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柔らかい殻 The Reflecting Skin (1990)

田舎に住む少年の妄想とそれに関連する惨劇を描く、監督、脚本フィリップ・リドリー、主演ヴィゴ・モーテンセンリンジー・ダンカン、ジェレミー・クーパー他共演のホラー。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


スリラー/ホラー


スタッフ キャスト
監督:フィリップ・リドリー
製作
ドミニク・アンチアーノ
レイ・バーディス
脚本:フィリップ・リドリー
撮影:ディック・ポープ
編集:スコット・トーマス
音楽:ニック・ビカット

出演
キャメロン・ダヴ:ヴィゴ・モーテンセン
ドルフィン・ブルー:リンジー・ダンカン
セス・ダヴ:ジェレミー・クーパー
ルース・ダヴ:シーラ・ムーア
ルーク・ダヴ:ダンカン・フレイザー

イギリス/カナダ 映画
配給
Virgin Films
ミラマックス
1990年製作 95分
公開
イギリス:1990年11月9日
北米:1991年6月28日
日本:1992年3月13日
製作費 $1,500,000
北米興行収入 $17,040


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
1950年代。
巨大なカエルを見つけた8歳の少年セス・ダヴ(ジェレミー・クーパー)は、それを友人のイーブンとキムに見せる。

カエルの腹を空気で膨らませたセスは、イギリス人の未亡人ドルフィン・ブルー(リンジー・ダンカン)が歩いて来たために、カエルを道路に置いて隠れる。

ドルフィンがカエルに気づいたと当時に、セスはスリングショットで膨らんだ腹を撃ち抜く。

飛び散った血を浴びたドルフィンは叫び声を上げて、セス達はその場から逃げる。

セスは、小さなガソリンスタンドを経営している物静かな父ルーク(ダンカン・フレイザー)と、小言ばかり言っている母ルース(シーラ・ムーア)と暮らしていた。

ルースは、軍人として太平洋に赴任している息子キャメロン(ヴィゴ・モーテンセン)の帰りを待っていた。
...全てを見る(結末あり)

ルークと共に外に向かい、ヴァンパイアの本を読んでいる父と過ごしていたセスは、ドルフィンが現れてルースと話している様子を見て気になる。

そこに若者グループが乗る黒い”キャデラック”が給油しに現れ、セスはガソリンを入れる。

若者に歳などを訊かれたセスは、また会おうと言われて、去って行く彼らを見守る。

ルースに呼ばれたセスは、カエルを破裂させたことで叱られ、ドルフィンに謝りに行くようにと言われる。

ドルフィンの家に向かい、動物の骨などが飾られている部屋に迎え入れられたセスは、彼女から、カエルのことよりも服が心配だったと言われる。

自分は動物に対してもっと酷いことをしたと話すドルフィンは、主人の家は昔、捕鯨をしていたと話し、テーブルの上にあった銛を持っていってもいいとセスに伝える。

飾られている写真について訊かれたドルフィンは、亡くなった夫のアダムだと伝えて、ロンドンで知り合って結婚したことを話す。

その直後に、納屋でアダムが首を吊って死んでいたと言うドルフィンは、彼のことを話し、自分は老けるだけだと伝える。

自分が何歳に見えるかとセスに尋ねたドルフィンは、50歳と言われる。

お世辞が上手だと言うドルフィンは200歳だと伝えて、クローゼットから箱を持ち出し、セスに中に入っていたアダムの歯や髪の毛などを見せる。

これらが彼の全てだと伝えたドルフィンは、香油の入った瓶に触れて、アダムの匂いだと言いながら涙する。

怖くなったセスは、銛を持って飛び出して家に戻る。

”ヴァンパイアの血”という本を読んでいたセスは、表紙の女性がドルフィンに似ているために彼女がヴァンパイアだと思う。

スリングショットを壊して十字架を作ったセスは、入ってきたルースから眠るようにと言われる。

それに従わなかったセスに無理矢理に水を飲ませていたルースは、イーブンの父ジョシュアと共に帰宅したルークが、イーブンが見つからないため警察に通報するか迷っていることを知る。

