製作、監督セシル・B・デミル、彼自身のサイレント作品「十誡」(1923)のリメイク。 構想約10年、製作費約50億円(当時)という当時としては天文学的な巨費を投じて製作された旧約聖書の「出エジプト記」を題材に描く、主演チャールトン・ヘストン、ユル・ブリンナー、アン・バクスター、ジョン・デレク、エドワード・G・ロビンソン他共演のスペクタクル歴史超大作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:セシル・B・デミル
製作:セシル・B・デミル
原作
ジョセフ・ホルト・イングラム”The Pillar of Fire ”
A・E・サウソン”On Eagle’s Wings”
ドロシー・クラーク・ウィルソン”Prince of Egypt”
脚本
イーニアス・マッケンジー
ジェシー・L・ラスキーJr.
ジャック・ガリス
フレドリック・M・フランク
撮影:ロイヤル・グリッグス
編集:アン・ボーチェンス
美術・装置
ハル・ペレイラ
ウォルター・H・テイラー
アルバート・ノザキ
サム・コマー
レイ・モイヤー
衣装デザイン
イデス・ヘッド
ラルフ・ジェスター
ジョン・ジェンセン
ドロシー・ジーキンス
アーノルド・フリバーグ
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演
モーゼ:チャールトン・ヘストン
ラメセス2世:ユル・ブリンナー
ネフレテリ:アン・バクスター
ヨシュア:ジョン・デレク
ダサン:エドワード・G・ロビンソン
ツィポラ:イヴォンヌ・デ・カーロ
セティ1世:Sir セドリック・ハードウィック
ベシア:ニナ・フォック
メムネット:ジュディス・アンダーソン
バッカ:ヴィンセント・プライス
リリア:デブラ・パジェット
ヨシャベル:マーサ・スコット
アロン:ジョン・キャラダイン
ジェスロー:エドゥアード・フランツ
ミリアム:オリーヴ・デアリング
エチオピア王:ウディ・ストロード
ラメシス1世:イアン・キース
アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1956年製作 220分
公開
北米:1956年10月5日
日本:1958年3月5日
製作費 $13,500,000
北米興行収入 $80,000,000
■ アカデミー賞 ■
第29回アカデミー賞
・受賞
特殊効果賞
・ノミネート
作品・撮影・編集・美術・衣裳デザイン・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
エジプト王ラメシス1世(イアン・キース)は、預言者から悪しき星が落ちたと告げられ、 生まれたばかりのヘブライ人の男子を抹殺する命令を出す。
それを知ったヘブライ人ヨシャベル(マーサ・スコット)は、我が子をカゴに入れてナイル川に放つ。
ヨシャベルは、それが流れ着くところを娘ミリアムに見届けさせようとする。
カゴは王女ベシア(ニナ・フォック)の元に流れつき、彼女は、それがヘブライ人の奴隷の子と知りながら、王子として育てようと考える。
ベシアは、侍女メムネット(ジュディス・アンダーソン)に秘密を守ることを誓わせ、子供にモーゼという名前を付ける。
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成長したモーゼ(チャールトン・ ヘストン)は、王子として民衆に慕われていた。
モーゼはエチオピア征服から凱旋して、それをセティ1世(Sir セドリック・ハードウィック)に報告し、新しい都のための貢物を披露する。
セティ1世は、その都の建設を任す実の王子ラメシス(ユル・ブリンナー)の仕事が進まないことから、それをモーゼに任せることにする。
横暴で策略家のラメシス(ユル・ブリンナー)はそれを妬み、王位とモーゼを愛するネフレテリ(アン・バクスター)を奪おうと画策する。 その後、モーゼは都の建設地で、ヘブライ人奴隷が重労働を科せられているのを知る。 モーゼは、老女ヨシャベルと彼女助けようとして取り押さえられた石工のヨシュア(ジョン・デレク)を解放し、奴隷側に立ち、穀物なども分け与えてしまう。 それを、あたかもモーゼの謀反のようにセティ1世に伝えたラメシスは、王と共に建設現場に向かう。 セティ1世は、自らの偉業を称える塔門がほぼ完成し、巨大肖像の準備が出来ているのを目の当たりにして、その成果に満足して、モーゼを後継者に選ぶ。 ある日、ベシアの侍女メムネットが、モーゼがヘブライ人の奴隷の子だということをネフレテリに暴露してしまう。 メムネットに、モーゼの産着であるヘブライの布を見せられたネフレテリは愕然とする。 ネフレテリは、人種ではなくモーゼ自身を愛していることを告げ、口止めさせるためにメムネットを殺してしまう。 