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河 The River (1951)

1946年に発表された、ルーマー・ゴッデンの小説”The River”を基に製作された作品。
インドガンジス河流域で暮らす3人の少女の恋と聖なる河と共に生きる人々の生活を描く、監督、脚本ジャン・ルノワール、出演ノラ・スウィンバーンエズモンド・ナイトアーサー・シールズ、パトリシア・ウォルターズ、エイドリアン・コリラーダ・バーニエ他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:ジャン・ルノワール

製作:ケネス・マッケルダウニー
原作:ルーマー・ゴッデン”The River”
脚本
ルーマー・ゴッデン
ジャン・ルノワール
撮影:クロード・ルノワール
編集:ジョージ・ゲール
音楽:M・A・パーサ・サラティ

出演
母親:ノラ・スウィンバーン
父親:エズモンド・ナイト
ジョン:アーサー・シールズ
ナン:スプロバ・ムケルジー
ハリエット:パトリシア・ウォルターズ
ヴァレリー:エイドリアン・コリ
メラニー:ラーダ・バーニエ
ジョン大尉:トーマス・E・ブリーン
ナレーター:ジューン・ヒルマン

フランス/インド/アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1951年製作 99分
公開
北米:1951年9月10日
日本:1952年6月24日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
インドベンガル地方
ガンジス河沿いにある製麻工場を経営するイギリス人の父(エズモンド・ナイト)と母(ノラ・スウィンバーン)、4人の妹、双子のマフィーとマウス、エリザベスとヴィクトリア、そして弟ボギーと暮らす14歳のハリエット(パトリシア・ウォルターズ)は、乳母のナン(スプロバ・ムケルジー)に育てられ、にぎやかな日々を送る。

工場主の娘で18歳のヴァレリー(エイドリアン・コリ)は、イングランドの学校を卒業し、毎日、友人のハリエットの家に遊びに来ていた。

ある日、隣人のアメリカ人ジョン(アーサー・シールズ)のいとこで、第二次大戦で片足を失った青年ジョン大尉(トーマス・E・ブリーン)が船で到着する。
...全てを見る(結末あり)

