1942年に発表された、ポール・ギャリコの著書”Lou Gehrig: Pride of the Yankees”を原案とした、背番号4がメジャーリーグ史上初の永久欠番にもなった伝説の大打者ルー・ゲーリッグの半生を描く、製作サミュエル・ゴールドウィン、監督サム・ウッド、主演ゲイリー・クーパー、テレサ・ライト、ウォルター・ブレナン、ベーブ・ルース、ダン・デュリエ共演によるヒューマン・ドラマの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:サム・ウッド
製作:サミュエル・ゴールドウィン
原作:ポール・ギャリコ
脚本
ジョー・スワーリング
ハーマン・J・マンキウィッツ
撮影:ルドルフ・マテ
編集:ダニエル・マンデル
美術・装置
ペリー・ファーガソン
ハワード・ブリストル
音楽:リー・ハーライン
出演
ゲイリー・クーパー:ヘンリー・ルイス”ルー”ゲーリッグ
テレサ・ライト:エレノア・トゥイッチェル・ゲーリッグ
ウォルター・ブレナン:サム・ブレイク
ベーブ・ルース:(元ニューヨーク・ヤンキース)
ダン・デュリエ:ハンク・ハネマン
エルザ・ジャンセン:クリスティーナ・ゲーリッグ
ルドウィッグ・ストッセル:ヘンリー・ゲーリッグ
ビル・ディッキー:(ニューヨーク・ヤンキース)
デヴィッド・ホルト:ビリー(17歳)
アメリカ 映画
配給 RKO
1942年製作 128分
公開
北米:1942年7月14日
日本:1949年5月8日
■ アカデミー賞 ■
第15回アカデミー賞
・受賞
編集賞
・ノミネート
作品
主演男優(ゲイリー・クーパー)
主演女優(テレサ・ライト)
原作・脚本・撮影(白黒)・作曲(コメディ/ドラマ)・録音・美術(白黒)・特殊効果賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ドイツ系移民の子ルー・ゲーリッグは、野球の大好きな少年だったが、 躾の厳しい母クリスティーナ(エルザ・ジャンセン)は、息子を伯父のような技師にするため、コロムビア大学に入学させようとしていた。
成長して母の働くコロムビア大学に入学したゲーリッグは、給士をしながら学費を稼ぐ苦学生だった。
金持ちの学生の中には、ゲーリッグを見下してからかう者もいたが、彼はそれを気にもせず、野球の才能も開花し始めていた。
そんなゲーリッグを、スポーツ記者サム・ブレイク(ウォルター・ブレナン)は、彼の才能に目を付けて、ニュー・ヨーク・ヤンキースに紹介しようとする。 ゲーリッグは、技師になると言ってそれを断わるが、病気になった母クリスティーナの入院費を支払うため、ヤンキースと契約してしまう。 父ヘンリー(ルドウィッグ・ストッセル)とで、私立の病院に母を入院させたゲーリッグは、マイナーリーグのハートフォードで実力を試すことになる。 息子のハートフォード行きを知ったクリスティーナは、それをハーバード大と聞き間違えて喜び、そのためゲーリッグは、彼女には内緒で現地に向かう。 その後ゲーリッグは、プロとしての基礎を叩き込まれて、たちまち活躍してヤンキースに昇格することになる。 新聞報道でそれを知った母クリスティーナは憤慨するが、ゲーリッグは根気良く彼女を説得する。 やがて、ヤンキースのメンバーとしてプレイすることになったゲーリッグは、父ヘンリーに連れられて球場に現れた、母クリスティーナの期待に応えようとする。 若くして、既に球界をリードしていた大選手ベーブ・ルースらに気後れしながらも、ゲーリッグは、控え選手として試合を見守る。 1923年6月15日。 それをスタンドで見ていた、エレノア・トゥイッチェル(テレサ・ライト)は、ゲーリッグを”千鳥足”だと言ってからかう。 そして打席に立ったゲーリッグは、いきなりヒットは打つものの、次の打者の打球を処理した選手の送球に当たり、 その夜、レストランでエレノアを見かけたゲーリッグは、彼女に恥をかかせるが、相子だと言って、二人は意気投合する。 