それをネフレテリから聞いたモーゼは、育ての母ベシアの制止を振り切り、実母ヨシャベルの元に向かう。 先回りしたベシアは、ヨシャベルに立ち去るよう説得するが、そこにモーゼが現れる。 ヨシャベルは母親だということを否定するが、結局は嘘を通せずに、モーゼは真実を知り、彼はヘブライ人として生きることを決意する。 モーゼは、ヘブライ人の誇りを持って、兄アロン(ジョン・キャラダイン)と姉ミリアム(オリーヴ・デアリング)に自分が弟であることを伝え、ベシアに別れを告げる。 奴隷となったモーゼはネフレテリに呼ばれ、ラメシスが王になれば、ヘブライ人はさらに虐げられ、自分も彼のものになってしまうことを告げる。 ファラオになれば、奴隷解放も思いのままになると言われたモーゼは、セティ1世在位25年祭に、宮殿に戻る約束をする。 その頃、総督バッカ(ヴィンセント・プライス)の元に連れて行かれた女奴隷リリア(デブラ・パジェット)を助けようと、ヨシュアが屋敷に忍び込み彼女を逃がす。 捕らえられたヨシュアはバッカに鞭打たれるが、モーゼがそこに現れる。 ヘブライ人は、いつの日か救世主が現れることを待ち望んでいたが、モーゼをその救世主と信じるヨシュアだった。 その様子を見ていた、私欲に走る奴隷監督ダサン(エドワード・G・ロビンソン)は、ラメシスに、モーゼがヘブライだということを密告する。 ラメシスはその情報に満足して、ダサンはリリアを褒美に授けられ、やがて総督となる。 モーゼを捕らえたラメシスは、セティ1世にヘブライ人である彼を差し出す。 全てを知ったセティ1世はラメシスを後継とし、モーゼの名を忘れ去ることを民に命ずる。 そしてラメシスは、モーゼを生かしたままエジプトから追放してしまう。 モーゼは、選ばれし者の試練のような苦難の道を抜け、辿り着いた地で、族長ジェスロー(エドゥアード・フランツ)の娘ツィポラ(イヴォンヌ・デ・カーロ)達に出会う。 ジェスローに歓迎され、その後、聖なる山シナイのふもとに一族と共に移動したモーゼは、満ち足りた時を過ごす。 その頃、セティ1世は、自らが定めた禁を破り、今でも愛するモーゼの名を言い残しこの世を去り、ラメセス2世が即位する。 数年後。 ヨシュアは、ラメセス2世に虐げられている同胞の苦しみをモーゼに伝え救いを求める。 モーゼは、自分がただの羊飼いだとヨシュアに告げるが、シナイ山で神のお告げを聞き、エジプトからヘブライの民を脱出させる使命を受ける。 エジプトに戻ったモーゼは、ラメセス2世に、ヘブライの民の解放を迫るが聞き入れられない。 ネフレテリはモーゼを呼び寄せ、今でも思う気持ちを伝えるが、彼はそれに心を動かされるはずもなかった。 モーゼは、民の解放を受け入れないラメセス2世を前にして、ナイル川を血で染めエジプトを闇で覆い災いを起こす。 それでも、ラメセス2世はモーゼの要求を拒み、ヘブライ人の初子を殺すよう命ずる。 ネフレテリはそれをツィポラに知らせ、モーゼの息子を助け、尚も彼の愛を求めようとする。 モーゼは、釈放された育ての親ベシアを歓迎し、翌日の旅立ちに同行させようとする。 その後、エジプト中の初子が疫病で倒れ、ラメセス2世は、ついにヘブライ人の出国を認めるが、王子の命も奪われてしまう。 そして、モーゼと、民衆を統率するヨシュアに導かれて、人々は喜びと共にエジプトを出国する。 裏切り者とみなされたダサンも追放され、リリアは愛し合うヨシュアによって解放される。 息子を失ったラメセス2世は、ネフレテリに促されて復讐を誓い、モーゼ達を追跡し紅海で追い詰める。 モーゼは、慌てふためく民衆や、ダサンに扇動されて反乱を起こそうとする者達を鎮める。 炎の柱でエジプト軍を足止めさせたモーゼは、紅海を真っ二つに割り、民衆は無事に対岸に逃れる。 エジプト軍も後を追うが、モーゼは紅海を元に戻し、追っ手を溺れさせてしまう。 ラメセス2世は天を仰ぎ、ネフレテリの元に戻った彼は、モーゼの信じる神を認めざるを得なかった。 そして、シナイ山のふもとに着いた民は、再びダサンに扇動され、40日も山に入ったままのモーゼの理想に逆らい、偶像を作り崇め、信念を失い心はゆがみ神を侮ってしまう。 その頃、苦悩するモーゼに、神は十の戒めを石に刻み、それを授ける。 1.他の神々を持ってはならない モーゼが、それを堕落した民に投げつけると、突然天地は荒れ狂い始める。 神は民に罰を下し、十戒に背かぬかを試すために、40年間も荒野をさ迷わせ罪を犯すものを根絶し、やがて人々はヨルダン川に辿り着く。
...全てを見る(結末あり)
ツィポラと結婚し子供も生まれ、平穏に暮らしていたモーゼは、彼を追って来たヨシュアに再会する。
しかし、ネフレテリは、モーゼからエジプト人の初子が死ぬと知らされてしまう。
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2.神、主の名をみだりに唱えてはならない
