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クィーン The Queen (2006)

ダイアナ・イギリス元皇太子妃の交通事故死直後のイギリス王室と政府の混乱の中で苦悩するエリザベス女王の心の葛を藤描く、監督スティーヴン・フリアーズ、主演ヘレン・ミレンマイケル・シーンジェームズ・クロムウェル他共演によるドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・フリアーズ

製作
アンディ・ハリス

クリスティーン・ランガン
トレーシー・シーワード
脚本:ピーター・モーガン
撮影:アフォンソ・ビアト
編集:ルチア・ズケッティ
衣装デザイン:コンソーラタ・ボイル

音楽:アレクサンドル・デプラ

出演
エリザベス2世ヘレン・ミレン

トニー・ブレアマイケル・シーン
エディンバラ公フィリップジェームズ・クロムウェル
シェリー・ブレアヘレン・マックロリー
チャールズ皇太子アレックス・ジェニングス
ロビン・ジャンヴリン女王秘書官:ロジャー・アラム
エリザベス皇太后シリヴィア・シムズ
アラスター・キャンベル:マーク・ベイズリー

イギリス・フランス・イタリア合作 映画
配給 ミラマックス
2006年製作 102分
公開
イギリス:2006年9月15日
フランス:2006年10月18日
イタリア:2006年9月15日
北米:2006年9月30日
日本:2007年4月14日
制作費 $15,000,000
北米興行収入 $56,441,710
世界 $122,840,600


アカデミー賞 ■
第79回アカデミー賞

・受賞
主演女優賞(ヘレン・ミレン
・ノミネート
作品・監督・脚本・衣装デザイン・作曲賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1997年5月1日
イギリス総選挙で、労働党を地すべり的勝利に導いたトニー・ブレア(マイケル・シーン)が首相に就任する。

翌日、女王エリザベス2世ヘレン・ミレン)から首相指名を受けるために、ブレアは、妻のシェリー(ヘレン・マックロリー)を伴い、バッキンガム宮殿に向かう。

女王とは何度も会っているブレアだったが、今日ばかりは緊張を隠し切れず、彼は反君主制シンパである妻シェリーに、国民に選ばれたことを誇りに思うよう励まされる。

女王ブレアを執務室に呼び、簡単な会話を交わした後、彼をひざまずかせ、新政権設立の要請をする。

シェリーとも顔を合わせた女王は、秘書官ロビン・ジャンヴリン(ロジャー・アラム)から緊急報告を受け、早々に席を離れる。

● 1997年8月30日土曜日
世間に話題を振りまいていた、ダイアナ元イギリス皇太子妃が、パリで交通事故に遭う
...全てを見る(結末あり)

対応に追われる女王秘書官ジャンヴリンは、直ちに女王と首相ブレアに報告する。

チャールズ皇太子(アレックス・ジェニングス)は、元妻ダイアナの元に王室専用機で向かおうとするが、女王は、浪費を国民から非難されると言ってそれに難色を示す。

やがて、パリの大使館からダイアナの死亡報告を受け、女王は、将来の国王の母であるダイアナの元に、チャールズを専用機で向かわせる。

ダイアナは、どんな時でも厄介の種だと、女王を気遣う夫君エディンバラ公(ジェームズ・クロムウェル)だった。

● 日曜日
ダイアナの死を悲しむイギリス国民は、バッキンガム宮殿に集まり、花を手向け祈りを捧げた。

ブレアからの弔辞を受けた女王だったが、王室を去っていたダイアナについての、公式コメントを出す意思のないことを伝える。

国民から、絶大なる人気と影響力のあったダイアナに対し、葬儀など何らかの対処と、国民への意思表示が必要なことを、ブレア女王に提言するが、それは聞き入れられなかった。

就任間もないブレアは苦悩するが、いち早く哀悼の意を表し、ダイアナが”国民のプリンセスだった”という声明を発表する。

ブレア政権のスピン・ドクター(情報操作専門家)、報道・戦略局長アラスター・キャンベル(マーク・ベイズリー)の考えたその言葉は人々の心を掴み、ブレアは、一気に国民の支持を得ることになる。

