1881年に発表された、ヘンリー・ジャームズの小説”The Portrait of a Lady”を基に製作された作品。 自由な生き方を望む女性の苦悩を描く、監督ジェーン・カンピオン、主演ニコール・キッドマン、ジョン・マルコヴィッチ、バーバラ・ハーシー、メアリー=ルイーズ・パーカー、マーティン・ドノヴァン、リチャード・E・グラント、クリスチャン・ベール、ヴィゴ・モーテンセン他共演のドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ジェーン・カンピオン
製作
モンティ・モンゴメリー
スティーヴ・ゴリン
マーク・ターンブル
原作:ヘンリー・ジャームズ”The Portrait of a Lady”
脚本:ローラ・ジョーンズ
撮影:スチュアート・ドライバーグ
編集:ヴェロニカ・ジャネット
衣装デザイン:ジャネット・パターソン
音楽:ヴォイチェフ・キラール
出演
イザベル・アーチャー:ニコール・キッドマン
ギルバート・オズモンド:ジョン・マルコヴィッチ
セレナ・マール:バーバラ・ハーシー
ヘンリエッタ・ストックポール:メアリー=ルイーズ・パーカー
ラルフ・タチェット:マーティン・ドノヴァン
ウォーバートン卿:リチャード・E・グラント
エドワード・ロジェ:クリスチャン・ベール
キャスパー・グッドウッド:ヴィゴ・モーテンセン
タチェット氏:ジョン・ギールグッド
タチェット夫人:シェリー・ウィンタース
ジェミニ伯爵夫人:シェリー・デュヴァル
パンジー・オズモンド:ヴァレンティナ・セルヴィ
イギリス/アメリカ 映画
配給 Gramercy Pictures
1996年製作 142分
公開
イギリス:1997年2月28日
北米:1996年12月24日
日本:1997年1月25日
北米興行収入 $3,692,840
■ アカデミー賞 ■
第69回アカデミー賞
・ノミネート
助演女優賞(バーバラ・ハーシー)
衣装デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
現代。
少女達がキスについてを語り合う。
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1872年、イングランド、ガーデンコート。
アメリカで両親を失いおば夫婦の世話になっているイザベル・アーチャー(ニコール・キッドマン)は、ウォーバートン卿(リチャード・E・グラント)に求婚される。
イザベルは、後見人であるおじタチェット(ジョン・ギールグッド)に、ウォーバートン卿の求婚を断ることを伝える。
まだ見ぬものを確かめたいと言うイザベルは、財力、地位共に申し分ないウォーバートン卿の求婚を断った理由を語る。
タチェット夫人(シェリー・ウィンタース)は、夫の話を聞き入れるようイザベルに意見し、ロンドンに向かうと言う彼女に、息子のラルフ(マーティン・ドノヴァン)を同行させる。
現地で親友のヘンリエッタ・ストックポール(メアリー=ルイーズ・パーカー)に会ったイザベルは、アメリカで言い寄ったキャスパー・グッドウッド(ヴィゴ・モーテンセン)が、自分を追ってこの地に来ていることを知らされる。 タチェットの屋敷に着いたイザベルは、なぜウォーバートンの求婚を断ったのかをラルフに問われ、完璧な男性の求婚を断った自分の今後に彼が興味を持っていることを知る。 ただ”生きたい”という、イザベルの求婚を断った理由を聞いたラルフは、彼女が運命に身を任せるのだと判断する。 その後、ヘンリエッタに聞いたというキャスパーがホテルに現れ、イザベルは、迷惑だと言って彼を追い払う。 しかしイザベルは、自分の顔に触れたキャスパーの感触を確かめ、彼とラルフそしてウォーバートンに愛撫されることを想像してしまう。 翌朝イザベルは、ヨーロッパ人と自分を結婚させたくないヘンリエッタのお節介を非難する。 そこに現れたラルフは、父が発作を起こしたため戻ることをイザベルに伝える。 同行するというイザベルは荷物を取りに部屋に向い、ラルフは、イザベルとキャスパーを結婚させたいヘンリエッタの考えを知る。 ガーデンコート。 ベッドに横たわるタチェットは、ラルフにイザベルとの結婚を勧める。 好意は持つものの恋ではないと答えるラルフは、結核の自分が短命であることを伝え、イザベルの生き方を見守りたいだけであり、自由に暮らせるよう彼女に財産を与えるよう父に提案する。 その後イザベルは、セルマについてをラルフに尋ね、散歩を共にしたセルマからはラルフに嫌われていると言われる。 そんなセルマと親交を深めるイザベルは、彼女に愛情に近いものを感じる。 その後タチェットは、イザベルに何かを語りかけようとしながら息を引き取る。 タチェットがイザベルに7万ポンドの遺産を遺したことが、夫人からセルマに知らされる。 半年後、フィレンツェ。 セルマはイザベルを伴い、オズモンドと姉ジェミニ伯爵夫人(シェリー・デュヴァル)に会う。 