コカイン依存症で苦しむ名探偵シャーロック・ホームズの治療のため親友の医師ワトソンが著名な精神科医ジークムント・フロイトの力を借りようとする中で巻き込まる事件を描く、製作、監督ハーバート・ロス、主演アラン・アーキン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ロバート・デュバル、ローレンス・オリヴィエ、ジョエル・グレイ他共演のサスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ハーバート・ロス
製作総指揮
アーリン・セラーズ
アレックス・ウィニツキー
製作:ハーバート・ロス
原作:ニコラス・メイヤー”The Seven-Per-Cent Solution”
キャラクター創造:アーサー・コナン・ドイル”シャーロック・ホームズシリーズ”
脚本:ニコラス・メイヤー
撮影:オズワルド・モリス
編集:クリス・バーンズ
衣装デザイン:アラン・バーレット
音楽:ジョン・アディソン
出演
ジークムント・フロイト:アラン・アーキン
ローラ・デヴロー:ヴァネッサ・レッドグレーヴ
ジョン・H・ワトソン:ロバート・デュバル
シャーロック・ホームズ:ニコル・ウィリアムソン
ジェームズ・モリアーティ教授:ローレンス・オリヴィエ
ローエンスタイン:ジョエル・グレイ
メアリー・モースタン・ワトソン:サマンサ・エッガー
カール・フォン・ラインスドルフ男爵:ジェレミー・ケンプ
マイクロフト・ホームズ:チャールズ・グレイ
フロイト夫人:ジョージア・ブラウン
アミン・パシャ:ガータン・クラウバー
マダム:レジーヌ
ホームズ夫人:ジル・タウンゼント
ハドソン夫人:アリソン・レガット
イギリス/アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1976年製作 113分
公開
北米:1976年10月24日
日本:1977年4月16日
■ アカデミー賞 ■
第49回アカデミー賞
・ノミネート
脚色・衣装デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1891年10月24日、ロンドン、ベーカー街221B。
医師ジョン・H・ワトソン(ロバート・デュバル)は、親友の探偵シャーロック・ホームズ(ニコル・ウィリアムソン)から、4カ月ぶりに連絡を受ける。
ホームズを訪ねたワトソンは、主人ハドソン夫人(アリソン・レガット)からホームズの様子を聞き彼に会う。
ジェームズ・モリアーティ教授(ローレンス・オリヴィエ)を疫病神、悪の天才と呼んで、自分を狙っていると言って動揺するホームズが、コカインを摂取しているのは明らかだった。
ホームズのことを案じながら帰宅したワトソンは、診療所に来ていたモリアーティから話を聞く。 モリアーティは、ホームズが自分を陥れようとしていると言うのだ。 ホームズが抱く誤解を解こうとするモリアーティは、自分が、彼と兄マイクロフト(チャールズ・グレイ)の家庭教師だったと語る。 ある悲劇があった為にというモリアーティは、ワトソンがそれを知らないことに気づいて焦りその場を去る。 その後、ホームズを救うには、ウィーンの精神科医の力を借りるしかないことを、ワトソンは妻メアリー(サマンサ・エッガー)に伝える。 翌日ワトソンは、マイクロフトに会うためクラブに向かい、ウィーンの心理学者とモリアーティの件を伝え、ホームズを旅立たせるために協力を求める。 モリアーティの屋敷に向かったマイクロフトは、半ば強制的に、彼をウィーンに行かせようとする。 ホームズからの電報を受けたワトソンは、旅支度をして探偵犬トビーを伴い彼の元に向かう。 ワトソンを待ち構えていたホームズは、モリアーティにバニラエッセンスの香りを付けておいたことを伝えて、トビーにそれを嗅がせて追跡を始める。 大陸連絡船行き急行に乗り、その後、海を渡った二人は旅を続ける。 オーストリア、リンツ。 ウィーン。 馬車で案内された場所で、トビーの行動に従いある部屋を訪ねたホームズは、モリアーティを捜す。 しかし、現れたのは精神科医であるジークムント・フロイト(アラン・アーキン)で、ホームズは、モリアーティがその場にいないため、ワトソンが何かを企んでいたことに気づく。 フロイトは、ワトソンとマイクロフトが、モリアーティに旅をさせて、それを追わせたことをホームズに伝える。 ホームズの、自分についての知識やその場の観察力に感心したフロイトは、彼が麻薬中毒であり、病気だということを認めるべきだと率直に伝える。 