ゲーリッグはエレノアに恋してしまうが、彼女と付き合う暇もなく遠征の旅が始まる。 遠征に同行するブレイクは、同じ記者のハンク・ハネマン(ダン・デュリエ)が、生真面目なゲーリッグが大衆受けしないと批判したことに反論する。 ゲーリッグの才能を高く評価するブレイクは、彼が真の英雄になることを確信していた。 その後、シカゴに遠征したゲーリッグは、ブレイクの計らいでエレノアとデートすることになり、二人は親交を深める。 既にヤンキースの中心選手として活躍をしていたゲーリッグは、チームメイトのベーブ・ルースが、ワールドシリーズで、病気の少年にホームランを打つ約束をする現場に居合わせる。 少年にサインを求められたゲーリッグは、彼を励ますために、不可能なことはないことを伝える。 それならばと、少年はゲーリッグに2本のホームランを打つことを求め、彼はそれを約束する。 そして、ルースとゲーリッグは、競い合いながら見事に少年との約束を果たし、チームはワールドシリーズを制覇する。 エレノアから祝電を受けたゲーリッグは、シカゴに直行して彼女と婚約し、ニューヨークに戻り家族の歓迎を受ける。 幸せそうな二人だったが、ゲーリッグの母クリスティーナは、息子の婚約者エレノアを受け入れることが出来ない。 ゲーリッグはそれを気にも留めなかったが、エレノアとクリスティーナは意見が合わない。 自宅で結婚式を挙げたゲーリッグは、休暇もとらずに、連続試合出場を続けるため、警官に先導され球場に向かう。 ヤンキー・スタジアムに到着して試合に挑んだゲーリッグは、エレノアにホームランのプレゼントをする。 二人の新婚生活は始まるのだが、ゲーリッグが家にいないことが多いことを、ブレイクは不審に思う。 それが浮気だと思い込むブレイクは、ゲーリッグのいる場所にエレノアと向かうが、彼は試合で活躍する合間を見ては、少年達に野球を教えていたのだった。 そして、盟友ベーブ・ルースもヤンキースを去り、数々の偉業を達成したゲーリッグは、2000試合連続出場を果たした頃、体に異変を感じる。 その後、体が思うように動かないのにも拘らず、練習を続けるゲーリッグを、エレノアは見守り続ける。 プレーに生彩がなくなり、ゲーリッグは、ファンやチームメイトからも非難されるようになる。 しかし、チームメイトのビル・ディッキーは、ゲーリッグをかばい支え続け、彼の復活を願う人々も多くいた。 1939年5月2日。 ゲーリッグの体調は回復せず、精密検査を続けるという医師の診断で、彼は引退を決意して死も覚悟する。 エレノアには診断結果は伝えず、ゲーリッグは彼女の前で気丈に振舞う。 しかし、エレノアには、夫が不治の病(筋萎縮性側索硬化症)だと悟り、それを隠し切れないブレイクの胸で泣き崩れる。 残り少ないゲーリッグとの生活を、エレノアは大切に過ごすことを誓い、そして彼の引退の日を迎える。 1939年7月4日。 その青年ビリー(デヴィッド・ホルト)は、かつてゲーリッグにホームランを打つことを望んだ病気の少年だった。 ビリーは、ゲーリッグの言葉を励みに、歩けるようになったことを彼に伝える。 その後、旧友ベーブ・ルースやビル・ディッキーらの前で、ゲーリッグは、大歓声で彼を称える6万2000人の観衆に別れのを告げる。 ”私は不運だと言われますが、今日は地球上で一番幸運な人間です・・・” そして、背番号4番をつけたゲーリッグは、グラウンドから去ってゆく。
...全てを見る(結末あり)
シカゴ・ホワイトソックスとの試合で、体調不良の選手の代打を告げられたゲーリッグは、慌ててバットにつまづき転倒してしまう。
退場してしまう。
エレノアは困惑するが、ゲーリッグが間に入り危機を乗り切り、そして、二人はようやく結婚することになる。
そして、気力を失ったゲーリッグはチームのためを考え、自ら交代を申し出て、14年間、2130試合で連続出場記録に終止符を打つ。
