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16歳の合衆国 The United States of Leland (2003)

ガールフレンドの弟を刺殺してしまった少年と家族の苦悩を描く、製作、出演ケヴィン・スペイシー、監督、脚本マシュー・ライアン・ホーグ、主演ライアン・ゴズリングドン・チードルクリス・クラインジェナ・マローンレナ・オリンミシェル・ウィリアムズ他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:マシュー・ライアン・ホーグ

製作
ケヴィン・スペイシー

バーニー・モリス
ジョナ・スミス
パーマー・ウェスト
製作総指揮
マーク・ダモン

スチュワート・ホール
サミー・リー
脚本:マシュー・ライアン・ホーグ

撮影:ジェームズ・グレノン
編集:ジェフ・ベタンコート
音楽:ジェレミー・エニック

出演
リーランド・P・フィッツジェラルド:ライアン・ゴズリング

パール・マディソン:ドン・チードル
アレン・ハリス:クリス・クライン
ベッキー・ポラード:ジェナ・マローン
メアリーベス・フィッツジェラルド:レナ・オリン
アルバート・T・フィッツジェラルド:ケヴィン・スペイシー
ジュリー・ポラード:ミシェル・ウィリアムズ
ハリー・ポラード:マーティン・ドノヴァン
カレン・ポラード:アン・マグナソン
エイシャ:ケリー・ワシントン
アンジェラ・カルデロン:シェリリン・フェン
チャーリー:マット・マロイ
ベンゲル:ウェスリー・ジョナサン
ギレルモ:マイケル・ペーニャ
ライアン・ポラード:マイケル・ウェルチ
エルデン:ロン・カナダ
判事:クライド・クサツ

アメリカ 映画
配給 パラマウント・クラシックス

2003年製作 104分
公開
北米:2004年4月2日
日本:2004年8月7日
北米興行収入 $343,820


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
16歳の少年リーランド・P・フィッツジェラルド(ライアン・ゴズリング)は、手から血を流して街道を歩く。

リーランドのガールフレンド、ベッキー・ポラード(ジェナ・マローン)は、部屋でドラッグを注射していた。

父ハリー(マーティン・ドノヴァン)が現れ、弟ライアン(マイケル・ウェルチ)の居場所を聞かれたベッキーは答えられない。

演劇の道に進むことを考えるベッキーの姉ジュリー(ミシェル・ウィリアムズ)は、同居する恋人アレン・ハリス(クリス・クライン)にその才能を認められ、彼は、ジュリーの母カレン(アン・マグナソン)にそれを話す。

ニュースを見ていたベッキーは、事件現場で呆然とする父ハリーの姿を確認する。

ジュリーとアレンと共に帰宅したカレンは、夫ハリーからの電話を受ける。

帰宅したリーランドの母メアリーベス(レナ・オリン)は、リーランドの手の傷に気づき、過ちを犯したと言われる。
...全てを見る(結末あり)

少年更生施設の教師で作家志望のパール・マディソン(ドン・チードル)は、16歳の少年が知的障害の子を刺殺したことを知らされ、担当することになるだろうという上司エルデン(ロン・カナダ)からの連絡を受ける。