その言葉に納得したホームズだったが、立ち直るのは容易でないことを伝える。 しかし、自分も麻薬中毒だったと語るフロイトは、必ず克服できるとホームズを励まし、催眠術療法を始める。 ホームズを眠らせたフロイトは、ワトソンと共に彼の荷物を調べて、コカインが隠されていることを知る。 暫くしてホームズは、モリアーティが蛇として現れる幻覚を見て、興奮しながら目覚め、フロイトはその内容を聞く。 更に叫び始めたホームズを見たワトソンは、彼を殴って気絶させる。 その後、ホームズの想像を絶する”魔物”との戦いは始り、フロイトは、死もあり得ることをワトソンに伝える。 数日後、落ち着いたホームズは、ワトソンに酷いことをしたことを謝罪し、フロイトに見守られながら眠る。 病気よりも、療法の方に害があることも気にするフロイトは、ホームズがコカインを始めた理由を突き止めない限り、完治はあり得ないとワトソンに語る。 気晴らしにスポーツ・クラブに向かったフロイトとワトソンだったが、カール・フォン・ラインスドルフ男爵(ジェレミー・ケンプ)に嫌味を言われる。 ユダヤ人だということで、フロイトが男爵から侮辱を受けたため、ワトソンが彼に言い寄る。 自分がけりをつけると言うフロイトは、男爵とテニスで勝負をする。 逆転で勝利したフロイトは、男爵に恥をかかせえてその場を立ち去る。 その後フロイトは、症状が落ち着いたホームズを連れて病院に向かう。 患者のローラ・デヴロー(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を診察したフロイトは、彼女がメゾソプラノ歌手であることを知るホームズに、麻薬中毒が再発して自殺を図ったことを伝える。 ホームズは彼女の様子を見て、他人に麻薬を注射されたことを指摘する。 足の傷などを見て、ローラがとった行動の細かな分析を始めたホームズは、目覚めた彼女から、誘拐された時の状況を聞く。 モンテカルロで、ラインスドルフ男爵に会う約束だったローラは、それが、自分を誘い出すための罠であったことを語る。 ローラから、駅に迎えに来た者の人相を聞いたホームズらはカフェに向かい、体調が万全でない状態で、この件を調査する場合には、どんな行動をとるかをフロイトに尋ねられる。 発作が起き始めたと言って動揺するホームズだったが、フロイトに調査の方法を聞かれる。 ホームズは、客の男が自分達をつけてきたと言って、彼を調べるようフロイトに伝える。 フロイトは、その男ローエンスタイン(ジョエル・グレイ)が、ローラを誘拐した男の人相と似ていることに気づく。 ローエンスタインを尾行した三人は、室内馬場に誘い込まれて、現れた馬に襲われる。 これが罠だと気づいたホームズは、その場から逃れて、二人を連れて病院に急ぐ。 その頃、ローラの部屋に現れたラインスドルフ男爵は、フロイトの許可を得たと言って彼女を退院させてしまう。 病院にローラがいないことを知ったホームズは、トビーを連れてくるようフロイトに指示する。 その場のユリに気づいたホームズは、ローラが自分を追うように落としたと確信し、それを目印に彼女を捜す。 娼館にたどり着いたホームズとワトソンだったが、推理を働かせたフロイトは、既にその場で待ち構えていた。 ホームズとワトソン、ローラと共に誘拐された看護師が殺されていることを知る。 犯人が、ラインスドルフ男爵だと気づいたホームズらだったが、その場に落ちていた、トルコのタバコと絨毯の糸を見つける。 ホームズは、リンツで見かけたアミン・パシャがローラのファンであると考え、赤毛の女性を好む彼が、この件に絡んでいると推理する。 そこにローエンスタインが現れ、ホームズは銃を向けて誘拐の件を聞き出そうとする。 モンテカルロで、大きく賭けに負けたラインスドルフ男爵の借金を、肩代わりしたパシャは、愛人のローラを要求し、コカインを与えて言いなりにした。 パシャの元から逃げたローラを捜した男爵は、自分達を惑わすためにローエンスタインを囮に使ったとホームズらは考える。 ワトソンは、ローエンスタインからパシャの居場所を聞き出し、彼がイスタンブールに向かうことを知る。 駅に着いたホームズは、イスタンブールに急行するよう汽車の機関士を脅す。 その後、石炭がなくなってしまい、パシャの列車に追いつくために、ホームズらは車両を壊して燃料にする。 パシャの専用列車を確認し、追いついたホームズは、男爵が乗っていることに気づく。 ホームズは、後方車両を切り離してスピードを上げるが、男爵も同じ手を使う。 前方に向かったホームズは、男爵側の列車に乗り移り、二人は決闘することになり剣を交える。 