1606年頃に書かれたと言われているウィリアム・シェイクスピアの戯曲”マクベス”を基に、鬼才ロマン・ポランスキーによる監督、脚本の問題作。 3人の魔女から領主となり国王になると予言されたスコットランドの武将マクベスの運命を描く、主演ジョン・フィンチ、フランセスカ・アニス、マーティン・ショウ、ニコラス・セルビー共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロマン・ポランスキー
製作総指揮:ヒュー・ヘフナー
製作:アンドリュー・ブラウンズバーグ
原作:ウィリアム・シェイクスピア”マクベス”
脚本
ロマン・ポランスキー
ケネス・タイナン
撮影:ギルバート・テイラー
編集:アラステア・マッキンタイア
音楽:ザ・サード・イアー・バンド
出演
マクベス:ジョン・フィンチ
マクベス夫人:フランセスカ・アニス
バンクォー:マーティン・ショウ
ダンカン王:ニコラス・セルビー
ロス:ジョン・ストライド
マルコム:ステファン・チェイス
ドナルベイン:ポール・シェリー
マクダフ:テレンス・ベイラー
マクダフ夫人:ダイアン・フレッチャー
フリーアンス:キース・チェグウィン
イギリス/アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1971年製作 140分
公開
イギリス:1972年2月2日
北米:1971年10月13日
日本:1973年7月7日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
11世紀。
激しい戦いを終えたスコットランド軍は、国王ダンカン(ニコラス・セルビー)に勝利の報告をする。
戦いの勝利に大きく貢献した将軍マクベス(ジョン・フィンチ)は、共に戦ったバンクォー(マーティン・ショウ)と共に、雨の中、三人の魔女に出会う。
マクベスは、コーダーの領主、そして王になると魔女に予言され、バンクォーは王にはなれないが、子孫が王になると言われる。
魔女達は地下に姿を消し、二人は、半信半疑で笑いながらその場を去る。
野営地に着き夜を明かしたマクベスは、ダンカン王の使者ロス(ジョン・ストライド)から、武勲により、コーダーの領主となることを言い渡される。
マクベスは驚き、バンクォーは、考えを発展させ過ぎると、王になることを期待してしまうと言って忠告する。 早くもその考えが脳裏を過るマクベスは、もし王になる運命ならば、冷静にその時を待つことを心に決める。 その知らせを受けたマクベス夫人(フランセスカ・アニス)は、野心家でない夫を、いかにして王にするかを考える。 ダンカン王に謁見したマクベスは、王子マルコム(ステファン・チェイス)が王位継承者となったため、その存在を邪魔に思う。 妻の元に戻ったマクベスは、ダンカン王が訪れることを伝えるが、彼女は、既に王の暗殺を考える心が読めると言って、夫に後のことは自分にまかせるようにと伝える。 準備を整えてダンカン王を迎えたマクベス夫人だったが、心穏やかでないマクベスは考えを巡らせる。 王を迎えての宴の途中、マクベスは計画を思い止まるよう妻に告げる。 妻は、暗殺をためらうマクベスの言葉を嘆き涙し、夫を説得して、眠り薬を護衛に飲ませる考えを伝える。 客達は寝静まり、酒に薬を盛ったマクベスと妻は時を待つ。 尚も迷うマクベスは、幻覚として現れた血にまみれた短剣に導かれて、王の部屋に向かおうとする。 心を決めたマクベスは、薬入りの酒で眠った護衛の短剣を奪い、王の部屋に入る。 一瞬目覚めた王はマクベスに気づくが、彼は、短剣で王を何度も刺して殺害する。 血まみれで妻の元に向かったマクベスは、呆然としながら、”マクベスは眠りを殺した、もうマクベスは眠れない”と言う声を聞いたと語り動揺する。 マクベスが短剣を持ってきてしまったことに気づいた妻は、それを受取り、王の血を護衛につけて罪をなするつけようとする。 短剣を戻した妻と共に、手の血を洗い落としたマクベスは寝室に向かう。 夜が明けて、マクベスが、現れた貴族マクダフ(テレンス・ベイラー)を王の元に案内する。 マクダフは、王の死を知り騒ぎ始め、バンクォーらを起こして城内は騒然となる。 マクベスは、護衛の二人が血まみれで短剣を持っていたため、殺してしまったことを王子マルコムとドナルベイン(ポール・シェリー)に知らせる。 マクベス夫人は、切り刻まれた護衛の者達の死体を見て卒倒してしまう。 バンクォーは、身なりを整えた後に、事件の真相を探る考えをその場の者達に伝える。 危険を察知した王子マルコムとドナルベインは、それぞれがイングランドとアイルランドに向かおうよする。 ロスとマクダフは、殺された護衛の他、姿を消した二人の王子が犯人と疑われていることなどを話し、マクベスが、既に王の即位式に向かったことも語る。 即位式に出席したバンクォーは、予言が当たったことでマクベスの犯行を確信する。 しかしバンクォーは、予言が正しいとすれば、自分の子孫が王位につくことを固く信じていた。 