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黄金の腕 The Man With the Golden Arm (1955)

1949年に発表された、ネルソン・アルグレン同名小説の映画化。
ポーカーのディーラーから足を洗おうとする”黄金の腕”と呼ばれる麻薬中毒患者が人生に絶望する姿を描く、製作、監督オットー・プレミンジャー、主演フランク・シナトラエリノア・パーカーキム・ノヴァク他共演による社会派ドラマの佳作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)

キム・ノヴァク / Kim Novak / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:オットー・プレミンジャー
製作:オットー・プレミンジャー
原作:ネルソン・アルグレン
脚本
ウォルター・ニューマン

ルイス・メルツァ
撮影:サム・リーヴィット

編集:ルイス・R・ローフラー
タイトルデザイン:ソウル・バス
美術・装置
ジョセフ・C・ライト
ダレル・シルヴェラ
音楽:エルマー・バーンスタイン

出演
フランク・シナトラ:フランキー・マシーン
エリノア・パーカー:ゾシュ
キム・ノヴァク:モリー
ダーレン・マクギャヴィン:ルイ・フォモロウスキー
ロバート・ストラウス:ゼロ・シュワイフカ
アーノルド・スタング:スパロー
ジョン・コンテ:ジョニー
ドロ・メランデ:ヴァイ
エミール・ミーヤー:ベドナー警部
シェリー・マン:本人
ショーティ・ロジャース:本人

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1955年製作 119分
公開
北米:1955年12月15日
日本:1956年5月3日


アカデミー賞 ■
第28回アカデミー賞
・ノミネート
主演男優(フランク・シナトラ
美術・作曲賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
麻薬の更生病院から、地元シカゴに帰ってきたフランキー・マシーン(フランク・シナトラ)は、相棒のスパロー(アーノルド・スタング)の歓迎を受ける。

フランキーは、麻薬の売人ルイ・フォモロウスキー(ダーレン・マクギャヴィン)の誘いを断り自宅に急ぐ。

帰宅したフランキーは、車椅子生活の妻ゾシュ(エリノア・パーカー)を抱きしめて再会を喜ぶ。

病院で習った、ドラムで生活するというフランキーを心配するゾシュは、実は歩けるのだが、彼の気を引くために仮病を使っていたのだった。

ポーカーのディーラーとして、”黄金の腕”と呼ばれていたフランキーに、胴元ゼロ・シュワイフカ(ロバート・ストラウス)が近づくが、足を洗った彼はその誘いを断る。
...全てを見る(結末あり)

