1952年に発表された、バーナード・マラマッドの同名小説を基に製作された作品。 事件に巻き込まれ選手生命を絶たれていた野球選手の運命を描く、監督バリー・レヴィンソン、主演ロバート・レッドフォード、ロバート・デュヴァル、グレン・クローズ、キム・ベイシンガー、バーバラ・ハーシー共演のドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:バリー・レヴィンソン
製作:マーク・ジョンソン
原作:バーナード・マラマッド
脚本:
ロジャー・タウン
フィル・ダッセンベリー
編集:ステュー・リンダー
撮影:カレブ・デシャネル
美術・装置
メル・ボーン
アンジェロ・P・グラハム
ブルース・ウェインターブ
音楽:ランディ・ニューマン
出演
ロバート・レッドフォード:ロイ・ホッブス
ロバート・デュヴァル:マックス・マーシー
グレン・クローズ:アイリス・ゲインズ
キム・ベイシンガー:メモ・パリス
ウィルフォード・ブリムリー:ポップ・フィッシャー
リチャード・ファーンスワース:レッド・ブロウ
ロバート・プロスキー:判事
ダーレン・マクギャビン:ガス・サンズ
バーバラ・ハーシー:ハリエット・バード
ジョー・ドン・ベイカー: 飛ばし屋(大打者)
ジョン・P・フィネガン:サム・シンプソン
マイケル・マドセン: バンプ・ベイリー
ジョージ・ウィルコツ:ボビー・サヴォイ
アメリカ 映画
配給 トライスター・ピクチャーズ
1984年製作 137分
公開
北米:1984年5月11日
日本:1984年8月1日
製作費 $28,000,000
北米興行収入 $47,951,980
■ アカデミー賞 ■
第57回アカデミー賞
・ノミネート
助演女優(グレン・クローズ)
撮影・美術・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
父に野球の才能を見出された少年は、父の死後、雷が落ちた木から自分でバットを削りだし、”ワンダーボーイ”と名付ける。
1923年。
19歳のロイ・ホッブス(ロバート・レッドフォード)は、幼馴染のアイリス・ゲインズ(グレン・クローズ)に、”シカゴ・カブス”の入団テストを受けることを伝える。
結婚の約束をした二人は、その夜結ばれ、必ず連れに戻ると、アイリスに告げたロイは旅立つ。
生まれて初めて汽車に乗り、メジャーリーグのキャンプに向かうロイは希望に燃える。
車中には、大打者(ジョー・ドン・ベイカー)と、スポーツ記者のマックス・マーシー(ロバート・デュヴァル)が同乗していた。 二人は、フットボール選手やオリンピック選手が次々殺される、不審な事件を気にしていた。 そんな時、ロイの後見人サム・シンプソン(ジョン・P・フィネガン)が、有望な投手を見つけたことを二人に話す。 二人は、ロイとシンプソンを相手にもせず嘲り笑うだけで、その無礼な態度にロイは憤慨する。 同じ頃、謎の女ハリエット・バード(バーバラ・ ハーシー)が、車両に乗り込む。 途中、休息で下車したロイと大打者は、カーニバルの会場で、互いに図抜けた才能を披露していた。 ロイに興味を示したマーシーは、シンプソンから、ロイが大打者を三球三振に取るという賭けを持ちかけられる。 大打者は受けて立つが、結局ロイは、大打者を三球三振に仕留めてしまう。 それを静かに見つめていたハリエットは、ロイに接近する。 マーシーも手のひらを返したようにロイを絶賛し、それを記事にするためシンプソンに近づく。 シカゴに着いたロイは、ホテルでハリエットに呼ばれ、彼女の部屋に向かう。 ハリエットは、球界一の選手になるというロイを銃撃し、その後、自ら窓から身を投げてしまう。 16年後。 セミ・プロ経験しかないロイに、監督ポップ・フィッシャー(ウィルフォード・ブリムリー)は全く興味を示さない。 しかし、コーチのレッド・ブロウ(リチャード・ファーンスワース)がフィッシャーを説得し、ロイはチームに加わる。 ロイは背番号が決まりロッカールームに向かい、そこでマーシーに声をかけられるが、彼はロイを覚えていなかった。 そしてロイは、下位チームではあるが、ついにメジャーリーガーとなる。 ホテルに向かったロイは、バンプ・ベイリー(マイケル・マドセン)の恋人メモ・パリス(キム・ベイシンガー)と出くわし軽い挨拶を交わす。 ブロウと食事に出かけたロイは、バンプと同席するメモが気になる存在になる。 その後も、フィッシャーはロイを使う気がなく、ナイツは連敗を重ね、ちぐはぐなプレイは観客の笑いものになり、ロッカールームに神父を招き、神頼みする始末だった。 プレイも出来ず、フィッシャーのやり方に反発するロイは、マイナーリーグ行きを言い渡されるが、彼はそれを拒否する。 フィッシャーは、野球をしに来たと言うロイの意気込みを買い、彼に打撃練習をさせてみる。 