1955年に発表された、グレアム・グリーンの同名小説の映画化。 あるアメリカ人の出現で愛人を奪われそうになったイギリス人記者が周囲の陰謀に惑わされていく姿を描く、製作、監督、脚本ジョセフ・L・マンキーウィッツ、主演オーディ・マーフィ、マイケル・レッドグレーヴ ブルース・キャボット他共演による恋愛悲劇タッチのサスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
製作:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
原作:グレアム・グリーン
脚本:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
撮影:ロバート・クラスカー
音楽:マリオ・ナシンベーネ
出演
オーディ・マーフィ:アメリカ人
マイケル・レッドグレーヴ:ファウラー
クロード・ドーファン:ヴィゴ警部
ジョルジア・モル:プアン
フレッド・サドフ:ドミンゲス
ブルース・キャボット:ビル・グレンジャー
リチャード・ロー:ヘン
谷洋子:ホステス
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1958年製作 122分
公開
北米:1958年2月5日
日本:1958年6月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1952年、中国の旧正月で賑わうフランス領インドシナ、サイゴン(現ホーチミン)。
若いアメリカ人(オーディ・マーフィ)の遺体が川で発見され、フランス人の警部ヴィゴ(クロード・ドーファン)は、被害者の知人であるイギリス人記者ファウラー(マイケル・レッドグレーヴ)に事情聴取をする。
ファウラーは、ヴィゴが自分を疑っていると思いつつ、遺体確認のために安置所に向かい、それが他殺であったことを知らされ、彼との関係を振り返る。
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数ヶ月前。
祖国に妻がいる身でありながら、現地人女性プアン(ジョルジア・モール)を愛人にしていたファウラーは、アメリカ人に出会い彼女を紹介する。
アメリカ人は、”フェニックス”と同じ意味のプアンに惹かれる。
そしてアメリカ人は、植民地主義と共産主義の狭間で生きる2200万人の自立を助ける、第三の勢力が必要だということをファウラーに説く。 プアンが以前働いていたクラブでの、ファウラーとの食事に同行したアメリカ人は、若者同士プアンとの時を楽しみ、ファウラーはそれが気にかかる。 その後ファウラーは、戦闘地帯の北部に仕事で滞在していたが、そこにアメリカ人が現れ、彼は、唐突にプアンを愛していることを告げる。 それと同時に、ファウラーは昇進の知らせを受け、帰国することになり、プアンとはいずれにしても別れることになる。 サイゴンに帰ったファウラーは、自分の留守の間は、プアンに思いを伝えていなかったというアメリカ人の訪問を受ける。 アメリカ人は、ファウラーの前でプアンに愛を伝える。 ファウラーは、自分には妻がいるため結婚できないが、アメリカ人はそれができることを、彼女に話して聞かせる。 しかし、プアンを見捨てることのできないファウラーは、妻に離婚する意思があることを伝える手紙を書く。 200万人の信者を持つ、新興宗教”カオダイ”の本山の祭典で、ファウラーは、”第三の勢力”となりうる可能性のある、軍高官と語り合うアメリカ人を目撃する。 車が故障したというアメリカ人を乗せ、街に引き返そうとするファウラーだったが、途中、彼の車も水田地帯でガス欠となり、2人は監視塔で一夜を過ごそうとする。 そこに共産軍が現れ、2人は攻撃を避けて水田に逃げるが、ファウラーが足に銃弾を受けてしまう。 アメリカ人の助けで病院に運ばれたファウラーは、2週間後には傷も癒えるが、妻からの離婚を拒否する手紙を受け取る。 退院して、アメリカ人の車で自宅に向かったファウラーは、プアンを帰国するまで離したくないため、彼女とアメリカ人に妻が、離婚に同意したという嘘をついてしまう。 しかし、アメリカ人はそれに気がつき、ファウラーは、プアンもそれを知っていたことを聞かされる。 