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郵便配達は二度ベルを鳴らす The Postman Always Rings Twice (1946)

1934年に発表された、ジェームズ・M・ケインの小説”郵便配達は二度ベルを鳴らす”を基に製作された作品。
ダイナーの経営者の妻と放浪癖のある男が愛し合ってしまった末の運命を描く、監督テイ・ガーネット、主演ラナ・ターナージョン・ガーフィールドセシル・ケラウェイヒューム・クローニンレオン・エイムズ他共演のサスペンス・タッチのロマンスでありフィルム・ノワールの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)


スタッフ キャスト ■
監督:テイ・ガーネット

製作:ケーリー・ウィルソン
原作:ジェームズ・M・ケイン郵便配達は二度ベルを鳴らす
脚本
ハリー・ラスキン
ニーヴン・ブッシュ

撮影:シドニー・ワグナー
編集:ジョージ・ホワイト

音楽:ジョージ・バスマン

出演
コーラ・スミス:ラナ・ターナー

フランク・チェンバース:ジョン・ガーフィールド
ニック・スミス:セシル・ケラウェイ
アーサー・キーツ:ヒューム・クローニン
カイル・サケット:レオン・エイムズ
マッジ・ゴーランド:オードリー・トッター
エズラ・リーアム・ケネディ:アラン・リード
ブレア巡査:ジェフ・ヨーク

アメリカ 映画
配給 MGM

1946年製作 113分
公開
北米:1946年5月2日
日本:未公開
製作費 $1,683,000
北米興行収入 $5,086,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ロサンゼルス近郊
ヒッチハイクでサンフランシスコからサンディエゴに向かっていたフランク・チェンバース(ジョン・ガーフィールド)は、ダイナー”ツイン・オークス”の前で車を降りる。

乗せてもらっていたカイル・サケット(レオン・エイムズ)に礼を言ったフランクは、ダイナーの求人看板を指指しながら別れを告げる。

直後に現れたパトロール警官ブレア巡査(ジェフ・ヨーク)は、サケットの車を止める。

手帳を見せられたブレアは、何も言わずに彼を見逃す。

それを見ていたフランクは、ブレアに何があったのかを尋ね、サケットがこの近くに住む地方検事だということを知る。

ダイナーの主人であるニック・スミス(セシル・ケラウェイ)に歓迎されたフランクは、求人看板を見たことを伝え仕事についての説明を受ける。
...全てを見る(結末あり)

