1972年に発表された、フレデリック・フォーサイスの小説”オデッサ・ファイル”を基に製作された作品。 元ナチス親衛隊の秘密組織”オデッサ”のメンバーである”屠殺人”エドゥアルト・ロシュマンを追う記者の行動に隠された秘密を描く、監督ロナルド・ニーム、主演ジョン・ヴォイト、マクシミリアン・シェル、マリア・シェル、メアリー・タム、デレク・ジャコビ他共演のサスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロナルド・ニーム
製作:ジョン・ウルフ
脚本
ケネス・ロス
ジョージ・マークスタイン
原作:フレデリック・フォーサイス”オデッサ・ファイル”
撮影:オズワルド・モリス
編集:ラルフ・ケンプレン
音楽:アンドルー・ロイド・ウェバー
出演
ペーター・ミラー:ジョン・ヴォイト
エドゥアルト・ロシュマン:マクシミリアン・シェル
フラウ・ミュラー:マリア・シェル
シギー:メアリー・タム
クラウス・ヴェンツァー:デレク・ジャコビ
リヒャルト・グリュックス:ハンネス・メッセマー
サイモン・ヴィーゼンタール:シュミュエル・ロデンスキー
デヴィッド・プラス:ピーター・ジェフリー
グスタフ・マッケンソン:クラウス・レーヴィッチェ
ワーナー・デイルマン:アーネスト・シュローダー
グライファー将軍:ギュンター・マイズナー
カール・ブラウン:グンナール・モーラー
クニック:ギュンター・ストラック
フランツ・バイエル:ノエル・ニューマン
イギリス/西ドイル 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1974年製作 130分
公開
イギリス:1974年10月17日
北米:1974年10月18日
日本:1975年3月1日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1963年9月23日、イスラエル。
エジプトの攻撃が迫り、病原菌や放射性物質が装着されたロケット弾の誘導装置が完成することを恐れた軍は、西ドイツのどこかでそれが作られていることに気づいていた。
その秘密施設の者達は、発注者が”オデッサ”であることを知らずに開発を進めているため、最終段階に入ったそれを阻止するため、場所を特定しようとする。
元ナチス親衛隊の秘密組織”オデッサ”が存在し、”リガ・ゲットー”の司令官エドゥアルト・ロシュマンもその一員だった。
エジプト大統領は、イスラエル攻撃のための400基のロケット開発を急ぎ、それを行ったのは、ヒトラーのロケット開発計画に従事した科学者だった。
1963年11月22日、西ドイツ、ハンブルグ。 その後、ミラーは事件現場に遭遇し、友人の警官カール・ブラウン(グンナール・モーラー)から、老人のガス自殺だと知らされる。 翌朝、恋人のシギー(メアリー・タム)から稼ぎが悪いと言われたミラーは、新聞社に勤めることを勧められるが、フリーがいいと答える。 ブラウンに呼ばれたミラーは、昨夜の自殺した老人の遺品を受け取り、内密だと言われる。 帰宅したミラーは、老人ソロモン・タウバーの書いた、ナチの迫害に関しての日記を読む。 ”リガ・ゲットー”に妻と共に移送されたユダヤ人のタウバーは、”屠殺人”と言われた司令官エドゥアルト・ロシュマン(マクシミリアン・シェル)を始めて見る。 ロシュマンは容赦なくユダヤ人を殺し、その中で、建築家だったタウバーは妻と共に生き延びる。 しかし、ロシュマンが開発したガス室トラックに乗せられた、タウバーの妻は殺される。 タウバーは悲しみを堪えながら、生き抜いてロシュマンの行った行為を世に伝えることを決意した。 その内容にショックを受けたミラーは、ダンサーであるシギーをクラブに送った後も、タウバーの日記を読み続ける。 1941年から”リガ・ゲットー”に送られたユダヤ人は20万人で、生き残ったのは僅か400人だった。 1944年、ソ連軍が近づき、リガの港に向かったロシュマンは、親衛隊が船を徴用することを伝える。 負傷兵を下船させようとしたロシュマンは、それに抵抗する国防軍の大尉に殴られたため、彼を射殺してしまう。 1945年、終戦直前にロシュマンは逃亡して姿を消した。 タウバーは、ロシュマンに裁きを受けさせようと決意するが、その後は、ドイツ人を恨みも憎みもしなかった。 国民ではなく、特定の個人が邪悪であり、この日記を読んだくれた人物に対し、祈りを捧げてほしいとだけ記されていた。 全てを読み終えたミラーは、帰宅したシギーに仕事ができたことを伝える。 