1930年代のアメリカを舞台に、巧みに仕組まれた詐欺師たちのギャングへの復讐を描く、監督ジョージ・ロイ・ヒル、主演ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング、レイ・ウォルストン、アイリーン・ブレナン他共演のコメディ・ドラマの傑作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:デイヴィッド・ S・ウォード
製作
リチャード・D・ザナック
トニー・ビル
マイケル・フィリップス
ジュリア・フィリップス
撮影:ロバート・サーティース
美術:ヘンリー・バムステッド
装置:ジェームス・W・ペイン
衣装デザイン:イデス・ヘッド
編集:ウィリアム・H・レイノルズ
特殊効果:アルバート・ホイットロック
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ
ピアノ演奏:スコット・ジョプリン”エンターテイナー”
出演
ヘンリー”ショー”ゴンドルフ:ポール・ニューマン
ジョニー”ケリー”フッカー:ロバート・レッドフォード
ドイル・ロネガン:ロバート・ショウ
ウィリアム・スナイダー:チャールズ・ダーニング
J.J.シングルトン:レイ・ウォルストン
ビリー:アイリーン・ブレナン
キッド・トゥイスト:ハロルド・グールド
ポーク(FBI):ダナ・エルカー
ジョー・エリー:ジャック・キーホー
ルーサー・コールマン:ロバート・R・ジョーンズ
ロレッタ・サリーノ:ディミトラ・アーリス
フロイド:チャールズ・ディアコップ
ライリー:ジョン・クウェイド
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1973年製作 129分
公開
北米:1973年12月25日
日本:1974年6月1日
製作費 $5,500,000
北米興行収入 $156,000,000
■ アカデミー賞 ■
第46回アカデミー賞
・受賞
作品・監督・脚本・編集・音楽・美術・衣装デザイン賞
・ノミネート
主演男優(ロバート・レッドフォード)
撮影・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1936年9月、イリノイ州、ジョリエット。
詐欺師ジョニー”ケリー”フッカー(ロバート・レッドフォード)、ルーサー・コールマン(ロバート・R・ジョーンズ)、ジョー・エリー(ジャック・キーホー)の3人は、 ギャングの賭博の売上金1万1000ドルを騙し取ってしまう。
若いフッカーは、その大金を見て浮かれてしまい、3人で山分けする前に自分の取り分を使い込んでしまう。
賭博の元締めで、ギャングの大物ドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)は、金を奪った詐欺師達の抹殺を命ずる。
自分の取り分を一晩ですってしまった、腕はいいが無鉄砲なフッカーを戒めたルーサーは、足を洗う決心を伝える。
ルーサーは、フッカーをシカゴの旧友ヘンリー”ショー”ゴンドルフ(ポール・ニューマン)に預けることにする。 その後、フッカーが大金を手に入れたことを知り、その口止め料を要求する、悪徳警官ウィリアム・スナイダー(チャールズ・ダーニング)は、ロネガンが、3人を狙っていることも伝える。 スナイダーはフッカーから金を奪い、偽札とも知らずに彼を見逃す。 フッカーはルーサーの身を案ずるが、彼は既に殺されていた。 ● 仕掛け フッカーはルーサーの仇を討つため、シカゴのゴンドルフを訪ねるが、かつての大物は、意外にも堕落した生活を送っていた。 ゴンドルフは、ロネガンへの復讐を焦るフッカーに、大物の相手に対抗するための極意を教え始める。 ルーサーのためなら必ずや駆けつける、一流の詐欺師達J.J.シングルトン(レイ・ウォルストン)やキッド・トゥイスト(ハロルド・グールド)らを、ゴンドルフは、各地から呼び寄せる。 仲間達を集めたゴンドルフは、早速ロネガンの身辺調査を開始し、彼をどのような方法で騙すかを検討する。 そして、ロネガンをイカサマ・ポーカーと偽賭博”電信”で陥れる計画を練る。 その頃、フッカーに偽札をつかまされたスナイダーが、ゴンドルフの情婦ビリー(アイリーン・ブレナン)の店に現れるが、彼女の機転で何とかスナイダーを追い払う。 ● 引っかけ 偽の賭博場の手配を終え、トゥイストは詐欺のサクラ役の人選を始め、フッカーの相棒ジョーも仲間に加わる。 ゴンドルフは、列車内のポーカーに入り込み、酒浸りの男を演じて勝ちまくり、ロネガンを苛立たせる。 ロネガンは、負けを取り戻すためカードを摩り替えさせてイカサマを仕掛ける。 しかし、ゴンドルフはロネガンの上を行くイカサマで彼から大金を巻き上げることに成功する。 あらかじめ財布を盗んでおき、支払いが出来ないロネガンの元に、フッカーがゴンドルフを裏切る振りをして近づく。 フッカーは、ゴンドルフに恨みがあるように見せかけて、彼の経営する賭博場を乗っ取る計画を、ロネガンに提案する。 既に手を回していたロネガンは、殺し屋ライリー(ジョン・クウェイド)らにフッカーを始末させようとするが、彼は待ち伏せに気づき難を逃れる。 ● 筋書き フッカー殺害に失敗したロネガンは、プロ中のプロの殺し屋”サリーノ”の手配を部下に命ずる。 偽の賭博場では着々と準備が進み、いよいよ本番が近づこうとしていた。 フッカーは、手始めにロネガンに2000ドルを賭けることを指示して、思惑通りに彼に儲けさせる。 しかし、フッカーを信じきれないロネガンは、イカサマ賭博を裏で操っている電信支局長に会わせるよう要求してくる。 殺し屋の影と、スナイダーの執拗な追跡に悩むフッカーのために、ゴンドルフは秘策を考える。 ● 電信 シングルトンとトゥイストは、部屋の塗り替え作業員に扮して電信局に侵入し、トゥイストが支局長を演じてロネガンを騙す。 支局長(トゥイスト)に、もう一度イカサマ操作をするよう要求するロネガンは、今回も成功すれば、次に50万ドルを賭けると約束して立ち去る。 その頃、スナイダーは、FBIのポーク特別捜査官(ダナ・エルカー)に呼び出され、フッカーがゴンドルフと共謀し、詐欺を企んでいることを知らされる。 そしてスナイダーは、FBIがゴンドルフを逃がさないために、フッカーを逮捕するよう指示される。 ● 締め出し 二度目の賭けで儲けを逃したロネガンは、フッカーに50万ドル賭けることを告げる。 フッカーは、ダイナーで働くロレッタ(ディミトラ・アーリス)と親しくなり、彼女は殺し屋からフッカーを救う。 しかし、その殺し屋らしき男は、その後、”サリーノ”に殺されてしまう。 スナイダーに不意をつかれて捕まったフッカーは、ポークからゴンドルフ逮捕に協力するよう、断れない要求を突きつけられる。 そして、殺し屋から身を隠すため、フッカーはロレッタの部屋で一夜を過ごす。 ● 最後の一撃 翌朝フッカーは。ロレッタが姿を消したことに気づくが、現れた彼女は何者かに射殺される。 フッカーは、自分を追っていた殺し屋の”サリーノ”が、実はロレッタだったことを知らされ、危機一髪のところでゴンドルフの仲間に助けられたのだった。 現金を用意して、レースの情報を得たロネガンは、50万ドルを持参し賭博場に向かう。 賭博場が破産しかねない金額に、ゴンドルフはそれを受けるのを拒むが、ロネガンに腰抜け呼ばわりされて受けて立つ。 しかし、単勝と複勝を賭け間違えたロネガンは、狼狽えてしまう。 そこに飛び込んできたポークらFBIは手入れを始め、約束通りフッカーを逃がそうとする。 それを見たゴンドルフはフッカーを銃撃し、彼もポークに撃たれてしまう。 ポークは、ロネガンをその場から連れ出すよう、同行していたスナイダーに指示し、二人は足早に立ち去る。 しかしそれは、FBIを含め賭博場にいた全ての詐欺師が仕組んだ罠だった。 ロネガンから50万ドルを巻き上げたゴンドルフは、詐欺師達の仕事振りを称える。 そして、ルーサーの仇を討ち、スナイダーの追跡からも解放されたフッカーは、ゴンドルフと共に賭博場を後にする。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
ギャングの金を奪ってしまった詐欺師のジョニー”ケリー”フッカーフッカーは、恩師ルーサーを殺され、シカゴの大物詐欺師ゴンドルフの元に向かう。人望厚かったルーサーのために、若いフッカーを仕込むことを決めたゴンドルフは、仲間達を集め、ギャングのボス、ロネガンに復讐する計画を練る。
ゴンドルフは、イカサマ・ポーカーと巧妙に仕組まれた偽賭博で、ロネガンを罠にはめようとする。
そしてゴンドルフは、未熟なフッカーを仕込みながらの、詐欺計画を実行する・・・。
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「明日に向って撃て!」(1969)のジョージ・ロイ・ヒルと主演者ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが再び組んだ作品。
2005年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
多彩な出演陣の個性を丹念に描き、それを見事に生かした、ジョージ・ロイ・ヒルの切れ味のよい演出で、7つのシークエンに分かれる物語に引きこまれる。
観ている観客が、完全に騙されるという結末(脚本)も圧巻だ。
北米で約1億5600万ドルという、当時としては驚異的な興行収入を記録した。
第46回アカデミー賞では10部門にノミネートされ、作品、監督、脚本、編集、音楽、衣装デザイン、美術賞を受賞した。
・ノミネート
主演男優(ロバート・レッドフォード)
撮影、録音賞
アカデミー賞の常連イデス・ヘッド(本作でも受賞))の衣装、1930年代の雰囲気を見事に再現したセットや美術、街並みの特殊効果も素晴らしい。
同じくオスカーを受賞した、全編に流れるマーヴィン・ハムリッシュの音楽と、随所に挿入されるスコット・ジョプリンのテーマ曲”エンターテイナー”のメロディはドラマを大いに盛り上げる。
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの、師弟関係を越えた、計算し尽くされた絶妙の”騙し合い”(実は観客も騙される)や、共演者、詐欺師達の個性溢れる演技は見物だ。
当時どうも好きになれなかったロバート・レッドフォードの好感度が、私の中で一気に上がった作品でもある。
先に劇場に行った友人が、話が解りにくくてつまらないと言うので、全く期待していなかったにも拘わらず、自分自身は、その面白さを堪能したのを思い出す。
(当時、中学生)
貫禄十分な、まだ40代のポール・ニューマンや、競馬の実況担当レイ・ウォルストン、賭博場の裏を仕切る
ハロルド・グールド達の、全く胡散臭さを感じさせない、スマートなプロの詐欺師振りは見ていて痛快でもある。
結局は騙される、ギャングのボス、ロバート・ショウと悪徳警官チャールズ・ダーニングの、悪人でありながらどこかユーモラスで憎めないキャラクターや、詐欺師一味の紅一点アイリーン・ブレナンの、強かで気だるい演技も印象に残る。
結局は詐欺師だったFBI捜査官役のダナ・エルカー、フッカー(R・レッドフォード)の相棒ジャック・キーホーと師匠のロバート・R・ジョーンズ、こちらも観客は完全に騙されてしまう、女殺し屋ディミトラ・アーリスなどが共演している。