イザベルはオズモンドに魅力を感じ、その後、二人は親交を深める。 タチェット夫人は、風変わりな男であるオズモンドのことが気になり、その件についてセルマに尋ねる。 セルマは、二人の関係を自分が調べて見ると言って約束する。 イザベルのことをセルマに尋ねられオズモンドは、考えを持ち過ぎる欠点があることを伝える。 そのつまらない考えを排除することも考えるオズモンドに同意できないセルマは、今後は一人でことを進めるよう指示する。 オズモンドはイザベルに愛を告げるが、答えを急いで聞く気もなく、修道院から戻った娘パンジー(ヴァレンティナ・セルヴィ)を訪ねてもらいたいことを伝える。 イザベルに軽くキスしたオズモンドはその場を去り、ラルフが彼とすれ違う。 パンジーを訪ねたイザベルは、父オズモンドの言いつけを涙しながら守ろうとする彼女を気遣う。 1年後、フィレンツェ。 イザベルから明確な答えを得られないキャスパーは、顔を見に来ただけかと言う、彼女の問に返事もせずにその場を去る。 様態が悪化するラルフも、簡単に人生を決めたイザベルに失望したことを伝える。 オズモンドに対する侮辱とも言えるラルフの言葉に意見するイザベルは、自分の選択が正しかったと反論する。 結婚したイザベルとオズモンドは、パンジーの将来のために最善を尽くそうとする。 3年後、ローマ。 2年前に子供を亡くしたイザベルが、自分の子に財産を与えると考えるセルマは、パンジーとエドワードの関係を利用した計略を練る。 パーティを開いたオズモンドは、パンジーとエドワードの結婚を許すつもりがないことをセルマに伝える。 エドワードは、自分が受け入れられないことでイザベルに不満を訴えるが、パンジーが父親に絶対服従することを知っているため、無理な話だと答える。 そこにウォーバートン卿が現れ、ラルフの病状が悪化しているにも拘らず、タチェット夫人はアメリカに渡ってしまったことをイザベルに伝える。 ラルフは、見舞いに来たイザベルが、オズモンドのせいで変わってしまったと考える。 ウォーバートンは、20歳以上も年の差のあるパンジーに興味を示すように見せて、イザベルの考えを探る気だった。 イザベルはウォーバートンの行動を気にして、複雑な思いでパンジーとエドワードのことを考える。 ウォーバートンの件は、オズモンドには申し分のない話であった。 そんなオズモンドは、この件をイザベルに任せる。 大使館の舞踏会が開かれ、イザベルはウォーバートンの気持ちを探り、彼がオズモンドへの手紙を投函していないことを知る。 それを必ず投函するように伝えたイザベルは、エドワードに帰った方がいいと助言する。 父親の言いなりの娘と結婚したいのかをウォーバートンに尋ねたイザベルは、結婚に反対なのかを問われ答えを返さない。 ラルフに会ったイザベルは、ウォーバートンの目的が自分であることを知らされる。 イザベルは苦しみ、この件に積極的になれない理由が、パンジーへの嫉妬からであるとオズモンドが考えているのだとラルフに言われる。 それを否定するイザベルだったが、今に分かるとラルフに言われる。 パンジーの望みを聞いたイザベルは、ウォーバートンが求婚してこないと確信していることを伝える。 イザベルは、エドワードを愛するパンジーが、今の状況にしておけば、父が他の相手を紹介しないと考えていることを知る。 ウォーバートンから手紙が届かずに苛立つオズモンドだったが、そこに本人が現れる。 帰国の挨拶に来たと言うウォーバートンに失望したオズモンドは席を外す。 ほっとしたと言うイザベルに、自分も同じ気持ちだと伝えたウォーバートンは、諦めると言い残してその場を去る。 オズモンドは、パンジーとウォーバートンの関係を邪魔したイザベルの企みを追及して苦しめる。 ラルフも帰国することになり、ヘンリエッタと共に、イザベルの依頼でキャスパーも彼に同行することになる。 キャスパーはイザベルに追い払われると判断し、そのことで彼女を責める。 イザベルは、連絡があればオズモンドに反対されても出向くと言って、友であるラルフに別れを告げる。 久し振りにセルマに会ったイザベルは、オズモンドに会ったと言う彼女から、夫が自分を非難していたと聞いてその場を去ろうとする。 イザベルを引き留めたセルマは、彼女に真実を尋ねる。 ウォーバートンがなぜ去ったのか、イザベルの企みなのかを確かめたセルマは、そうであれば彼を自分達の元に返すよう迫る。 何をしたいのかを聞かれたセルマは、全てを思い通りにしたいと答え、イザベルは混乱する。 セルマは計画の失敗を嘆き、オズモンドは娘パンジーを慰めに生きることにする。 その後、イザベルとパンジーに出くわしたエドワードは、収集品を手放し5万ドルを手に入れたことを伝える。 これでオズモンドが納得してくれるはずだと言うエドワードだったが、イザベルは動揺するパンジーを連れてその場を去る。 その後オズモンドは、パンジーを修道院に入れてしまう。 ラルフの危篤の報せを受けたイザベルは、彼の元に向かおうとするが、オズモンドはそれを許さない。 