ファウラーは、共産主義者の中国人ヘン(リチャード・ロー)から、アメリカ人が持ち込んだプラスチックが、爆弾を作る材料だったことを知らされる。 帰宅したファウラーは、プアンが彼を捨てて出て行ったことを知り愕然とする。 その後、ファウラーは、アメリカ人とプアンを街で見かけていたが、白昼の爆弾テロで、プアンの安否を気遣うファウラーはアメリカ人に出くわす。 女子供を巻き込んでいる、第三勢力のテロの協力者であるアメリカ人を責めるファウラーだったが、アメリカ人は、その意味がわからないまま被害者の救助を始める。 ヘンの元に向かったファウラーは、これ以上犠牲者を出さないために、アメリカ人の行動を止めなければならないことを彼に訴える。 ナイトクラブに、アメリカ人を誘き出すようヘンに頼まれたファウラーは、第三勢力の指導者テ将軍の暴挙を止める必要性をアメリカ人に説き、食事に誘う。 アメリカ人と話しが噛み合わないファウラーは、食事を取り止めようとする。 しかし、アメリカ人が本国に帰りプアンと結婚すると聞いて、彼がクラブに向かうという合図を、ヘンの部下に送る。 ファウラーは、ヘンの行動に、アメリカ人の命を任せてしまったことを後悔しながら夜を待つ・・・。 死体安置所から出たファラーは、アメリカ人が金目的の殺人事件に巻き込まれたと、ヴィゴ警部から知らされる。 そしてファウラーは、アメリカ人がいつも連れていた犬のことをヴィゴに尋ね、自分が、アメリカ人とは広場のテロ以来会っていないという嘘をつく。 帰宅したファウラーは、プアンにアメリカ人が殺されたことを伝える。 ヴィゴ警部は、ファウラーのアパートの入り口の、修繕中のセメントを踏んだ犬が、死体で発見されていたことで、彼が、アメリカ人と死の直前に会っていたことに気づいていた。 ファウラーを尋ねたヴィゴ警部は、ファウラーの、プアンを失うという恐怖心を逆手に取った罠に彼がはまり、ヘンらに騙されていたことを伝える。 ヴィゴから渡された電報を見たファウラーは、それが妻からの離婚の承諾だと知り、プアンの働く店に向かう。 ファウラーは、自由の身になったことをプアンに伝えるが、自分を愛人としか扱わなかった彼を、プアンは冷たく突き放す。 そして失意のファウラーは、旧正月を祝う雑踏の中に消えていく。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1952年、サイゴン、フランス領インドシナ。
第一次インドシナ戦争中、若いアメリカ人の遺体が川で発見さる。
フランス人の警部ヴィゴは、被害者の知人で、イギリス人記者ファウラーに事情聴取を始める。
そしてファウラーは、他殺と断定された関係のあったアメリカ人について語り始める。
数ヶ月前、祖国で妻が待つファウラーは、ある”アメリカ人”青年の出現で、現地の愛人プアンを奪われそうになる・・・。
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ジョセフ・L・マンキーウィッツ自らが主宰するプロダクション”フィガロ”の作品。
主人公の青年の名前を明記せず”アメリカ人”として象徴的に描き、その後、国家として介入してくるアメリカの影響力を、批判してはいるが、原作に比べると、そのあたりの描写がやや弱いということで物議を呼んだ。
個人的には、社会派というよりも人間ドラマを得意とする、ジョセフ・L・マンキーウィッツの作風を貫いた作品と考える。
2002年のリメイク作品「愛の落日」は、その点が原作に忠実に描かれている。
当時の名声により主演ではあるが、どちらかというと助演に近いオーディ・マーフィは、野心家のアメリカ人青年を好演している。
負傷した長身のマイケル・レッドグレーヴを、小柄な彼が戦場さながら担ぎ上げ、水田から脱出すする姿は、いかにも戦争の英雄らしい、彼のための演出だったと言える。
自らの勝手な解釈と、愛人を自分の都合に合わせてしまおうとしたことが悲劇を招いてしまう、名優マイケル・レッドグレーヴの熱演も光る。
”よくしゃべる”といいながら沈着冷静な推理で殺人の謎を解き明かす警部クロード・ドーファン、三角関係の犠牲となり、真に愛してくれた人を失う現地女性で、実はイタリア人のジョルジア・モル、出番が少ないのが寂しいアメリカ人記者ブルース・キャボットなどが共演している。