店はスタンドを兼ねていたため、ニックは客に気づき外に出る。

そこに、若くて美しい女性(ラナ・ターナー)が現れ、フランクは一目で彼女に惹かれてしまう。

フランクは、その女性がニックとはまるで不釣り合いな妻コーラであることを知り、トラブルを避けるために働くことを諦めようとする。

しかし、フランクはニックに気に入られたことで仕事を受けることにする。

コーラも問題が起きることを嫌い、フランクを帰すようニックに提案するものの聞き入れられなかった。

フランクにきつい態度で接したコーラだったが、彼に強引にキスされてしまう。

その後、コーラに2週間も無視されたフランクは悩む。

コーラとようやく話ができたフランクは、店の看板を新しくして、それを自分の発案だと言われたためニックは機嫌をよくする。

歌い始めたニックは、コーラにフランクと踊るよう指示する。

嫌々踊ったコーラは、それを止めて海岸で泳ぎたいことをニックに伝え、付き合ってほしいと頼む。

新しい看板が付いた日を祝うというニックを残して車に乗ったコーラは、フランクが乗っているのを知り驚く。

海岸で楽しんだ二人は店に戻り、客だと思って出てきたニックは二人のことを気にしない。

フランクはコーラに迫り、彼女は誘惑に負けてしまう。

翌日、ニックがロサンゼルスに向かったため、フランクは、以前に聞いた、ニックと結婚した理由をコーラに尋ねる。

コーラは言うまでもなく男達の注目の的だったのだが、結局は皆同じで、金を選んだことをフランクに伝える。

愛していないともニックには伝えてあると言うコーラは、フランクと共にその場を去る決意をして、レジにメモを残して立ち去る。

ヒッチハイクもできずに街道を歩き続けたコーラは、このままでは希望もないと言って戻りたいことをフランクに伝える。

メモを読まれたかを心配するコーラは、フランクにバスを止めさせて店に戻る。

そのまま残っていたメモを取り出したコーラは、酔って車を運転しトラックと衝突しそうになるニックを目撃する。

それを見ていたフランクは、同じように酔って崖下に転落してほしいと口にしてしまう。

それが冗談だと言うことをコーラに伝えたフランクは、酔って戻ったニックにスーツケースを見られ、何かを盗もうとしたのかを問われる。

そこに着替えをしたコーラが現れ、出て行こうとしたフランクに給料の代わりにスーツケースを譲り、結局は彼を引き留めたとニックに説明する。

それを聞いて納得したニックはフランクに謝罪する。

去ろうとも考えたフランクは、その後コーラに使用人として扱われながら耐え忍ぶ日々を送る。

将来についてを話し合うことを決めたフランクは、コーラとの愛を確かめ、ニックがいなければ幸せになれると彼女に言われる。

冗談で言ったことを実行に移すようコーラに迫られたフランクは、躊躇しながらもその方法を考える。

ベアリング・ボールを入れた袋でコーラが、浴室にいるニックを殴ることになり、窓から彼女を出すために梯子を用意したフランクが外を見張る。

見回りに来たブレア巡査は直ぐに引き上げ、梯子を上った猫が感電した瞬間に電気が消え、同時にコーラの悲鳴がする。

コーラは、ニックを殴った瞬間に電気が消えたために驚いたことをフランクに伝える。

二人は生きているニックを病院に運び、そこに現れたサケットに事情を説明する。

意識が戻ったニックは、急に暗くなったことで何が起きたか覚えていなかった。

店に戻ったフランクは、ついて来たブレアとサケットが、感電死した猫のせいで停電になったことで納得したため安心する。

しかし、ニックの様態が悪化すれば疑われるため、コーラとフランクはそれを心配する。

そこに病院からの電話が入り、ニックが1週間で退院できるという知らせを受けた二人は安堵する。

その後の1週間、コーラとフランクは楽しい日々を過ごすが、ニックが退院する日、フランクはコーラを連れて出て行く自信もなく独りでその場を去る。

2週間後、ロサンゼルスの市場をうろついていたフランクは、買い出しに来たコーラと偶然に会えることを期待する。

