身分を隠す元娼婦が周囲に影響を与えながら新たな人生を歩もうとする姿を描く、製作、監督、脚本サミュエル・フラー、主演コンスタンス・タワーズ、マイケル・ダンテ、アンソニー・アイズリー、ヴァージニア・グレイ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:サミュエル・フラー
製作:サミュエル・フラー
脚本:サミュエル・フラー
撮影:スタンリー・コルテス
編集:ジェローム・トーマス
音楽:ポール・ダンラップ
出演
ケリー:コンスタンス・タワーズ
J.L.グラント:マイケル・ダンテ
グリフ警部:アンソニー・アイズリー
キャンディ:ヴァージニア・グレイ
マック:パッツィ・ケリー
バフ:マリー・デュヴルー
ジョセフィン:ベティ・ブロンソン
アメリカ 映画
配給 アライド・アーティスツ・ピクチャーズ・コーポレーション
1964年製作 90分
公開
北米:1964年10月29日
日本:1990年12月22日
製作費 $200,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1961年7月4日。
客引きのファールンデに殴りかかる娼婦のケリー(コンスタンス・タワーズ)は、カツラを飛ばしてスキンヘッドのまま殴り続け、取り分の75ドルだけを奪う。
カツラをつけて化粧を直したケリーは、その場を去る。
1963年8月12日、グラントヴィル。
整形外科医療センター主催の身体障害児のためのファッション・ショーが開かれようとしていた。
バスで町に現れたケリーと話したグリフ警部(アンソニー・アイズリー)は、シャンパンのセールスだあることを知る。 ケリーが商売女だと見抜いたグリフは、彼女を部屋に誘い愛し合う。 グリフは、ようやく伸びたと話ながら髪をとかすケリーから、そのことは今度、話すと言われる。 町を出るようにとケリーに指示したグリフは、川向こうの町のキャンディ(ヴァージニア・グレイ)の店に行くことを勧める。 その場に泊まったケリーは、”グラント、朝鮮でグリフを救う”という新聞記事が飾られていることに気づく。 部屋を出たケリーは、グリフの指示を無視して町に住むことを決めて、裁縫師のジョセフィン(ベティ・ブロンソン)の下宿の部屋を借りる。 キャンディの店に向かったグリフは、ケリーが来ていないことを知る。 町の実力者であるJ.L.グラント(マイケル・ダンテ)が慈善家で、障害児を受け入れる病院も運営しているとジョセフィンから聞いたケリーは、それに興味を持つ。 ケリーが子供と接する姿を見たグリフは、彼女の行動を手放しでは喜べなかった。 グリフと話し侮辱されたケリーは、彼が婦長に話すと言うため、足を洗いたいことを伝える。 内面は変えられないと言われたケリーは、力を貸してほしいとグリフに伝えて涙ながらに訴える。 その後、子供達の人気者となったケリーは、充実した日々を過ごす。 帰国したグラントのパーティーに招かれたケリーは、マックと共に彼の屋敷を訪れる。 マックからグラントを紹介されたケリーは、彼の友人であるグリフを気にしながら挨拶する。 グラントからヴェネツィアン・グラスを贈られたケリーは、その後、二人で話をする。 グリフが音痴であることをケリーが知っていることを不思議に思ったグラントは、先日、一緒に歌ったと言われる。 知性と美貌を兼ね備えたケリーに、バイロンの名詩”ベッポ”が生まれた場所を尋ねたグラントは、ヴェニスと即座に答えた彼女に、その地を訪れた際に撮影した映像を見せる。 その場にいるような気分になったケリーとグラントは、愛し合う。 翌日、同僚のバフ(マリー・デュヴルー)と話したケリーは、子供達が気の毒で居たたまれないと言う彼女が、看護師を辞めるつもりであることを知る。 朝鮮戦争で死んだ父の代わりをしてくれたグリフが親身になって世話をしてくれた話をして、この職も紹介してくれたと言われたケリーは、今夜のダンスにドレスを貸すので楽しむようにと伝える。 夜中に戻ってきたバフが25ドルを稼いだと言うために、何で稼いだのか尋ねたケリーは、キャンディからボンボン売りの前金として受け取ったことを知る。 バフを叱ったケリーは、若くて美しい彼女に、人生を台無しにしてしまうと伝える。 キャンディの店に向かい彼女と話したケリーは、奥の部屋に入る。 