サイトアイコン That's Movie Talk!

戦場のピアニスト The Pianist (2002)

自らの体験を基に1946年に発表した、ウワディスワフ・シュピルマンの自叙伝が原作。
第二次大戦下、ドイツ軍に占領されたポーランドワルシャワを舞台に戦火を逃れながら生き抜いた著名なピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの終戦までを描く、製作、監督、脚本ロマン・ポランスキー、主演エイドリアン・ブロディトーマス・クレッチマン他共演のヒューマン・ドラマの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ヒューマン)


スタッフ キャスト ■
監督:ロマン・ポランスキー

製作総指揮
ティモシー・バーリル
ルー・ライウィン

ヘニング・モルフェンター
製作
ロマン・ポランスキー

ロベール・ベンムッサ
アラン・サルド
原作:ウワディスワフ・シュピルマン(自叙伝)
脚本
ロナルド・ハーウッド

ロマン・ポランスキー
撮影:パヴェル・エデルマン
編集:ハーヴ・デ・ルーズ
衣装デザイン:アナ・B・シェパード
音楽:ヴォイチェフ・キラール

出演
エイドリアン・ブロディウワディスワフ・シュピルマン

トーマス・クレッチマンヴィルム・ホーゼンフェルト大尉
フランク・フィンレー:シュッピルマン
モーリン・リップマン:シュッピルマン夫人
エド・ストッパード:ヘンリク
ジェシカ・ケイト・マイヤー:ハリーナ
ジュリア・レイナー:レギーナ
エミリア・フォックス:ドロタ
ミハウ・ジェブロフスキー:ユーレク
ヴァレンタイン・ペルカ:ミルカ
ルース・プラット:ヤニナ
ロナン・ヴィバート:アンジェイ・ヤニナ
ダニエル・カルタジローン:マヨレク
ロイ・スマイルズ:イーツァク・ヘラー
ポール・ブラッドリー:イェフーダ

フランス/ポーランド/ドイツ/イギリス 映画
配給 フォーカス・フィーチャーズ
2002年製作 148分
公開
フランス:2002年9月25日
ポーランド:2002年9月6日
ドイツ:2002年10月24日
イギリス:2003年1月24日
北米:2002年12月27日
日本:2003年2月15日
製作費 $35,000,000
北米興行収入 $32,519,320
世界 $120,072,580


アカデミー賞 ■
第75回アカデミー賞

・受賞
監督
主演男優(エイドリアン・ブロディ
脚色賞
・ノミネート
作品・撮影・編集・衣装デザイン賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1939年9月1日、ワルシャワ
ラジオ局で演奏をしていた、著名なユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)は、突然始まった空襲で演奏を中止する。

ナチス・ドイツによるポーランド侵攻が開始され、第二次大戦が勃発する。

シュピルマンは脱出の途中、友人ユーレク(ミハウ・ジェブロフスキー)の妹ドロタ(エミリア・フォックス)に出会う。

帰宅したシュピルマンは、家族と共にイギリスドイツに対して宣戦布告したことと、数時間以内にフランスもそれに続くだろうというラジオ放送を聞き安堵する。

しかし、ナチス親衛隊は、その後もワルシャワを占領し、シュピルマンの家族は所持金をバイオリンに隠すことに決める。
...全てを見る(結末あり)

ドロタに一目惚れしてしまったシュピルマンは、彼女を誘い、自分のファンだということを知り楽しいひと時を過ごす。

ワルシャワユダヤ人は生活制限を受け、やがて外出時には、青い”ダビデの星”の腕章を着けることが義務付けられる。

日に日に、ナチスユダヤ人への迫害は激しくなる一方で、ついにユダヤ人区域への強制的な居住が始まる。

所持金が底を突いたシュピルマン一家は、高級ピアノまでも売り払い飢えをしのぐ。

1940年10月30日。
ゲットー(居住区)に向かうシュピルマンは、ドロタに出くわして別れを告げる。

ゲットーはレンガの壁で囲われ、わずか3.36平方kmの区域に、なんと40万人以上の人々が隔離されてしまう。

シュピルマンは、自治警察官のイーツァク・ヘラー(ロイ・スマイルズ)の誘いを断り、弟ヘンリク(エド・ストッパード)と路上で本を売ったり、レストランでピアノを弾く日々を続ける。

