霧のロンドン・ヒースロー空港を舞台に富豪夫婦の愛憎と居合わせた乗客たちの人間模様を描く、監督アンソニー・アスキス、主演エリザベス・テイラー、リチャード・バートン、ルイ・ジュールダン、オーソン・ウェルズ、エルザ・マルティネッリ、マーガレット・ラザフォード、マギー・スミス、ロッド・テイラー他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・エリザベス・テイラー / Elizabeth Taylor / Pinterest
・オーソン・ウェルズ / Orson Welles / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:アンソニー・アスキス
製作:アナトール・デ・グランワルド
脚本:テレンス・ラティガン
撮影:ジャック・ヒルデヤード
編集:フランク・クラーク
音楽:ミクロス・ローザ
出演
フランセス・アンドロス:エリザベス・テイラー
ポール・アンドロス:リチャード・バートン
マーク・シャンセル:ルイ・ジュールダン
マックス・ブーダ:オーソン・ウェルズ
グロリア・グリッティ:エルザ・マルティネッリ
ブライトン公爵夫人:マーガレット・ラザフォード
ミード:マギー・スミス
レス・マングラム:ロッド・テイラー
ミリアム・マーシャル:リンダ・クリスチャン
ミルバンク:デニス・プライス
サンダース:リチャード・ワッティス
記者:デヴィッド・フロスト
ジョン・コバーン:ロバート・クート
ジョスリン:ロナルド・フレーザー
ポッター:ジョアン・ベンハム
空港監督官:マイケル・ホーダーン
シュワルツバッカー博士:マーティン・ミラー
英国海外航空/B.O.A.C職員:ランス・パーシバル
医師:ピーター・サリス
ホテルのウェイター:ストリンガー・デイヴィス(マーガレット・ラザフォード夫)
ジャマイカ行きの乗客:クリフトン・ジョーンズ
客室乗務員:モイラ・フレーザー
イギリス 映画
配給 MGM
1963年製作 119分
公開
イギリス:1963年9月4日
北米:1963年9月19日
日本:1963年9月1日
製作費 $4,000,000
北米興行収入 $15,000,000
■ アカデミー賞 ■
第36回アカデミー賞
・受賞
助演女優賞(マーガレット・ラザフォード)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロンドン・ヒースロー空港。
映画プロデューサーのマックス・ブーダ(オーソン・ウェルズ)は、女優のグロリア・グリッティ(エルザ・マルティネッリ)と共に到着する。
英国海外航空/B.O.A.C職員のジョスリン(ロナルド・フレーザー)は、VIPルームの接待担当のサンダース(リチャード・ワッティス)から、今日のVIPの中で、特に女優のフランセス・アンドロス(エリザベス・テイラー)に気を遣うよう指示される。
サンダースにVIPルームに案内されるブーダは、会計士のシュワルツバッカー博士(マーティン・ミラー)との打ち合わせを始める。
出国手続きに梃子摺るブライトン公爵夫人(マーガレット・ラザフォード)は、サンダースの計らいでそれを済ませ、職員のポッター(ジョアン・ベンハム)がVIPルームに案内する。
マイアミに向かうブライトン夫人は、屋敷を維持するために働きに行くことをポッターに話す。
フランセスと大富豪である実業家の夫ポール(リチャード・バートン)はヘリコプターで到着し、補佐のミルバンク(デニス・プライス)とサンダースが二人を迎える。
旅立つフランセスを見送るポールは、彼女に高価なブレスレットを贈りターミナルに到着する。
