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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There Will Be Blood (2007)

1927年に発表された、アプトン・シンクレアの小説”Oil!”(石油!)の映画化。
はみ出し者の野心家の成功と挫折を描く、製作、監督、脚本は注目のポール・トーマス・アンダーソン、主演ダニエル・デイ=ルイスポール・ダノケヴィン・J・オコナーキアラン・ハインズ共演の大河ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ヒューマン)

ダニエル・デイ=ルイス / Daniel Day-Lewis / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ポール・トーマス・アンダーソン

製作
ジョアン・セラー

ポール・トーマス・アンダーソン
ダニエル・ルピ
製作総指揮
スコット・ルーディン

エリック・シュローサー
原作:アプトン・シンクレア
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:ロバート・エルスウィット
編集:ディラン・ティチェナー
美術・装置
ジャック・フィスク

ジム・エリクソン
音楽:ジョニー・グリーンウッド

出演
ダニエル・デイ=ルイス:ダニエル・プレインヴュー
ポール・ダノ:ポール/イーライ・サンデー
ケヴィン・J・オコナー:ヘンリー・ブランド
キアラン・ハインズ:フレッチャー・ハミルトン
ディロン・フリーシャー:H・W・プレインヴュー
ラッセル・ハーヴァード:H・W(成人)

アメリカ 映画
配給
Paramount Vantage
ミラマックス

2007年製作 158分
公開
北米:2007年12月26日
日本:2008年4月26日
制作費 $25,000,000
北米興行収入 $40,218,900
世界 $76,181,550


アカデミー賞 ■
第80回アカデミー賞

・受賞
主演男優(ダニエル・デイ=ルイス
撮影賞
・ノミネート
作品・監督・脚色・編集・美術・音響編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1898年、ニューメキシコ州
山師ダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、単独で金を、そして1902年には石油を掘り当てる。

1911年。
石油採掘の交渉に向かうプレインヴューは、その場に必ず息子のH・W(ディロン・フリーシャー)を伴い、強引且つ迅速な作業を売り物に次々と採掘権を手に入れていく。

ある日、ポール・サンデー(ポール・ダノ)という青年が現れ、カリフォルニアの小さな町リトル・ボストンに、石油が眠っているという情報をプレインヴューに売ろうとする。

プレインヴューとH・Wは、早速その土地を訪ね、ウズラ狩りを装い周辺の土地の調査を始める。

その土地に石油があることを確認したプレインヴューは、土地を買い叩こうととするが、ポールの双子の弟イーライ(ポール・ダノ)が横槍を入れる。
...全てを見る(結末あり)

プレインヴューは、仕方なく試掘をして、石油が出た場合には、”第3の啓示教会”の牧師であるイーライに5000ドル寄付することを約束する。

そこが、石油の眠る宝の土地だということをプレインヴューは確信し、イーライの土地の周辺の地主を調べ上げ、全てを手に入れようとする。

仕事仲間のフレッチャー・ハミルトン(キアラン・ハインズ)らを呼び寄せたプレインヴューは、油井とやぐらを建設して作業を開始する。

スピリチュアル・ヒーリングを取り入れる、カリスマ牧師でもあるイーライは、プレインヴューに教会に通うよう助言する。

しかし、そんな暇のないプレインヴューは、イーライの布教をショー程度にしか思っていなかった。

そんなある日、油井から石油が噴出するが、そのショックで吹き飛ばされたH・Wは聴力を失い、油井は炎上して、やぐらは崩れ落ちてしまう。

金を要求するイーライにプレインヴューは、”聖霊の宿主”で治癒師であるにも拘らず、H・Wを治せないのかと、彼を責め殴り倒す。

イーライは、”第3の啓示教会”に5000ドル支払う義務があることを主張するが、プレインヴューの気持ちは収まらなかった。

そんな時、プレインヴューの弟だという、ヘンリー・ブランド(ケヴィン・J・オコナー)が現れる。

ヘンリーを不審に思ったプレインヴューだったが、彼一人では手に負えない仕事の助手として一応は歓迎する。

聴力が回復せず、心を閉ざすH・Wは精神的に不安定になり、家に火を放ってしまう。

プレインヴューは、自分の手に負えなくなったH・Wを、遠方のサンフランシスコに送り、ヘンリーを助手にして仕事に励む。

スタンダード・オイルからの100万ドルの土地買収提案を蹴ったプレインヴューは、ユニオン・オイルとの有利な契約に署名する。

しかしプレインヴューは、兄弟なら知っているはずのことを知らなかったヘンリーが、弟でないことに気づき彼に脅しをかける。

ヘンリーが詐欺師で、結核で死んだプレインヴューの弟の友人だということを白状させる。

プレインヴューは激怒し、ヘンリーを射殺して埋葬する。

パイプラインを通したい土地の地主から、第3の啓示教会で洗礼を受け信徒になれと言われ、さらにヘンリー殺害を知っているような素振りを見せられたプレインヴューは仕方なく教会を訪れる。