コーラを忘れられるはずのないフランクは、彼女の車を見つけて近づくが、ニックが現れて彼と共に店に戻る。

フランクを見て驚くコーラは、彼を避けてしまう。

その夜ニックは、道路拡張で店が高値で売れるため、売却益で優雅に暮らす考えをコーラに伝える。

姉の家で暮らすことを決めたニックは、反対するコーラに失望する。

体が麻痺して動けない姉の介護をコーラにさせるのがニックの目的だった。

断固として反対するコーラの意見を聞かずに、フランクはその話をまとめるために電話をする。

ニックは、店を任せる経営者候補としてフランクを買主に推薦する予定だった。

それをフランクに告げて、コーラには直ぐに慣れると伝えたニックは、新生活に希望を抱きご機嫌な様子で寝室に向かう。

コーラとフランクは困惑しながらも決断し、飲酒運転事故を装いニックを殺害しようとする。

二人は、酔ったニックを車に乗せて旅行に行くように見せかけ、そこに現れたサケットに怪しまれないようにして出かける。

崖沿いの道で車がオーバーヒートしたため運転していたコーラは停車し、フランクはニックを瓶で殴る。

フランクは、意識を失ったニックを乗せたまま車を崖下に転落させようとする。

車は途中で止まり、自分達も事故に巻き込まれたように見せかけるため、フランクとコーラは崖を下りる。

別の車が近づき、フランクは車内を確認するが、そのまま崖下に転落してしまう。

コーラは叫び声を上げながら崖から這い上がり、つけて来たというサケットに気づき驚く。

ニックは死亡し、病院に運ばれたフランクは一命を取り留める。

意識の戻ったフランクは、現れたサケットにコーラと組んだニックの殺害を疑われ、罪を認めれば情状酌量を提案すると言われる。

それを否定するフランクは、浴槽の事件から疑っていたことと、殺人の動機となるニックに支払われた1万ドルの保険金についてをサケットから知らされる。

保険金のことは知らなかったと答えるフランクは、犯行の詳細についてのサケットの推測に動揺を隠せない。

更にサケットは、コーラの単独の犯行である可能性についても語り、彼女を告訴するしか助かる方法がないことをフランクに伝える。

フランクに告訴状にサインさせたサケットは、現れたコーラの弁護士アーサー・キーツ(ヒューム・クローニン)にそれを見せる。

弁護に自信があるキーツは、サケットと100ドルの賭けをして裁判に挑むことになる。

キーツは、仕方なくサインしたというフランクに、後のことは全て任せろと言って病室を出る。

退院したフランクは出廷して裁判を見守るが、キーツは、フランクの殺人未遂とニック殺害に対してのコーラの容疑を認めてしまう。

休廷となり別室でコーラと会ったフランクは、自分達が騙されたようだと意気消沈する。

コーラは、騙されたのは自分であり、フランクが陥れようとしたと言って罵る。

そこにキーツが現れ、フランクは彼のことを警察の回し者だと決めつけて非難する。

コーラは、二人が組んで自分に罪を負わせる気だと言って、何もかも話し道連れにすると息巻く。

キーツは仕方なくサケットにその件を伝えると言って部屋を出て、コーラは現れたエズラ・リーアム・ケネデ(アラン・リード)に供述を始める。

コーラは、自分とフランクは共謀してニック殺害を計画し、崖で起きた件と保険金の1万ドルに関しては知らなかったとことを話す。

戻って来たキーツは、サケットが当事者二人を対立させるのが目的だったと言って、自白を止めたにも拘らず勝手に話したコーラとフランクが墓穴を掘ったと指摘する。

金庫に保管してある供述を記録したケネディはキーツの部下で、コーラが法廷で余計なことを話さないようにするためにしたことだった。

今の段階で検事側は確実な証拠を掴んでいないため、とにかく法廷では大人しくしていろというのがキーツのコーラに対する忠告だった。

法廷は再開され、キーツは情状酌量を考えて有罪を認めたが、検事側の告発に対し無罪を主張する。

キーツは、コーラの自白を取れないため証拠がないことを理由に、殺人未遂の告発を取り下げ、殺人容疑を過失致死にすれば有罪を求めると言って情状酌量を提案するようにサケットに迫る。