そして、フランキーとスパローは、新調したスーツを盗んだという理由で逮捕されてしまう。

シュワイフカが密告者と知りながら、仕方なくフランキーは彼の要望を聞き入れ、保釈を条件にディーラーに戻ることになる。

賭博場に戻ったフランキーだったが、手が震え始めて、ルイにヤクを勧められるが、それを断り酒場に向かう。

同じアパートに住んでいる、思いを寄せる、その酒場で働くモリー(キム・ノヴァク)に歩み寄ったフランキーだったが、障害を持つ妻ゾシュを裏切るわけにはいかなかった。

ドラマーの夢が捨て切れず、オーディションを受けることになったフランキーだったが、ゾシュは相変わらずそれに反対する。

フランキーは、自分が起こした事故が原因で歩けなくなったことを、他人に話すゾシュに嫌気が差し、ついにルイの元に向かってしまう。

そして、これが最後だと言いながら、フランキーはルイにヘロインを打たれる。

ゾシュはフランキーのドラムの練習を嫌い、彼はそれに苛立ち、再びヤクに手を出そうとルイの元に向かう。

ドラムのオーディションの電話が来ないことで、それを諦めていたフランキーだったが、モリーに、こちらから連絡してみることを提案される。

案の定、番号を忘れてしまったという相手方から、翌週のオーディションを約束されたフランキーは、モリーに感謝して喜ぶ。

それ以来、フランキーはモリーの部屋でドラムの練習をするようになるが、自分が結局ヤクから逃れられないことを話すと彼女は悲しむ。

胴元のシュワイフカに、フランキーが姿を消したことを責められたゾシュは、ミュージシャンとして組合に登録した彼に、ディーラーに戻るよう言い寄る。

シュワイフカとルイに、一晩だけ仕事をすれば大金が手に入れられると聞いたフランキーは、それを受けることにする。

そしてフランキーは、再びルイの部屋に向かってしまう。

フランキーは、モリーにヤクを打ったことがばれてしまい、彼女は愛想を尽かして出て行ってしまう。

もはやフランキーの心を癒すには、ヤクしか方法がなくなってしまう。

ポーカーは始まり、一晩ディーラーを務めたフランキーは帰宅するが、シュワイフカの負けがかさみ、彼を手助けするために再び呼ばれる。

金づるがなくなり、ルイはフランキーにイカサマを強要するが、それが相手にばれてしまう。

大損をしたシュワイフカにフランキーは見捨てられ、ルイの元にヤクを打ちに行く。

フランキーはルイを殴り倒し、ヤクを探すが見つからず、そのままオーディションに向かってしまう。

体中が震えるフランキーは、まともにドラムをたたけず、自宅に戻り金を探すが、現金がないとわかるとモリーの元に向かう。

入れ替わりで入ってきたルイは、ゾシュが歩けるのを知ってしまう。

それをフランキーにバラそうとしたルイを、ゾシュは階段から突き落とし殺してしまう。

モリーにヤクのための金を借りようとするフランキーだったが、彼女に付きまとう飲んだくれのジョニー(ジョン・コンテ)の話で、自分がルイ殺しの犯人になっていることを知る。

自分は潔白だとモリーに訴えるフランキーに、彼女は自力でヤクを絶つよう必死に励ます。

それがどれだけ大変で、危険が伴うかをフランキーはモリーに伝え、彼女は覚悟を決めてドアに鍵をかける。

やがて、フランキーは禁断症状に苦しみ、壮絶な戦いが始まる。

モリーはゾシュの元に向かい、フランキーが無実だという証言をするよう彼女を説得する。

ゾシュは、自分が犯人だとも言えずに、モリーを追い返してしまう。

モリーの献身的な介抱で、峠を越したフランキーはついに立ち直るが、ジョニーの通報を受けた警察が彼女のアパートに現れる。

しかし、回復したフランキーは自宅に戻り、ゾシュに別れを告げて街を出ようとする。

ゾシュは、モリーの入れ知恵だとフランキーを非難し、思わず立ち上がって彼に歩み寄ってしまう。

そこに、モリーとベドナー警部(エミール・ミーヤー)は現れ、彼は、ゾシュをルイ殺しの犯人と確信して連行しようとする。

ゾシュは観念するが、隙を見て非常階段から身を投げて転落死する。

フランキーは、呆然としてゾシュの遺体を乗せた車を見つめて通りを横切るのだが、傍らにはモリーが寄り添っていた。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
シカゴ
麻薬更生病院からシカゴに戻ったフランキー・マシーンは、麻薬の売人の誘いを断り自宅に向かう。
帰宅したフランキーは、車椅子生活を送る妻ゾシュとの再会を喜ぶ。
フランキーは、病院で習ったドラムで生計を立てることを考える。
ゾシュはそれに不安を感じるのだが、実は歩ける彼女は、フランキーの気を引くために仮病を使っていたのだった。
ポーカーのディーラーとして、”黄金の腕”と呼ばれていたフランキーは、足を洗うことを決意してドラムに懸ける。
しかし、フランキーはあることで逮捕されてしまい、保釈を条件にディーラーを引き受けることになる。
フランキーには、その後も麻薬の誘惑などは続き、ドラマーの夢も捨てきれない。
それに反対し、自分が起こした事故が原因で歩けなくなったことを、他人に話すゾシュに嫌気が差し、フランキーは、麻薬の売人の元に向かう。
そんな、精神不安を抱えるフランキーの心を、酒場で働くモリーが癒す・・・。
__________

当時としては、その内容が衝撃的で、”異端児”に相応しいオットー・プレミンジャーらしい意欲作だ。

彼とのコンビで有名なソウル・バスのデザインによる、白いラインが”腕”に変形するオープニングとエンディングのタイトル・デザインも印象的だ。

エルマー・バーンスタインの、アカデミー賞にノミネートされた、モダン・ジャズを使った力強い音楽も素晴らしい。

第28回アカデミー賞では、主演男優(フランク・シナトラ)、美術、作曲賞にノミネートされた。

今後、度々登場する薬物依存症からの克服場面は、一晩で正気に戻ってしまうところなどが、「フレンチ・コネクション2」(1975)などに比べるとやや物足りない気はする。

しかし、「地上より永遠に」(1953)で低迷から脱し、迫真の演技を見せるフランク・シナトラの復活を確実なものにした、2度目の黄金期を迎えることになる、彼の俳優としての実力を証明した記念すべき作品とも言える。

貴婦人のような役が似合うエリノア・パーカーだが、嫉妬と哀れみを請う妻役の熱演は見もので、20代前半とは思えないキム・ノヴァクの妖艶な魅力と逞しさも、ドラマに強烈なインパクトを与える。

主人公を、破滅の道に追いやる麻薬密売人のダーレン・マクギャヴィン、強欲な胴元ロバート・ストラウス、特異なキャラクター主人公の相棒アーノルド・スタングなどが共演している。


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