現地の女性である妻を亡くしたジョンは、この地で人生の大半を過ごしていた。

ジョン大尉に興味を持ったヴァレリーとハリエットは、彼を”ディーワーリー”に招くために招待状を書く。

ジョンの家に向かったハリエットは、彼の娘メラニー(エイドリアン・コリ)が西欧の学校を卒業して帰ってきたことを知り再会を喜ぶ。

父ジョンに歓迎されたメラニーは、ジョン大尉を紹介される。

ジョン大尉は、隣人のハリエットを紹介されて挨拶する。

その場にいたメラニーの幼馴染のアニールは、彼女との結婚を希望していた。

ジョン大尉にパーティーの招待状を渡したハリエットは、ジョンと共に、”光の祭り”と言われるディーワーリーの説明をする。

パーティーは開かれ、ハリエットとヴァレリーらは、ジョン大尉を意識しながら楽しく過ごす。

ヴァレリーに誘われダンスをしたジョン大尉は、一旦休んで義足を気にする。

ハリエットとナン、そしてメラニーは、大人の振りをしてジョン大尉と接しようとするヴァレリーの様子を見守る。

その後、ヒンドゥー教の女神”カーリー”は、最後の儀式のために河に運ばれて役目を果たす。

数日後、ジョンとジョン大尉は、”サリー”を身にまとったメラニーの美しさに驚く。

父がアニールとの結婚を望んでいることを知ったメラニーだったが、脚のことなどで悩み心を閉ざすジョン大尉が気になる存在となっていた。

美しいとは思えない自分の容姿を気にするハリエットは、ジョン大尉のことなどを考えながら、きれいになりたいと母に話す。

戦争では英雄だったものの、社会に戻ると単なる片足の男だと考えるジョン大尉は、人々の哀れみの目を気にする日々を送っていた。

製麻工場を見学するものの、それほど興味がわかないジョン大尉は、河に向かい、自分とは違う信仰に守られた人々の生き方に接する。

その後、瞑想していたジョンと話したジョン大尉は、冒険するべきかは自分で考えるべきだと助言される。

バザールで、門番のラム・シンとボギーと共にヘビ使いを見ていたハリエットは、ジョン大尉に気づき彼の後を追う。

コブラを欲しがるボギーは、ラム・シンに連れて行かれる。

河にいたジョン大尉に近づくものの声をかけなかったハリエットは、自分に気づいた彼と話す。

ジョン大尉に秘密にしているものを見せると伝えたハリエットは、屋敷に戻り、彼に自分が書いた詩を見せる。

ハリエットに美しい詩だと伝えたジョン大尉は、馬に乗って現れたヴァレリーの元に向かう。

苛立つハリエットは悔し涙を流し、その場にいたボギーに慰めてもらう。

その後、ヴァレリーと話したハリエットは、ジョン大尉に好かれていると言って、彼女もジョン大尉が好きだということを確認する。

失意のハリエットは、気晴らしに屋上で凧を上げていた際、現れたジョン大尉が手伝ってくれたために楽しい時を過ごす。

友人のカヌーと共に聖なる木、菩提樹でコブラを捜していたボギーは、ラム・シンに呼ばれて屋敷に戻る。

サラスヴァティー”の祭りが近づき、ハリエットは、学問と芸術の女神に、大尉を振り向かせる言葉を与えてほしいと願った。

クリシュナ”の物語を書くことにしたハリエットは、寄り添うジョン大尉とヴァレリーの前で、その内容を語り始める。

主人公のモデルはメラニーとアニールであり、物語に登場する女性は、親が選んだ相手との結婚を拒むことはできなかった。

若者が忘れられないまま結婚の準備をした女性は、幸せとは言えない状況で、初めて花婿と対面する。

花婿があの若者だったために驚いた女性は、幸せを感じる。

若者は”クリシュナ”となり、女性は”ラーダー”となった。

物語を聞き終え、ハリエットのノートを奪ったヴァレリーは、ジョン大尉のことを書いた彼女の日記を読んでしまう。

からかわれたハリエットは、ヴァレリーからノートを奪い返して憤慨し、二人を許さないと言ってその場を去る。

後悔したジョン大尉は、ヴァレリーから輪投げをしたいと言われ、そんな気になれないと伝えるものの、彼女と遊び始める。

躓いたジョン大尉は脚をひねり倒れてしまい、寄り添うヴァレリーが体に触れることを拒み、近づくなと言って追い払う。

ジョン大尉は、ナンと共に現れたラム・シンに支えられながらその場を去る。

ナンから事情を訊かれたヴァレリーは、ジョン大尉から、触るな、近づくなと言われたと答える。

その後、ジョン大尉が帰ることになり、ハリエットとヴァレリーは塞ぎ込む。

ナンから、好きな人が病気だったら、自分であれば花を届けると言われたハリエットは、それを実行しようとする。

菩提樹で笛を吹くボギーがコブラを呼び寄せていることを知ったハリエットは、屋敷に戻るようにと指示する。

ハリエットはその場を去り、指示に従わなかったボギーは、笛を吹きコブラを呼び寄せる。

同じ家に居ながら、遠慮してメラニーと話もしなかったジョン大尉は、出て行くのでどうでもいいことだと言いながら、自分はよそ者だと彼女に伝える。

苛立ちながら自分はまともな男だとメラニーに伝えたジョン大尉は、片足の人々の国にでも行くのかと言われる。

考えがまとまらないもどかしさを伝えながら、メラニーに謝罪したジョン大尉は、彼女から、自分に何ができるか訊かれるものの、分からないと答える。

ジョン大尉から、自分が嫌っているのかと訊かれたメラニーは、自分自身が嫌いだと伝えてその場を去る。

二人の様子を見ていたハリエットは、メラニーについて行くジョン大尉の後を追い、ヴァレリーもそれに続く。

ヴァレリーに気づいたハリエットは、身を隠しながら二人を追う。

メラニーの考えが理解できないジョン大尉は戸惑い、彼を先に見つけたヴァレリーは、無礼な態度をしたことを彼から謝罪される。

ジョンとキスしたヴァレリーは、初めての体験だったために動揺する。

その様子をメラニーと共に見ていたハリエットは、ショックを受ける。

ジョン大尉から旅立つと言われたヴァレリーは、あなたとの別れは辛いとは思わない、庭で皆やあなたと過ごした思い出との別れが辛いと彼に伝える。

あのままで、ずっと終わらせたくなかったと言うヴァレリーは、夢を終わらせたのはあなたであり、夢の方が良かったとジョン大尉に伝える。

ジョンは、家に戻ったメラニーの悲しい表情が気になる。

屋敷に戻り母に呼ばれたハリエットは、ディーワーリーの時から心が痛み、おかしかったと涙しながら伝える。

