犯罪者への一方的制裁というテーマを真正面から捉え人間の良心や正義についてを描く、監督ウィリアム・A・ウェルマン、ヘンリー・フォンダ、ダナ・アンドリュース、アンソニー・クイン他共演の社会派・西部劇の傑作。 |
・西部劇
・アンソニー・クイン / Anthony Quinn / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・A・ウェルマン
製作:ラマー・トロッティ
原作:ウォルター・ヴァン・ティルバーグ・クラーク
脚本:ラマー・トロッティ
撮影:アーサー・C・ミラー
編集:アレン・マクニール
音楽:シリル・J・モックリッジ
出演
ギル・カーター:ヘンリー・フォンダ
ドナルド・マーティン:ダナ・アンドリュース
ローズ・メイプン/ローズ・スワンソン:メアリー・ベス・ヒューズ
ホアン・マルチネス/フランシスコ・モレス:アンソニー・クイン
アート・クロフト:ハリー・モーガン
アーサー・デイヴィス:ハリー・ダヴェンポート
テトリー少佐:フランク・コンロイ
ジェフ・ファーンリー:マーク・ローレンス
ジェラルド・テトリー:ウィリアム・アイス
ジェニー・グリアー:ジェーン・ダーウェル
ハルヴァ・ハーヴェイ:フランシス・フォード
ダニエル・テイラー判事:マット・ブリッグス
ラーチ夫人:マーガレット・ハミルトン
ゲイブ・ハート:ロンド・ハットン
リズリー保安官:ウィラード・ ロバートソン
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1943年製作 75分
公開
北米:1943年5月21日
日本:未公開
■ アカデミー賞 ■
第16回アカデミー賞
・ノミネート
作品賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1885年、ネバダ州。
ある町に、女を捜しに現れた青年ギル・カーター(ヘンリー・フォンダ)は、相棒のアート・クロフト(ハリー・モーガン)と酒場に向かう。
その女ローズ・メイプン(メアリー・ベス・ヒューズ)が旅立ったことを知り苛立つカーターは、客のジェフ・ファーンリー(マーク・ローレンス)と揉め事を起こし、店主に殴られ気絶してしまう。
その後、ファーンリーの友人の牧場主が殺され、牛が盗まれる事件が起きる。
早速、犯人を追跡しようとするファーンリーを、町の長老で雑貨店を営むアーサー・デイヴィス(ハリー・ダヴェンポート)が制止し、捜索隊を編成することを提案する。 しかし、町の男達の怒りは収まらず、デイヴィスは事態を鎮めるために、カーターに判事と保安官への連絡を頼み、彼は仕方なくそれを承知する。 カーターはダニエル・テイラー判事(マット・ブリッグス)を、暴徒と化す寸前のファーンリーらの元に連れて行く。 判事の説得も聞かないファーンリーらを見てデイヴィスは焦るが、テトリー少佐(フランク・コンロイ)が牛を追っている犯人の情報を伝える。 それを聞いたデイヴィスは、止むを得ず捜索隊の出動を認め、カーターとクロフトも同行することになる。 その夜、通過した駅馬車を追った捜索隊だったが、その客の中に、カーターが捜していた、現スワンソン夫人のローズがいた。 クロフトが、駅馬車の御者に腕を撃たれ、それを治療する間、カーターはローズと簡単な言葉を交わし別れる。 その後、捜索隊は、野営していた三人組、ドナルド・マーティン(ダナ・アンドリュース)、ホアン・マルチネス(アンソニー・クイン)、ハルヴァ・ハーヴェイ(フランシス・フォード)らを見つける。 三人は拘束され、テトリーがマーティンに殺人と牛泥棒のことを問い質すが、彼は無実を主張する。 後を追ってきたデイヴィスが、三人に公正な裁判を受けさせるべきだと意見するが、テトリーはそれを聞き入れない。 カーターも、犯人か分からぬまま絞首刑にするのに反対するが、クロフトに口出しを止められる。 その時、ハーヴェイがマルチネスが犯人だと言いだし、彼がフランシスコ・モレスというお尋ね者だということも分かる。 