新聞社に記事の件で出資を求めたミラーは、誰も興味を示さないと言われて断られる。 母フラウ(マリア・シェル)を訪ねたミラーは、過去の忌まわしい出来事は忘れるべきだと言われる。 亡くなった父の話を聞いたミラーは、父ならやってみるべきだと励ましてくれるとフラウに伝える。 タウバーのアパートに向かったミラーは、管理人と交渉して片付けられた遺品を調べ、彼の友人マルクスに会う。 マルクスがアウシュヴィッツにいたことを知ったミラーは、タウバーが、三週間前にハンブルグでロシュマンを目撃したと言われる。 タウバーは警察に通報するものの、証拠がないと言われ、そして彼は自殺したということだった。 ”オデッサ”に阻まれたとマルクスから聞いたミラーは、その件をブラウンに話す。 ミラーの身を案ずるブラウンは、関わるべきではないと忠告する。 警察に任せておけないミラーは、自分が真実の追及をするしかないと考える。 検事局に向ったミラーは、ロシュマンの調査をしたいことを担当者に伝える。 その場にあった封筒を気にしながら、司法への干渉は止めるべきだとミラーは警告される。 封筒に記されていた”ジークフリード師団”大会会場に向かったミラーは、検事局の担当者が壇上に座っていることを確認する。 師団の司令官であったグライファー将軍(ギュンター・マイズナー)が紹介され、ナチス時代を賛美する演説をして支持される。 その様子を写真に撮ったミラーは、その場から連れ出される。 痛めつけられたミラーは、何んとかアパートに戻る。 ”オデッサ”の幹部である元親衛隊の将軍リヒャルト・グリュックス(ハンネス・メッセマー)は、グライファーの発言はきつすぎると言って批判する。 グリュックスは、会場にロシュマンのことを聞き回っていた記者が紛れ込んでいたことをワーナー・デイルマン(アーネスト・シュローダー)から知らされる。 エジプトのロケット攻撃が翌年の3月に早まり、誘導装置をその6週間前に完成させなければならないことを、グリュックスはデイルマンに伝える。 問題ないと言われたグリュックスは、ジョンソン大統領がイスラエル支援を強化すると語る。 エジプトのロケットでイスラエルを滅ぼすために、誘導装置を3か月以内に作るようグリュックスはデイルマンに命ずる。 シギーに手当てをしてもらったミラーは、今回の件に関わって以来、不幸続きだと言われるが、手を引く気はないと彼女に伝える。 翌日、シギーと共にクリスマスの買い物に行ったミラーは、地下鉄のホームで線路に突き落とされる。 電車が入ってきたため、驚いたシギーは気絶してしまうが、ミュラーは幸い無事だった。 事故だと言う旅立つ準備をするミラーに対し、命を狙われたと断言するシギーはショックを受け、精神的限界に近づく。 12月7日、ウィーン ミラーはブラウンにその件を伝えるが、警察内の”オデッサ”のメンバー、クニック(ギュンター・ストラック)が、それをデイルマンに知らせる。 ヴィーゼンタールに会えたミラーは、”オデッサ”が、元ナチス親衛隊の秘密組織で、隊員の国外逃亡に手を貸し別の身分を与えたことを知らされる。 ”オデッサ”が、あらゆる職業や組織に入り込んでいると言われたミラーは、金塊や美術品を持ち出した彼らは、豊富な資金で活動していると言われる。 ある資料を見せられたミラーは、4人のハンブルグ警察の警官が全員、元親衛隊で、クニックともう一人が”オデッサ”のメンバーだと言われる。 日記を読んだためにロシュマンを追う気になったことを伝えたミラーは、戦後、イギリス軍に捕えられた彼が逃亡し、”オデッサ”と連絡を取ったことをヴィーゼンタールから知らされる。 ”オデッサ”のメンバーが携行するパスポートを見せられたミラーは、偽造書類を扱う者を探せばロシュマンに近づけると言われ、彼の写真を見せられる。 写真は9年前に南米で撮られたもので、逃亡時に負傷したロシュマンは、足が悪いということだった。 ホテルに戻ったミラーは、デイルマンが手配したとも知らずに、シュミット博士という人物に声をかけられて話をする。 ロシュマンは戦争で死んだとシュミットに言われたミラーは、戦後に捕えられていると答え、捜索を止めるよう強要されるものの、ハンブルグでも今年、目撃されていると伝えてその場を去る。 ホテルをチェックアウトしたミラーは車で旅立つが、途中、男達に拉致されてしまう。 ”オデッサ”の行動を探る組織のリーダー、デヴィッド・プラス(ピーター・ジェフリー)らにある場所に連れて行かれたミラーは、ヴィーゼンタールに会いシュミットという男に脅されたと話しても信じてもらえない。 