ハリエットは、愛について話す妊娠している母から、愛する男性の子を産むのは女の幸せであり、今はその準備をしていると言われる。

船乗りになって逃げだしたい気分だと話すハリエットは、自分なら弟と遊んであげると言う母に、そんなことはもうしないと伝える。

ハリエット、母、ラム・シン、ナンや妹達が昼寝をしている間に、ボギーはカヌーと共に菩提樹に向かう。

目覚めたハリエットは、ボギーの姿が見えないことに気づき、その場から走り去るカヌーを追う。

カヌーは去ってしまい、落ちていた笛を拾ったハリエットは、倒れていたボギーを見つける。

コブラに咬まれたボギーは亡くなり、家族や隣人に見守られながら葬儀が行われる。

食事をする気になれないハリエットは、ボギーがいなかったように振舞う母を非難する。

それを否定する母から、前に進むしかないと言われたハリエットは、コブラのことは知っていたと伝える。

母から分かっていると言われたハリエットは席を外し、ナンは、ジョン大尉に夢中にになっていなければ、彼女はコブラのことを話したはずだと伝える。

耐えられないと言って泣き崩れる妻を、夫は気遣う。

秘密の部屋に向かったハリエットは、ボギーのことを想うヴィクトリアの声に気づく。

屋敷の門の前にいたカヌーは、河に向かうハリエットについて行く。

船に乗ったハリエットに置いて行かれたカヌーは、人々にそのことを教える。

ジョン大尉と話したメラニーは、ボギーのことを考える彼から、自分たちは何をするべきかと訊かれ、受け入れることだと答える。

ジョン大尉は、片足であることを嫌っても、あるのは片足だけだと言われる。

なぜ人は不平ばかり口にするのかと言うメラニーの問いに、ジョン大尉は、自分は抵抗していると答える。

メラニーから、自分もそう思ったが違うことが分かったと言われたジョン大尉は、もうよそ者ではないようだと伝える。

二人は、ラン・シンとカヌーと共に現れたジョンから、ハリエットがいなくなったことを知らされる。

入水自殺しようとしたハリエットは漁民に救われるが、家に戻ることを拒んだ。

現われたジョンに、皆、自分が死ねばいいと思っていると伝えたハリエットは、それを否定される。

飛び込んで死ぬようなことをする人間ではなく、生きることを再び始めるようにとハリエットに伝えたジョン大尉は、あらゆる出来事や出会いが何より大切だと助言する。

以前にも言われたような気がするハリエットは、それがヴィクトリアが話していたことを思い出す。

苦笑するジョン大尉に、死ぬ思いをしたことがあるか尋ねたハリエットは、2~3度あると言われる。

今回のことを誰にも言わないことを約束してくれたジョンに寄り添うハリエットは、自分の詩は西暦4000年になっても読まれているかもしれないと話すジョン大尉に愛を告げる。

ハリエットは、おでこにキスしてくれたジョン大尉から家に帰ると言われ、手を借りたい様子の彼に、誰が好きなのか尋ねる。

ジョン大尉は、皆が好きだと答える。

その後、人々は春の訪れと共に祭りを楽しむ。

母の出産の日、メラニーとヴァレリーと共に父に呼ばれたハリエットは、三人に届いたジョン大尉からの手紙を受け取る。

父やメラニーとヴァレリーと共に、女の子の誕生を知ったハリエットは、思わず笑ってしまう。

ヴァレリーとメラニーと共に部屋の外で話すハリエットは、生まれた子と自分たち、ガンジス河や世界のすべてのもののことを考えながら産声を聞く。

河は流れ、一日中、地球は回る、太陽と夜空の星や月は巡り、1日が終わり、そして終りが始まる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
インドベンガル地方
ガンジス河沿いにある製麻工場を経営するイギリス人の父と母、4人の妹と弟と暮らす14歳のハリエットは、にぎやかな日々を送っていた。
隣人のジョンのいとこジョン大尉が到着し、ハリエットは、18歳の友人ヴァレリーと共に彼に惹かれてしまう。
現地の女性である妻を亡くしたジョンは、戦争で片足を失ったジョン大尉を歓迎する。
ディーワーリー”の祭りにジョン大尉を招くことを考えたハリエットとヴァレリーは、招待状を持ってジョンの家に向かう。
西欧の学校を卒業して戻ったジョンの娘メラニーとの再会を喜ぶハリエットは、ジョン大尉に招待状を渡す。
ディーワーリーは盛大に行われ、ハリエットとヴァレリーは楽しい時間を過ごす。
そんな時メラニーは、脚のことで心を閉ざしているように思えるジョン大尉が気になる存在となる・・・。
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「黒水仙」の作者で知られるルーマー・ゴッデンが、幼い日々にインドで暮らした体験を綴った自叙伝的な原作を基に、彼と共に脚本を担当したジャン・ルノワールの監督作品。

大筋は三人の少女の恋物語ではあるが、聖なる河ガンジス流域で暮らす人々の生活感や、神に対する考えなどを繊細に描くジャン・ルノワールの演出は秀逸だ。

特に、三人の少女の一人ハリエットの回想的ナレーションで進行していく中で、彼女が創作した”クリシュナ”と”ラーダー”の物語の、神話的幻想シーンの素晴らしさは圧巻だ。

三人の少女の中で、メラニーを演じ表情に知性を感じるラーダ・バーニエは、故郷”アッドヤー”の”神智学協会”の会長を亡くなる2013年まで30年間務め、1960~1978年には、インド社会協会会長も歴任したことで知られている。

第12回ヴェネチア国際映画祭では、受賞作「羅生門」と共に金獅子賞にノミネートされ、”International Award”を受賞した。

製麻工場を経営する主人公の父親エズモンド・ナイト、思慮深いその妻を演ずるノラ・スウィンバーン、その隣人であるアメリカ人のアーサー・シールズ、主人公一家の乳母スプロバ・ムケルジー、恋の他に様々な経験をして成長する主人公のパトリシア・ウォルターズ、その友人エイドリアン・コリ、同じく友人で、父(アーサー・シールズ)とインド人の母の間に生まれた少女ラーダ・バーニエ、三人の少女が憧れる片足の大尉トーマス・E・ブリーン、そして主人公の少女期を回想するナレーターはジューン・ヒルマンが担当している。


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