ハリーはカレンと共に悲しみ、アレンはジュリーに寄り添うしかなく、ベッキーはリーランドのことを想い呆然とする。

逮捕されたリーランドは施設に向い、息子の無実を信じるメアリーベスだったが面会を許されない。

リーランドが連行される姿をニュース映像で見たパールは、動揺もせず無表情の彼の表情に注目する。

翌朝パールは、新人の事務員エイシャ(ケリー・ワシントン)に挨拶する。

同僚からリーランドが移送されてくると言われたパールは、彼の父親が著名な作家アルバート・T・フィッツジェラルド(ケヴィン・スペイシー)だと知らされて驚く。

ギレルモ(マイケル・ペーニャ)に声をかけられたリーランドは何も語らず、現れたパールに挨拶され、彼の授業を受けることになる。

授業を終えたリーランドは、何かを書きたいためノートを持ち帰っていいかをパールに聞くが、規則で認めてもらえなかった。

勤務を終えて帰ろうとしたパールは、リーランドのノートの表紙に”リーランド・P・フィッツジェラルドの合衆国”と書かれていることに気づく。

ページを開いたパールは、”彼らが何を求めているか知っている”と書かれていたため、規則違反と知りながら、ノートとペンを彼に渡す。

監房に戻ったリーランドは、今回の件を周囲がどう思うかを考え、ベッキーを想いながらノートに綴る。

荷物をまとめたベッキーは、ジュリーに何も語らず家を出る。

パリ在住のアルバートは帰国し、報道陣を避けて家を抜け出したメアリーベスに声をかける。

バスを待つベッキーは、CDショップでリーランドと出会った時のことを思い出す。

エイシャに惹かれたパールは、彼女をアパートに呼び好意を伝える。

元ボーイフレンドのケヴィンの家に向かったベッキーは、ドラッグを打つ。

エイシャと愛し合ったパールは、作家としてリーランドについて書くつもりだと伝える。

リーランドを特別扱いすることを、パールは上司エルデンから禁じられる。

パールは、リーランドと少しでも長く接していたいため、裁判での罪状認否では黙秘するよう伝える。

ベッキーのことを考えたリーランドは、彼女からから知的障害児である弟のライアンを紹介されたことを思い出す。
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何度かベッキーと共にライアンを家に送ったリーランドは、ある日、道で見かけた彼を連れて家に向かい、ベッキーの友人だとハリーに伝えて挨拶する。
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ようやく普通の生活に戻ったハリーは、保管してあった銃を車に乗せて裁判所に向い、建物に入るリーランドを見つめる。

初犯で成績も優秀なリーランドだったが、犯した罪のは重く、判事(クライド・クサツ)は、彼を母親の元に戻す要請を却下する。
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アレンに家まで車で送ってもらったリーランドは、彼が家を出てポラード家で暮らしている理由などを聞かされる。
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リーランドに会ったパールは、彼の考えていることや、自分が恋人以外の女性と付き合っていることなどを聞かれ、それについて答える。

裁判を傍聴したアルバートは、息子リーランドとの関係をメアリーベスに問い質される。
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家に着き、アレンにお礼を言ったリーランドは呼び止められ、ベッキーが特別学校に通っている理由を知らされる。

ドラッグの問題を抱えているベッキーは、売人である年上のケヴィンに恋をして、去年、家出をして大騒ぎになったということだった。

母カレンがジュリーを連れ戻しに行ったのだが、ケヴィンが今日、出所したとアレンは話す。
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アルバートが宿泊するホテルを探し会いに行ったパールは、芝居をして彼に近づくものの、作家志望だと気づかれてしまう。