チャールズ皇太子王室専用機でパリに向かい、ダイアナの遺体を引き取り帰国する。

出迎えたブレアは、内輪の葬儀にするという、女王の意向についての意見をチャールズ皇太子から求められ、現代に則した対応をとるべきだということで意見が一致する。

しかし、各国首脳などが声明を出す中、女王をはじめ王室は依然として沈黙を守っていた。

● 月曜日
ダイアナの死を悼む、国民の悲しみは深くなるばかりで、王室は、ついに彼女の葬儀を国葬にすることを決定する。

女王は、一応それを受け入れるのだが、日程準備の関係で、エリザベス皇太后(シリヴィア・シムズ)の葬儀のために計画されていた、”デイ・ブリッジ”方式で葬儀が執り行われることも知らされ困惑してしまう。

国民が、王室を敵視することを憂慮したチャールズ皇太子は、ブレアを自分の見方に付けようとする。

その後、ダイアナを称え王室を攻撃するような報道に、女王そしてエディンバラ公はうんざりしてしまう。

● 火曜日
バッキンガム宮殿に、旗も揚げようとしない王室に怒りを感じている国民を見て、ブレア女王の様子を窺う。

残された孫達を気遣い、スコットランドバルモラル城に滞在を続ける女王は、旗のことを家族に話す。

旗が掲げられるのは、バッキンガム宮殿女王が滞在してる証だと、エディンバラ公皇太后は、400年続いた伝統を守るべきだと主張する。

その間、人々の王室への不信感は増し、ブレアの妻シェリーや一般国民の間では、王室不要論も公然と話し合われるようになる。

● 水曜日
ブレアは国民世論を考慮し、バッキンガム宮殿に半旗を掲げロンドンに戻るべきだと女王に進言する。

しかし女王は、自分や孫達がマスコミの餌食になることを嫌いそれを拒む。

秘書官ジャンヴリンブレアに電話を入れ、先王ジョージ6世が、先代のエドワード8世から急遽王位を継ぎ、心労で命を縮めた時、以来の衝撃を、女王が感じていることを、側近として告げる。

それを聞いたブレア女王の気持ちを察し、マスコミ報道を出来る限りを抑えることをジャンヴリンに伝え、キャンベルを呼び対策を考える。

その頃、一人でランドローバーに乗り出かけた女王は、川で車のシャフトを折ってしまい、迎えを待つことになる。

野山の自然の中で、川の流れの音だけをじっと聞いていた女王は、一連のことを考えながら、その瞬間の静寂に身を置き、言いようのない孤独感を感じて涙する。

前その時、女王の前に、狩猟でエディンバラ公らが追っていたアカシカが現れる。

女王は、鹿の美しさに驚き、見つからないようにと追い払う。

● 木曜日
マスコミの女王攻撃は激しさを増し、方や女王を擁護したブレアの発言はほとんど取り上げられなかった。

ブレアは、今後発表される世論調査で、女王王室に多大なダメージを与える結果が出ることをふまえ、首相としての立場で何項目かの対策を女王に提案する。

王室の側近もブレアの意見に賛成し、”全人生を神と国民に捧げた誓い”を胸に、女王は、ついにロンドンに戻る決意をする。

そして、バルモラル城の入り口に捧げられた花の前に、女王エディンバラ公らは姿を現す。

● 金曜日
ロンドンに向かおうとした女王は、山中で見たアカシカが、仕留められたのを知りそれを確認する。

その後、女王バッキンガム宮殿に到着し、正門前で車を降りて国民と接する。

その頃、ブレアの側近キャンベルは、あくまで女王の行動を批判的に捉える。

しかし、自分が望みもせずに即位し、その重責で命を縮めた父王の後を継ぎ、50年もの間、国民に全てを捧げた女王の心境を察し、ブレアキャンベルを痛烈に非難する。

バッキンガム宮殿、正門。
女王は、捧げられた花に添えられた、王室を批判する辛辣な文書を見て心を痛める。

一人の少女が手に持つ花を、置いてあげようとする女王は、「お花はあなたへ」と言われ、国民が自分を見捨てていなかったことを実感する。

そして女王は、国民に向けテレビ中継で弔意を表明する。

それを見たブレアは、自分達の想像を絶する重圧に、挫けない女王の姿に感動する。

● 土曜日
ウエストミンスター寺院
各国の要人、著名人らが参列した葬儀も終わりに近づき、ダイアナの弟チャールズ・スペンサーの言葉が終わると、野外に集まっていた人々から一斉に拍手が贈られる。