3.安息日を聖とせよ
4.父と母を敬え
5.殺してはならない
6.姦淫してはならない
7.盗んではならない
8.隣人に関して偽証してはならない
9.隣人の妻を欲してはならない
10.隣人の財産を欲してはならない
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■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
エジプト王ラメシス1世は、預言者の言葉から、生まれたばかりのヘブライ人の男子を抹殺する命令を出す。
ヘブライ人ヨシャベルは、我が子を救うためにナイル川に放つ。
男の子はモーゼと名付けられ、王女ベシアに育てられ、セティ1世の王位を継ぐ可能性が高い存在となる。
それに嫉妬する王の実子ラメシスは、モーゼを愛するネフレテリと王位を奪おうと画策する。
セティ1世は、ラメシスに代わり任せた都建設を、見事に成し遂げようとするモーゼを後継者として指名する。
しかしモーゼは、自分がヘブライ人の奴隷の子だと知り同胞と共に生きることを選ぶ。
ラメシスはモーゼを捕らえ、父王に差し出し真実を知ったセティ1世は、仕方なくラメシスを後継者にする。
ラメシスは、モーゼを生かしたままエジプトから追放するが、彼は選ばれし者の試練に耐えて、シナイ山でエジプトからヘブライの民を脱出させる使命を神から受ける。
そして、モーゼはラメセス2世に、同胞の解放を要求するのだが・・・。
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1859年に発表された、ジョセフ・ホルト・イングラムの”The Pillar of Fire ”、A・E・サウソン”On Eagle’s Wings”、そしてドロシー・クラーク・ウィルソン”Prince of Egypt”(1949)の各小説を基に製作された作品。
1999年に、アメリカ議会図書館が国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第29回アカデミー賞では作品賞をはじめ7部門にノミネートされ、特殊効果賞を受賞した。
・ノミネート
作品・撮影・編集・美術・衣裳デザイン・録音賞
旧約聖書の「出エジプト記」を題材に、神の教えを受けたモーゼが、虐げられていたヘブライの民を連れてエジプトを脱出して、紅海を渡り新天地をめざすまでを描く壮大な物語を通して、”人を支配できるのは神のみで人間ではない”というメッセージを力強く描いている。
3時間40分という長編、かつてないスケールで描く製作も兼ねるセシル・B・デミルの、伝えるべきことを的確に表現する説得力ある演出には驚嘆する。
例えば、当時のファラオの権力の大きさなどは、巨大な宮殿や石像で、またファラオ・セティ1世のセドリック・ハードウィックやユル・ブリンナーの威厳ある名演や圧倒的迫力を描き切ることで、それが観客に見事に伝わってくる。
有名な紅海が二つに割れるシーンは、合成技術がまだ未熟に見えるものの、その迫力を含めて本作中最大の見せ場だ。
エルマー・バーンスタインの、荘厳とも言える映像を際立たせる主題曲も心に残る名曲だ。
家族愛やロマンスも盛り込まれ、娯楽大作として見所の多い一級品に仕上がっている。
パラマウント・ピクチャーズのオープニングのロゴが、シナイ山をモチーフにしているところも興味深い。
何かと「ベン・ハー」(1959)と比較されるチャールトン・ヘストンの演技は、モーゼと言えば彼以外に考えられないほどのスタンダードとして、現在まで語り継がれている。
重々しく厳かでもあるが「ベン・ハー」の時のような奥深い表現力には欠けている感じもする。
ラメセス2世を演ずる、30代半ばとは思えない風格のあるユル・ブリンナーの重厚な演技、モーゼとの結婚が叶わない、策略家的言動の立ち振る舞いと美しさで魅力的なアン・バクスター、ベテランらしい癖のある演技と存在感が際立つエドワード・G・ロビンソンという、実力派の共演陣の演技も見応えがある。
後のユダヤ人の指導者、ヨシュア役のジョン・デレク、モーゼの妻ツィポラのイヴォンヌ・デ・カーロ、セティ1世のSir セドリック・ハードウィック、モーゼの育ての母親ベシア役のニナ・フォック、彼女の侍女役のジュディス・アンダーソン、総督ヴィンセント・プライス、女奴隷から救われるデブラ・パジェット、「ベン・ハー」(1959)でもC・ヘストンの母を演ずる、モーゼの母親ヨシャベル役のマーサ・スコット、モーゼの兄アロン役のジョン・キャラダイン、同じく姉ミリアム役オリーヴ・デアリング、ツィポラ(Y・デ・カーロ)の父親役エドゥアード・フランツ、エチオピア王役のウディ・ストロード、ラメシス1世役のイアン・キースなどが共演している。