リーランドのことを聞いたアルバートは、自分達に普通の親子関係のようなものがないことをパールに伝える。

自分が本の題材を探すために来たことを見破られてしまったパールは、リーランドを利用する気はないと伝えるが、アルバートは席を立つ。

翌日、リーランドに会ったパールは、彼が6歳の時からアルバートとは疎遠だと言うことを知る。

アルバートにパリに来るよう言われたリーランドは、ニューヨーク経由で現地に向かおうとしたことがあった。

しかし、ニューヨークに残ることにしたリーランドはアルバートに電話し、宿泊するホテルを探す。

子供だけを泊めてくれるホテルはなく、映画館で過ごすことにしたリーランドは、ある家族に出会う。

カルデロン夫人、アンジェラ(シェリリン・フェン)に声をかけられたリーランドは、富豪である彼女の家に招待される。

リーランドは、アンジェラと過ごす時に安らぎを感じた。

その後も、世界を見るべきだと言うアルバートから送られてくる航空券でニューヨークに寄る機会があり、アンジェラの家を訪ねたこともあり、リーランドは色々な体験をした。

苦しむジュリーの姿を見ていられないアレンは、ケヴィンの家に押入り彼を叩きのめし、ベッキーを連れて帰る。

パールとリーランドは、ベッキーのことについても話す。

アレンに感謝したジュリーは、共にアリゾナの大学に行くはずにも拘らず、アイオワの大学に願書を提出したことを彼に問われる。

愛してはいると言うジュリーは、これ以上、関係を続ける気になれないことをアレンに伝えて謝罪する。
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夜中にベッキーに呼び出されたリーランドは、ケヴィンを愛しているのかを彼女に問う。

ベッキーは、自分を信じ守ってほしいとリーランドに伝える。
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ロサンゼルスにいる恋人に、エイシャとの関係を知られてしまったパールは、恋人に見限られる。

その件を質問され戸惑うパールは、自分が恋人を裏切る男だと認めた上で、リーランドにベッキーとの関係を聞く。

ベッキーが他の男を愛したため、その怒りで事件を起こしたとパールに言われたリーランドは、それを否定する。

以前、何も感じないと言ったのは真実ではなく、人を見ていると、当人以上に不幸になり悲しみを感じてしまうことをリーランドはパールに伝える。

ライアンの葬儀が行われ、取材を申し込む記者を追い払ったハリーは、苦しみは一生続くと言って悲しむカレンを抱きしめる。

同じ施設のベンゲル(ウェスリー・ジョナサン)から、更生させられても全てを失うため、結局はそれが無意味な行為だとリーランドは言われる。

エイシャも傷つけてしまったパールは、彼女に謝罪するものの許してもらえない。

以前、カレンの車の修理をした整備工場に押入ったアレンは、銃を手にして現金を奪う。

上司エルデンに呼ばれたパールは、指示を無視してリーランドに会っていたことを責められ、彼の担当を外される。

その件をリーランドに伝えたパールは、彼からノートを渡され、まだニューヨークのことなどを話していないため、”理由”が見つかるかもしれないと言われる。

自分がそれを理解することが重要ではなく、罪を犯したことで全てを諦めていることを考え直すよう、パールはリーランドに助言する。

家に着く手前でアレンは警官に逮捕され、それに気づいたジュリーとカレンは驚く。

弁護士をつけると言うカレンから何があったのかを聞かれたアレンは謝罪し、街を出たかったと言いながら連行される。

アルバートの元に向かったパールは、上司に報告したことを批判する。

リーランドのことを書かせるつもりはないと言うアルバートは、今回の件を本の題材にする気だと考えるパールの言葉を否定する。

パールはリーランドを助けたいだけだと伝え、息子に無関心なアルバートを重ねて批判する。

過ちを犯したことを認めるアルバートは、だからこそ本が書けると伝える。

哀れな男だと言い残して立ち去ろうとするパールに、作家にはなれないと伝えたアルバートだったが、パールは、そうだとしてもまともだと答えてその場を去る。

ジュリーと話したベッキーは、自分は悪いのではなく、過ちを犯しただけだと言って後悔していることを伝える。

これ以上、辛い思いをしたくないベッキーは、更生施設に戻ることを伝え、今度こそドラッグを断ち切ってみせるとジュリーに約束する。

リーランドがあんな事件を起こすとは思わなかったと言うベッキーは、知っていたとは思わないと考えてくれないのなら死ぬとジュリーに伝える。

大事な弟のライアンを愛していたと言うベッキーを、ジュリーは抱きしめる。

恋人に謝罪の電話をしたパールは、昼食のフルーツをカットするナイフがなくなっていることに気づく。

施設に入れられたアレンはナイフを手にし、ベンゲルとバスケットボールをしていたリーランドに近づく。

アレンに気づいたリーランドは声をかけるが、次の瞬間に刺される。
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ベッキーと口論になった二日後にアルバートからニューヨーク行きの航空券が届き、アンジェラに再会できることを楽しみにしながらリーランドは旅立つ。