望み通り王になったマクベスだったが、魔女の預言を思い出し、知恵も勇気もあるバンクォーを恐れる。 マクベスは、このままでは、バンクォーの子孫を王にするためにダンカン王を殺したことになってしまうと考える。 そしてマクベスは、バンクォーと息子フリーアンス(キース・チェグウィン)の暗殺を実行しようとする。 暗殺者の二人はバンクォーとフリーアンスを襲い、抵抗されながらバンクォーを殺すが、フリーアンスには逃げられてしまう。 それをマクベスに報告した暗殺者は、ロスらの手で抹殺される。 その後、宴の席で、マクベスはバンクォーの亡霊を見てしまい取り乱す。 マクベス夫人は夫を落ち着かせて、宴の出席者を下がらせる。 心の安らぎを得られないマクベスは魔女達の元に向かい、マクダフに用心することと、”女から生まれた者はマクベスを倒せない、バーナムの森が攻め込んで来なければ安泰だ”との予言を聞く。 バンクォーの子孫が王になるかという予言については、血にまみれた彼が微笑みながら亡霊として現れる。 翌朝、目覚めたマクベスは城に戻り、気丈であった妻も幻覚を見るようになる。 マクベスは、マクダフがイングランドに逃亡したことを知らされ、ロスに指示して、彼の家族を抹殺する。 マクベス夫人は、夢遊病者のように眠れぬ夜を過ごし、正気を失った彼女を見た医師は、侍女に彼女の監視をさせる。 その後、国民はマクベスの圧政に苦しみ、見かねたロスは、イングランドのマルコムとマクダフの元に向かい情勢を報告する。 マルコムは、イングランド軍の援護を受けられることをロスに伝えるが、家族を皆殺しにされたことを知ったマクダフは、愕然として泣き崩れる。 マルコムに剣を渡されたマクダフは、マクベスへの怒りを抑えられない。 イングランド軍の侵攻を知ったマクベスだったが、”女から生まれた者はマクベスを倒せない、バーナムの森が攻め込んで来なければ安泰だ”という予言を信じ、鎧を着けて敵を迎え撃とうとする。 マクベスは、妻が身投げして死んだという報告を受け、その直後に、バーナムの森が動き出し向かってくると知らされる。 マルコムとマクダフが率いるイングランド軍が、木の枝を掲げて森が動いているように見せかけたのだった。 それを確認したマクベスは、城に押し入った敵を次々と倒し、そしてマクダフと対峙する。 女から生まれた者は自分を倒せないと、自信に満ち溢れるマクベスは、剣を交えたマクダフを圧倒する。 しかしマクダフは、自分が母の腹を破って(帝王切開)生まれたことを告げる。 予言を信じてきたマクベスは、自信を失いながらも戦いを挑む。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
11世紀。
激しい戦いの勝利に貢献したスコットランドの武将マクベスは、盟友バンクォーと共に三人の魔女に出会う。
マクベスは、コーダーの領主、そして王になると魔女に予言され、バンクォーは、王にはなれないが子孫が王になると言われる。
半信半疑の二人だったが、翌日マクベスは、予言通りにコーダーの領主となることを言い渡されて驚いてしまう。
王になる期待も脳裏を過るマクベスは、それを冷静に受け止め、ダンカン王に謁見して妻の元に戻る。
強かなマクベス夫人は、野心家でないマクベスに代わり、ダンカン王の暗殺を考える。
王を迎えての宴が開かれ、計画実行に戸惑うマクベスだったが、妻に促されてそれを実行し、手を地に染めて予言を実現させるのだが・・・。
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本作は1970年の11月から撮影は始まるのだが、ロマン・ポランスキーは、その前年の8月、妊娠中の妻シャロン・テートを、チャールズ・マンソンらに殺害されている。
衝撃的な事件による、心の傷を負ったまま撮影に臨んだロマン・ポランスキーの作風は、事件の影響か、ホラー映画のような残虐シーンが多く見られるところに注目したい。
また、シェイクスピアの舞台劇という考えにこだわらない、ポランスキーの現実的な映像表現も見どころの一つだ。
製作には男性誌”PLAYBOY”の発行者ヒュー・ヘフナーも参加している。
イギリス各地で行われた、自然や城を生かした撮影、セットなども見事で、重厚感のある作品に仕上がっている。
007シリーズの”ジェームズ・ボンド”役の候補にもなった、主人公のマクベスを演じたジョン・フィンチは、魔女の預言に翻弄されながら、武将としての勇気も併せ持つ人物を、情感溢れる演技で熱演している。
夫を王にするために暗殺計画を考える強かな妻フランセスカ・アニス、主人公の盟友であるバンクォーのマーティン・ショウ、ダンカン王のニコラス・セルビー、その下臣ジョン・ストライド、王子マルコムのステファン・チェイスとドナルベインのポール・シェリー、貴族マクダフのテレンス・ベイラー、その妻役ダイアン・フレッチャー、バンクォーの息子キース・チェグウィンなどが共演している。