリストファー・リー)の許可がいると言うローズを無視したハウイーは、名簿にはローワンの名前があり、住所が郵便局であることを確認する。

少女達を嘘つき呼ばわりして批判するハウイーは、ローワンがクラスメイトであると言って、言葉を遮ろうとするローズに捜査妨害で逮捕すると警告する。

ローワンの居場所を再び尋ねたハウイーは、ローズに外で話をしたいと言われて教室を出る。

ローズはローワンが存在せず死んだとも言えると語り、この島では、死は自然界に戻ると解釈することをハウイーに伝える。

キリスト教を逸脱した自分達の信仰であることをハウイーに伝えたローズは、ローワンが死んで埋められていることは認める。

墓地に向かったハウイーは、その場にいた庭師(オーブリー・モリス)から、半年前に死んだと言うローワンの墓を知らされる。

メイを訪ねたハウイーは、彼女がマーテルの口の中にカエルを入れてのどの炎症を消そうとしている姿を見て、正常ではない行為に驚く。

その後、ハウイーは死亡届を調べようとするが、非協力的な司書(イングリッド・ピット)からサマーアイル卿の許可証の提示を求められる。

警察官の権限でそれを見せるよう司書に伝えたハウイーは、ローワンの死亡届がないことを確認する。

司書にローワンの写真を見せたハウイーは、彼女を知っているが死因や他のことは何も知らないと言われる。

ローワンの写真を収穫祭に撮った薬剤師を訪ねたハウイーだったが、彼女の写真を見せても確かな記憶がないようだった。

全裸で歌いながら踊り焚火の上を飛ぶ少女達の異様な光景を気にしながら、ハウイーはサマーアイル卿の住居である城に向かう。

殺人の疑いがあるローワンの遺体を回収する許可をサマーアイル卿に求めたハウイーは、意外にもあっさりとその許可を得る。

正しいとは思えない宗教や道徳観が理解できないハウイーだったが、サマーアイル卿は冷静に対応する。

島には他の神がいると言うサマーアイル卿は、キリスト教会もあったことを指摘される。

キリストの神は死んだと答えるサマーアイル卿は、かつて不毛の地だった島を買い取った農学者だった祖父が作物が育つ土地に変えて、人々は豊穣の神を崇めるようになったことを話す。