ルークから、イーブンに最後に会ったのはいつかと訊かれたセスは、今朝だと答える。

翌日、ドルフィンはヴァンパイアだとキムに話すセスは、彼女がイーブンを連れ去ったと考える。

ドルフィンの家に向かい、彼女が出かけるのを確認したセスとキムは部屋に侵入する。

ドルフィンが眠るための棺桶を探したセスは二階の寝室に向かい、キムと共にその場をめちゃくちゃに壊してしまう。

暫くして戻ってきたドルフィンが、椅子に座りもだえる姿を見たセスとキムは、窓から逃げようとするものの見つかってしまう。

叫び声を上げながら逃げ出したセスは、先日の黒いキャデラックが走り去るのを目撃する。

気味の悪い姉妹に出くわしたセスは走って家に戻り、本を読んでいる父に水を汲もうとして、水槽の中に浮かんでいるイーブンの死体を発見する。

保安官補から事情を聞かれたルースは、ルークの話を始めたためにセスを部屋に向かわせる。

ルースはもう昔の話だと言うが、17歳の少年にキスして警察沙汰になったことがあるルークは、今回の事件で保安官補に疑われたために泣き出してしまう。

その件に詳しいティッカー保安官から話があるだろうと言う保安官補は去り、再び噂を耳にして嫌な思いをしたルースはルークを責める。

隠れていたセスもその話を聞いショックを受け、外に出たルークを追う。

動揺しながらガソリンを浴びたルークは、セスの目の前で焼身自殺してしまう。

その報せを聞いたキャメロンは家に戻り、セスは兄の帰りを喜び、ルースは息子を抱きしめる。

セスと共にルークの墓参りをしたキャメロンは、寂しい人生を送った父を哀れむ。

そこにティッカー保安官が現れ、セスとだけ話しをした彼は、巨大なカミツキガメに左手首を咬みちぎられ、数年後には右耳たぶを犬に食いちぎられそうになり、ハチに左目を刺されたことを伝える。

30年間保安官をしていて戦ったのは動物だけだと言う保安官は、今度は子供を襲うケダモノだとセスに話す。

そこにドルフィンが現れ、彼女を気にしながら話すセスは、ティッカーから、ルークにイタズラされたことがあるか訊かれる。

それを否定したセスは、キャメロンの所に戻るようにと言われる。

アダムの墓参りに来たドルフィンはキャメロンにお悔やみを伝え、互いに親しみを感じてしまう。

帰ろうと言うセスに苛立ち、怒鳴って突き倒したキャメロンは、”壊し屋”だとつぶやきその場を去るドルフィンの後ろ姿を見つめる。

その後、キムと遊んだセスは、ドルフィンと会ったキャメロンを彼女から守る必要があると話す。

納屋で白骨化した胎児を見つけたセスは、天使になったイーブンだと思うことをキムに伝える。

自分のものだと言うセスはキムと口論になり、彼を突き倒して胎児を家に運ぶ。

家に戻ったセスは、キャメロンをヴァンパイアから守らなければならないと考え、胎児に話しかける。

キャメロンに呼ばれたセスは、保安官と何を話したのか訊かれ、墓地でのことを謝罪されるものの、時々、邪魔になると言われる。

重傷を負った日本人の子供の写真を見せられたセスは、裸の女性と、自分とキャメロンが写っている写真をあげると言われるものの、テーブルの上に置いたままその場を去る。

夜になり、怖い思いをするセスは、十字架を持って眠る。

翌朝、キャメロンがドルフィンに会いに行くと言って出かけたため、セスは彼女の家に向かう。

太平洋での核実験に参加していたキャメロンは、そのことをドルフィンに話す。

家に忍び込んだセスは、二人の話を聞く。

思いつめるキャメロンに寄り添うドルフィンは、彼にキスする。

その様子を見たセスは、全裸のキャメロンをドルフィンが抱いていたために驚き、その場から逃げ去る。

街道にいたキムに気づいたセスは、彼がキャデラックの男達に連れ去られるのを目撃する。

翌朝、キャメロンの櫛に髪の毛がついていることに気づき、兄もドルフィンに殺され、彼女の夫アダムのように箱に詰められると胎児に話すセスは、酔って叫び声をあげるジョシュアに気づく。