ジェミニ伯爵夫人は苦しむイザベルに、セルマとオズモンドは以前から関係を持ち、パンジーは先妻の子ではなく二人の子供であることを知らせる。 イングランドに向かったイザベルは、途中で修道院のパンジーを訪ねるが、その場にはセルマがいた。 イザベルは、パンジーに共にイングランドへと向かうことを提案するが、それが父親の考えでないことを知り、戻って来るのを待つと伝える。 旅立つイザベルを引き留めたセルマは、パンジーの事ではなくラルフの話をする。 セルマは、ラルフの口添えで財産が遺されたことをイザベルに伝える。 自分の推測ではあるが確信があると言うセルマは、ラルフに感謝するべきだと伝える。 不幸は察するが、自分は更に不幸だとセルマはイザベルに伝える。 ガーデンコート。 イザベルは、ベッドのラルフに寄り添い愛を伝えて泣き崩れる。 ラルフは、愛しいイザベルに見守られながら息を引き取る。 葬儀の後、キャスパーに話しかけられたイザベルは、行動を共にしたラルフが好人物であることが分かったと言われる。 キャスパーは、ラルフから全てを聞いたことを伝え、許す限り力になってくれと言われたことをイザベルに伝える。 覚悟してこの地に来て戻れるはずがない今、孤独である身のイザベルに、自分のことを考えてほしいとキャスパーは伝える。 自分達は幸せになれると言うキャスパーの言葉と口づけを受け入れられないイザベルは、その場から走り去り屋敷に戻る。 イザベルは、閉め切ってあるドアを開けることができずに振り返る。
...全てを見る(結末あり)
屋敷に戻ったイザベルは、おばの友人であるアメリカ人のマダム・セレナ・マール(バーバラ・ハーシー)と知り合う。
セルマは、”友人”である骨董品収集家ギルバート・オズモンド(ジョン・マルコビッチ)を訪ね、この地に来ているイザベルが若くて美しく資産家であり、彼の理想を完璧に満たす女性だと伝えて、ものにするよう促す。
キャスパーの訪問を受けたイザベルは、結婚を決めた説明を求められる。
セルマは、パンジーと恋仲にあるエドワード・ロジェ(クリスチャン・ベール)を呼び出す。
ラルフの元に向かったイザベラは、オズモンドが財産目当てだと知りながら、隠し通し苦しんだことを伝える。
*(簡略ストー リー)
1872年、イングランド。
アメリカで両親を失い、おば夫婦の世話になっているイザベル・アーチャーは、ウォーバートン卿の求婚を断る。
おじタチェットにそれを伝えたイザベルは、まだ見ぬものを確かめたいと言って自由な生活を求めようとする。
従兄のラルフ、アメリカから自分を追ってきたキャスパー、そしてウォーバートン、受け入れてもいい愛をあえて拒み自分の生きる道を決めたイザベルはロンドンに向かう。
発作で倒れたタチェットの元に戻ったイザベルは、おばの友人セルマに出会い親交を深める。
タチェットは、息子ラルフにイザベルとの結婚を勧めるが、結核の彼は短命な自分との生活よりも、イザベルの自由な生き方を見極めたいと考え、父に彼女への財産分与を提案する。
そしてタチェットは亡くなり、イザベルには7万ポンドの遺産が遺される。
フィレンツェ、セルマは、”友人”である骨董品収集家オズモンドの元に向い、理想を完璧に満たすイザベルに近づくよう彼に指示し、ある計画を実行しようとするのだが・・・。
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保守的な社会の中で自由を求める女性の生き様と、愛を求めつつ苦悩する女心を描く、ジェーン・カンピオンの丁寧で細やかな映像表現が際立つ作品。
全ての条件を満たす人物と結婚できるにも拘らず、あえてそれを拒み、どう考えても財産目当てとしか思えない男性との生活を選ぶというところが女心の難しさだろうか・・・。
主人公の身に起きる事柄や居住地と共に変化する衣装、常に退廃的なムードが漂う内容も印象的だ。
第69回アカデミー賞では、助演女優賞(バーバラ・ハーシー)、衣装デザイン賞にノミネートされた。
実力派、ベテランを揃えた豪華キャストも注目であり、その中で、全てを見据える策略家から、母親の顔、そして慚愧の表情まで完璧に演ずる謎の女的役柄のバーバラ・ハーシーと、単なる資産家の跡取りではなく、思慮深い考えの持ち主である主人公を見守る従兄役のマーティン・ドノヴァンの好演が光る。
二人は各映画賞で高い評価を受けた。
自由な生き方を望みつつ苦しみ続ける、美しさ際立つ主人公を演ずるニコール・キッドマン、彼女を巻き込む謀略に失敗するその夫役のジョン・マルコヴィッチ、主人公の友人メアリー=ルイーズ・パーカー、主人公に求婚し断られるリチャード・E・グラント、主人公の義娘(ヴァレンティナ・セルヴィ)を愛する青年クリスチャン・ベール、主人公を愛するアメリカ人ヴィゴ・モーテンセン、主人公の後見人ジョン・ギールグッド、その妻シェリー・ウィンタース、オズモンド(ジョン・マルコヴィッチ)の姉シェリー・デュヴァルなどが共演している。