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午後の曳航 The Sailor Who Fell From Grace With the Sea (1976)

1963年に発表された、三島由紀夫同名小説(英訳出版1965年)を基に製作された作品。
知性や感性を研ぎ澄ますために結成された秘密クラブのメンバーである少年が未亡人の母親と船乗りの関係に接して完璧な秩序、美と見る意識それが軽蔑へと変わる姿を描く、監督、脚本ルイス・ジョン・カルリーノ、主演サラ・マイルズクリス・クリストファーソン他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:ルイス・ジョン・カルリーノ

製作:マーティン・ポール
脚本:ルイス・ジョン・カルリーノ
原作:三島由紀夫午後の曳航
撮影:ダグラス・スローカム
編集:アントニー・ギブス
音楽:ジョン・マンデル

出演
アン・オズボーン:サラ・マイルズ

ジム・キャメロン:クリス・クリストファーソン
ジョナサン・オズボーン/3号:ジョナサン・カーン
パーマー夫人:マーゴ・カニンガム

首領:アール・ローデス
2号:ポール・トロピア
4号:ゲイリー・ロック
5号:スティーブン・ブラック
リチャード・ペティット:ピーター・クラハム
メアリー・イングラム:ジェニファー・トールマン

イギリス/日本 映画
配給 Sailor Company
1976年製作 104分
公開
北米:1976年4月11日
日本:1976年8月28日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
イギリス南部。
小さな港町に住む、13歳の少年ジョナサン・オズボーン(ジョナサン・カーン)は、夜中に家を抜け出し、3号と呼ばれ、首領(アール・ローデス)、2号(ポール・トロピア)、4号(ゲイリー・ロック)らと待ち合わせをする。

彼らは、知性や感性を研ぎ澄ますために結成された秘密クラブを作っていたが、首領は、父親の所持していた男女の性交渉の写真を仲間達に見せる。

ただ興味本位にそれを見るメンバーに、図抜けた知性と感性の持ち主である首領は、知的な好奇心を感じ得ようとしないことを非難する。

帰宅したジョナサンは、家政婦のパーマー夫人(マーゴ・カニンガム)に見つかってしまい、夜中の外出を母親アン(サラ・マイルズ)に禁じられ、部屋の鍵を奪われ、夜は監禁の身となってしまう。
...全てを見る(結末あり)

