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スパイ The Spy in Black (1939)

映画史上に残る名コンビ、マイケル・パウエル(監督))とエメリック・プレスバーガー(脚本)が初めて組んだ作品で、1943年に2人が設立する映画制作会社”The Archers”以前の作品。
第一次大戦下、イギリス海軍の艦隊を攻撃する命令を受けたドイツ軍Uボートの艦長らの命懸けのスパイ戦を描く、主演コンラート・ファイトヴァレリー・ホブソンセバスチャン・ショーマリウス・ゴーリング共演によるドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト ■
監督:マイケル・パウエル

製作
アーヴィング・アシャー

アレクサンダー・コルダ
原案:J・ストラー・クラウストン
脚本:エメリック・プレスバーガー
撮影:バーナード・ブラウン
編集:ヒュー・スチュワート
音楽:ミクロス・ローザ

出演
ハルト艦長:コンラート・ファイト

ティール/ジル・ブラックロック:ヴァレリー・ホブソン
アシントン大尉/デヴィッド・ブラックロック:セバスチャン・ショー
フェリックス・シュースター大尉:マリウス・ゴーリング
ヘクター・マシューズ牧師:アソール・スチュワート
マシューズ夫人:アグネス・ラウチラン
ジョン・ハリス牧師:シリル・レイモンド
アン・バーネット:ジューン・デュプレ
Uボート士官:トリン・サッチャー
ハンス/ホテルのフロント係:バーナード・マイルズ

イギリス 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ

1939年製作 82分
公開
イギリス:1939年8月12日
北米:1939年10月7日
日本:未公開
製作費 £47,300


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1917年、キールドイツ軍艦隊基地。
帰港したばかりのUボート艦長ハルとは、休む間もなく出航を命ぜられる。

副官フェリックス・シュースター大尉(マリウス・ゴーリング)や士官(トリン・サッチャー)らと命令書を開封したハルトは、オークニー諸島スカパ・フローに向う任務を確認する。

ハルトは、全速前進を命じて、シュースターには、自分が、ホイ島イギリス海軍の艦隊基地のある場所にバイクで向うことを伝える。

その間、艦の指揮はシュースターが執り、ハルトは既にイギリスに潜入している女性工作員”ティール”と接触することになる。

その頃、名門ブリストル大学を卒業したアン・バーネット(ジューン・デュプレ)は、教師になるためオークニー諸島に向おうとしていた。
...全てを見る(結末あり)

アンを好意で車に乗せてあげた老婦人は、彼女を運転手と共に拉致し、崖から落とし殺害する。

アンに扮したティール(ヴァレリー・ホブソン)は、疑われることもなく、オークニー諸島ロングホープに向かう。

同じ頃、ホイ島沖に着いたハルトは、”オールド・マン・オブ・ホイ”付近に上陸し、ロングホープのティールの元に向う。

合言葉でお互いを確認した二人は、食事を済ませて、その夜に命令を知らせず、ティールは、ハルトを部屋に案内して眠ることになる。

翌朝、イギリス艦隊を眺めながら、ハルトは、主力艦15隻を沈めるという命令をティールから知らされる。

その方法を、イギリス海軍大尉で、ミスで船を沈めてしまい、ドイツ軍に寝返ったアシントン大尉(セバスチャン・ショー)から聞かされ、ハルトは、計画の成功を確信する。

アンは、隣接する学校で授業も始め、そこに、彼女の婚約である、ジョン・ハリス牧師(シリル・レイモンド)が訪ねて来るが、彼は拘束される。

その夜、ヘクター・マシューズ牧師(アソール・スチュワート)と妻(アグネス・ラウチラン)が現われ、ハリス牧師が、アンを連れて食事に来ると言っていた約束について意見しに現われる。

しかし、ティールは二人を言いくるめて、追い払うことに成功する。

ハルトは、一旦Uボートに向かい、シュースターに攻撃計画を伝えて準備をさせる。

ティールの元に戻ったハルトは、同行したアシントンを帰して、勝利を目前にそれを祝おうとして彼女を迫る。

それを拒んだティールは、外で待っていたアシントンの元に向うが、ハルトはその様子を物陰から見ていた。

アシントンは、実はデヴィッド・ブラックロック中佐であり、妻のジルと共に、ハルトから情報を入手し、攻撃のために集結する、Uボートを全滅させることを企んでいたのだった。

