1955年に発表された、パトリシア・ハイスミスの小説”The Talented Mr. Ripley”を基に製作された作品。 富豪の放蕩息子を帰国させるために雇われた恵まれない身の上の青年の行動を描く、監督、脚本アンソニー・ミンゲラ、主演マット・デイモン、グウィネス・パルトロー、ジュード・ロウ、ケイト・ブランシェット、フィリップ・シーモア・ホフマン他共演のサスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:アンソニー・ミンゲラ
製作
ウィリアム・ホーバーグ
トム・スターンバーグ
原作:パトリシア・ハイスミス”The Talented Mr. Ripley”
脚本:アンソニー・ミンゲラ
撮影:ジョン・シール
編集:
美術・装置
ロイ・ウォーカー
ブルーノ・チェサリ
衣装デザイン
アン・ロス
ゲーリー・ジョーンズ
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演
マット・デイモン:トム・リプリー
グウィネス・パルトロー:マージ・シャーウッド
ジュード・ロウ:ディッキー・グリーンリーフ
ケイト・ブランシェット:メレディス・ローグ
フィリップ・シーモア・ホフマン:フレディ・マイルズ
ジャック・ダヴェンポート:ピーター・スミス=キングスレー
ジェームズ・レブホーン:ハーバート・グリーンリーフ
セルジオ・ルビーニ:ロヴェリーニ警部
フィリップ・ベイカー・ホール:アルヴィン・マッカロン
セリア・ウェストン:ジョーン
アメリカ 映画
配給
パラマウント・ピクチャーズ(北米)
ミラマックス(世界)
1999年製作 139分
公開
北米:1999年12月25日
日本:2000年8月5日
製作費 $40,000,000
北米興行収入 $81,292,140
世界 $128,798,270
■ アカデミー賞 ■
第72回アカデミー賞
・ノミネート
助演男優(ジュード・ロウ)
脚色・撮影・美術・衣装デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1950年年代後半、ニューヨーク。
エリートを装いガーデン・パーティーのピアノ演奏アルバイトをしていた青年トム・リプリー(マット・デイモン)は、造船会社社長ハーバート・グリーンリーフ(ジェームズ・レブホーン)と出会い、息子の同窓生になりすまして再会を約束する。
演奏家に憧れるリプリーは、ホテルや劇場のアルバイトで日銭を稼ぐ平凡な貧乏青年だったが、上辺を良く見せて人に媚び諂う癖があった。
ある日、リプリーがリーンリーフの元を訪れると、イタリアにいる彼の放蕩息子ディッキー(ジュード・ロウ)を、説得して連れ帰ってほしいと、1000ドルの謝礼で頼まれる。
リプリーはそれを引き受け、客船の一等室でナポリに向かう。
ナポリに到着したリプリーは、入国の際に、繊維産業界の大物の令嬢メレディス・ローグ(ケイト・ブランシェット)から話しかけられ、グリーンリーフの息子と間違えられる。
リプリーは悪い癖が出て、ディッキーを名乗り、メレディスと別れる。
モンジベロ。 ディッキーとマージから、ランチに招待されたリプリーは、父親に頼まれて連れ戻しに来たことを、率直ディッキーに伝える。 それをディッキーに拒まれたリプリーだったが、彼のジャズ好きを知っていたため、自分もそれに精通していると見せかけて意気投合する。 ヨットやクラブ通いの豪遊を続ける、ディッキーとの生活に驚きと憧れを抱くリプリーは、やがて彼に愛情を抱くようになる。 ある日、リプリーはディッキーとローマに向かい、彼の友人のフレディ・マイルズ(フィリップ・シーモア・ホフマン)と合流する。 単独行動になったリプリーは、一人モンジベロに戻り、ディッキーの部屋ではしゃいでいた。 そこに、突然ディッキーが戻ったため、リプリーは、それを見られてしまう。 リプリーの、度を越した態度にディッキーは気分を害する。 それ以来、ディッキーはリプリーを敬遠するようになり、マージは優しく話しかけるものの、リプリーは阻害されていく。 そんな時、ディッキーがマージ以外に付き合っていた町の女性が自殺し、彼女の妊娠などを秘密にすることで、リプリーは、再び信頼を取り戻す。 やがてディッキーはサンレモに移ることを考え、下見にリプリーも同行させて、二人で音楽祭を楽しむ。 翌日、ボートで沖に出た二人は、サンレモが気に入り、移住する決意をする。 しかし、リプリーがその場でディッキーへの愛を告白し、それを拒絶したディッキーは、リプリーを侮辱して罵倒する。 二人は争いになり、リプリーがオールでディッキーを撲殺して、ボートごと沈めてしまう。 モンジベロに戻ったリプリーは、ディッキーがローマに住むという手紙を偽造してマージに渡す。 ホテルのフロントで、ディッキーに間違えられたことで、リプリーは、彼を存在させる計画を思いつく。 ローマで、自分とディッキーの名前でホテルに部屋を取ったリプリーは、街角でメレディスに再会する。 自分のことをディッキーと思い込むメレディスが、フレディとも知り合いだと気づいたリプリーは警戒する。 リプリーは、ディッキーの銀行口座から難なく現金を引き出し、メレディスとショッピングを楽しむ。 メレディスにオペラに誘われたリプリーは、そこで、マージと連れのピーター・スミス=キングスレー(ジャック・ダヴェンポート)に出くわす。 焦ったリプリーは、マージからディッキーのことを聞かれるが、メレディスに見つからないようにその場をしのぐ。 リプリーは、自分のマージへの思いと、これ以上の関係にはなれないことをメレディスに伝える。 翌日、メレディスは、スペイン広場のカフェでリプリーを待っていると、そこにマージとピーターが現れる。 