二人は車両の屋根で戦い、それを見たフロイトも、足の悪いワトソンを残して前方に向かう。 車両に乗り移ったフロイトは、パシャに銃を向けてローラを救う。 ホームズは、ワトソンのいる車両に戻り、彼の目の前で男爵を倒す。 事件を解決させてウィーンに戻ったホームズは、フロイトの催眠治療のお陰でほぼ完治したことを感謝する。 ワトソンにも礼を言ったホームズは、フロイトから、もう一度催眠治療を行い、心の奥底にあるものを調べたいと言われる。 子供時代に、浮気をした母を父が殺したことを話したホームズは、その相手がモリアーティだったと語る。 フロイトは、眠ることで全てを忘れるとホームズに伝える。 ホームズが語った話で、彼の考えなどを理解したフロイトは、ワトソンに名探偵だと言われる。 唯の心理学者だと答えるフロイトは、ホームズを目覚めさせて、告白を覚えていない彼を旅立たせようとする。 その後ホームズは、コカインを忘れる休養だと言って、独りで旅を続けることをワトソンに伝える。 ワトソンとトビーに別れを告げて、ブダペストに向かう船に乗ったホームズは、その場でローラと再会する。 そして二人は、長旅になることを確認して、それを楽しむことで意見が一致する。
...全てを見る(結末あり)
ホームズとワトソンは、オスマン帝国の総理大臣アミン・パシャ(ガータン・クラウバー)を見かけて、彼が赤毛の女性を気にしているのを目撃する。
トビーがある馬車に反応し、それに老人が乗ったことを確認したホームズとワトソンは、それがモリアーティだと確信し彼を捜そうとする。
*(簡略ストー リー)
1891年10月24日、ロンドン、ベーカー街221B。
名探偵シャーロック・ホームズは、疫病神、悪の天才と考えるモリアーティ教授に襲われると考え、コカインに頼り依存症で苦しんでいた。
医師ワトソンは親友の苦しみを知り、ウィーンの著名な精神科医ジークムント・フロイトの力を借りようとする。
ワトソンは、ホームズの兄マイクロフトの協力を得て、モリアーティを利用してウィーン行きの計画を立てる。
ウィーンに着いたホームズは、自分がここに来た理由を知り、フロイトの睡眠療法を受けて禁断症状と戦い克服する。
その後ホームズは、フロイトの患者で麻薬依存症のオペラ歌手ローラが、ある事件に巻き込まれたことを知り、それを調査しようとするのだが・・・。
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お馴染みアーサー・コナン・ドイルの推理小説”シャーロック・ホームズシリーズ”と、ニコラス・メイヤーの小説”The Seven-Per-Cent Solution”を基に製作された作品。
ダンサー、振付師でスタートして映画監督に転身して、キャリアを積んでいたハーバート・ロスが演出した快心のミステリー・サスペンス。
アラン・アーキン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ロバート・デュバルという、現在でも活躍を続ける実力派の共演、彼らの脇を固める名優、バイプレイヤー、特に、映画、演劇界の至宝ローレンス・オリヴィエの出演など、今観るととてつもないキャストにまず驚かされる。
原作者ニコラス・メイヤー自身による味にある脚本、ハーバート・ロスの小気味よい演出、物語の舞台は19世紀末だが、1970年代の映画製作の作風が感じられる、貴重な作品として楽しめる。
第49回アカデミー賞では、脚色・衣装デザイン賞にノミネートされた。
ファースト・クレジットではあるが、主人公と言えるシャーロック・ホームズの活躍を邪魔しない形でサポートする、精神科医ジークムント・フロイト役のアラン・アーキン、彼の患者であるソプラノ歌手ヴァネッサ・レッドグレーヴ、彼にとって深刻な問題の対処と事件なのだが、どこかユーモラスな雰囲気で、シャーロック・ホームズ役を好演するニコル・ウィリアムソン、親友で医師のワトソン役であり、”英国語”をきっちりと話そうとする姿や頼もしさが印象的なロバート・デュバル、出番は多くはないが、流石に存在感を感じるモリアーティ教授役のローレンス・オリヴィエ、男爵役のジェレミー・ケンプの手下ジョエル・グレイ、ワトソンの妻サマンサ・エッガー、ホームズの兄マイクロフト役チャールズ・グレイ、フロイト夫人ジョージア・ブラウン、オスマン帝国の総理大臣ガータン・クラウバー、ベーカー街221Bの主人アリソン・レガット、娼館のマダム、レジーヌ、ホームズ夫人ジル・タウンゼントなどが共演している。