1988年に発表された、トマス・ハリスの小説”羊たちの沈黙”を基に製作された作品。 ハンニバル・レクター博士を主人公にしたシリーズの2作目(小説)となるサイコ・スリラーの傑作であり同年のアカデミー賞で主要部門を独占した。 監督ジョナサン・デミ、主演ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、テッド・レヴィン共演。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョナサン・デミ
製作総指揮:ゲイリー・ゲッツマン
製作
エドワード・サクソン
ケネス・ウット
ロン・ボズマン
原作:トマス・ハリス”羊たちの沈黙”
脚本:テッド・タリー
撮影:タク・フジモト
編集:クレイグ・マッケイ
音楽:ハワード・ショア
出演
クラリス・スターリング:ジョディ・フォスター
ハンニバル・レクター:アンソニー・ホプキンス
ジャック・クロフォード主任捜査官:スコット・グレン
ジェーミー・ガム/バッファロー・ビル:テッド・レヴィン
フレデリック・チルトン医師:アンソニー・ヒールド
アーデリア・マップ:ケイシー・レモンズ
キャサリン・マーティン:ブルック・スミス
ルース・マーティン上院議員:ダイアン・ベーカー
ボイル:チャールズ・ネイピア
アメリカ 映画
配給 オライオン・ピク チャーズ
1991年製作 118分
公開
北米:1991年2月14日
日本:1991年6月22日
製作費 $19,000,000
北米興行収入 $130,719,210
世界 $272,742,920
■ アカデミー賞 ■
第64回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
主演男優(アンソニー・ホプキンス)
主演女優(ジョディ・フォスター)
脚本賞
・ノミネート
編集・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ヴァージニア州、クワンティコ。
FBIアカデミーの訓練生クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)は、上司のジャック・クロフォード主任捜査官(スコット・グレン)に呼び出される。
スターリングは、州立精神病院に収監されている、患者を殺し人肉を食するという、天才的な洞察力を持つ精神科医ハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)に面会し情報を得るようクロフォードに命ぜられる。
クロフォードにとってそれは、連続猟奇殺人犯バッファロー・ビル(テッド・レヴィン)の捜査の手がかりを得るための情報収集でもあった。
州立精神病院のフレデリック・チルトン医師(アンソニー・ヒールド)から、レクターについて聞かされたスターリングは、単独で面会することをチルトンに許される。
スターリングは、厳重な警備の中、緊張しながらレクターの監房に向かう。 頭脳明晰なスターリングを、レクターの洞察力や言動が圧倒し、彼女は打ちひしがれる。 レクターの言葉から、彼の使っていた倉庫を見つけたスターリングは、そこで瓶詰めされた生首を見つける。 スターリングは、その件をレクターに問い質し、彼はバッファロー・ビルが、既に次の獲物を見つけたことを予言する。 テネシー州、メンフィス。 ウェストヴァージニア州、クレイ郡。 遺体の検死を始めたスターリングは、喉の奥に詰まっていた、珍しい種類の蛾のさなぎのようなものを見つける。 キャサリンの誘拐事件が明らかになり、スターリングは本格的なバッファロー・ビルに関する捜査協力を、レクターに依頼する。 犯人よりもスターリングの心理分析に興味をもつレクターは、彼女の身の上を知る見返りに、徐々にバッファロー・ビルの手がかりに関する分析を始め、スターリングは事件の謎を紐解き始める。 バッファロー・ビルが性的異常者だと分析するレクターは、性転換手術を希望した彼が、病院でそれを断られた可能性があることを指摘する。 その間バッファロー・ビルは、怯えるキャサリンを古井戸に閉じ込め監禁していた。 精神病院のチルトン医師は、スターリングとレクターの会話を盗聴し、この機会を利用して、レクターの収監を解き、マーティン上院議員のために動いていることをアピールしようとする。 そして、レクターはマーティン上院議員と対面することになりメンフィスに移送される。 レクターと会ったマーティンは、彼の権利を保障することを約束し、バッファロー・ビルに関する情報を得る。 しかし、レクターはマーティンを侮辱する発言をして、彼女に追い払われる。 スターリングは、待機してホテルに監禁されているレクターに会う。 キャサリンを救出するための、時間がなくなっているにも拘らず、スターリングは、再びレクターに幼い頃に両親を亡くし、牧場に預けられた時のことを聞かれる。 スターリングは、殺される子羊の泣き声で目がさめ、それを逃がそうとして自分も逃亡した時のことを語る。 キャサリンを見つけ出せば、子羊の悪夢が消え去るかもしれないと言うレクターに、スターリングはバッファロー・ビルの本名を聞こうとするのだが、チルトンに締め出されてしまう。 夕食を届けられたレクターは、隙を見て監視員ボイル(チャールズ・ネイピア)らを殺し、一人の顔面の皮を剥いでその監視員に扮し、救急車で搬送される途中に逃亡してしまう。 それを知らされたスターリングは、手がかりが隠されているという、レクターから渡された資料を参考にして、オハイオ州の犠牲者の女性の家に向かう。 そこでスターリングは、バッファロー・ビルが人間の皮膚で衣服を作ろうとしていることを知り、クロフォードにそれを報告する。 