しかし、変化を感じたリーランドは、アンジェラが夫に裏切られ離婚したことを知る。

ベッキーのことを話したリーランドは、愛する人を失うのは誰にでも起きることで、それが人生だとアンジェラに言われる。

アンジェラの深い悲しみを癒すことができないリーランドは街に戻る。

自分が嘲笑や同情の対象でしかないことに気づいていたライアンが苦しんでいることを知ったリーランドは、眠れない日が続き、悲しみを追い払いたい彼は悩む。

そして、事件の日のことを、リーランドは何も覚えていない・・・。
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アレンは取り押さえられ、愕然とするパールを前に、これで全てが終わったと呟く。

その後、恋人の元に向かうパールは、後悔していると語ったリーランドのことを思い出しながら彼のノートの内容を確認する。

考えを巡らせながらロサンゼルスに到着したパールは、恋人に迎えられる。
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木が倒れている道を避けようとしないライアンは、自転車が枝に引っかかってしまう。

その様子を見ていたリーランドはライアンを抱きしめ、動揺する彼に、心配することはないと言って安心させる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
16歳の少年リーランド・P・フィッツジェラルドは、ガールフレンドのベッキーの弟で知的障害者のライアンを刺殺してしまう。
逮捕され少年更生施設に入れられたリーランドは、作家志望の教師パールの指導を受けることになる。
リーランドが著名な作家アルバート・T・フィッツジェラルドの息子だと知ったパールは、彼を題材にした作品を書こうとして、規則違反と知りながらリーランドとの面会を繰り返す。
その間、ベッキーの家族の悲しみは消えることなく、息子リーランドの無実を信じるメアリーベスは苦しみ、普通の父子関係でなかったアルバートも滞在先のパリから帰国する。
興味だけでリーランドと接していたパールだったが、全てを諦める彼の心の奥底に何があり事件を起こしたのかを探り始める・・・。
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まず、演出と脚本を担当したマシュー・ライアン・ホーグが、撮影当時まだ28歳だったことに驚く。

理知的ではあるが、普通の父子関係などを知らずに育った少年の苦悩と、彼と被害者の家族の悲しみなどを切実に描く深い物語を、人生経験の浅いマシュー・ライアン・ホーグが見事に表現した問題作でもある。

マシュー・ライアン・ホーグが、その後に作品を発表していないことが非常に残念だ。

もともと問題を抱えていた家族に襲いかかる悲劇は、そんな時だからこそ助け合い苦難を乗り切る方向に向かおうとすることを観客は期待する。
しかし、その雰囲気が伝わるのは僅かで、このような家族の危機に接し、更に不安定な状況に追い込まれる現実を描いているところに注目したい。

人気だけでなく実力派スターとして評価の高いライアン・ゴズリングは、人生の迷いを拭い去ることができずに日々を過ごす少年を見事に演じている。

自らの執筆の参考にするつもりで主人公に接しながら、全てを諦めている彼を救おうとする更生施設の教師を好演するドン・チードル、少年の運命に大きく関わる、被害者家族と同居する青年クリス・クライン、ドラッグ依存で苦しむ主人公のガールフレンドで被害者の姉ジェナ・マローン、著名な作家である主人公の父親ケヴィン・スペイシー、母親レナ・オリン、被害者の姉ミシェル・ウィリアムズ、その両親マーティン・ドノヴァンアン・マグナソン、パール(ドン・チードル)と親交を深める更生施設職員ケリー・ワシントン、主人公が慕うニューヨークの婦人シェリリン・フェン、更生施設の収容者ウェスリー・ジョナサンマイケル・ペーニャ、主人公に刺殺される被害者の少年マイケル・ウェルチ、更生施設職員ロン・カナダ、判事クライド・クサツなどが共演している。


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