ブラックロックはジルを連れて船に向かい、家に戻り、部下と共にハルトを逮捕しようとする。

しかし、ハルトはハリスに扮してその場から逃亡し、ジルの乗る船に乗船する。

その頃、マシューズ牧師が、殺されたと思われたアンからの連絡で、イギリス側が送り込んでいたアンに扮した女性(ティール)が、二重スパイだったことを知らされて驚いてしまう。

ストロムネスに寄港した船に、味方の捕虜が8名乗せられたことをハルトは確認し、船員緒隙を見て捕虜達を解放し船を乗っ取る。

その頃、ブラックロックは、ハルトが牧師に扮して船に乗ったことを知り、巡視艇に連絡を入れる。

ハルトは、乗組員やジルら乗客を拘束し、機雷のある危険地帯を通り目的地に向おうとする。

ブラックロックは、船の前進を阻むために現地に向かい、必要であれば撃沈するようにという命令を受ける。

Uボートのシュースターは、ハルトが乗っているることを知らずに、確認した船に破裂弾を打ち込もうとする。

それに気づいたハルトは国旗を降ろし、シュースターに合図を送るが、彼は砲撃を始める。

ブラックロックらの駆逐艦も到着し、Uボートに気づき爆雷で攻撃を始めて撃沈する。

ハルトは、乗客や捕虜、そしてジルらを救命ボートで避難させて、船と共に海に沈んでいく。

ジルは、それを涙しながら見つめ、その後、夫の駆逐艦に救助される。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1917年。
ドイツ軍Uボートの艦長ハルトは、オークニー諸島イギリス海軍駆逐艦隊を攻撃する任務を受ける。
一方、ハルトを支援する工作員ティールは、女性教師アンに扮して現地に向かう。
ティールと合流したハルトは、イギリス海軍から寝返った大尉アシントンの情報を得て、攻撃作戦の成功を確信する。
一旦Uボートに戻ったハルトは、他の潜水艦も集結することを確認し、副官シュースターに、計画実行の準備をさせる。
ティールの元に戻り、勝利を確信したハルトは、美しい彼女に迫る。
しかし、それを拒んだティールは、ある作戦を遂行するために、アシトンの元に向うのだが・・・。
__________

まず注目したいことは、ドラマの舞台は第一次大戦なのだが、本作が公開されるのは、第二次大戦前夜の緊迫した状況下であることだ。
それを考えながら観ると、一層緊迫感が増し、また、戦争が、兵士達だけの戦いでなかったことが理解できる。

そんな、緊張感漂うドラマではあるが、イギリス映画らしいユーモアも交えた、軽快なマイケル・パウエルの演出と、エメリック・プレスバーガーの脚本で大いに楽しめる。

ナチス・ドイツが、ヨーロッパを制圧しようとする中、前年にイギリスの市民権を得ていた主演のコンラート・ファイトは、ドイツ人である身で、どんな気持で演じていたのかと思うと実に興味深い。
彼は、本作の他、翌年に「Contraband」、「バグダッドの盗賊」でマイケル・パウエル作品に出演している。
最も有名なのは、「カサブランカ」(1942)のハインリッヒ・シュトラッサー少佐役であるのはご承知の通りだが、本作でも、軍人としての誇りを胸に、作戦失敗の責任をとり潔く散っていく将校を見事に演じている。

彼に心を寄せながら、二重スパイとして祖国のために戦うヴァレリー・ホブソン、その夫であったイギリス海軍士官、後年「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」(1983)で、アナキン・スカイウォーカーを演ずるセバスチャン・ショー、主人公の副官役マリウス・ゴーリング、現地の牧師夫妻アソール・スチュワートアグネス・ラウチラン、女性教師ジューン・デュプレ、その婚約者の牧師シリル・レイモンドUボートの士官でトリン・サッチャー、そして、キールのホテルのフロントでバーナード・マイルズが共演している。


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