ユダヤ人は、ナチスの迫害や飢えに苦しむ中、何とか耐え忍んで生き抜いていた。

そんな時、ヘンリクが自治警察に逮捕されてしまい、警察のへラーに懇願し、何とかシュピルマンが弟を助け出す。

ヘンリクは、今後、雇用証明書がない者は強制的に収容所へ送られることをシュピルマンに伝える。

母親(モーリン・リップマン)や姉妹ハリーナ(ジェシカ・ケイト・マイヤー)、レギーナ(ジュリア・レイナー)の証明書は確保したものの、父(フランク・フィンレー)の証明書が手に入れられず、シュピルマンは焦り始める。

しかし、知人マヨレク(ダニエル・カルタジローン)の助けでシュピルマンは証明書を手に入れる。

1942年3月15日。
シュピルマン一家は、親衛隊の命令で中庭に呼び出され、ヘンリクとハリーナが連行される。

1942年8月16日。
労働奉仕という名目で、ゲットーから移送されることになったシュピルマン一家は、ユダヤ人の集まる広場へと向かう。

そこで、家族はヘンリクとハリーナに再会し、広場の状況を見て絶望した父は、所持していても無意味な金を家族から集め、少年から20ズロチでキャラメル一粒を買う。

それを、家族6人分に切り分けて食べた一家は、収容所行きの列車に乗ろうとするが、監視のへラーにシュピルマンだけが家族から引き離される。

収容所行きを免れたシュピルマンは、その場を立ち去り、家族は二度と帰れぬ旅へと出発する。

命は救われたものの、シュピルマンは一人取り残されて絶望し、人影がなくなった地区のゲットーをさ迷う。

強制労働を強いられたシュピルマンは、マヨレクと再会し、彼からユダヤ人を絶滅させる計画が進行中だということを知らされる。

50万人いたユダヤは6万人に減り、多くは若者であったため、マヨレクは、内部で組織された有志が、蜂起の準備をしていることもシュピルマンに伝える。

レンガ運びなどの重労働をさせられていたシュピルマンは、仲間達の計らいで軽作業に移され、外部から運ばれてくる武器などを隠し、蜂起の準備を手伝う。

シュピルマンは、以前、市場で見かけた友人ヤニナ(ルース・プラット)の助けを借り、ゲットーから脱出することを考える。

ある日の夜、ゲットーを抜け出したシュピルマンは、ヤニナと夫アンジェイ(ロナン・ヴィバート)の協力で、外側の隠れ家に連れて行かれる。

1943年4月19日。
シュピルマンは、数年ぶりに人間らしい生活を手に入れる。

時同じくして、ゲットー内での武装蜂起が始まり、ユダヤ人は抵抗を続ける。

1943年5月16日。
ゲットーで始まったユダヤ人の抵抗は、ドイツ軍によって鎮圧される。

シュピルマンの隠れ家も危険な状態になり、ヤニナ達も逮捕されるが、シュピルマンは避難せずに、そこに留まることにする。

食料も底を突き、隣人に気づかれたシュピルマンは、雪の降りしきる中、隠れ家から逃れ町をさ迷う。

アンジェイに渡されていた、緊急時の住所に向かったシュピルマンは、そこでドロタに再会する。

シュピルマンはドロタが結婚したことに驚くが、彼女の夫ミルカ(ヴァレンタイン・ペルカ)に手厚く持て成される。

次の隠れ家はドイツ陣営の真っ只中で、向かいが病院の狭い部屋だったが、そこにはピアノが置かれていた。

シュピルマンは、戦争も終わりに近いことをミルカから伝えられて励まされる。

1944年初夏。
食料の供給が遅れ始めたシュピルマンは、肝機能障害で黄疸が出てしまうが、連合軍フランスに侵攻したことを知らされる。

その後、シュピルマンの様子を見に来たミルカとドロタは、衰弱しきった彼を医者に診せ疎開していく。

1944年8月1日。
ソ連軍の支援を受けたポーランドの抵抗組織は、蜂起して街中は大混乱となり、シュピルマンの隠れ家もドイツ軍に包囲されてしまう。

病気から回復していたシュピルマンは、隠れ家から逃げようとするが入り口は鍵がかけられてしまい、戦車の砲撃を受け、貫かれた壁から屋根裏に逃れる。

建物の外に逃れたシュピルマンは、夜になり病院に侵入し、診察台の上で一夜を過ごして食料を探す。

やがて、町はドイツ軍に制圧されて人々は姿を消し、建物は破壊され焼き尽くされる。

病院を脱出したシュピルマンは、廃墟と化したワルシャワの町で孤立してしまう。

ある民家で缶詰を見つけたシュピルマンは、それを持って隠れるが、司令部設営に来ていたドイツ軍将校のヴィルム・ホーゼンフェルト大尉(トーマス・クレッチマン)に見つかってしまう。