知人であるギャンブラーのマーク・シャンセル(ルイ・ジュールダン)に気づいたポールは、彼に声をかける。 奇遇だと言ってフランセスに挨拶したマークは、サンダースから、席を隣りに変えると言われる。 機内で眠りたいフランセスは、それを断る。 マークと別れたポールは、ケチなギャンブラーだが、一緒にいれば退屈しない男だとフランセスに伝える。 オーストラリア人である、トラクター製造会社の経営者レス・マングラム(ロッド・テイラー)は、秘書のミード(マギー・スミス)と共にVIPルームに向かい、サンダースが対応する。 会議があるために戻るポールを見送ったフランセスは、実は駆け落ちするつもりだったマークと話す。 その場に現れたギャンブル仲間のジョン・コバーン(ロバート・クート)から声をかけられたマークは、フランセスを紹介する。 ジョンはその場を去り、二人はポールのことを話し、マークから置手紙のことを訊かれたフランセスは、残してきたと答える。 ポールの反応を考えるフランセスは、結婚して13年経つが、彼のことがよく分からないと伝える。 脱税についてシュワルツバッカーと話したブーダは、彼の考えに満足する。 会社が合同モータースに吸収合併される危機となり、資金の調達が困難な状況となっていたレスのことを、密かに惹かれていたミードは気遣う。 その頃、空港監督官(マイケル・ホーダーン)は、霧のために視界が悪く、各便の飛行が1時間遅れることを確認する。 VIPルームに向かったサンダースは、それを乗客に知らせる。 場内放送でそれを知ったフランセスは、手紙のことを気にするマークと落ち着くためにターミナル内を歩く。 記者(デヴィッド・フロスト)から、次回作のことと共にスイスに住む理由を訊かれたブーダは、税金対策のためだと話してしまったグロリアに、次回作に出演させないと伝える。 霧が晴れそうもないことを知った監督官は、対策を考える。 その報告を受けたサンダースは、ランチを用意することを乗客に伝える。 手紙を気にするマークに、メイドに電話をして破らせると伝えたフランセスは、ポールにはニューヨークから手紙を出すことを考える。 一刻を争うレスは、電話が使えないために苛立つ。 屋敷に電話をしたフランセスは、ポールが出たために切ってしまい、マークは、手紙にはニューヨークや自分について書いてあることを確認する。 電話が空いたために、レスはニューヨークに連絡する。 ランチに向かおうとしたフランセスとマークは、出発を確かめる電話があったことをジョスリンから知らされる。 カフェテリアに向かったレスは、何としても今日中にニューヨークに行かなければならないことをミードに伝える。 搭乗便の準備が整い、サンダースは、食事が終わったブライトン夫人を案内する。 今後のことなどを話していたフランセスとマークは、ポールが現れたために動揺する。 ポールが手紙を読んだことを確認したフランセスは、冗談だとしか思えないと言う彼に、マークとニューヨークに向かうことを伝える。 話を聞く気がないポールは、プライベートジェットでパリに行き、そこからジャマイカに向かうことをフランセスに提案する。 搭乗のアナウンスがあり、マークと共にその場を離れようとするフランセスを引き留めたポールは、行くなら殺すと伝えて彼女を脅す。 諦めようとしたフランセスだったが、ポールを無視するマークと共にゲートを通る。 ポールの恐ろしい表情を見て動揺するフランセスは、涙する。 ブーダも、グロリアと共に搭乗する。 霧が晴れないことを知った監督官は、機内の乗客をターミナルに戻す指示を出す。 それを知ったブーダは、コックピットに向かい機長と話す。 ターミナルに戻ったフランセスはポールを捜そうとするものの、マークから、彼が落ち着くまで待つべきだと言われて納得する。 今日中に出国しなければ重税を課せられるブーダは焦り、B.O.A.C職員(ランス・パーシバル)に、何とか飛び立つ方法を相談する。 ミードから宿泊のためのホテルの部屋を用意したことを知らされたレスは、仕方なく違法小切手を使ったと言われ、破滅を覚悟して嘆く。 レスは、部屋に向かい落ち着いて電話をすることをミードから提案される。 ポッターから部屋の用意ができたことを知らされたブライトン夫人は、その前にバーに寄る。 ジョスリンのアナウンスで出発カウンターに呼ばれたマークは、その場で待っていたポールと話す。 ポケットに隠してあった銃をテーブルに置いたポールは、手切れ金として1万ポンドの小切手を切り、フランセスと縁を切るという内容で一筆書くことを要求する。 何度か同じ経験をしたが、今回は愛と魂があると言うマークは、100万でも受け入れないことをポールに伝える。 金で解決しようとすることがフランセスの心が離れた原因であり、雑貨屋のおもちゃでも、自分が選んだ者なら彼女は喜んだと言われたポールは、フランセスがマークを選んだ理由を考える。 罵るポールの言葉を甘んじて受け入れるマークは、自分を殺してもフランセスは戻らないと伝える。 