1962年に発表された、リチャード・マッケナの小説”The Sand Pebbles”を基に製作された作品。 1920年代の混乱期の中国を舞台に、自らの考えを貫き通すアメリカ人水兵の生き様を描く、製作、監督ロバート・ワイズ、主演スティーブ・マックイーン、リチャード・アッテンボロー、リチャード・クレンナ、キャンディス・バーゲン、マコ岩松共演によるドラマ。 |
・ドラマ
・スティーヴ・マックイーン / Steve McQueen 作品一覧
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・ワイズ
製作:ロバート・ワイズ
脚本
リチャード・マッケナ(原作)
ロバート・アンダーソン
撮影:ジョセフ・マクドナルド
編集:ウィリアム・H・レイノルズ
美術・装置
ボリス・レヴン
ウォルター・M・スコット
ジョン・スタートヴァント
ウィリアム・キーンマン
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演
ジェイク・ホルマン:スティーブ・マックイーン
フレンチー・バーゴイン:リチャード・アッテンボロー
コリンズ艦長:リチャード・クレンナ
シャーリー・エッカート:キャンディス・バーゲン
メイリー:エマニュエル・アルサン
ポーハン:マコ岩松
ジェームソン:ラリー・ゲイツ
ボーデレス少尉:チャールズ・ノックス・ロビンソン
ストウスキー:サイモン・オークランド
ハリス:フォード・レイニー
ブロンソン:ジョー・ターケル
クロスリー:ギャビン・マックロード
ヴィクター・シュウ:ジェームズ・ホン
チン少佐:リチャード・ロー
チェン:トミー・リー
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1966年製作 182分
公開
北米:1966年12月20日
日本:1967年3月18日
製作費 $12,000,000
北米興行収入 $20,000,000
■ アカデミー賞 ■
第39回アカデミー賞
・ノミネート
作品
主演男優(スティーブ・マックイーン)
助演男優(マコ岩松)
編集・撮影(カラー)
作曲・録音・美術賞(カラー)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1926年。
中国は、内乱と外国からの圧力で荒廃していた。
群雄割拠のこの国も、革命による国家統一の気運は芽生え始めていた。
__________
上海。
揚子江上のアメリカのパトロール船、砲艦サンパブロの1等機関兵として配属されるジェイク・ホルマン(スティーブ・マックイーン)は、街で羽目を外す間もなく目的地に向かう。
途中、船上でホルマンは、アメリカ人宣教師ジェームソン(ラリー・ゲイツ)と伝道教師シャーリー・エッカート(キャンディス・バーゲン)らと知り合う。
ジェームソンは、民衆を搾取してきた外国の象徴である砲艦の存在を嫌っていた。 混乱する内政に興味のないホルマンは、彼らの話に干渉するのを避ける。 エッカートはホルマンに興味を持つが、機関兵としての職務と居場所に関心があるだけの彼は、素っ気無い言葉を返すだけだった。 その後ホルマンは、エッカートらに別れを告げてサンパブロに向かい、2等機関兵のフレンチー・バーゴイン(リチャード・アッテンボロー)に迎えられる。 フレンチーから、機関室のボスになれると聞いたホルマンは、早速、機関室に向かいエンジンに”挨拶”する。 翌朝、乗組員と言葉を交わしたホルマンは、艦内を中国人が支配し、機関室も、その例外でないことを知る。 気のいいポーハン(マコ岩松)のような中国人もいたのだが、機関室を仕切ろうとするチェン(トミー・リー)は、ホルマンの存在が気に入らず嫌がらせをする。 憤慨するホルマンだったが、同じ機関兵のストウスキー(サイモン・オークランド)に、艦内のルールに従うようなだめられる。 それに納得いかないホルマンは、フレンチーから詳しい事情を聞くが、あくまで機関兵としての役目を果たそうとする。 艦長コリンズ(リチャード・クレンナ)の巡航命令で、艦は出航するが、チェンを無視して作業を続けるホルマンは、クランクの危険を察知する。 ホルマンはコリンズ艦長にそれを報告し、修理が必要だということを伝えるが却下されてしまう。 艦長の全速命令に、対応できない機関室に現れた少尉ボーデレス(チャールズ・ノックス・ロビンソン)は、現状を見て修理が必要と判断し、それを報告する。 コリンズ艦長が見守る中、修理は始まるが、作業を買って出たチェンが、クランクに挟まる事故が起きる。 作業はホルマンが引き継ぎ終了するがチェンは死亡し、その責任の所在を、ホルマンは、コリンズ艦長から問われる。 前回の、オーバーホールの不備を指摘したホルマンだったが、艦長は彼に、後任の中国人を育てるよう命令する。 中国人は、チェンが死んだのをホルマンの責任にして、彼は艦長に、甲板勤務に戻るよう命ぜられてしまう。 