ミラーが姿を消したという報告を受けたデイルマンは、彼の情報を殺し屋グスタフ・マッケンソン(クラウス・レーヴィッチェ)に渡し、見つけ次第、殺害するよう命ずる。 ハンブルグ。 その場を逃れ通りすがりの車に乗せてもらったシギーだったが、運転していたのは”オデッサ”に加わっている警官クニックだった。 ”オデッサ”に潜入し情報を得てほしいとプラスから言われたミラーは、それを承知する。 ブレーメンの病院で亡くなった”オデッサ”のメンバー”ロルフ・コルプ”の身分証が盗まれ、生存したまま移送されたとカルテが変更される。 クニックは、護衛だと言ってシギーに女性警官をつけて監視し、ミラーの居場所が分かった場合は知らせるように伝える。 ミラーは、コルプに扮するため親衛隊員の知識を得て体を鍛え、腕に独特の焼印をつける。 射撃も習い初老のパン職人コルプに扮したミラーは、3週間の期限をプラスから言い渡されて任務に就く。 ミュンヘン。 駅でシギーに電話をしたミラーは、それに出たのが敵の女性警官だと知らずに、シギーと話し、ミュンヘン駅にいることを教えてしまう。 それを知らされたデイルマンは、バイエルに連絡をして、捜しているミラーが駅から電話をしたことを伝える。 バイエルは、コルプに付き添った助手に、彼が駅で電話をしたかを確認する。 バイロイト。 夜中にヴェンツァーからの電話を受けたミラーは、写真屋が来たことを知らされる。 既に連絡が渡っていたため、マッケンソンがヴェンツァーの家に着いていた。 マッケンソンに出かけているよう指示されたヴェンツァーは、母親の様子を見に行く。 夜中に呼び出されたことを不審に思い、ヴェンツァーに電話をしたミラーは、誰もでないために警戒して彼の家に向かう。 男が待っていることを確認したミラーは、ヴェンツァーの母親の部屋の窓から建物に侵入する。 母親に気づかれたミラーは、”オデッサ”に利用されているがヴェンツァーが、命を守るためにあるファイルを持っていると言われる。 ファイルが入っている金庫が電話番号の下4桁で開けられると知ったミラーは、マッケンソンに襲いかかる。 一旦、建物の外に出たミラーは、マッケンソンと揉み合いになり、彼を落下死させる。 金庫を開けたミラーは、”オデッサ”のメンバーのファイルを見つけて内容を確認し、ロシュマンの現在名が”キーフェル”だということを知る。 ファイルを持ち出し、マッケンソンの銃と車を奪ったミラーは町を離れる。 ファイルをミュンヘン駅のロッカーに隠したミラーは、シギーに連絡して逃げるように指示する。 プラスらの元に向かったミラーは、ロシュマンのファイルを見せて、残りは届くように手配してあることを伝える。 ロシュマンは自分が捕えるというミラーは、プラスに車と現金を用意させる。 ハイデルベルク。 翌朝、キーフェル・エレクトリック社の見本市に向かうことをシギーに伝えたミラーは、戻らなかった場合は、ミュンヘン駅のコインロッカーのファイルを、ウィーンのヴィーゼンタールに渡すよう指示する。 見本市会場でロシュマンを確認したミラーは、彼を尾行して郊外の古城に向い侵入する。 ロシュマンに銃を向けたミラーは、戦後イギリス軍に捕えられて足を負傷したことと、”リガ・ゲットー”での大量殺人についてを話す。 それを否定したロシュマンは、戦時には兵士として命令に従っただけだと語る。 世界を制覇しドイツの誇りを感じたというロシュマンは、現在の国を作ったのは自分達だと主張し、ユダヤ人のことなど忘れて帰るようミラーに指示する。 タウバーの日記のことを話したミラーは、1944年10月11日、リガの港で国防軍の大尉を射殺した事件のことをロシュマンに話す。 その大尉の写真を見せてロシュマンに確認させたミラーは、それが自分の父親であることを伝える。 ユダヤ人のことでなかったことを理解したロシュマンだったが、なぜ自分が殺した大尉が父親と分かったのかをミラーに問う。 死亡した日付や場所、そして勲章も同じだったと言うミラーは、鉄十字勲章を受けた大尉は少なかったと伝える。 思い出せないと言って責任を逃れようとするロシュマンは、隠し持っていた銃を発砲したためにミラーに射殺される。 ミラーは、3週間拘留された後に釈放され、告訴さえされなかった。 ヴィーゼンタールに渡った”オデッサ・ファイル”により、多くのナチの戦犯が法廷で裁かれた。 その後、1964年2月の第1週にキーフェル・エレクトリックの研究所が全焼し、放火が疑われたが証拠もなく、ロケットの誘導装置は完成しなかった。 同じ年の春、マルクス老人は、エルサレムの追悼ホールで、友であるソロモン・タウバーのために祈りを捧げた。 ”ドイツ人を憎んでも恨んでもいない、国民ではなく特定の個人が邪悪なのだ、日記を見つけた者は、自分のために祈ってほしい”というタウバーの言葉を思いながら。