島民を利用した祖父は島を離れたが、父親は愛を持って接し、自分もその意志を継いだとサマーアイル卿はハウイーに語る。

それを異教徒の考えだと批判したハウイーだったが、多神教ではあるが無知な宗教ではないとサマーアイル卿は答える。

この国の法に従うのが自分の役目だと言うハウイーは、ローワンの遺体回収の許可を得てその場を去る。

庭師と共にローワンの棺を掘り起こしたハウイーは、その中の野兎の死骸を確認する。

再び城に向かったハウイーは、サマーアイル卿のピアノの伴奏で歌うローズに兎を見せる。

冒涜だと言うハウイーに、キリスト教ならばそうであってもこの場では違うとローズは伝える。

兎が再生したローワンだと言うローズの言葉を遮ったハウイーは、ローワンがどこにいるのかをサマーアイル卿に問う。

捜査は自分の仕事だと言われたハウイーは、ローワンが異教徒の手で殺されたということを本土に戻り報告し、更に詳しい調査を依頼することを伝える。

動揺する様子もないサマーアイル卿は、ハウイーを見送る。

薬剤師の部屋に侵入したハウイーはローワンの写真を見つけて、去年が不作だったことで彼女が生贄にされたと考える。

図書館で五月祭に関して調べ、その異様さに驚いたハウイーは、儀式を前にしてローワンがまだ生きていることも考える。

本土に戻り応援を連れて戻ろうとしたハウイーだったが、飛行機のエンジンがかからず、単独で捜査を続けるしかなかった。

島では異常な雰囲気の中で五月祭の準備が始まり、サマーアイル卿は、生贄が豊作をもたらすだろうと人々に告げる。

メイに会ったハウイーは、ローワンが生きていると言って生贄にされる前に捜しだすことを伝え、各家を回り捜査をする。

疲れ切ったハウイーは宿に戻り休息するが、ウィローとアルダーが、彼を眠らせ続けるために呪いをかける。

目覚めたハウイーは、アルダーを気絶させて拘束して衣装を奪い仮面を被り、五月祭に参加する。

サマーアイル卿を中心にして儀式が始まり、それを終えた彼らは海岸に向かう。

生贄を捧げる儀式が始まり、現れたローワンを助けたハウイーは洞窟に逃げる。

外に出たハウイーは、ローワンが待ち構えていたサマーアイル卿の元に向い、うまくやったと言われて母メイと共にその場を去る光景を見て呆然とする。

全てが仕組まれたことだとサマーアイル卿に言われたハウイーは、誘い出された自分が理想の生贄であったことを知らされる。

自分の死が作物として再生するためだとローズに言われたハウイーは、全裸にされ女達によって身を清められる。

イエスが約束した永遠の命を信じるハウイーだったが、聖者達と共に祭られるとサマーアイル卿に言われ、”ウィッカーマン”の元に連れて行かれようとする。

どのような言い方をしてもこれは殺人だと指摘するハウイーは、この地では作物は育たないと語る。

それを否定するサマーアイル卿は、来年は必ず豊作になると言って、ハウイーを籐でできた巨人ウィッカーマンの中に閉じ込める。

サマーアイル卿は神に生贄を捧げ、叫ぶハウイーを無視してウィッカーマンに火を放ち、人々は歌いながらその様子を見守る。

神に祈りを捧げるハウイーは、他の生贄の動物達と共に焼かれ、そしてウィッカーマンは崩れ落ちる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
スコットランド西岸、ヘブリディーズ諸島
ニール・ハウイー巡査は、行方不明の少女ローワンの捜査依頼を受けてサマーアイル島に到着する。
ところが、住民やローワンの母メイをはじめ誰一人彼女の存在を知らないことにハウイーは驚く。
ハウイーは、人目を気にせず愛し合い戯れる人々や、全裸で踊り歌い自分を誘惑する宿屋の娘ウィローの行動などを異様に思う。
学校を訪ね教師のローズを追及したハウイーは、名簿にローワンの名前があることを確認する。
仕方なくローズは、ローワンが死んで墓に埋められたとハウイーに語る。
尚も捜査を続けるハウイーだったが、領主サマーアイル卿の下で独自の宗教観を持つ人々の生活が、敬虔なクリスチャンである自分には理解できず捜査は難航する・・・。
__________

2006年にニコラス・ケイジ主演でリメイクされた。
・「ウィッカーマン」(2006)
日本公開は初公開から25年後の1998年。

原始的宗教を信じる者達の異様な世界に迷い込むのが、敬虔なクリスチャンである警官という設定が実に興味深く、その双方の宗教観の対立が本作のポイントともなっている。

エロティック・ミステリーの感覚は今観ても十分通用するほど刺激的であり、不気味な物語が、どこかのどかな雰囲気で進行する展開もまた注目したい。

実際にヨーロッパで行われている五月祭も絡めた異常な儀式、現地の民謡を効果的に使ったミュージカル・タッチの映像も印象的だ。

島の住民に翻弄されながら捜査を続ける警官を好演するエドワード・ウッドウォード、自らの立案で本作を作り上げた、島の領主を雰囲気ある演技で演ずるクリストファー・リー、彼の愛人的存在でもある教師ダイアン・シレント(同年ショーン・コネリーと離婚、本作の脚本家アンソニー・シェーファーと後に結婚)、司書のイングリッド・ピット、悩ましい全裸姿は実は代役も使った、宿屋の娘ブリット・エクランド(元ピーター・セラーズ夫人、翌年「007/黄金銃を持つ男」(1974)でクリストファー・リーと共演)、その父親リンゼイ・ケンプ、港長のラッセル・ウォーターズ、墓地の庭師オーブリー・モリス、失踪する少女ジェリー・カウパー、その母親アイリーン・サンタースなどが共演している。


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