その後、上陸したホルマンは、酒場でフレンチーと出くわし、艦長の命令への愚痴をこぼす。 フレンチーは、酒場の女メイリー(エマニュエル・アルサン)に一目惚れするものの、ストウスキーが彼女を独占しようとする。 メイリーに、しつこく迫るストウスキーに、フレンチーは噛み付く。 店主のヴィクター・シュウ(ジェームズ・ホン)に、メイリーが200ドルだと言われたストウスキーは、彼女から手を引く。 その後、メイリーはフレンチーとテーブルを共にし、200ドルあれば彼女が自由になれることをフレンチーは知る。 艦に戻ったホルマンは、ポーハンに目を付け、彼をチェンの後継者に育てようとする。 各部の名称も、まともに言えないポーハンに戸惑いながらも、ホルマンは熱心に機関室の仕組みを教えていく。 ポーハンと親交を深めたホルマンだったが、ストウスキーはそれが気に食わず、ポーハンを追い出そうとする。 ストウスキーはポーハンを殴り倒そうとするが、それをホルマンが制止する。 ホルマンは、ポーハンがストウスキーを叩きのめすと断言したため、二人は殴り合いの勝負をすることになる。 メイリーを買うために、ストウスキーは200ドルを稼ごうとするが、ホルマンは、ポーハンが勝った場合は彼の立場を保障させる。 そして、酒場での殴り合いは始まり、怖気づくポーハンは、逃げ回りながらストウスキーのパンチを食らってしまう。 劣勢のポーハンは、負ければ艦を追い出されることを知り、捨て身の反撃を見せてストウスキーを倒してしまう。 しかし、共産軍が人民を煽り、暴徒がサンパブロを襲おうとしたため、乗組員は直ちに乗艦して出航する。 コリンズ艦長は乗組員を集め、内戦に関与する訳にはいかない立場を伝え、アメリカ人宣教師のジェームソンらの救出に向かう命令を出す。 しかし、ジェームソンが待ち合わせ場所に現れなかったため、ボーデレス少尉は、ホルマンとフレンチーを連れて伝道所に向かう。 エッカートと再会したホルマンは、ジェームソンがアヘンの栽培容疑で、死刑判決を受けたことを知らされる。 釈放されていたジェームソンは上告するため、長沙に向かうサンパブロに便乗することを決める。 艦に戻ったホルマンらだったが、ポーハンが中国人暴徒に捕われて、拷問を受ける。 見かねたホルマンは、ポーハンを苦しみから救うために射殺する。 エッカートは、ホルマンの心情を察して彼を労わるが、彼の行動は群衆の反米感情を煽ってしまい、コリンズ艦長から、転属を強要される。 長沙に着いたサンパブロは、民衆の抵抗に遭いながらも寄港して、ジェームソンに同行しボーデレス少尉らが上陸する。 しかし、ボーデレス少尉は、領事館を占拠した、国民党軍のチン少佐(リチャード・ロー)に追い返されてしまう。 ボーデレス少尉らは屈辱を受けながら艦に戻り、乗組員は行きつけの酒場に限り上陸が許可される。 ホルマンとフレンチーは酒場に向かい、200ドルでシュウにメイリーの引渡しを要求する。 しかし、先客がメイリーの値を吊り上げようと、彼女を競りにかける。 侮辱されるメイリーを、救おうとしたフレンチーとホルマンは騒ぎを起こし、彼女を連れ去り、用意しておいた宿に連れて行く。 フレンチーは、違法と知りながらメイリーとの結婚を決意し、それをホルマンに伝える。 ホルマンはエッカートを誘い休暇を楽しみ、なかなか身の上を語ろうとしないホルマンから、エッカートは何とか話を聞き出す。 その後、フレンチーは、ホルマンとエッカートの立会で、メイリーと結婚する。 式を終えたホルマンはエッカートに心を開き、二人は惹かれ合うのだが、ホルマンは、彼女との生きる世界の違いを告げる。 民衆のデモや運動は激しさを増し、サンパブロは数ヶ月の間、動きが取れなくなり、無罪となったジェームソンとエッカートは伝道所に戻る。 上陸も禁止されたフレンチーはメイリーを気遣い、船を抜け出して彼女の元に向かう。 領事館への伝達を命ぜられたホルマンは、フレンチーの様子を見に行くが、彼は肺炎で息絶えた後だった。 ホルマンは、身重のメイリーを連れて伝道所に行こうとするが、彼女は捕らえられそうになる。 それに抵抗したホルマンだったが、メイリーはその隙に逃亡して殺される。 ホルマンが犯人とされ、中国側は彼の引渡しを要求するが、コリンズ艦長は、国際問題を避けるためにホルマンをかばおうとする。 ストウスキーら乗組員は、ホルマンを自首させようとするが、彼は機関室に閉じ篭ってしまう。 その後、国民党軍が現れ、ホルマンの引渡しを要求するが、コリンズ艦長はあくまでそれを拒絶する。 乗組員は、コリンズ艦長の意向に反してホルマンを引き渡そうとするが、艦長は水面を機銃掃射し、騒ぎを鎮圧させて出航命令を出す。 部下の反乱を鎮めたものの、艦内の秩序を保てなかった責任を感じ、コリンズ艦長は自殺も考える。 しかし、蒋介石が南京を占拠し、アメリカ海兵隊の上海上陸の報せ受けた艦長は、事件の名誉を挽回することを考えて、ジェームソンら宣教師救出のためサンパブロを出航させる。 