いきなりキャンディに襲い掛かり殴ったケリーは、彼女の口に25ドルを押し込み、バフには近づかないようにと言って脅す。 グラントに結婚を迫られたケリーは、返事を待ってほしいと伝える。 下宿に戻ったケリーは、過去を知られることを恐れつつ考えを巡らせる。 翌早朝、グラントの屋敷に向かったケリーは、彼に愛を告げて決心したことを伝える。 結婚式とハネムーンのことを考えるケリーは、グラントから屋敷の鍵を渡され、幸せを実感して涙する。 同僚のダスティが妊娠したことで悩んでいたため、ケリーは1000ドル渡し、中絶はしてはだめだと伝える。 グラントから付添人を頼まれたグリフは、複雑な思いだった。 病院に向かいケリーと話したグリフは、付添人を頼まれたと言って、30分やるので町から出て行くようにと伝える。 グラントには伝えると言うグリフは、自分で話そうとするケリーに電話をさせる。 受話器を手にしながら、初めて会った夜のことをグラントに話したとグリフに伝えたケリーは、名前は出していないが、彼は自分の過ちを承知でプロポーズしたと話す。 グラントが電話に出て、ケリーから受話器を渡されてグリフは動揺し、世界一、幸せな男だと彼に伝える。 負けを認めたグリフは、付添人は任せるようにと言って、幸運を祈る、お幸せにとケリーに伝えてその場を去る。 ジョセフィンにウェディングドレスを仕立ててもらい、それをグラントに見せに行ったケリーは、女の子が出て行ったために不審に思い、彼が幼児性愛者だと知り驚く。 こんな自分を認めてくれる女性は自分しかいないと言われたケリーは、跪くグラントを電話の受話器で殴り殺してしまう。 ケリーは逮捕され、グラントが売春婦に殺されてという事件の記事が新聞に大々的に報じられ、町の人々はショックを受ける。 かつてを思い出すケリーは、グラントとキスした味は、仲間内で言う”裸のキッス”、変質者の印だとグリフに伝える。 殺害理由を訊かれたケリーは、グラントが子供にいたずらしていたからだと答える。 結婚詐欺ではないかと言われたケリーはそれを否定し、グラントが自分を同じ世界の人間だと考えたと話す。 信じようとしないグリフに、女の子が証人だと伝えたケリーだったが、その子のことが思い出せない。 子供のことだけが思い出せないケリーの話に納得いかないグリフは、新聞を見て現れた元客引きのファールンデが来たことをケリーに伝える。 ファールンデを部屋に入れたグリフは、ケリーから、自分達の金をくすねたために取り戻し、他の娘を逃がしたことを知らされる。 仕返しに睡眠薬を飲まされ、髪の毛を切られてスキンヘッドにされたと言うケリーは、ファールンデを殴り取り分の75ドルだけを取り戻したと話す。 ケリーは、ギャングに脅され2年間は逃亡生活を続け、小さな町を転々としたことをグリフに伝える。 政界工作のことを電話で話していたことをファールンデに確認したグリフは、ある法案を可決させるためにケリーが協力しようとしたこと知る。 結局その話は流れて、相手の議員に請求書が届けられ、ケリーが考える”借り”は恐喝であることを法廷で証言したと、ファールンデはグリフに伝える。 その後、病院は辞めたと言うダスティが現れ、グリフは関わるなと伝えるものの、彼女はケリーに助けられた話をする。 誰にも相談できずに悩んでいた時に、グラントに借りた出産費用の1000ドルを、ケリーが自分に渡してくれたことをダスティはグリフに伝える。 グラントから借りた1000ドルのことをグリフから訊かれたケリーは、ダスティが話したことに気づく。 どれだけグラントを利用し金をだまし取ったのかと訊かれたケリーは、ダスティを巻き込まないでほしいとグリフに伝える。 ダスティは新聞社に話すらしいと伝えたグリフは、病院の職員まで利用するのかと言ってケリーを責める。 少しでいいのでダスティと会わせてほしいと言って、説得するとグリフ伝えたケリーは、キャンディの店に言った理由を訊かれる。 その場に呼ばれたキャンディは、グラントの弱みを握ればいい金ずるになると考え、追い詰められた彼は口止めのためにケリーと婚約までしたが気が変わり、訴えると言われたので殺したとグラントに話す。 喜んで証言すると言うキャンディだったが、ケリーは、前金25ドルで彼女がバフを店に誘ったので、自分が金を返しに行ったことをグリフに伝える。 