2ヶ月後。
女王に謁見するため、バッキンガム宮殿を訪れたブレアは、意にそぐわぬ強要をしたことを女王に謝罪する。

その言葉に女王は謙遜するが、ブレアは国民の女王に対する敬意がより高まったことを伝える。

女王は執務室を離れ、新しい時代に合わせる努力をすることを約束し、ブレアを伴い庭園を散歩しながら公務を続ける。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1997年8月30日。
ダイアナ元皇太子妃パリで事故死する。
直前に首相になったトニー・ブレアは、国民への余りにも大きな影響に対し沈黙を守るエリザベス女王への対応に苦慮する。
ブレアは、女王が、単に王室を見限った女性の死と位置づけているのかとも考えてしまう。
しかし、国民、世論は女王王室に対し厳しい目を向け始めたことで、ブレアは”全人生を神と国民に捧げた”重責を背負う、女王の立場と心情を次第に理解していく。
そしてブレアの説得は実り、女王は沈黙を破り国民の前に姿を現す・・・。
__________

ヘレン・ミレン他、出演者は実在の人物に成りきってはいるが、その容姿などは微妙に似ている程度として描写されているところがポイントだ。
それが、ニュースフィルムなどを多用しつつも、よりドラマ性を高める結果として効果を上げている。

ヘレン・ミレンエリザベス女王役は、”本人と見間違う・・・”というようなオーバーな宣伝文句もあったのだが、人々の潜在的な女王のイメージでそう思わせているところがあり、実際の当時の女王と比べれば、上記のように”似過ぎていない”演出は明らかだ。
*実際の映像 https://youtu.be/_moIV4wDQsY

第79回アカデミー賞では、作品賞をはじめ6部門でノミネートされ、エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンが見事に主演女優賞を獲得した。
・ノミネート
作品、監督、脚本、衣装デザイン、作曲賞

オスカーを受賞したヘレン・ミレンは、エリザベス女王本人やブレア首相から祝福を受けた。

北米興行収入は約5600万ドルに留まるが、全世界では約1億2300万ドルのヒットとなった。

絶大なる人気を誇るエリザベス女王の、義母、祖母、親としての人間性を繊細に描き、イギリス王室
裏や人間味のあるもう一人の主人公ブレア首相の心の動きも見事に表現した、スティーヴン・フリアーズの切れのある演出も見事だ。

また、宮殿、城、庭園などのロケやセット、衣装なども素晴らしく映像的にも楽しめる。

王室と政府の混乱振りをイメージさせる、サスペンス作品のようなアレクサンドル・デプラの音楽も印象に残る。

何かと騒がれるイギリス王室だが、日本人の目から見ると、かなりオープンな感じを受ける。

あからさまに王室批判をするブレア夫人や、電話越しに女王と話すブレアが、サッカーのユニフォーム姿だったりする場面など、お国柄の皮肉やユーモアも込めた描写も実に興味深い。

エリザベス女王は、第二次大戦中、父親である国王ジョージ6世らと共に、疎開せずにロンドンに留まり、自らも戦時協力者として陸軍少尉で従軍し軍用車輌の整備などにに従事し、国及び国民に対し献身的な働きをした。
ランドローバーが故障し、車に詳しい女王がそのことを語るシーンもある。

国民に尽くすことが、王室の義務だと言えばそれまでだが、王女(当時)の立場でありながら、戦時下で従軍するなど想像もつかないことだ。

そんな女王の生い立ちや人柄を想い描きつつ本作を観ると、また違った発見があるかもしれない。

就任直後の大事件に当初は戸惑うものの、持ち前の行動力で、女王と協力関係を築き上げるトニー・ブレア首相、マイケル・シーンの熱演も光る。

女王の夫君エディンバラ公フィリップ殿下ジェームズ・クロムウェル、首相夫人であるシェリー・ブレア役のヘレン・マックロリーチャールズ皇太子役のアレックス・ジェニングスエリザベス皇太后シリヴィア・シムズ女王秘書官のロビン・ジャンヴリン役のロジャー・アラムブレアの側近であるアラスター・キャンベル役のマーク・ベイズリーなどが共演している。


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