サケットはそれに従い、過失致死に関してをコーラに問い、彼女は有罪を認める。

キーツは判決を求め、裁判長は、法に定められる期間、コーラを刑務所に収監すると言い渡す。

サケットは情状酌量を提案し、それに難色を示す裁判長は、証拠がないという現状では情状酌量が妥当だと指摘される。

裁判長はコーラの執行猶予を認めて彼女は釈放されるものの、喜ぶフランクが話しかけてもまともには答えずにその場を去る。

サケットは、キーツの弁護を称賛するが、決して諦めないことを伝える。

店に戻るコーラは、サケットの強引なやり方などをキーツから知らされ、保険金1万ドルの小切手を見せられる。

保険会社の探偵も証拠は掴めなかったということで、それを報酬として受け取る権利があると話すキーツだったが、今回は辞退すると言ってコーラにそれを渡す。

コーラに感謝されたキーツは、サケットから奪った賭け金100ドルを見せてその場を去る。

コーラはフランクを追い払おうとするが、残るという彼に雇人として扱うと伝え商売を拡張することを考える。

その後、有名人となったコーラを一目見ようとする客がダイナーに押しかけ店は繁盛する。

サケットと現れたキーツは、検察側が二人の関係を怪しんでいるとコーラとフランクに忠告する。

その件を解決すると言ったコーラは、フランクと結婚する。

そこに、母親が心臓発作を起こしたという連絡がコーラに入り、フランクはキーツと共に彼女を駅まで送る。

フランクは、その場にいた女性マッジ・ゴーランド(オードリー・トッター)が目に留まり、彼女に声をかけて、コーラがいない間、1週間の旅に出る。

コーラは母親の葬儀を済ませて戻り、迎えに来たフランクと共に店に向かう。

そこに、キーツと喧嘩別れしたと言うケネディが現れ、コーラの供述を所持していることを伝えて1万5000ドルを要求する。

ケネディは、それを拒むコーラとフランクに銃を突きつけ、サケットに書類を渡すと言って脅す。

隙を見たフランクはケネディを叩きのめし、コーラが銃を奪い仲間に電話をさせる。

ケネディは、仲間に書類を持参して来るようにと伝える。

その後、現れた男をフランクが殴り倒し書類を奪う。

二人を追い返したフランクは証拠を燃やし、全て解決したと言って喜ぶ。

自分の頭の中に証拠があると言うコーラは、サケットに話す可能性を語る。

有罪となり死刑になると言われたコーラは、一度下った判決は覆らないと答え、フランクのネクタイを持ってきたマッジとの関係を追及する。

その後、サケットへの通報を警戒したフランクはコーラを監視し、彼女もフランクに出て行かれるのを恐れ、二人は憎しみ合う。

コーラは、産まれる子供のために別れを選んだことをフランクに打ち明けて、確かめたいことがあると言って思い出の海岸で幸せを実感したいと伝える。

フランクは、帰るまでには結論が出ると言うコーラを信じて海岸に向かう。

海岸に着いたコーラは憎しみが消えたことをフランクに伝え、気持ちを証明したいと言うフランクと共に沖に向かう。

体力の限界まで泳いだコーラは、自分を信じているかを確かめたかったと言って、愛が冷めたなら一人で戻ってほしいとフランクに伝える。

フランクはコーラを岸に連れて帰り、車に乗った二人は互いの愛を確かめ合う。

生きる喜びを感じるコーラだったが、フランクは彼女とキスしたためハンドルを誤り事故を起こしてしまう。

コーラは亡くなり、フランクは殺人罪で起訴され、キーツの弁護も空しく、サケットから徹底的に追及される。

死刑の判決が下ったフランクは考える。

事故直前にコーラは自分を疑っただろうか、一度道を誤った者は元には戻れない、しかし、彼女を愛していた自分は殺していないとフランクは神父に語る。

知事と話したサケットは、刑は予定通り行われることと、今回の事件が無実でも、結果は同じになると伝える。

サケットは、競売にかけられた店の買い手が見つけた、レジにあった手紙をフランクに見せる。

コーラがフランクを愛していたことが分かる内容は、事故のあった日に書かれ、別れを意味するような内容だった。

ニック殺害にフランクが関与していた証拠になると言うサケットは、コーラの件が問われなくなった場合でも、ニック殺害で再び逮捕されるため結果は同じだと語る。

自分が受ける刑がニック殺害に対してだと知ったフランクは、安堵の表情を見せる。

判決後、届く予定の手紙を待つ気分であり、玄関のベルが鳴ることを恐れる・・・そして2度鳴ることは知らない。

コーラと自分にベルは2度鳴った・・・そのベルは庭に居ても聞こえる。

神は全てを見ている、コーラは死でニックへの罪を償い、自分も同じだと言うフランクは、どこに居ても二人は一緒でいられることを祈ってほしいと神父に伝えほほ笑む。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ロサンゼルス近郊。
放浪癖のあるフランク・チェンバースは、求人看板を見てダイナー”ツイン・オークス”の主人ニックに雇われる。
フランクは、ニックとは年齢も離れ不釣り合いな若くて美しい妻コーラに惹かれてしまう。
トラブルを避けるために去ろうと考えたフランクだったが、ニックに気に入られて働くようになる。
コーラも問題が起きることを避けるために彼を使用人として扱うのだが、強引な彼に惹かれるようになる。
やがて愛し合うようになった2人にとってニックは邪魔な存在となり、コーラとフランクは、彼の殺害を計画するのだが・・・。
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同じ原作の映画化作品、1939年のフランス映画”Le Dernier Tournant”、1943年のイタリア映画”Ossessione”に続く3度目の映画化で、1981年にはジャック・ニコルソンジェシカ・ラング共演で「郵便配達は二度ベルを鳴らす」が再びリメイクされた。

ジェームズ・M・ケインの原作に見られる過激な性描写と暴力的な内容と、セクシー女優として売り出していたラナ・ターナーの主演ということで話題になった作品。

しかし、終戦の翌年という時代背景を考えると、その描写に制限がかかることは仕方がないことで、ダイナーの主人の妻にはそぐわない独特の雰囲気を漂わせる美しさのラナ・ターナーのファッションや脚線美ので観客を画面に引き付ける程度の表現になっている。

その点では、制限が緩んだ36年後の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の性描写はかなり激しいものになっている。

それらについては少々肩すかし的ではあるが、素人考えに近い殺人計画や法廷劇に重点を置いたテイ・ガーネットのそつのない演出手腕に注目したい。

主人公を愛する放浪癖のある男を豊かな感情表現で見事に演ずる、小柄ながらその存在感では主役とも言えるジョン・ガーフィールド、人の好いダイナーの主人セシル・ケラウェイ、辣腕弁護士ヒューム・クローニン、「若草の頃」(1944)や「若草物語」(1949)などの家族を支える父親役から一転、容疑者を激しく追及する地方検事を演ずるレオン・エイムズ、フランク(ジョン・ガーフィールド)が誘う女性、主人公らを強請る男アラン・リード、巡査ジェフ・ヨークなどが共演している。


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