スランプに陥っていた作家と純朴な女性とのほのかな愛を描く、製作サミュエル・ゴールドウィン、監督キング・ヴィダー、主演ゲイリー・クーパー、アンナ・ステン、ラルフ・ベラミー、ヘレン・ヴィンソン、シグ・ルーマン他共演の恋愛ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:キング・ヴィダー
製作:サミュエル・ゴールドウィン
原案:エドウィン・H・ノッフ
脚本:エディス・フィッツジェラルド
撮影:グレッグ・トーランド
編集:スチュアート・ヘイスラー
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
トニー・バレット:ゲイリー・クーパー
マーニャ・ノヴァク:アンナ・ステン
フレドリク・ソビエスキー:ラルフ・ベラミー
ドーラ・バレット:ヘレン・ヴィンソン
ヤン・ノヴァク:シグ・ルーマン
カイシャ・ノヴァク:エスター・デイル
ビル・ジェンキンス:ウォルター・ブレナン
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1935年製作 83分
公開
北米:1935年3月8日
日本:1935年10月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク。
作家のトニー・バレット(ゲイリー・クーパー)は、処女作で成功したために大都会でのライフスタイルを楽しんでしまい、その後の作品が売れないことで経済的に追い込まれていた。
出版社側から次回作も駄作だと言われたトニーは、新作の出版を断られてしまう。
それを知った妻ドーラ(ヘレン・ヴィンソン)は、コネチカットの祖父が遺した家に住めば家賃はいらないと言うトニーの言葉に気乗りしない。
コネチカットに到着したトニーとドーラは、ビル・ジェンキンス(ウォルター・ブレナン)の運転で屋敷に向かう。
一帯は、ポーランド人達が土地を農地として利用していた。
隣人のポーランド人ヤン・ノヴァク(シグ・ルーマン)は、娘のマーニャを連れてトニーの屋敷を訪ねる。 ノヴァクはトニーの土地を買おうとしていたのだが、その件をマーニャが話し、トニーは現金5000ドルで即刻売却することを伝える。 後日、契約すると言って帰ろうとしたマーニャとノヴァクは、ドーラに挨拶してその場を去る。 ノヴァクが土地を現金5000ドルで買ってくれることを知ったドーラは驚き、祖父に感謝する。 トニーは土地の売却を止めると言って、ニューヨークの生活に戻れると言うドーラをからかう。 翌日、ノヴァクの家に向かい契約を済ませたトニーは、食事に招待される。 そこにソビエスキー一家が現れ、主人とノヴァクは長男のフレドリク(ラルフ・ベラミー)と娘のマーニャの婚姻を購入した土地付きで決めてしまう。 食事を終えたノヴァクは両家の結婚についてを話すが、マーニャは気乗りしない様子だった。 屋敷に戻ったトニーはニューヨークに向かおうとするドーラに、作品の題材が見つかったのでこの場に残ることを伝える。 ノヴァク一家の生活に魅力を感じたトニーだったが、毎年、違う人々に興味を示し、題材にするといって何も書けなかったことをドーラに指摘される。 今回は書けると言い張るトニーは、これ以上意見してほしくないことをドーラに伝える。 ドーラは一人でニューヨークに行くことを決めて、トニーから5000ドルを受け取り数週間で戻ると伝えるが、やはり残ろうとする。 トニーに行くべきだと言われたドーラは、お互いのためだと割り切り納得して旅立つ。 牛乳も販売しているため、それをトニーの屋敷に届けていたマーニャは、自分を題材にして本を書いているとトニーに言われる。 結婚のことについて聞かれたマーニャは、父親の言いなりだということを否定し、そうは見えなかったとトニーに問い詰められて気分を害する。 