そしてプレインヴューは、イーライから息子を見捨てた罪を許され、彼の信徒の仲間入りをして、パイプラインを引くことに成功する。

プレインヴューは、H・Wを呼び戻して手話を習わせ、同じ頃、イーライは布教活動のため町を旅立つ。

1927年。
成人したH・W(ラッセル・ハーヴァード)は、イーライの妹と結婚し、未だに手話を理解しようとしないプレインヴューに別れを告げ、独立して自分で油井を掘る決心をする。

大豪邸に一人で住み、酒に溺れているプレインヴューは、H・Wの独立を歓迎せず、商売上利用した孤児だったとまで言い放ち、息子を突き放し彼も父を見限ってしまう。

親戚となったイーライが、堕落したプレインヴューを訪ね、彼が唯一所有していない土地の地主が亡くなり、俳優になりたがっている孫と契約して試掘を始めるよう提案する。

プレインヴューはイーライに、”偽預言者”だと叫ぶことを強要し、既にその土地の石油は、周辺の土地から吸い上げたことを伝える。

イーライは、大恐慌による安易な投資の失敗を告白して泣きつく。

しかし、プレインヴューは、自分に石油の情報を売りに来て1万ドルを手にし、今では3本の油井を持ち週5000ドルを稼ぐ、イーライの兄のポールを神が選んだのだと彼を罵倒する。

取り乱したイーライを、執拗に責めるプレインヴューは、屋敷内のボーリング場のピンで、彼を殴り倒して殺害する。

そして、現れた執事の呼びかけに、プレインヴューは答える。

”私は終わりだ・・・”


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1911年。
石油採掘業者ダニエル・プレインヴューは、息子のH・Wを伴い、強引且つ迅速な作業を売り物に、次々と採掘権を手に入れいた。
ある日、ポールという青年がプレインヴューを訪ね、カリフォルニアの小さな町に、石油が眠っているという情報を売ろうとする。
その土地をH・Wと視察したプレインヴューは、石油があることを確信して買い叩こうとするが、ポールの双子の弟イーライに横槍を入れられる。
試掘をして石油が出た場合、”第3の啓示教会”の牧師であるイーライに5000ドルを寄付することを約束したプレインヴューは、周辺の土地も全て手に入れようとする。
やがて、その土地から石油を掘り出すことに成功したプレインヴューだったが、H・Wは事故で聴力を失い、約束通り金を要求してきたイーライとの対立が激しくなる・・・。
____________

主人公のキャラクターの印象から、重苦しいドラマを想像するが、ストーリーは単純明快で解り易く見応えがあり、2時間40分の長編も全く飽きることなく観れる作品。

第80回アカデミー賞では、作品賞以下8部門にノミネートされ、主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)と撮影賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督・脚色・編集・美術・音響編集賞

強烈なインパクトで他を圧倒する主人公の生き様を、繊細且つ大胆に描いたポール・トーマス・アンダーソンの演出手腕は光る。

主人公の強靭な意志と、特異な性格を象徴するような油井の爆破炎上シーンなど、アカデミー賞を受賞したロバート・エルスウィットの撮影も素晴らしい。

ジョニー・グリーンウッドの音楽は力強く、また、サスペンス作品のようなナンバーも興味深い。

欲望と野心、唯一の肉親である息子への愛情と二度にわたる裏切り、人間味を感じさせる一方で見せる非情さなど、たった一人で何人分もの人物を演じたかのような、ダニエル・デイ=ルイスの重厚な演技は秀逸だ。

リトル・ミス・サンシャイン」(2006)の沈黙を守る少年から一転、カリスマ牧師を熱演したポール・ダノ、詐欺師がバレて主人公に殺されるケヴィン・J・オコナー、彼にしては小さな役柄が残念なキアラン・ハインズ、主人公の息子を好演したディロン・フリーシャーなどが共演している。


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