1950年に発表された、ジャック・トレヴァー・ストーリーの小説”The Trouble with Harry”を基に製作された作品。 秋深まる山間の村で起きた男性死亡事件をコミカルに描く、製作、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演エドマンド・グウェン、ジョン・フォーサイス、シャーリー・マクレーン、ミルドレッド・ナトウィック他共演のコメディ。 |
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・アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ジャック・トレヴァー・ストーリー”The Trouble with Harry”
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影:ロバート・バークス
編集:アルマ・マクローリー
音楽:バーナード・ハーマン
出演
エドマンド・グウェン:アルバート・ワイルス船長
ジョン・フォーサイス:サム・マーロウ
シャーリー・マクレーン:ジェニファー・ロジャース
ミルドレッド・ナトウィック:アイヴィー・グレイヴリー
ミルドレッド・ダノオック:ウィグス夫人
ローヤル・ダノ:カルヴィン・ウィグス保安官補
ジェリー・メイザース:アーニー・ロジャース
ドワイト・マーフィールド:グリーンボウ医師
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1996年製作 99分
公開
北米:1955年10月3日
日本:1956年2月26日
製作費 $1,200,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
バーモント州。
秋深まる小さな村、森の中で奇妙な事件が起きる。
4歳の男の子、アーニー・ロジャース(ジェリー・メイザース)は、森に遊びに行った際に、男の死体を見つける。
ウサギを撃つために森にいた元船長のアルバート・ワイルス(エドマンド・グウェン)は、空き缶や禁猟区域の看板に命中した自分の弾を確認しながら歩いていた。
そして、ワイルスは男の死体を見つけ、自分が誤って撃ち殺したものと思う。
死体を隠そうとしたワイルスだったが、そこに、アイヴィ・グレイヴリー(ミルドレッド・ナトウィック)が現れる。
悪気はなかったと、動揺するワイルスに同情するアイヴィは、彼を午後のお茶に誘いその場を立ち去る。
その直後、アーニーと母親のジェニファー(シャーリー・マクレーン)が現れ、彼女は、死体の男を知り合いの”ハリー”だと確認する。 ジェニファーは何も気にしていない様子で、アーニーにただ忘れるようにと言ってその場を引き上げる。 次に、読書をしながら散歩をする、ハリーの死体に気づきもしないグリーンボウ医師(ドワイト・マーフィールド)、そして現れた浮浪者は死体の靴を盗んでいく。 売れない青年画家サム・マーロウ(ジョン・フォーサイス)は、雑貨店を経営するウィグス夫人(ミルドレッド・ダノオック)の店先に、自分の絵を置いてもらっていた。 通りがかったある老紳士が、マーロウの絵に興味を持つのだが、彼は、店に来ていたアイヴィやウィグス夫人との話しに夢中になっていたため、老紳士はその場を立ち去ってしまう。 その後、マーロウは森でスケッチを始め、ハリーの死体を見つける。 立ち去ろうとしたマーロウだったが、死に顔のスケッチを始めて、現れたワイルスから事情を聞く。 マーロウは、死体の発見を警察に届ける義務も考えるが、その場はワイルスとハリーを隠し、彼を知るジェニファーの様子を窺いに行こうとする。 再び読書するグリーンボウ医師が現れるが、彼は死体に躓くものの、ハリーが死んでいるとは気づかずに立ち去ってしまい、マーロウとワイルスは死体を隠す。 ジェニファーの家に向かったマーロウは、ハリーが彼女の夫で、アーニーが持っていたウサギは、ワイルスが撃ったものだということを知る。 ハリーはジェニファーの2度目の夫で、最初の夫はハリーの弟ロバートだった。 ロバートが亡くなったために、ジェニファーを気の毒に思ったハリーは彼女と結婚した。 しかし、ハリーは星占いでジェニファーを捨てることを決めてしまう。 ジェニファーはショックを受け、名前まで変えて田舎に潜んでいたのだが、今朝、ハリーが突然現れ家に入ろうとした。 咄嗟にジェニファーは牛乳ビンでハリーを殴り、彼は”死んでも妻を連れ帰る”と言いながら、ふらついて森の中に消えて行ったというのだ。 その日の午後、ワイルスは、約束の時間にアイヴィの家を訪ねてお茶を楽しむが、そこにアーニーがウサギを持って現れる。 ワイルスは、そのウサギは自分が撃ったものだとアーニーに言われる。 その後、マーロウとワイルスは、ハリーを埋めるために森に行き穴を掘り始める。 死体を苦労して埋めた二人だったが、ワイルスは自分が撃った弾の数から、ハリーを殺していないことに気づく。 仕方なく二人は死体を掘り起こし、ハリーに銃弾の傷ではなく、額に何かで殴られた痕があることを確認する。 マーロウは、誰が犯人かをワイルスと考えながら再び死体を埋める。 その後、ワイルスとアイヴィは親密になっていくが、彼女は、ハリーに森の中で襲われ、ハイ・ヒールのかかとで彼を殴り殺したと告白する。 彼女の正統防衛を証明するためには、死体を確認する必要があり、ワイルスは、アイヴィが死体を掘り起こすのを手伝う。 その頃、ジェニファーの家にいたマーロウだったが、二人はお互いを意識し始めていた。 そこに、ワイルスとアイヴィが、死体を掘り起こした結果の報告に現われる。 