相手が自分のような男なら世間から同情されるとポールに伝えたマークは、小切手を受け取らずにその場を去る。 ポールは小切手を破り立ち去り、マークは彼の姿を見つめる。 ポールに会ったことをフランセスに知らせたマークは、正直な気持ちを話し、心配する彼女にポールが帰ったことを伝える。 ブライトン夫人に続き、フランセスとマークもホテルに到着し、部屋に案内される。 既に着いていたブーダは、グロリアがジョンにカードで負けていることを知り、税金の件を考えながら嘆く。 シングルームを用意されたマークは、ウイスキーを持ってフランセスのスイートルームに向かう。 二人は愛を確かめ、フランセスが現金を持参していないことを知ったマークは、今後、どうして生活するかを考える。 父の遺産が30万ポンドあると言うフランセスは、マークを驚かせる。 金が目当てではないと言うマークは、魅力的で美しい女性だったことが愛した理由だとフランセスに伝える。 口説く声がいつもと違うために、思わず笑ってしまったフランセスは、本当のあなたを愛しているとマークに伝える。 フランセスとマークは、1時間後に食事をする約束をする。 ロビーに向かったマークは、ジョンのゲームに加わる。 グロリアの部屋に向かったブーダは、その場にいたシュワルツバッカーから素晴らしい解決策が見つかったと言われ、書類にサインを求められる。 グロリアの名でプロダクションを作り、利益をそれに譲渡して彼女と結婚するよう指示されたブーダは、それに従う。 ニューヨークからの電話を受けたレスは、不注意で支払い能力のない小切手を切ってしまったことを伝え、ロンドン支社への口利きを求めるものの、それを断られる。 会社を失うことになったレスは、ミードに励まされるものの諦めるしかなかった。 恋人ミリアム・マーシャル(リンダ・クリスチャン)に連絡して食事に誘ったレスは、都合が悪いと言われたために電話を切る。 ホテル内で食事をすることにしたレスは、ミードを誘う。 フランセスの部屋に現れたポールは、彼女の前で銃を落としてしまい、引き返したことを彼女に伝える。 考えは変わらないと言われたポールは、自分1人では生きていけないので、許しを請うために来たことを伝える。 今はただの男で、自分の言葉で話していると伝えたポールだったが、フランセスに受け入れてもらえない。 愛を証明する方法を訊かれたフランセスは、自分をニューヨークに行かせてほしいとポールに伝える。 フランセスがマークと同居するつもりだと知ったポールは憤慨し、まだ関係を持っていないと言う彼女の言葉を信じることができない。 セックスではなく愛を求め合っていると言うフランセスは、マークは自分を求めてくれているとポールに伝える。 マークと自分を侮辱するポールを追い出そうとしたフランセスは、離婚を望むか訊かれ、望んでいると答える。 納得しないフランセスに憤慨したポールは興奮し、ドアの鏡を割り彼女の左手首を傷つけてしまう。 謝罪したポールは医師を呼び、自分を抑えきれなかったことを悔やむ。 ゲームに買ったマークは引き揚げようとするするが、ジョンの要望でもう一勝負することになる。 医師(ピーター・サリス)の手当てを受けたフランセス は、ニューヨークで治療することを勧められる。 医師から、合同モータースの株は買いか訊かれたポールは、チャンスはあると答える。 ウイスキーを飲んだポールは、そこに現れたマークに、君の酒を盗んだと伝える。 フランセスに別れを告げに来たとマークに伝えたポールは、彼女と最後の言葉を交わしてその場を去る。 戻ってこないとポールが約束したことをマークに話したフランセスは、手の傷について訊かれ、ポールが来る前に転んで怪我をし、彼が医師を呼んでくれたと答える。 明日の出発の時間を確認したフランセスは、今夜は一緒に過ごしたいと言うマークを拒む。 ポールと同じように自分のことを所有物のように語るマークの言葉を嫌ったフランセスは、愛され必要とされたいと伝える。 帰ってほしいと言われたマークは、愛を確かめてその場を去り、後悔したフランセスは彼の名を呼ぶ。 食事を終えたレスは、ロビーに現れたポールに気づき、ミードから、自分と同じような成功者だと言われるものの、足元にも及ばない存在だと伝える。 