酔った勢いで寂しい胸の内を語り、おかしな態度をとるトニーに憤慨したマーニャは、彼の頬を殴りその場を去る。 翌朝、乳搾りをしているマーニャに会ったトニーは、2行から一気に4ページ書いた原稿を読んでもらいたいことを伝えるものの断られてしまう。 数日後、使用人が出て行ってしまい困っていたトニーは、牛乳を取りに来なかったと言って、マーニャがそれを届けに来たために驚く。 台所のストーブも点けられないトニーに呆れたマーニャは、彼のために朝食を作ってあげる。 7章まで書き上げた原稿を見せられたマーニャは、それを読んでほしいことをトニーに伝える。 その内容に感激したマーニャは、トニーに対する考えを変える。 トニーは原稿を書き進め、それに付き合うようにしてマーニャは彼の屋敷に頻繁に顔を出す。 それを知ったフレドリクは苛立ち、マーニャがトニーの屋敷に向かうことをノヴァクは禁ずる。 ドーラの電報を持ってきたビルと街道で出くわしたトニーは、彼女からの友人の新築祝いパーティーに誘われる内容に対し、仕事が忙しくて行けないという返事を出す。 屋敷に戻ったトニーは、マーニャが食事の支度などをしてくれていることを知る。 父とフレドリクが目を光らせているためもう来れないと言うマーニャに、トニーは、本を書けたのは君のお陰だと伝えて感謝する。 既に意識し合う仲だった二人は、暖炉の前でレコードを聴きながら楽しい時を過ごす。 家に戻ろうとしたマーニャだったが、吹雪のためトニーが彼女を連れ戻す。 マーニャがトニーの屋敷に居ることを知ったノヴァクは、彼女を迎えに行こうとする。 そこに現れたフレドリクは、マーニャが戻れないとノヴァクに伝える。 トニーの屋敷に泊まらせるわけにはいかないと言うノヴァクだったが、吹雪が酷いために諦める。 結婚はしないとい言出だしたフレドリクを、ノヴァクは説得しようとする。 吹雪は収まらず、ソファーで寝ようとしたマーニャを、トニーは寝室に案内してベッドを提供する。 その後、寒さを気にしてマーニャのベッドに毛布を掛けてあげたトニーは、起きていた彼女と語り合い愛おしく思うが、紳士的に振る舞いその場を去る。 翌朝、マーニャを起こしたトニーは、吹雪が収まったために迎えに来たノヴァクに気づく。 ノヴァクが自分達のことを疑いマーニャを叱ろうとすると考えたトニーは、彼女が仕方なく帰れなかったことを伝える。 ノヴァクはマーニャを連れて帰り、月曜に結婚式を挙げると彼女に伝える。 その場にいたフレドリクに、マーニャは愛していないと言って結婚できないことを伝える。 ノヴァクに頬を殴られそれは許さないと言われたマーニャは、ポーランド人として親に従うよう強要される。 駅に着いたドーラは屋敷に電話をかけながら、トニーとマーニャの一件をビルから知らされる。 雪のためソリの準備ができ次第出発するとトニーに伝えたドーラは、迎えに来た彼と共に屋敷に向かう。 家族や知人らと共に結婚の準備をするマーニャは心が沈む。 屋敷に着いたドーラはトニーの原稿を読み、実際の彼の感情が書かれているのではないかと考える。 マーニャは屋敷を訪れ、ドーラがいたために驚いて帰ろうとするが引き止められる。 原稿のヒロインがマーニャだと気づいたドーラは、トニーの仕事を手伝ってくれたことで彼女に感謝する。 ドーラは原稿の結末などを聞き、物語の妻のように夫を諦めることは、5年間の結婚の絆があるため自分なら決してしないとマーニャに語る。 マーニャは自分の結婚を知らせに来ただけだと伝えるが、ドーラは止めてほしかったのかを彼女に問う。 動揺するマーニャは、何も言えずにその場を去る。 帰宅したマーニャをノヴァクは問い詰めるが、母親に放っておくように言われて黙る。 マーニャは部屋に戻り、ベールを見ながら思いに耽る。 出かけていたトニーが戻ったため話をしたドーラは、自分から心が離れている彼を引き留めることはできない。 