ホーゼンフェルトに尋問されたシュピルマンは、職業を聞かれピアニストと答える。

シュピルマンを呼び寄せたホーゼンフェルトは、彼をピアノのある部屋に連れて行き演奏をさせる。

演奏が終わると、ホーゼンフェルトシュピルマンを屋根裏部屋に匿い食料を与える。

砲撃の音が激しさを増し、ホーゼンフェルトは、あと数週間待てばソ連軍が現れることをシュピルマンに伝え、彼に希望を与える。

やがて、ホーゼンフェルトの部隊は撤退することになり、彼はシュピルマンに最後の食料とコートを与える。

シュピルマンの名前を聞いたホーゼンフェルトは、戦後演奏活動に復帰した際には、必ずそれを聴くことを彼に約束して立ち去る。

そして、ワルシャワソ連軍により解放されるが、通りに出たシュピルマンは、ドイツ軍のコートを着ていたため、敵兵と間違われてしまう。

シュピルマンは、ソ連兵の銃撃に遭うものの危うく難を逃れる。

ホーゼンフェルトは捕虜となり、彼らを罵るポーランド人の音楽家に、”自分はシュピルマンを助けた、彼に自分を救ってくれ”と伝えるよう頼み込む。

ピアニストに復帰したシュピルマンは、ラジオ局での演奏の最中、ホーゼンフェルトの伝言を知らされる。

シュピルマンは、ホーゼンフェルトが収容されていたと思われる場所に向かうが、既に捕虜達は移送された後だった。
__________

シュピルマンはその後もワルシャワで暮らし、2000年7月6日、88歳で他界した。

ホーゼンフェルトは、1952年にソ連の戦犯捕虜収容所で死亡した。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1939年9月1日、ワルシャワ
ナチス・ドイツによるポーランド侵攻が開始され、第二次大戦が勃発する。
ラジオ局で演奏をしていた、著名なユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンは、突然始まった空襲で演奏を中止する。
帰宅したシュピルマンは、イギリスドイツに宣戦布告し、フランスもそれに続くという情報を聞き安堵する。
しかし、ナチス親衛隊ワルシャワを占領して、ユダヤ人達への迫害が始まり、彼らはゲットーに強制移住させられる。
シュピルマンは、何とかその居住区内での生活を続けていたが、やがて、一家を含むユダヤ人達は、強制収容所に送られることになる・・・。
__________

第75回アカデミー賞では作品賞をはじめ7部門にノミネートされ、監督、主演男優(エイドリアン・ブロディ)、脚色賞を受賞した。
・ノミネート
作品、撮影、編集、衣装デザイン賞

エイドリアン・ブロディは、「グッバイガール」(1977)のリチャード・ドレイファスの記録を25年振りに破り、史上最年少の29歳で主演賞を受賞した。

また、監督賞を受賞したロマン・ポランスキーは、逆に69歳7ヶ月という当時の最年長記録を作るものの、1977年に起こした少女への淫行罪の逮捕によりヨーロッパに逃れていて、逮捕・収監の可能性があるために、当然のごとく授賞式には出席しなかった。
*その後、2005年にクリント・イーストウッドが、「ミリオンダラー・ベイビー」により74歳で監督賞を受賞する。

当時の、ユダヤ人に対する非人道的行為の様子などが、一人の音楽家と家族を中心に、前半はドキュメンタリーのように描かれ、中盤から終盤にかけては主人公の孤独な戦い、クライマックスは、彼を人間として扱うドイツ軍将校との友情のドラマとして、見応えのある内容となっている。

自身も子供時代にゲットーに入れられた経験があるロマン・ポランスキーの、実体験を基にした生々しい描写は、目を覆いたくなるような場面も多々あるが、廃墟と化したワルシャワの街並みのセットや衣装なども見事に再現されている。

本作の役作りのために自分を追い込み、ピアノ演奏も習得し主人公に成り切ったと言われる、主演のエイドリアン・ブロディの、迫真の演技は素晴らしく、本作で一躍でトップスターの仲間入りを果たし、その後も順調なキャリアを積み重ねている。

出番は少ないが、終盤で重要人物として登場するドイツ軍将校ヴィルム・ホーゼンフェルトを演ずるトーマス・クレッチマンの、品格があり落ち着いた雰囲気は、それまで野蛮人のように描かれるドイツ兵とのギャップが激しく、その人物像が一層際立ち、また象徴的に描かれている。

主人公の弟エド・ストッパード、主人公に思いを寄せながら彼を救うエミリア・フォックス、地下組織員ダニエル・カルタジローンなどが、登場人物の中では印象に残る。


モバイルバージョンを終了