ロイは、”ワンダーボーイ”でスタンド入りを連発し、彼が使っているバットをフィッシャーはチェックする。 そして、その日も敗色濃い試合の中で、ミスをしたバンプに代わり、フィッシャーはロイを代打に指名する。 代打を告げられたロイは、”ワンダーボーイ”を手に打席に入り、ピッチャーの放った球を叩く。 そして、ロイの打った打球は張り裂けてしまい、球場は大騒動になる。 試合後、ロイとどこかで会ったように感じたマーシーだったが、ロイはそれを否定する。 その頃、消息を絶ったロイが活躍するマーシーの記事を、アイリスもシカゴで目にしていた。 一夜にして話題の人になったロイは、”ワンダーボーイ”の威力を疑われてしまう。 コミッショナーがその規格を調べ、公式戦の使用を認める会見を開くという、異例の事態にもなる。 ロイと同じ守備位置のバンプは、フィッシャーから交代を考えていることを告げられ奮起するが、フェンスに激突して命を落としてしまう。 それをきっかけにロイにチャンスが与えられ、彼は期待に応え豪打を連発する。 チームもロイの勢いにあやかり、ユニフォームに稲妻のマークを付けて調子を上げていく。 その後、ナイツは連戦連勝を続け、ロイの人気は急上昇し、チームの順位も上位に上がる。 借金を抱えていたフィッシャーは、自分のナイツの持ち株を10%判事(ロバート・プロスキー)に売り、チームが優勝すればそれを取り戻せるが、負ければ解雇と株の没収という、苦しい立場に立たされていることをロイは知る。 そんなある日、ロイは練習の最中、チームメイトに打撃練習のピッチングを頼まれる。 ロイの投げた球はネットに突き刺さり、スタンドでそれを見ていたマーシーは、彼が大打者を打ち取った男だということを思い出す。 判事に呼び出されたロイは、チームを負けに追い込み、自分の物にしようとする判事の魂胆を見抜く。 その直後、ロイの正体に気づいたマーシーが、彼に5000ドルで独占取材を申し入れる。 判事と結託して、チームの乗っ取りを企むギャンブラーのガス・サンズ(ダーレン・マクギャビン)を、マーシーに紹介されたロイはサンズを警戒する。 そしてロイは、サンズと同席していたメモにダンスを申し込み、その後二人は急速に接近する。 メモが不幸をもたらすと警告する、フィッシャーの予測が現実となり、ロイは突然スランプに陥り、彼女との仲が格好のマスコミ・ネタになってしまう。 その後チームも負け越しが続き、その原因がロイにあることは明らかだった。 そんなロイが、シカゴに遠征してくることを知ったアイリスは、球場に足を運ぶ。 相変わらず不調のロイは、球場内で何かを感じながら最後の打席に立つ。 打てそうもないロイを見つめるアイリスは、スタンドで立ち上がり、彼に思いを込める。 それを感じ取ったロイの一振りは、打球をスコアボード横の時計まで運び、それを壊してしまう。 驚くべき打球を放ったロイは、スタンドに駆け寄るが、自分に力を与えてくれたものが何かは分からなかった。 ロッカールームに戻ったロイは、アイリスからの伝言を受け取り、彼女と再会する。 ロイは、彼女との短い会話で昔の純真さを取り戻す。 スタンドの女性が、ナイツを救ったとの記事を見たサンズは、ロイを骨抜きにしたメモを再びけしかける。 しかし、ロイはアイリスとの再会後、打撃の勘を取り戻し、以前にも増した豪打を放ち始める。 その後もアイリスは、ロイが遠征してきた時には可能な限りスタンドに足を運び、ロイは、消息を絶つまでの経緯などを彼女に話す。 アイリスの家に招かれたロイは、結婚していないと言っていた彼女に息子がいて、それを生甲斐にしていることを知らされる。 父親はニューヨークにいるというアイリスの言葉で、ロイは、子供が自分の息子ではないかと思い、何も言わずに彼女を抱きしめる。 その後、ナイツは連勝を続け、リーグ優勝の可能性が出てきた。 サンズ主催のパーティーで、彼から将来を考えろと忠告されたロイは、彼らの思惑に乗ろうとはしなかった。 チームメイトと楽しい時を過ごしていたロイは、古傷が悪化して入院してしまう。 胃の中から銀の弾丸が摘出され、ロイは野球を続けるのが危険だという、医師の診断を受ける。 ロイを操るために、サンズはメモを病院に見舞いに行かせ、試合出場は無理だと説得させるが、ロイは彼女の魂胆を見抜く。 ロイは最後の試合に出場するために、グラウンドで打撃練習をしてみるが、無理がたたり倒れてしまう。 その夜、病院に出向いた判事は、ロイを試合に出場させないように買収し、16年前の銃撃事件をスキャンダルにすると言って脅しをかける。 マーシーも、ロイを見舞いに来たアイリスに、銃撃事件とハリエットの自殺写真を見せて彼女を牽制する。 若かりし日の過ちをアイリスに話し、野球で遣り残したことを悔いるロイだったが、彼女は、人々や少年達に大きな影響を与えたとロイを励ます。 そしてアイリスは、息子と最終戦を見に球場に行くことをロイに告げる。 