作家グレアム・グリーンが映画化のために原作を書き下ろし脚色を手がけた、製作デヴィッド・O・セルズニック、監督キャロル・リード(製作兼)、主演ジョゼフ・コットン、アリダ・ヴァリ、オーソン・ウェルズ、トレヴァー・ハワード共演によるサスペンス映画の傑作。 |
・オーソン・ウェルズ / Orson Welles / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:キャロル・リード
製作
キャロル・リード
デヴィッド・O・セルズニック
脚本:グレアム・グリーン
撮影:ロバート・クラスカー
編集:オズワルド・ハフェンリヒター
音楽:アントン・カラス
出演
ジョゼフ・コットン:ホリー・マーティンス
アリダ・ヴァリ:アンナ・シュミット
オーソン・ウェルズ:ハリー・ライム
トレヴァー・ハワード:キャロウェー少佐
バーナード・リー:ペイン軍曹
ウィルフリッド・ハイド=ホワイト:クラビン
エルンスト・ドイッチュ:クルツ男爵
ジークフリート・ブロイアー:ポペスク
パウル・ヘルビガー:管理人
イギリス 映画
配給 British Lion Films
1949年製作 104分
公開
イギリス:1949年9月3日
北米:1950年2月2日
日本:1952年9月3日
北米興行収入 $596,350
■ アカデミー賞 ■
第23回アカデミー賞
・受賞
撮影賞(白黒)
・ノミネート
監督・編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アメリカ人作家ホリー・マーティンス(ジョゼフ・コットン)は、旧友ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)を頼り、第二次大戦後の四国(米英仏ソ)管理下のウィーンにやって来る。
しかし、ハリーは自動車事故で死亡していて、彼の葬儀が行われていた。
マーティンスはそこで、イギリス軍警察のキャロウェー少佐(トレヴァー・ハワード)と部下のペイン軍曹(バーナード・リー)から、ハリーは闇市の商人だと言われる。
マーティンスはそれを聞いて憤慨するが、軍の計らいでホテルを用意される。
そこでマーティンスは、GHQのクラビン(ウィルフリッド・ハイド=ホワイト)から、滞在費を払うという条件で講演を依頼される。
その後マーティンスは、ハリーの友人だという、クルツ男爵(エルンスト・ドイッチュ)からの電話を受けて会う約束をする。
ハリーの死亡した事故現場で、クルツから、その時の様子を聞いたマーティンスは、葬儀に出席していたハリーの恋人で、女優アンナ・シュミット(アリダ・ヴァリ)の存在を知る。 ハリーの死の真相を探ろうとしたマーティンスは、アンナの楽屋を訪ねる。 アンナの話で、ハリーの事故死を疑ったマーティンスは、彼のアパートの管理人(パウル・ヘルビガー)から話を聞き、ハリーの遺体を運んだ男が三人いたことを知る。 そのうち二人は、ハリーの友人クルツとルーマニア人のポペスク(ジークフリート・ブロイアー)だということが分かっただけだった。 その後、マリアのアパートがキャロウェーらの手により調べられ、彼女はパスポートを没収されてしまう。 マーティンスは、ハリーの死が、事故ではなく殺人だということをキャロウェーに伝えるが、彼はそれを信じない。 マリアは、チェコから不法入国したことをマーティンスに告げて、パスポートは偽造だったことを知られて、警察に連行されていく。 警察でマリアは、軍病院の職員を誘き出すようにと、キャロウェーに強要されて釈放される。 マーティンスは、ハリーの事故の際に彼を診た医者を訪ね、マリアを迎えに行き、あるクラブに向かう。 そこでマーティンスはクルツに出くわし、ポペスクを紹介される。 ポペスクは、ハリーが死んだ時に、”第三の男”がいたことをアパートの管理人から聞いたと、マーティンスから知らされる。 ハリーの死の真相究明に、異常なまでの執念を燃やすマーティンスを見て、ポペスクやクルツらは行動を開始する。 その夜、アンナを誘ったマーティンスは、ハリーのアパートの管理人が殺されたことを知る。 アパートにいた幼い子供が、マーティンスが管理人と会っていたことを話したため、彼はそこにいた人々から、殺人犯として疑われてしまう。 映画館に逃げ込んだマーティンスは、マリアを劇場に向かわせ、自分はキャロウェーに会いに行く。 しかし、司令部に向かおうとタクシーに乗ったマーティンスは、クラビンと約束をしていた、講演の会場に連れて行かれてしまう。 マーティンスの講演は散々な結果となり、まともな受け答えの出来ない彼に失望した出席者は、席を立ってしまう。 そこにポペスクが男達と現れ、危険を感じたマーティンスは、その場から逃亡する。 キャロウェーの元に向かったマーティンスは、ハリーが、大量のペニシリンを水で薄めて密売し、多数の人々に被害を与えたと聞かされ、その証拠を見せられる。 