無給で働いてもいいと言うミードの気持ちをありがたく思うレスは、3000人の社員と共に他の職場を探すべきだと伝える。 何のために働いてきたのかを考えるレスは、気分を変えてミードと飲み明かそうとするが、そこにミリアムが現れる。 気を利かせたミードは、明日のことをレスに確認して、二人を気にしながらその場を去る。 仕事のことが気になるミリアムは、詳しい話は部屋ですると言うレスと共にエレベーターに乗る。 二人が部屋に向かう様子を見ながら帰ろうとしたミードは、手紙を書くポールに気づき声をかける。 マングラム・トラクターの経営者レスの秘書だと言われたポールは、合同モータースが乗っ取った会社だと気づき、明日が期限だということを知る。 買収されるのだから優良企業だろうと言うポールに、会社のバランスシートを見せたミードは、会社を手放したくないはずの社長は戦うべきだと伝える。 合同モータースは自分にとってもライバルだと言うポールに、裏切り者が出て、違法小切手を切らざるを得なかったことを話すミードは、霧のために飛び立てず社長が気の毒だと話す。 動揺し涙しながら話すミードは、社長を愛しているようだねと言われ、会社のためを想っているとポールに伝える。 自分も13年前に小さな会社で戦い、それを守ったと言うポールは、窮地を乗り越えて成功した時に、妻と恋に落ちてしまったことを話す。 ミードから必要な資金が15万3000ドルほどだと聞き、小切手にサインしたポールは、細かい金額は自分で記入するようにと伝えてそれを渡す。 3日後には返済するとポールに約束したミードは、彼が有名な実業家アンドロスであることを確認してその場を去る。 ベッドで眠っていたフランセスは、謝罪に来たマークとの愛を確かめるものの、彼が去った後、考えを巡らせる。 ミリアムと過ごしていたレスは、現れたミードから小切手の裏書を求められる。 内容を確認するようにと言われたレスは、アンドロスの小切手だったために驚き、金額はミードが記入したことを知り興奮する。 二人が突然、仕事のことを話し始めたために居場所がなくなったミリアムは、黙ってその場を去る。 喜ぶレスからニューヨークに電話をかけることを指示されたミードは、彼の笑顔を見ながら微笑む。 手紙を書きフロントに預けたポールは、待っていた運転手を帰してその場を離れる。 ロビーのソファでうたた寝をしていたブライトン夫人は、ウエイター(ストリンガー・デイヴィス)から声をかけられ、フロリダで過ごす話をする。 旅立ちたくない夫人は、屋敷の近くを通ったことがあるウェイターに愛着があることを話し、眠るために部屋に向かう。 翌朝、霧が晴れてターミナルに向かうマークは、フランセス宛の手紙を渡される。 ポールからの手紙だと気づいたマークは、それをフランセスに見せるものの、宛先はニューヨークなので、到着してから渡すと伝えてる。 記者に囲まれたブーダとグロリアは、プロポーズの内容などについて訊かれる。 ブライトン夫人は、サンダースに見送られて搭乗口に向かう。 ある屋敷のポスターを見て気に入ったブーダは、その場をロケ地にすることを決める。 そこに現れたブライトン夫人は、ポスターの自分の屋敷がロケで使われ賃貸料が入ることを知り、シュワルツバッカーから、1日当たり300ポンド払うと言われて驚く。 契約書を受け取ったブライトン夫人は、搭乗を急がせるサンダースに、自分抜きで飛び立ってほしいと言居ながら屋敷のポスターを見つめる。 ターミナルに着いたマークは、搭乗券を取りに行くことをフランセスに伝える。 ミードに指示を与えたレスは彼女にキスし、昨夜これを伝えたかったと言って旅立つ。 カフェにいたポールに気づいたフランセスは、彼に話しかける。 二日酔いで朦朧とするポールのことを心配するフランセスは、自分を心から愛していたと言われ、別人のような彼に別れを告げる。 マークの元に向かい、ポールの手紙を読んだフランセスは、自分は行けないと伝える。 手紙の内容を知ったマークは、ポールが死を覚悟していることを知り、脅しだと思い苛立つ。 本気だと言うフランセスはその場を去ろうとするが、マークに引き留められる。 ポールが自分を必要としていると考えるフランセスに、自分も同じだと伝えたマークは、彼女から一人で生きていけると言われ、互いの愛を確かめる。 愛してはいるが二度と会えないと伝えたフランセスは、マークから酷い仕打ちだと言われるものの、その場を去る。 