犯人”ジェーミー・ガム”を特定したというクロフォードの連絡を受け、スターリングはシカゴ郊外の現場に向かう。 その頃キャサリンは、ガムの愛犬を井戸の中に誘い込み、彼を動揺させる。 イリノイ州、カリュメット・シティ。 手がかりをつかんだスターリングは、ある家を訪ね、対応した”ジャック・ゴードン”という男に、家の中に誘い入れられる。 男がガムだと確信したスターリングは、”バッファロー・ビル”と対決することになる。 銃を構えたスターリングだったが、ガムは隙を見て姿を消し家の奥に逃れる。 それを追うスターリングは、地下室の井戸のキャサリンを発見する。 恐怖と緊張を必死で抑えながら、スターリングは、さらに家の奥へと向かいガムを追うが、灯りを消され辺りが見えない状態になってしまう。 ガムは赤外線スコープでスターリングを捉えていたのだが、彼女は周りが見えず手探り状態だった。 そして、ガムが拳銃の撃鉄を起こした瞬間、スターリングは振り向きざまに彼に銃を連射する。 銃弾は窓ガラスを割り、床に倒れるガムを陽の光が照らす。 ガムは息絶え、キャサリンは無事解放され、スターリングはクロフォードに労を労われる。 その後、スターリングは晴れて捜査官となり、クロフォードに感謝する。 FBIアカデミー卒業パーティーの席上、スターリングは一本の電話を受ける。 電話の相手だったレクターは、子羊の悲鳴が消えたかをスターリングに尋ね、”古い友人”(チルトン医師)を夕食に招くと言って電話を切る。
...全てを見る(結末あり)
レクターの指摘した通り、バッファロー・ビルは次の犯行を実行し、ルース・マーティン上院議員(ダイアン・ベーカー)の娘キャサリン(ブルック・スミス)を拉致する。
バッファロー・ビルの手口だと思える、女性の遺体が発見され、スターリングはクロフォードと共に現場に向かう。
ジェーミー・ガムの家を包囲したクロフォードら捜査官らだったが、家に誰もいないことが分かる。
参考:
・「羊たちの沈黙」(1991)
・「ハンニバル」(2001)
・「レッド・ドラゴン」(2002)
・「ハンニバル・ライジング」(2007)
*(簡略ストー リー)
FBIアカデミーの訓練生クラリス・スターリングは、主任捜査官クロフォードに、天才的な洞察力を持つ精神科医でもある殺人鬼ハンニバル・レクター博士との面会を命ぜられる。
クロフォードは、連続猟奇殺人犯のバッファロー・ビルを逮捕する手がかりを得るための情報収集をスターリングにさせようとしていた。
スターリングはレクターに面会するものの、彼に圧倒されてしまう。
しかしスターリングは、持ち前の粘り強さで、自分に興味を持ったレクターから、謎解きのような情報を入手していく。
その後、上院議員の娘が誘拐され、レクターは、それを利用して逃亡する。
そしてスターリングは、以前の犯行を手がかりにして、バッファロー・ビルの所在を確定する・・・。
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目を被いたくなるような被害者の死体や写真、または、レクターの残虐性があまりにリアルに描写されて問題にもなった作品。
おぞましいシーンが度々登場する中で、流れるような場面展開と、ジョナサン・デミの細やかな演出が注目だ。
例えば、レクターと接するどころか近づくことさえ許されないクラリスの手を、彼の指が一瞬そっと触れるシーンなどは、レクターの異常な人物像を十分見せられた後だと、その恐怖感が一層増すわけで、それを描写した一連のカットなども素晴らしい。
2011年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第64回アカデミー賞で、作品、監督、主演男優(アンソニー・ホプキンス)、主演女優(ジョディ・フォスター)、脚本賞と主要部門を独占した。
・ノミネート
編集・録音賞
北米興行収入は約1億3000万ドル、全世界では約2億7300万ドルのヒットとなった。
映画史上に残るキャラクター、天才精神科医にして狂気の殺人鬼、ハンニバル・レクター博士を演じたアンソニー・ホプキンスは、並外れた知性と洞察力を見事に表現し、不気味なまでの怖さはすさまじい迫力がある。
同じく、「告発の行方」(1988)に続き20代で早くも2度目のアカデミー主演賞を受賞したジョディ・フォスターも、FBI訓練生でありながら、レクターと堂々渡り合う才女を見事に演じ、実力派女優としての彼女の地位を築いた記念すべき作品となった。
余談だが、ジョディ・フォスターは、子役で活躍したスターが成人しても成功した数少ないケースだと言える。
彼女の上司役スコット・グレンも、訓練生を支える主任捜査官を好演している。
最近は、かなり渋くなってきたテッド・レヴィンの、レクターに迫る猟奇殺人鬼の異常者ぶりも強烈に印象に残る。
*「ライト・スタッフ」(1983)ではスコット・グレン、TVドラマ「人類月に立つ」(1998)ではテッド・レヴィンが、それぞれアメリカ人初の有人宇宙飛行に成功するアラン・シェパードを演じているのは何かの縁だろうか?
精神医療施設でのレクターの担当医アンソニー・ヒールド、スターリング(J・フォスター)の同僚捜査官ケイシー・レモンズ、誘拐される女性ブルック・スミス、その母親で上院議員のダイアン・ベーカー、レクター(A・ホプキンス)に殺害される監視員役のチャールズ・ネイピアなどが共演している。
アカデミー賞授賞式では、司会のビリー・クリスタルがレクターに扮し登場し、監督賞受賞のジョナサン・デミのスピーチが長くて、場内からブーイングが起きたことなどを懐かしく思い出す。