アイヴィは、自分がハリーを殺したことを二人に話し覚悟を決め、ウィグス夫人の息子で保安官補のカルヴィン(ローヤル・ダノ)に連絡して欲しいことを伝える。 しかし、ハリーの事件が公になると、彼とジェニファーとの結婚が公になることに気づいた4人は、森に向い、再び死体を埋める。 森から帰る途中、ウィグス夫人がマーロウの絵が売れたことを知らせる。 マーロウは、絵の買主の富豪に現金を請求せずに、今回の事件に関わる人々に好きなものをプレゼントして、彼自身はそれを内緒にしてジェニファーに求婚する。 ジェニファーは少し考えようとするが、そこにカルヴィンが現れ、捕まえた浮浪者が死体から靴を盗んだという話をする。 州警察に連絡していたカルヴィンは、マーロウの書いた死体の人相に似たスケッチを見つけてしまう。 家に帰ったジェニファーは、マーロウの求婚を受け入れ、彼が富豪に何を頼んだのかを耳打ちされる。 ジェニファーはそれが役に立ちそうだと納得し、二人はワイルスとアイヴィに祝福される。 しかし、今度はジェニファーの夫ハリーの死を証明する必要があり、4人は再び死体を掘り起こすことになる。 同居はしていなかったとはいえ、ハリーはジェニファーの夫であり、彼女に好意を寄せるマーロウも彼を殺す動機があることに、4人は死体を掘り起こしながら気づく。 4人は相談した結果、泥だらけの死体と衣服をきれいに洗い、元通りにすることを考える。 そこにグリーンボウ医師が現れ、死体を見て驚くが、自分の夫が事故に遭って死んだことをジェニファーは伝え、彼女の家で死体の検死することになる。 ハリーの体を洗い衣服を洗濯した4人だったが、カルヴィンがマーロウのスケッチを持って事情を聞きに来る。 マーロウは言い逃れをしてカルヴィンを追い払おうとするが、そこにグリーンボウ医師が現れる。 ジェニファーの機転でグリーンボウ医師を浴室に向かわせ、カルヴィンの気をそらす。 カルビンの車をいじっていたワイルスが部屋に戻り、怯えて出て行ったと思われた彼は、実は世界の海を航海したことなどない、イーストリバーの引き船の船長だったと告白する。 アイヴィは、そんな正直なワイルスに益々惹かれていく。 そしてワイルスは、カルヴィンの車からハリーの靴を盗み出したことを知らせる。 その後、グリーンボウ医師は、ハリーの死因が心臓発作だったと判断する。 グリーンボウ医師は、ジェニファーからハリーの身に起きた一日の出来事を知らされ、それを理解できずに、動転してその場を去る。 4人は、昨日も今日も区別のつかない幼いアーニーに、ハリーを見つけさせようと考える。 翌日、それに成功し、一件落着した4人に笑顔が戻る。 ようやく安堵したワイルスは、マーロウが絵の買主に注文した物が何かを尋ねる。 それはなんと”ダブルベッド”だった。 そして、ようやくハリーの災難は終わる。
...全てを見る(結末あり)
★ヒッチコック登場場面
上映から約22分、青年画家マーロウ(ジョン・フォーサイス)の絵を見ている、老紳士のリムジンの後ろを歩いていく、コートを着た男性がヒッチコック。
注意してよ~く見ていないと、全く分からない。
*(簡略ストー リー)
秋深まるある山間の村で、男の死体が発見される。
ウサギを撃っていた元船長アルバート・ワイルスは、自分がその男を殺したものと思い動揺する。
そこに、彼に同情する婦人のアイヴィと死体の第一発見者の少年アーニーの母ジェニファーなどが次々と現れる。
ワイルスは、スケッチに来て死体を発見した青年画家マーロウと共に、それを一旦隠す。
その後、ジェニファーが死体の男の知り合いだと知ったマーロウは、彼女の元を訪ねる。
マーロウは、死体の男ハリーが、実は訳あって結婚したジェニファーの夫であり、彼女が現れた彼を殴ったと知らされる。
ハリーを殴り殺したと、アイヴィから告白されていたワイルスと共に、マーロウは森に向い死体を埋めようとする。
自分が撃ったウサギも見つかったことで、ハリーを撃っていないことに気づいたワイルスは、埋めた死体を再び掘り起こそうとする・・・。
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もともと、ヒッチコック作品にはユーモアは欠かせない要素だが、かねてから彼が提唱する”殺人は喜劇だ”の最たるものがこの作品。
”殺人”という事実(実は病死)のみが恐怖を連想させるだけで、4人の人の好い田舎の村人が、あたふたする姿をユーモラスに、また軽快なタッチでに描いたシンプルな中に捻りを効かせたヒッチコックの演出は素晴しい。
主人公は死体であり、その死体の顔は遠めにしか見えない、そこで青年画家が死に顔をスケッチする。
余りにもインパクトのあるスケッチが、クライマックスで絶妙な小道具として使われるという、脚本と演出も見事である。
ロケは、バーモントの山間で1954年の10月から12月にかけて行われ、その紅葉は実に美しい。
ヒッチコック作品の常連、バーナード・ハーマンの拍子抜けしたメロディと、彼らしいテンポの良いテーマ曲も効果的に使われている。
同じヒッチコック作品の傑作サスペンス「海外特派員」(1941)では、殺人鬼を演じたエドマンド・グウェンは、はにかみ屋の元船長、陰日向のない青年画家ジョン・フォーサイス、撮影当時まだ20歳だったシャーリー・マクレーンは、美しいというより、あどけなさと色気が入り混じる不思議な魅力を感じる、デビュー作に思えない注目の存在だ。
ジョン・フォード作品の常連でもある、オールドミス役のミルドレッド・ナトウィックの出演もファンには嬉しいばかりだ。
神経質そうな保安官補ローヤル・ダノと、可愛らしい坊やジェリー・メイザースも印象に残る。