”ルー・ゲーリッグ・デー”と命名された引退式を前にして、ヤンキー・スタジアムの入り口で、ゲーリッグは、ある青年に声をかけられる。
*(簡略ストー リー)
コロムビア大学の苦学生のルー・ゲーリッグは、野球で類まれな才能を発揮し、スポーツ記者のブレイクにヤンキース入団を勧められる。
躾に厳しい母の望み通り、技師になるつもりのゲーリッグはそれを断るが、母が病気となり、その入院費のためにヤンキースと契約してしまう。
その後ゲーリッグは、マイナーリーグで実績を積み、ヤンキースに昇格して活躍を始める。
やがてゲーリッグは、シカゴで富豪令嬢エレノアと知り合い親交を深める。
そして、チームメイトのベーブ・ルースらと競い合いながら、ゲーリッグはスター選手となっていく。
ゲーリッグはエレノアと結婚し、メジャーリーグを代表する選手となり、数々の偉業を成し遂げて、連続試合出場記録も更新していく。
順風満帆のゲーリッグだったが、突然、体に異変を感じ、思うようなプレーが出来なくなってしまう・・・。
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ルー・ゲーリッグが亡くなった1年後の、アメリカにとっては第二次大戦に参戦して間もない時期に公開された作品。
戦時下ではあるが、ハリウッドでは名作が次々と製作されていた中で、ゲーリッグが、いかに国民に愛された人物だったかが理解できる作品でもある。
監督のサム・ウッドは後に、ゲーリッグにも共通する、片足を失いながらも、不屈の精神でカムバックするモンティ・ストラットンを描いた「蘇る熱球」(1949)でも、野球をテーマにした名作を手がけている。
野球の秀でた才能だけでなく、貧しくも厳しい躾の下で育った、ゲーリッグの、人格者としての人間性なども、サム・ウッドは繊細に描いている。
また、ゲーリッグの美談ばかりでなく、妻と母親との確執なども描き、伝記映画として、ドラマにリアリティを加えている。
リー・ハーラインの、感動を盛上げる主題曲も忘れられない。
第15回アカデミー賞では作品賞以下11部門でノミネートされ、編集賞を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優(ゲイリー・クーパー)
主演女優(テレサ・ライト)
原作・脚本・撮影(白黒)・作曲・(コメディ/ドラマ)録音・美術(白黒)・特殊効果賞
主演のゲイリー・クーパーは40歳を過ぎていたものの、ゲーリッグとほぼ同年代ということで青年時代の本人も無難に演じている。
前年の「ヨーク軍曹」(1941)でアカデミー主演賞を受賞したばかりであり正に円熟期を迎えていた頃で、ラストの有名なゲーリッグの引退演説で、その演技は最高潮に達する。
同年の「ミニヴァー夫人」(1942)で見事にアカデミー助演賞を獲得することになるテレサ・ライトの、悲しみをこらえながら夫に献身的に尽くす妻役の好演も忘れ難い。
ゲーリッグを影で支える記者役のウォルター・ブレナンも、既に3度のアカデミー助演賞受賞者だけあり、地味な役ではあるが存在感抜群で、いい味を出している。
どちらかというと、彼の演技にしてはいつもより癖がなく、偉大なゲイリー・クーパーとゲーリッグに敬意を表し、目立たぬよう抑えた演技に徹しているような感じも受ける。
特筆すべきは、既に引退していたベーブ・ルースの登場の多さと、芸達者な彼に驚されたことだ。
さすが、国民的人気者という感じで貫禄もあり、プロの役者顔負けの演技を見せてくれる。
反ゲーリッグのスポーツ記者ダン・デュリエ、ゲーリッグの母エルザ・ジャンセン、父ルドウィッグ・ストッセル、病気だった少年時に励まされて成長し、ゲーリッグに再会する青年のデヴィッド・ホルトなどが共演している。
また、前記の「蘇る熱球」(1949)にも出演する、ヤンキースの永久欠番”8”、往年の名キャッチャー、ビル・ディッキーも、ゲーリッグと同じ時代に活躍したチームメイトとして現役で出演している。