セスに起こされたキャメロンは表に出てジョシュアを殴り、生きているはずの父ルークをルースが隠していると言われる。

意味不明のことを言うジョシュアは、ルークが息子イーブンを殺したとキャメロンに伝える。

父は変態だと言うセスの言葉が気になるキャメロンは、ルースに襲い掛かるジョシュアを制止するものの殴られる。

捕鯨用の銛を振り回すジョシュアを殴り倒したキャメロンは、怪我した手をセスに手当てしてもらう。

そこに現れたドルフィンはキャメロンを気遣い、キスする二人を見て、セスは彼女を警戒する。

その後、警察がキムを捜していることを知ったセスは、母親から自分が知っていると言われて責められる。

キムの死体が発見されて母親は悲しみ、ティッカー保安官は、ルークがまだ生きていてキムを殺したか、何か隠しているはずだと言ってセスを追求し、必ず暴くと伝えてその場を去る。

家に戻り、帰ってきたキャメロンと話したセスは、口の中で出血して体重も減っていると言われる。

キャメロンは、”急性放射線症候群”ではないかと考えていた。

髪の毛も抜けているとキャメロンに伝えたセスは、ドルフィンはヴァンパイアだと言って、血を吸われているため老けていき、それにより彼女は若くなると伝える。

ばかげた話だと言って家を出たキャメロンは、しつこいセスに、自分達は愛し合っていることを伝えて黙らせ、ドルフィンの家に向かう。

その夜、ヴァンパイアにキャメロンを取られたと胎児に話しかけるセスは、何をすればいいかを問う。

翌日、町へ行く車を待っているドルフィンに話しかけたセスは、キャメロンを愛していると言われ、老いて朽ち果てる人間のはかない人生を知らされる。

そこにキャデラックが現れ、若者に乗るかと訊かれたセスは、それを断る。

町に行くと言うドルフィンは乗せてもらい、セスは走り去る車を見つめる。

セスとルースと共にポーチにいたキャメロンは、街道にパトカーが停まっていることに気づいてその場に向かい、ドルフィンが殺されていることを知る。

ショックを受けたキャメロンは泣き崩れ、取り乱したセスはその場から走り去り、陽が沈む大地に座り込んで叫び声を上げる。


解説 評価 感想

*(簡略ストー リー)
1950年代。
小麦畑が広がる田舎に住む8歳の少年セスは、小さなガソリンスタンドを経営する物静かな父ルークと、小言ばかり言う母ルースと暮らしていた。
友人のイーブンとキムと共に、カエルを破裂させて未亡人のドルフィンにイタズラしたセスは、ルースに叱られて謝りに行く。
ドルフィンに迎えられたセスは、動物の骨などが飾られている部屋で、自分が200歳だと言う彼女を気味悪く思う。
家に戻り彼女はヴァンパイアだと思い込んだセスは、行方不明になったイーブンを連れ去ったのは彼女だと考える。
その後、イーブンはセスの家の水槽で死体で発見され、少年にイタズラしたことがあるルークが疑われる。
それを苦にしたルークは、セスの前で焼身自殺してしまい、その報せを受けた、太平洋の核実験に参加していた軍人であるセスの兄キャメロンが帰郷する。
キャメロンの帰りを喜ぶセスだったが、兄がドルフィンに惹かれて愛し合う中になってしまう。
ドルフィンをヴァンパイアだと思うセスは、何とかキャメロンを守ろうとするだが・・・。
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画家や小説家としても知られる、若き才人フィリップ・リドリーが脚本を兼ねた初監督作品。

8歳の少年が体験する誘拐殺人事件と共に、エスカレートする妄想と、大人には平凡な出来事が子供の目には異常な世界に見えてしまうという人間心理を描く異色のホラー。

少年がバンパイアと思い込む未亡人の容姿、黄色い小麦畑が広がる中に現れる黒い”キャデラック”、朽ち果てそうな歪んだ建物など、アーティストでもあるフィリップ・リドリーのセンスが光る映像が見どころの作品でもある。

北米では、わずか2館でしか上映されず1週間で打ち切りになった小作ではあるが、批評家からは高い評価を得た作品。

主演のヴィゴ・モーテンセンは、太平洋での核実験に参加した軍人であり、”急性放射線症候群”を疑いながら、弟がヴァンパイアだと思い込む未亡人リンジー・ダンカンに心の安らぎを感じて愛し合う青年を好演している。

物語の主人公である、友人の誘拐殺人事件と、未亡人をヴァンパイアだと思うことで恐怖体験をする少年ジェレミー・クーパー、その両親シーラ・ムーアとダンカン・フレイザーなどが共演している。


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