マーティンスは一応納得して警察署を去り、アンナの元に向かう。 アンナと、ハリーの密売の話などをしたマーティンスは、気落ちする彼女を慰める。 ホテルに向かったマーティンスは、自分を尾行していると思われる男に苛立ち声をかける。 すると、建物の入り口に隠れていた男の顔が、二階の住人の窓明かりで照らされる。 なんとそれはハリーだったが、彼は暗闇の中へと消え去る。 キャロウェーは、ハリーが生存していることをマーティンスから聞き、それを信じないまま、ハリーが消えた場所に向かう。 そこで、キャロウェーは地下下水道に通ずる入り口を見つけて、ハリーの墓を掘り起こして遺体を確認するが、棺桶の中は別人だった。 それは、ハリーと関わりのあった軍病院の看護人だった。 一方アンナは、占領四国の協定により、偽造パスポートの所持でソ連側に連行されてしまう。 それを知ったマーティンスは、アンナにハリーが生きていることを伝える。 キャロウェーも、アンナにハリー生存を知らせ探りを入れる。 マーティンスは、ハリーを匿っていると思われるクルツに、”プラーター”の観覧車でハリーを待つと伝える。 姿を現したハリーは、マーティンスに自首を勧められるものの聞く耳を持たず、逆に悪に染まった本性を露呈する。 アンナの釈放と引きかえに、マーティンスは、ハリー逮捕への協力を承諾する。 釈放されたアンナは、なぜ自分が自由になったのかを疑問に思いながら、列車でウィーンを旅立とうとする。 駅でマーティンスを見かけたアンナは、彼が友人のハリーを売ったことを知り、激しく非難する。 マーティンスは、ハリー逮捕への協力を止めて出国することを、アンナが破り捨てたパスポートを持参した上でキャロウェーに伝える。 しかし、ハリーの被害者が入院する病院に連れて行かれたマーティンスは、彼を誘き出す囮になることを決意する。 マーティンスの元に姿を現したハリーは、その場にいたアンナに罠だと知らされて逃亡する。 下水道に逃げ込み、追いつめられたハリーは、ペインを銃撃して、キャロウェーの銃弾を浴びる。 ペインが死亡したのを確認したマーティンスは、彼の拳銃を手に取り、排水溝から這い出そうとしているハリーを射殺する。 そして、改めてハリーの埋葬が行われ、マーティンスはアンナを待つ。 しかし、アンナは、マーティンス見向きもせずに、その前を通り過ぎて行く。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
アメリカ人の作家ホリー・マーティンスは、友人ハリーを頼り、第二次大戦後のウィーンに姿を現す。
しかし、ハリーは事故死していて、彼の死に疑問を感じたマーティンスは、真相を究明しようとする。
イギリス軍警察のキャロウェーは、ハリーを悪の闇商人だと言い、目撃者の情報で彼の事故死の際、謎の”第三の男”がいたことが分かる。
やがてハリーの生存を知り、悪に染まった彼の本性を知ったマーティンスは、不法入国で拘束された、ハリーの恋人アンナを助けるために、取引して警察に協力しようとする。
それを、アンナに非難されたマーティンスは協力を止めようとするが、ハリーに被害にあった人々を目の当たりにして、再び彼を誘き寄せる役を買って出る・・・。
__________
第23回アカデミー賞では、撮影賞(白黒)を受賞した。
・ノミネート
監督、編集賞
死んだはずの男ハリーの登場場面、静まり返ったウィーンの街並みに響き渡る足音、第二次世界大戦直後の分割統治で、混沌とする当時のウィーンの状況を象徴するかのような、下水道他の効果的な使い方や、映画史上に残るラストシーンなど、キャロル・リードの革新的な演出は秀逸だ。
アカデミー撮影賞を受賞した、ロバート・クラスカーの見事な映像は、斬新かつ画期的だ。
窓の光に浮かび上がるハリーの不適な笑顔、建物の壁に巨大な男の影が写り、それが突然風船売りに変わる、斜め構図を入れ替えて使用し、情勢の不安定感を表現している、カメラワークなども素晴らしい。
それまで極貧生活を送っていたという、地元オーストリアのチター奏者アントン・カラスの、全編に流れる単独の伴奏も素晴らしい。
主演のジョゼフ・コットンの演技は、アメリカ人らしさがよく出ていて、ウィーンの街とのミスマッチなども興味深い。
オーソン・ウェルズは出番は多くはないが、体の大きさだけでなく、その迫力と存在感は圧倒的だ。
本作で彼は、殆ど左斜め前からの顔のショットで登場しているのも特徴だ。
清楚で美しいアリダ・ヴァリは、その表情には力強さを感じ、チェコから逃れた逞しい女性を好演している。
毅然としたトレヴァー・ハワードと、どこかユーモラスな身のこなしのバーナード・リーもイギリス軍人らしさを見事に表現している。
GHQのウィルフリッド・ハイド=ホワイト、ハリー(O・ウェルズ)の協力者エルンスト・ドイッチュ、ジークフリート・ブロイアー、アパート管理人のパウル・ヘルビガーなどが共演している。