有り金全てを、最終戦のナイツの負けにかけたサンズと、試合後にフィッシャーを追い出す手はずを整える判事の元にロイが姿を現す。 ロイが病院で判事から渡された賄賂を返すと、サンズと判事は動揺し、その場にいたメモが銃を放つ。 メモから拳銃を取り上げたロイは、その場を立ち去るものの、サンズは、ロイが試合では活躍はできないと開き直る。 ロッカールームに現れたロイに気づき、フィッシャーは最高の打者だと彼を称え、ユニフォームに着替えるよう指示する。 そして試合は始まり、観客の大声援を受けて、ロイはライトの守備位置につく。 復調には程遠いロイは、打席に立つものの精彩がなく、しかも、チームメイトが判事に買収されていることに気づき、それを止めさせようとする。 守備は無難にこなすものの、打撃では振るわないロイを見て、アイリスは、息子がスタンドで見ていると彼に伝言を渡す。 そのメモを見たロイは動揺し、込み上げる思いを抑えながら、2対0でナイツが負けたまま、試合は最終回を迎える。 そして、見方が連打してチャンスを掴み、命を落とすかもしれない体で、最終打席に向かったロイは追い込まれてツーストライクとなる。 次の球は、ホームラン性のファウルになるが、頼みのバット”ワンダーボーイ”が折れてしまう。 ロイは迷わず、彼を慕うバットボーイのボビー・サヴォイ(ジョージ・ウィルコツ)のために作ったバット、”サヴォイ・スペシャル”を持ってくるよう彼に伝える。 そのまま打席に戻ったロイは、わき腹から出血しながら、ピッチャーの放ったボールを、渾身の力で叩く。 そしてロイは、スタンドの照明に突き刺さる、奇跡の大ホームランを放つ。 ロイは、スタンドのアイリスに見守られながら、歓喜する観衆の声援に応え、ダイヤモンドを回り、ナインに迎えられて、勝利のホームを踏む。 球界の全ての記録を打ち破ることに懸けていたロイは、その後、田舎に帰り、アイリスが見つめ中、笑みを浮かべながら、息子とキャッチボールをする。
...全てを見る(結末あり)
連敗続きの下位チーム、ニューヨーク・ナイツに、引退間近にしか見えない選手ロイが現われる。
*(簡略ストー リー)
1923年。
亡き父に野球の才能を見出された19歳のロイ・ホッブスは、”シカゴ・カブス”の入団テストを受けることを幼馴染のアイリスに伝える。
結婚の約束をした二人は、その夜に結ばれ、必ず連れに戻るとアイリスに告げたロイは旅立つ。
ロイの後見人のシンプソンは、メジャーリーグのキャンプに向かう彼のことを、列車に同乗していたリーグの大打者と、スポーツ記者のマーシーに話す。
途中、休息で下車したロイと大打者は勝負をすることになり、結局、ロイが大打者を三球三振に仕留めてしまう。
それを見ていた、謎の女ハリエットがロイに接近し、マーシーもロイの才能を認めて絶賛する。
シカゴに着いたロイは、ホテルでハリエットに呼ばれて銃撃されてしまい、彼女は窓から身を投げてしまう。
16年後、連敗続きの下位チーム、ニューヨーク・ナイツに、ピークを過ぎた、引退間近にしか見えない選手ロイが現われる・・・。
__________
神がかり的な野球選手の秘められた謎が、緊張感ある物語として描かれ、ドラマチックな盛り上がりと共に静かな感動を呼ぶ作品。
野球をテーマにした作品には傑作が少ない中では、お勧めの作品でもある。
野球の勝敗が殆ど気にならず、奇跡的な展開を上手く使い、またサスペンスの要素も盛り込んだ、監督バリー・レヴィンソンの演出も見応えある。
天性の野球センスを持つ青年が、苦労して成功する単純なストーリーではなく、事件に巻き込まれ一生を棒に振りかけながらもチャンスを待ち、更には権力からの圧力にも屈せず、栄光ではなく、愛する者を手に入れるという、深みのあるストーリーに仕上がっている。
感動のシーンを大いに盛り上げる、ランディ・ニューマンの音楽も心に残る。
第57回アカデミー賞では、グレン・クローズの助演女優他、撮影、美術、作曲賞にノミネートされた。
実年齢(47歳)よりは若くは見えるロバート・レッドフォードが、希望に燃える野球青年から引退寸前の老プレーヤーまでを、物静かでありながら、男としての強さも感じさせる熱演を見せる。
グレン・クローズは、主人公の妻となる日を待ち続ける、逞しくもある聡明な女性を見事に演じている。
脇を固める共演者も、チームの監督ウィルフォード・ブリムリーとコーチのリチャード・ファーンスワース、判事のロバート・プロスキー、彼の策謀に加担するダーレン・マクギャビン、キム・ベイシンガー、記者役のロバート・デュヴァル、それぞれが適役を自然な雰囲気で演じている。
謎の女性、そして殺人者バーバラ・ハーシー、フェンスに激突し死亡するマイケル・マドセンなども共演している。
ベーブ・ルースをモデルにした、ジョー・ドン・ベイカーも、出番は少ないが、凄みのある演技で印象に残る。