メレディスが、ディッキー(リプリー)と待ち合わせしていると告げるとマージは驚き、彼が他人に心を惹かれたことを悲しむ。 しかしメレディスは、ディッキー(リプリー)がマージを愛していることを告げて、その場を立ち去る。 その後に現れたリプリーは、ディッキーが、昨夜オペラ会場にいたことをマージから聞くが白を切る。 リプリーは、ディッキーのアパートで優雅な暮らしをし始めるが、そこにフレディが現れる。 突然、姿を消したディッキーと、彼の物を身につけて部屋に住みつくリプリーを、フレディは不審に思い始める。 フレディは帰り際に、管理人がリプリーをディッキーと呼んだことで部屋に戻るが、彼に殴り殺されてしまう。 リプリーはフレディを事故死に見せかけ、翌日、ローマ警察のロヴェリーニ警部(セルジオ・ルビーニ)から事情聴取を受ける。 フレディを殺したのが、ディッキーであるかのように見せかけたリプリーは、彼の自殺を予告する手紙を偽装してベニスに向かう。 リプリーは、ベニスでピーターと落ち合い、地元警察に出向き、そこで、自分が書いたディッキーの手紙を見せられる。 ピーターと惹かれ合うようになっていたリプリーだったが、やがて、マージとグリーンリーフ氏がベニスに到着する。 自殺予告をした、息子の安否を気遣うグリーンリーフだったが、諦めの表情も見せる。 そんな時マージが、外すはずのないディッキーの指輪を見つけて混乱し、リプリーは、咄嗟に彼を悪者に仕立て上げようとする。 リプリーは、私立探偵のアルヴィン・マッカロン(フィリップ・ベイカー・ホール)から、ディッキーには知られたくない過去が多くあり、グリーンリーフが、逆に感謝していることを知らされる。 しかしマージは、ディッキー殺しはリプリーの仕業だと言い張り、再び取り乱してしまう。 リプリーはピーターと船旅に出るが、メレディスもその船に乗船していた。 メレディスは再会を喜ぶが、それを見ていたピーターは嫉妬し、リプリーを問い詰める。 そして、真相がバレるのを恐れたリプリーは、ピーターを殺害してしまう。
リプリーはディッキーに会い、彼の恋人で作家志望のマージ・シャーウッド(グウィネス・パルトロー)を紹介される。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
1950年年代後半、ニューヨーク。
エリートを装い上辺を良く見せて人に媚び諂う癖がある青年トム・リプリーは、造船会社社長グリーンリーフと知り合い、彼の息子の同窓生に成りすます。
ある日リプリーは、リーンリーフから、イタリアにいる彼の放蕩息子ディッキーを連れ戻して欲しいと、1000ドルの謝礼でそれを頼まれる。
リプリーはそれを引き受け、客船でナポリに向い、入国の際、富豪令嬢メレディスに話しかけられ、グリーンリーフの息子と間違えられる。
悪い癖が出たリプリーは、ディッキーだと名乗ってしまう。
その後、ディッキーに会ったリプリーは、彼の恋人マージを紹介される。
リプリーはディッキーに、父親に頼まれた用件を話すが、彼はそれを拒む。
その後、意気投合した3人は、ヨットやクラブ通いの豪遊を続ける。
貧しい身の上のリプリーは、ディッキーとの生活に驚きと憧れを抱き、やがて、彼に愛情を抱くようになるのだが・・・。
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パトリシア・ハイスミスの同じ原作”The Talented Mr. Ripley”を基にしたフランス映画「太陽がいっぱい」(1960)のリメイクではない。
南イタリアやローマ、ベニスなどの美しいロケと、1950年代の終わりの雰囲気が見事に表現された衣装なども素晴らしい。
前作の「イングリッシュ・ペイシェント」(1996)でアカデミー賞を獲得した監督アンソニー・ミンゲラは、厳しい生活環境から培った、独自の”才能”が、悪人ではないにしても、結局は殺人まで犯してしまうという、主人公”リプリー”の喜びと悲しみ、そして苦悩と挫折を見事に描写している。
しかし、繊細な人物描写とは裏腹に、主人公の身元などがバレないはずがない、状況設定などがやや気になる。
北米興行収入は約8100万ドル、全世界では約1億2900万ドルのヒットとなった。
第72回アカデミー賞では、助演男優(ジュード・ロウ)、脚色、作曲、美術、衣装デザイン賞にノミネートされた。
「グッド・ウィル・ハンティング」(1997)以後、話題作が続いていたマット・デイモンの、スターとしての地位を決定付けた作品で、彼の弱々しくも怪しげな魅力が注目だ。
ドラマの半ば前で殺害されてしまうものの、放蕩息子を演ずるジュード・ロウの熱演も見逃せない。
クライマックスで、ただの我がまま息子でなかったことがわかると、余計にその演技が際立って見えるところなども興味深い。
最後まで主人公リの犯行を疑わないグウィネス・パルトローも、前年「恋におちたシェイクスピア」(1998)でアカデミー主演賞を獲得した直後ということで、穏やかさと激しさを演じ分ける好演を見せてくれる。
もう少し、ドラマの展開に深入りするのではと期待もした実力派のケイト・ブランシェットは、役柄とは対照的に、やや抑えた演技ではあるが、さすがに存在感を発揮している。
いかにも、自由人という感じがよくでていた、ディッキー(J・ロウ)の友人フィリップ・シーモア・ホフマン、主人公と愛し合うが、結局は殺害されてしまうジャック・ダヴェンポート、息子の過去を隠しながら、主人公を雇い派遣する造船会社社長ジェームズ・レブホーン、短い出演だが彼の出演により物語が一段と引き締まる、私立探偵役のフィリップ・ベイカー・ホールなどが共演している。