キャンディは、とんでもない言いがかりだと伝えて反論する。 グリフは、警察に呼んだバフにキャンディから金を受け取ったことを確認し、彼女がそれを否定したため、ケリーは違う子だったと伝える。 キャンディは、お返しだとケリーに伝えてその場を去る。 外で遊ぶ子供の声が気になるケリーは、グラントの屋敷にいた女の子をがいることに気づき、彼女に話しかけるものの逃げ去ってしまう。 グリフを呼び、そのことを伝えたケリーだったが、相手にしてもらえない。 ウソをついたことを後悔したバフは、グリフの元に向かい真実を話す。 ケリーの話を参考にして、彼女と共に6歳くらいの金髪の女の子を見つけたグリフは、二人を面会させる。 焦るケリーは、女の子から強引に話しを聞き出そうとして怖がらせてしまう。 子供はいないと言うケリーに、自分の娘だと思い接してみるようにと伝えたグリフは、彼女を落ち着かせる。 再び女の子と話したケリーは、一人でグラントの屋敷に向かいゲームをしようとしたが、大きな箱を持った自分が現れたのでその場を去ったと言われ、泣きながら彼女を抱きしめる。 その会話を録音したグリフは、それを証拠として提出し、その後、起訴は却下されたことをケリーに伝える。 釈放されると言うグリフは、子供を毒牙から守ったケリーに町中が感謝していると伝える。 一晩で態度を一変させたグリフだったが、ケリーは、そんな彼に感謝して別れを告げる。 警察署を出たケリーは、マックや同僚、町の人々に迎えられ、ジョセフィン、バフ、ダスティを抱きしめ、グリフは彼女が去る姿を見守る。 ベビーカーの赤ん坊をあやしたケリーは、1964年1月5日に開催される、身体障害児ピクニック会の幕が掲げられる下を通り、町を去っていく。
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その後、ケリーが病院の看護師になったことを知ったグリフは、婦長のマック(パッツィ・ケリー)から、正に天職と言っていい、子供の世話にはピッタリな女性だということを知らされる。
*(簡略ストー リー)
1963年、グラントヴィル。
身分を隠して町を転々とするケリーは、グリフ警部に元娼婦だと見抜かれ、愛し合うものの町を出るようにと言われる。
それを無視して町に居座ることにしたケリーは、グリフの戦友である町の実力者が運営する身体障害児病院の看護師となる。
そのことを知ったグリフは、ケリーに再度、去るよう警告するのだが、足を洗い新たな人生を歩もうとする彼女は、子供達に好かれ、周囲の人々から信頼される存在となっていた。
そんなケリーはグリフと親交を深めて愛し合うようになり、やがて結婚することになるのだが・・・。
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製作、脚本を兼ねるサミュエル・フラーの意欲作であり、彼の前作「ショック集団」(1963)にも出演したコンスタンス・タワーズが主演した作品。
いきなり主人公がカメラに向かって襲い掛かり、娼婦の彼女は客引きの男を徹底的に叩きのめし、その間にカツラが外れてスキンヘッドの彼女がカメラを睨めつけるという、ショッキングな冒頭に驚かされる。
正当な報酬が得られない娼婦が、怒りを露にしている様子しか観客には伝わらないのだが、終盤でその理由が明らかになる。
若くして様々な体験をしている主人公が、身分を隠しながら、周囲の人々に尽くして影響を与え、信頼関係を築いていくという人情ドラマ的な展開や、差別や異常性癖が絡む殺人事件なども描く、サスペンス・タッチの内容も興味深い。
低予算で製作され、興行的にも成功した作品ではないが、批評家の評価は非常に高い。
ジョン・フォードにも可愛がられたコンスタンス・タワーズは、元娼婦という身分を隠しながら、美貌と知性も兼ね備える女性である人々に愛される役柄を見事に演じている。
町の実力者で朝鮮戦争の英雄でもあるが、幼児性愛者だったために主人公に殺されるマイケル・ダンテ、彼の親友であり、主人公を常に追い詰めながらも、最後には彼女の生き方を理解する警部のアンソニー・アイズリー、彼の友人である売春宿の女主人ヴァージニア・グレイ、病院の婦長パッツィ・ケリー、主人公に世話になる看護師のマリー・デュヴルー、主人公が部屋を借りる下宿の婦人ベティ・ブロンソンなどが共演している。