離婚してほしいと言われたドーラは、それはできないことを伝える。 マーニャを愛していると言うトニーは、冬の間、辛い思いをした自分を支えてくれた彼女に比べ、勝手な行動ばかりしたドーラを責めて批判する。 翌日、気まずい思いでドーラとの食事を終えたトニーは、結婚を祝うポーランド式の儀式が始まったことに気づく。 昨晩、マーニャが屋敷に来たことをドーラはトニーに伝える。 マーニャとフレドリクの結婚式が行われ、その後、盛大な祝宴が開かれる。 そこに現れたトニーはマーニャにダンスを申し込み、フレドリクの許可を得て彼女と踊る。 ノヴァクに祝い酒だと言われたトニーは、無言でその場を去る。 初夜の準備をしたマーニャは、酔ったフレドリクを部屋に迎える。 優しさのかけらもないフレドリクは、喜びも感じていない様子のマーニャに、噂になった女と結婚してやったと嫌みを言う。 トニーとの関係で侮辱されたマーニャは、フレドリクと口論になる。 憤慨したフレドリクは、トニーと決着をつけると言って彼の屋敷に向かう。 マーニャが先に屋敷に着きトニーに危険を知らせるが、彼は現れたフレドリクと階段で揉み合いになる。 それを止めようとしたマーニャは階段から落ちてしまい、介抱するトニーに愛を告げられる。 瀕死のマーニャは、父に話しかけるようにトニーを愛していたことを伝える。 その後、家族や神父に見守られながらマーニャは息を引き取る。 ドーラに慰められたトニーは、いつも生き生きしていて目を輝かせていたマーニャのことを語る。 傍にドーラがいないことに気づいたトニーは、丘の向こうから現れ手を振るマーニャの姿を想いながら窓辺に佇む。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク。
処女作の成功で派手な生活をしていた作家のトニー・バレットは、その後スランプとなり経済的に行き詰っていた。
仕方なくトニーは、妻ドーラと共に祖父が残してくれたコネチカットの田舎の屋敷に向かう。
隣人のポーランド人ノヴァクと娘のマーニャの訪問を受けたトニーは、土地を現金5000ドルで買いたいと言われてそれを承諾する。
マーニャと農夫の青年フレドリクの結婚のためにノヴァクが土地を買ったことを知ったトニーは、ノヴァク家に興味を持ちマーニャを題材にして原稿を書く気になる。
そのためトニーは残ることになり、ニューヨークに戻ると言うドーラを一人で旅立たせる。
その後、牛乳を配達して頻繁に屋敷を訪れるマーニャは、トニーの原稿を書く手伝いをすることになる。
愛のないフレドリクとの結婚を望まないマーニャは苦悩し、やがてトニーとの関係が疑われてしまう・・・。
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軽いコメディ・タッチで始まる物語は、悲劇の結末を迎えるというメロドラマである。
主人公の作家よりも、彼の作品の題材になるヒロインに重点を置いた作品で、微妙な女心を描くキング・ヴィダーの繊細な演出が見所の作品。
キング・ヴィダーは本作により、ヴェネツィア国際映画祭で監督賞を受賞した。
*外国映画賞にもノミネートされた。
ポーランド人の生活や気質が興味深く描かれた作品で、移民の彼らの逞しい生き方などを知ることができる。
自堕落とまでは言わないが、骨のない優柔不断そうな雰囲気で登場するゲイリー・クーパー演ずる主人公が、農夫の女性との触れ合いで成長していく姿と共に、ラストで見せる彼の涙は心に沁みる。
幸せを掴むことなく命を落とすヒロインのアンナ・ステン、その結婚相手で、後年は紳士や実力者を演じる印象が強かったため、不躾な農夫役がかえって新鮮なラルフ・ベラミー、主人公の妻ヘレン・ヴィンソン、ヒロインの両親シグ・ルーマンとエスター・デイル、そして主人公らと親しくなる地元住民のウォルター・ブレナンなどが共演している。