翌日の外出もアンに禁じられたジョナサンは、その場では言うことを聞くが、納得いかずに、自分の部屋を荒らしてしまう。

その時、アンの寝室との壁板の節が外れ、中が覗ける穴となっていることに気づいたジョナサンは、一応、言われた通りに部屋の片づけを済ませる。

アンは、町で、リチャード・ペティット(ピーター・クラハム)とメアリー・イングラム(ジェニファー・トールマン)に骨董店を任せる、その経営者だった。

その夜からジョナサンは、アンの部屋を覗き始める。

集会に顔を出さなかった5号(スティーブン・ブラック)は、学校で首領に嫌がらせを受けて、次回の参加を強要される。

ある夜ジョナサンは、亡くなった夫の写真を見ながら、アンが自慰するのを見てしまう。

翌日、誰もいない屋敷にクラブのメンバーを招いた首領だったが、大人達の作った規制を軽蔑し始め、それを理解できないメンバーを罵り追い出してしまう。

そんな時、港に、ボストンの貨物船”ベル”が入港し、アンはジョナサンを伴い船に向う。

許可を得ていたアンは、二等航海士ジム・キャメロン(クリス・クリストファーソン)に船内を案内さる。

ジョナサンは、船内の様子に興味を持ち満足し、一目でキャメロンに惹かれてしまったアンは、彼に感謝して夕食に誘う。

帰宅したアンは、ジョナサン以上に今日の出来事を喜び、興奮してしまう。

その夜、食事をしたアンとジムは、彼女が3年前に亡くなった夫のことを、彼は海とは縁のなかった土地で育ちながら、船乗りに憧れたことなどを話す。

浜辺を歩いたアンはジムを自宅に誘い、二人は何度も愛し合い、そして、それをジョナサンは見つめる。

ジョナサンは、自分の見た美しい姿を首領に語り、ジムが自然と一体化する、海の一部であることなどを熱く語る。

首領はそれを否定して大人達の愚かさを説き、飼い猫を解剖して心臓を摘出し、これこそが生命の中心だと言って、その美しさをメンバーに見せる。

やがて、ジムの船は出港し、彼とアンは手紙で連絡を取り合っていた。

それを知った首領は、大人の考えることは同じで、ジムは必ず戻って来ると言って、彼を英雄視するジョナサンの夢を打ち砕く。

ジョナサンは首領を批判して殴りかかるが、やがて、ジムの船が再び入港する。

アンは喜び勇みジムを港に迎えに行き、彼は、風邪で寝込んでいたジョナサンに会う。

ジョナサンは、首領が言った通りにジムが戻ってきたため、完璧さを感じていた彼のイメージは崩れ去り歓迎できず、愛し合っている二人を覗き見して不機嫌になる。

その後、心の拠り所を見つけたジムは、アンに結婚を申し込み、彼女はそれを受け入れる。

首領に対して面目が立たないジョナサンだったが、さらに、反抗したことで5号に格下げされてしまう。

そして、アンは、ジムと結婚することをジョナサンに告げて、彼は一応、二人を祝福するが、それがジョークだと思いたいのが現実だった。

ジョナサンは悲しみ、完璧に思えた秩序を崩したジムに、罰を与えることを考える。

覗き穴の前で眠ってしまったジョナサンは、光が漏れていたためにそれが、アンとジムに見つかってしまう。

アンは取り乱し、それがジムが来る前からだったことを知り激怒する。

ジムは、ジョナサンに母親への謝罪をさせて、彼を許す。

それは、ジョナサンにとっては叱られるよりも酷い仕打ちであり、彼は二度と首領を疑わないことを誓う。

それらを綴ったジョナサンの日記を読んだ首領は、彼を理解して、ジムを、猫と同じ目に遭わせる必要があることをメンバーに伝える。

ジョナサンは、航海や嵐に遭ったことを友人達が聞きたがっていることをジムに伝え、彼を誘き出す。

”ベル”が出航する姿が見える、高台に向ったジムは、ジョナサン達に嵐の話をし始める。

紅茶を飲みながら話を続けるジムは、大海に向かうベルを見下ろしているうちに意識を失う。

そして少年達は、処刑の準備を始める。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
イギリス南部。
港町に住む、骨董店を経営する未亡人アン・オズボーンは、息子で13歳の息子ジョナサンと暮らしていた。
ジョナサンは、知性や感性を研ぎ澄ますために結成された秘密クラブに入っていた。
その中の首領と呼ばれる少年は、図抜けた知性などで、堕落した大人達の世界を軽蔑するが、他のメンバーにはそれが理解できない。
夜中に外出し、集会に参加していたジョナサンは、母アンにそれを知られ、その後、夜は監禁状態になる。
部屋を片付けるようアンに言われたジョナサンは、彼女の寝室を覗ける穴を見つけてしまい、母の様子を観察するようになる。
そんな時、港に、ボストンからの貨物船が到着し、ジョナサンを連れて船内を見物しに行ったアンは、二等航海士ジムと出会い、二人はその瞬間に惹かれ合ってしまう。
ジョナサンは、二人が愛し合う様子を覗いてしまい、その美しさ、そして自然体のジムに、完璧な秩序を感じてしまうのだが・・・。
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原作の舞台である横浜を、イギリスの港町に移し、官能的ラブ・ロマンスが、一気にサスペンス・スリラー・タッチに変貌する、ショッキングな内容の後半まで、ルイス・ジョン・カルリーノの演出は、優美な描写の中に緊張感も漂う展開で進む。

後に”インディアナ・ジョーンズ”シリーズなども活躍するダグラス・スローカムの、ロングショットなどを多用した撮影も印象的だ。

主演のサラ・マイルズクリス・クリストファーソン共に世界的な名声を得ていたものの、小作ということで、北米では殆ど話題にはならなかった作品でもある。

しかし、二人の演技は、当然のごとく手抜きはなく、サラ・マイルズらしい感情表現と、野性味を感じさせる、包容力のあるクリス・クリストファーソンの演技は確かなものと言える。

加えて、物語の中心的な存在として印象深い、主人公の息子ジョナサン・カーンや、首領役のアール・ローデスは、美形の顔立ちから発する知的な言葉や行動などの怖さが、作品に強烈なインパクトを与えている。
二人は、その後も含め、殆どキャリアがないのは残念だ。

主人公の屋敷の使用人マーゴ・カニンガム、秘密クラブのメンバー、ポール・トロピア、ゲイリー・ロック、スティーブン・ブラック、骨董店を任されるピーター・クラハムとジェニファー・トールマンなどが共演している。


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