上流に向かい、封鎖箇所に着いたサンパブロは戦闘態勢に入る。 砲撃を始めながら、コリンズ艦長自ら先陣を切って敵陣に攻撃を仕掛け、激しい攻防の末、防御線を突破する。 コリンズ艦長とホルマンらは、伝道所に向かうものの、ジェームソンは国籍を放棄して、その場に残ることを艦長に伝える。 国民党の、学生義勇軍に支援されるというジェームソンの意見を無視し、コリンズ艦長は、彼らを連れて帰ろうとする。 しかし、ホルマンはその命令に逆らい、伝道所に残ることを艦長に告げる。 ジェームソンは、押し入ってきた国民党軍に射殺され、コリンズ艦長とホルマンらが応戦する。 艦長は、ホルマンらを逃がすために伝道所に残ろうとするが、その後、射殺される。 ホルマンは、エッカートを救うために、彼女をブロンソン(ジョー・ターケル)らに託し、武器を受け取り一人残る。 何人かの兵士を殺し、十分に時間を稼いだホルマンだったが、敵の銃弾を受けてしまう。 ホルマンは、”国にいたのに・・・、何があったのか・・・、いったいどうなっているのか・・・”と叫んだ後、止めを刺される。 そして、逃げ延びたエッカートらは、サンパブロに向かう。
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*(簡略ストー リー)
揚子江上を巡回パトロールする砲艦サンパブロに、主任機関士としてジェイク・ホルマンが配属される。
ホルマンは、艦内で、中国人に下働きをさせている独自のルールに馴染めないまま、次第に孤立していく。
ただ一人彼を理解するフレンチーが、中国人女性メイリーを愛し救うことにホルマンは手を貸す。
その後ホルマンは、伝道教師としてこの地に来ていた女性エッカートとは惹かれ合うものの、生きる世界が違うことを悟り距離を置く。
やがて内政は混乱し、サンパブロにも危険が迫る。
そして、フレンチーの死をきっかけに、ホルマンは軍を捨ててこの地に残り、エッカートとの生活を決意するだが・・・。
__________
前年の「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)、そして「ウエスト・サイド物語」(1961)で、2度のアカデミー監督賞を受賞した、社会派としての作風を踏まえたロバート・ワイズの、ヒューマニズム溢れる仕上がりは、外国への侵略が招く悲劇を痛烈に批判して、当時のアメリカの、ベトナム戦争関与と重ね合わせて描かれている。
第39回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門にノミネートされた。
・ノミネート
作品
主演男優(スティーブ・マックイーン)
助演男優(マコ岩松)
編集・撮影(カラー)・作曲・録音・美術賞(カラー)
セットでは表現しにくい物語だけに、香港、台湾でのオールロケは、その雰囲気と共に見応えある描写となっている。
ジェリー・ゴールドスミスの、哀愁漂い、力強さも感じる主題曲は心に残る。
実生活そのもののような、信念を曲げない反骨の機関兵を演じた、スティーブ・マックイーンの演技は絶賛され、寡黙でありながら、その表情や身のこなしをフルに利用した表現力は、ハリウッドの数多いスターの中でも異彩を放つ存在となった。
小柄だが動きに無駄がなく、主人公の不幸な生い立ちは、現実のマックイーンを投影しているようで、正に当たり役だったと言える。
機関室での仕事振りは、機械いじりを得意とするマックイーンが、楽しそうに演じている様子が窺えて、その手際の良さは職人のようにも見える。
マックイーンとは、「大脱走」(1963)でも共演したリチャード・アッテンボローも、悲哀を感じる見事な演技を見せてくれる。
後にナイトの称号も受け一代貴族ともなり、監督、プロデューサーとしても活躍し「ガンジー」(1982)ではアカデミー賞も受賞、人格者としても有名な彼は、この頃は、数多くの名作に出演して、重要な脇役として活躍した。
「ランボー」(1982)シリーズでも有名なリチャード・クレンナも、ヒロイズムのために行動する、辺境の地の旧式砲艦の艦長を好演している。
キャンディス・バーゲンの上品な美しさも然る事ながら、撮影当時19歳とは思えない、落ち着いた演技が素晴らしい。
揃ってアカデミー賞の演技賞にノミネートされた、マコ岩松の、マックイーンとの息の合った演技も見ものだ。
これ以後約40年間、日本人俳優の第一人者として、彼がハリウッドに残した功績は非常に大きい。
後に作家に転身し、「エマニエル夫人」などを発表するエマニュエル・アルサンは、本作ではマラヤット・アンドリアンヌの名前で出演している。
その他、悪役と言うより、やんちゃな暴れん坊という雰囲気のサイモン・オークランドや、信念を貫く宣教師ラリー・ゲイツも印象に残る。
真摯な態度で任務をこなす、サンパブロの副官のチャールズ・ノックス・ロビンソン、酒場のオーナー役でジェームズ・ホン、砲艦の機関室を仕切る中国人トミー・リーなどが共演している。