フリーの記者ペーター・ミラー(ジョン・ヴォイト)は、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディがダラスで暗殺されたニュースを車のラジオで知る。
...全てを見る(結末あり)
現地に着いたミラーは、ナチ・ハンターのサイモン・ヴィーゼンタール(シュミュエル・ロデンスキー)に会おうとする。
シギーを尾行したマッケンソンは、彼女を脅してミラーの居場所を聞き出そうとする。
”オデッサ”の連絡員フランツ・バイエル(ノエル・ニューマン)に接触したミラーは、入念に身元を調べられ、偽造の専門家クラウス・ヴェンツァー(デレク・ジャコビ)の元に向かうよう指示される。
病気の母親と暮らしているヴェンツァーに会ったミラーは、パスポートのことなどを話し、写真が必要だと言われてホテルで待機することになる。
ミラーは、ホテルに到着したシギーに全てを話す。
*(簡略ストー リー)
1963年、西ドイツ、ハンブルグ。
フリーの記者ペーター・ミラーは、友人の警官から、たまたま遭遇したガス自殺した老人タウバーの日記を渡される。
ナチの迫害を受けたユダヤ人のタウバーは、”リガ・ゲットーの屠殺人”と言われた、元親衛隊将校エドゥアルト・ロシュマンを追跡する人生を日記に残したのだった。
あることに気づいたミラーは、ロシュマンを捜すための行動を始めるものの、妨害に遭い命を狙われる。
ウィーンに向い、ナチ・ハンターのヴィーゼンタールに会ったミラーは、元ナチス親衛隊の秘密組織”オデッサ”について知らされ、戦後、逃亡したロシュマンを見つけ出すには、偽造の専門家を探す必要があると言われる。
その後ミラーは、”オデッサ”の行動を探る組織に捕えられ、内部の情報を得るための協力を求められ、メンバーに扮して”オデッサ”に潜入するのだが・・・。
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前年に公開された「ジャッカルの日」(1973)に続くフレデリック・フォーサイスの原作の映画化であり、若手の実力派ジョン・ヴォイトが主人公を演じ、「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)で成功した直後のロナルド・ニームの演出ということで、大いに話題になった作品。
どうしても「ジャッカルの日」と比較してしまうのだが、本作は無難にまとめたサスペンスではあるが、前者に比べると、緊迫感などにやや物足りなさを感じてしまう。
実在の元ナチス親衛隊将校エドゥアルト・ロシュマンや、ナチ・ハンターとして知られるサイモン・ヴィーゼンタールなどが登場し、リアリズムを追及した作品には仕上がっている。
事実と異なるのは、物語で殺されることになるエドゥアルト・ロシュマンは逃亡生活を続け、1977年に南米で死亡し、”オデッサ”の幹部である元親衛隊将軍のリヒャルト・グリュックスは、終戦間近に自殺しているため、本作の時代には生存していない。
また、サイモン・ヴィーゼンタールは、サスペンス映画の傑作「ブラジルから来た少年」(1978)のナチ・ハンター”ヤコフ・リーバーマン”(ローレンス・オリヴィエが演じた”エズラ・リーバーマン”)のモデルにもなったため、同作も同時に鑑賞されると本作の面白味が増すだろう。
アンドルー・ロイド・ウェバーらしい楽曲も、ドラマを大いに盛り上げている。
ナチの残党追跡にはある秘密があった・・・そのための執念が命を懸けた行動となる、フリーの記者を熱演するジョン・ヴォイト、主人公に追われる”リガ・ゲットーの屠殺人”エドゥアルト・ロシュマンのマクシミリアン・シェル、彼の実姉である、主人公の母親役マリア・シェル、主人公の恋人メアリー・タム、前年の「ジャッカルの日」(1973)にも出演した、偽造の専門家デレク・ジャコビ、オデッサ”の幹部である元親衛隊将軍リヒャルト・グリュックスのハンネス・メッセマー、ナチ・ハンターのサイモン・ヴィーゼンタール役のシュミュエル・ロデンスキー、ロケット開発を阻止しようとする組織のリーダー、ピーター・ジェフリー、”オデッサ”の殺し屋クラウス・レーヴィッチェ、”オデッサ”のメンバー、アーネスト・シュローダー、ギュンター・ストラック、ノエル・ニューマン、戦時の師団司令官ギュンター・マイズナーなどが共演している。