そして、三人は吊るされそうになるが、家族への手紙を書かせてくれというマーティンの頼みを聞き入れ、処刑を夜明けまで待つことにする。 その後、殺された牧場主の銃を隠し持っていたモレスが逃亡しようとする。 しかし、モレスは足を撃たれ捕らえられ、彼は、銃は拾ったものだと言い張る。 やがて、三人に対して裁判か処刑かを多数決で決めることになり、デイヴィス、カーターやクロフト、そしてテトリーに反抗する息子ジェラルド(ウィリアム・アイス)など、7人が裁判を支持する。 しかし、絞首刑が多数となり、三人を乗せた馬を鞭打つ役にジェニー・グリア(ジェーン・ダーウェル)が志願するが、それを父テトリーに強要されたジェラルドはその役を拒む。 そして三人の処刑は執行され、鞭を打てなかったジェラルドをテトリーは殴り倒す。 引き上げようとする捜索隊に、被害に遭った牧場の様子を見て来たリズリー保安官(ウィラード・ ロバートソン)が合流する。 保安官は、牧場主が死んでいないことと、犯人が捕まったことを一行に伝える。 デイヴィスに関与していないことを確認した保安官は、処刑に賛成した者に神の許しを請うよう伝え、罪は問わないことを言い渡す。 その後カーターは、デイヴィスが預かったマーティンの手紙を読ませてもらう。 町に戻ったジェラルドは、父テトリーの卑劣な行為を批判し、勇気を持って処刑を止められなかった自分を恥じるのだが、テトリーは書斎に入り自決する。 酒場で、今回の事件を考える無言の男達の前で、マーティンに対しクロフトが心無い言葉を発する。 それを聞いたカーターは、クロフトや男達にマーティンの手紙を読んで聞かせる。 それには、自分を処刑する者達への非難はなく、人間の良心の尊さが記されていた。 そして、それを読み終わったカーターは、クロフトと共に町を去って行く。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
旧知の女を訪ねて、ある町を訪れた青年ギル・カーターは、相棒のクロフトと共に農場主殺害事件にかかわるいことになる。
町の男達は、人望厚かった農場主であったために犯人捜しを焦るが、長老デイヴィスは冷静な判断で対応するよう意見する。しかし、自分の名誉をひけらかしたいだけのテトリー少佐が、重要な情報を元に捜索隊を編成し、犯人捜索に向かう。
カーターとクロフトも同行した捜索隊は、野営する三人組が、殺された牧場主の牛を連れていたことで、犯人と決めつけて処刑しようとする。
デイヴィスは、公正な裁きをするべきだと主張し、それに同調するカーターは、テトリーらの暴走を何とか止めようとするのだが・・・。
__________
1940年に発表された、ウォルター・ヴァン・ティルバーグ・クラークの小説”The Ox-Bow Incident”の映画化。
完ぺき主義者ウィリアム・A・ウェルマンならではの、どの時代にも有り得る現実的主題を、制裁を加える者、傍観者、死の宣告を受ける者そして冷静な判断をするよう意見する者、各視点からそれらを丹念に、また鋭く描いた作品。
日本未公開作品ながら、本国アメリカでは、強烈なメッセージ性のある作品として高く評価されている。
1998年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第16回アカデミー賞では、作品賞にノミネートされた。
主演はヘンリー・フォンダではあるが、上記のように各立場の登場人物を満遍なく描写する内容で、人間的にはやや未熟な青年として登場する主人公のヘンリー・フォンダが、衝撃的な事件をきっかけに、成長して町を去るラストも素晴らしい演出だ。
無実の罪で処刑される三人、ダナ・アンドリュース、アンソニー・クイン、フランシス・フォード、主人公の旧知の女性メアリー・ベス・ヒューズ、相棒ハリー・モーガン、町の長老ハリー・ダヴェンポート、名誉だけを追う少佐役のフランク・コンロイ、その息子役ウィリアム・アイス、犯人への制裁を煽るマーク・ローレンス、ジェーン・ダーウェル、判事役マット・ブリッグス、その使用人役マーガレット・ハミルトン、保安官ウィラード・ロバートソンなどが共演している。