売店の前で佇むポールを見つけたフランセスは、屋敷に連れて帰ってほしいと伝えるものの、哀れみは受けたくないと言う彼に断られる。 哀れみではないと言うフランセスは、互いが必要としていると伝えるものの、信じてもらえない。 帰りたいと言うフランセスの言葉を信じて納得したポールは、努力してみると伝える。 努力すれば必ず成功する人物だと言うフランセスは、自分も努力する、もう疲れたと伝えて、ポールと肩を寄せ合いその場を去る。 マークは、フランセスとポールが去る姿を見つめる。 新たな一日が始まり、ジョスリンと打ち合わせをしたサンダースは、名簿にあるVIPを迎える。 タクシーに乗ったマークは、フランセスを抱き寄せる。
...全てを見る(結末あり)
機内の席に着いたブライトン夫人は、隣の席の男性に親切にしてもらう。
*(簡略ストー リー)
ロンドン・ヒースロー空港。
実業家である大富豪のポール・アンドロス夫人で女優のフランセスは、ギャンブラーであるマークと駆け落ちすることを考えていた。
ポールに見送られたフランセスは、何も知らない彼に手紙を残してきたことをマークに伝える。
脱税を考える映画監督ブーダと女優のグロリア、会社の買収を阻止するためにニューヨークに向かおうとする、トラクター会社の経営者で青年実業家レスと秘書のミード、そして、屋敷が維持できないためにフロリダで働くことを考えるブライトン侯爵夫人らは、VIPルームで搭乗を待つ。
霧のために出発が遅れたフランセスは、手紙を読み戻って来たポールと話し合うことになるのだが・・・。
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脚本家のテレンス・ラティガンが、友人だったローレンス・オリヴィエ夫人ヴィヴィアン・リーが、不倫関係にあったピーター・フィンチと駆け落ちを考えるものの、霧のために空港の飛行が遅れたことで、彼女がローレンス・オリヴィエの元に戻ったという出来事を基にして書き上げた物語。
富豪夫妻の夫婦関係の亀裂を中心に、ロンドン・ヒースロー空港のVIPルームに集う人々の人間模様を描いた作品。
主人公夫婦の愛のもつれ自体が興味深い内容であるため、面白味はあるものの、周囲の人々の出来事が邪魔してしまっているところが残念な気がする。
富豪夫婦の亀裂と修復、青年実業家と秘書の関係だけを重点に描いた物語の方がよかったようにも思える。
とは言え、当時、存在した英国海外航空/B.O.A.C職員の接待の様子や、ベテラン俳優のユーモアをまじえた演技なども楽しめる作品には仕上がっている。
特に、第36回アカデミー賞で助演女優賞を受賞したマーガレット・ラザフォードのコミカルで味わいのある演技は見事であり、終盤で籠城する、実生活の夫であるホテルの老ウエイター役のストリンガー・デイヴィスとの微笑ましいシーンは印象に残る。
主演のエリザベス・テイラーは、愛に迷う富豪夫人を好演し、3か月前に公開された前作「クレオパトラ」(1963)でも共演した夫役のリチャード・バートンとは翌年、結婚することになるため、当時の二人の関係を考えながら観ると一層興味深い。
主人公との駆け落ちを考えるギャンブラーであるプレイボーイのルイ・ジュールダン、脱税を考える映画監督のオーソン・ウェルズ、その愛人である女優のエルザ・マルティネッリ、広大な屋敷の維持のために苦悩する公爵夫人のマーガレット・ラザフォード、企業買収で窮地に立たされる青年実業家ロッド・テイラー、彼を密かに愛する秘書のマギー・スミス、彼の恋人リンダ・クリスチャン、ポール(リチャード・バートン)の補佐デニス・プライス、B.O.A.CのVIPルーム接待担当者リチャード・ワッティス、その部下ロナルド・フレーザー、ブーダ(オーソン・ウェルズ)に質問する記者のデヴィッド・フロスト、マーク(ルイ・ジュールダン)のギャンブラー仲間のロバート・クート、B.O.A.Cの職員ジョアン・ベンハムとランス・パーシバル、空港監督官のマイケル・ホーダーン、ブーダの会計士マーティン・ミラー、主人公の傷の手当てをする医師のピーター・サリス、ホテルのウェイター、ストリンガー・デイヴィス(マーガレット・ラザフォードの夫)、ジャマイカ行きの乗客クリフトン・ジョーンズ、客室乗務員のモイラ・フレーザーなどが共演している。