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失われた週末 The Lost Weekend (1945)

アルコール依存症を克服できない男性の苦悩を描いた、監督、脚本ビリー・ワイルダーレイ・ミランドジェーン・ワイマン共演のヒューマン・ドラマの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ヒューマン)


スタッフ キャスト ■
監督:ビリー・ワイルダー

製作:チャールズ・ブラケット
原作:チャールズ・R・ジャクソン
脚本
チャールズ・ブラケット
ビリー・ワイルダー
撮影:ジョン・F・サイツ
編集:ドーン・ハリソン
音楽:ミクロス・ローザ

出演
ドン・バーナム:レイ・ミランド
ヘレン・セント・ジェームズ:ジェーン・ワイマン
ウィック・バーナム:フィリップ・テリー
ナット:ハワード・ダ・シルヴァ
グロリア:ドリス・ダウリング
”ビム”ノーラン:フランク・フェイレン

アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ
1945年製作 101分
公開
北米:1945年11月16日
日本:1947年12月5日
製作費 $1,250,000


アカデミー賞 ■
第18回アカデミー賞

・受賞
作品・監督
主演男優(レイ・ミランド
脚色賞
・ノミネート
撮影(白黒)・編集・音楽賞(ドラマ・コメディ)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ニューヨーク
アルコール依存症を克服しようとしている、小説家志望のドン・バーナム(レイ・ミランド)は、同居する弟思いの兄ウィック(フィリップ・テリー)から、気分転換に田舎に行くことを提案され、二人で準備をしていた。

ドンは、身支度よりも、窓の外にヒモで吊るし隠しているウィスキーが気になる。

ドンは、現れた恋人ヘレン・セント・ジェームズ(ジェーン・ワイマン)がコンサートに行くというので、出発を遅らせて、ウィックを彼女に同行させ一人になろうとする。

しかし、それに気づいたウィックはウイスキーを捨ててしまい、ヘレンと外出する。
...全てを見る(結末あり)

当然アルコール類はウィックが処分してあり、ドンは彼らが出て行った後、酒や金を探すが何も見つからなかった。

そこに、掃除婦が現れ、ドンは彼女を追い払うのだが、給金が置いてあることを知り、彼はそれを手にして酒屋に向かう。

酒屋の主人は、ウィックから、ドンにはつけで売らないよう言われていたが、彼は金を払いライ・ウィスキー二本を手に入れる。

その足で、ナット(ハワード・ダ・シルヴァ)のバーに向かったドンは、金を払いグラスの酒を飲み干し、買ってきた酒を田舎に持ち込む方法を語る。

苛立っていたドンは陽気になり、店にいたグロリア(ドリス・ダウリング)に声をかける。

気分が高揚するドンは、ナットを相手に”演説”を始め時間は過ぎていく。

アパートに戻ったウィックは、姿の見えないドンを見限り、一人で旅立とうとする。

ドンを見捨てられないヘレンは、ウィックに彼を見守るべきだと涙ながらに語る。

しかし、我慢の限界に達したウィックは、今度ばかりは許す気になれなかった。

その頃、かなりの量の酒を飲んでしまったドンは、出発の時間に気づき慌ててアパートに戻る。

建物の入り口に降りてくる、ヴィックとヘレンの様子を窺っていたドンは、ヴィックが旅立ったのを確認し部屋に戻る。

ドンは、一本の酒を天井の照明に隠し、もう一本の口を開け、笑みを浮かべながらソファーに座りくつろぐ。

翌朝、ドアに貼り付けてあったヘレンのメモを確認したドンは、ナットのバーに向かい酒を飲む。

ナットは、昨夜ヘレンが来たことをドンに伝え、それを気にも留めない彼は、酒を一本アパートに隠してあることを思い出し陽気になる。

そこにグロリアが現れ、彼女とドンは出かけることになり、待ち合わせの約束をする。

ドンの言動に不機嫌になるばかりのナットは、ヘレンが被害者だと言い放つ。

しかしドンは、ヘレンと付き合いだしたことや酒を止めないのも、それが小説にしようとしているテーマだからだと言って、過去を振り返る。
__________

3年前、メトロポリタン歌劇場
オペラ”椿姫”を観劇中、出演者が酒を飲むシーンを見て、 自分のコートにある酒のことで頭がいっぱいになったドンは、1幕で席を外し預けてあるコートを受け取りに行く。

間違えた札で、自分のコートを受け取れないドンは苛立ち、オペラ終了後に、それを間違えた相手へレンと知り合う。

無作法な態度を取ってしまったドンだったが、雑誌社の”TTIME”に勤めるヘレンと意気投合し、来週、一緒に観劇することを約束し別れる。

その時、ドンは酒瓶を落として割ってしまい、ヘレンには風邪気味の友達用だと言い訳して、カクテル・パーティーに行くと言う彼女に付き合う。
__________

ドンはナットに、パーティーではトマト・ジュースしか飲まなかったことを伝え、恋をして結婚まで望み、酒を断つことが出来たと思った自分に、落とし穴があったことを語り始める。
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ヘレンの両親と会うことになったドンは、ホテルのロビーで、偶然、自分のことを詮索する両親の話を聞いてしまう。

そこにヘレンが現れ、電話ボックスに姿を隠したドンは、彼女に電話して遅れることを伝える。

アパートに戻り酒を飲んでしまったドンは、帰宅したウィックに、あれこれ聞かれるのが怖くなり、ヘレンの両親には会えなかったことを話す。

ドンは、ウィックにヘレンへの連絡を頼むが、そこに彼女が現れる。

ウィックはドンを部屋に隠し、ヘレンに弟がいないこと伝えるが、彼女は空の酒瓶を見つけてしまう。

ヘレンはオペラの夜のことを思い出し不審に思うが、自分が酒飲みだと言ってウィックがドンをかばう。

ウィックに謝罪したヘレンは立ち去ろうとするのだが、居たたまれなくなったドンは部屋から出て、自分のことを正直に話す。

ヘレンは意外にも、依存症であるドンに救いの手を差し伸べる。

ドンは、秀才だった自分が、希望する作家になれない苦しみから、酒に溺れた事実をヘレンに語る。

自分を諦め立ち去るようドンはヘレンに告げるが、彼女は固い意思で闘い抜くことを告げる。
__________

それから3年、ドンは、自分達三人が未だに闘い続けているとナットに話す。

ナットに、拳銃か飛び降り自殺が落ちだと言われたドンは、今すぐ作品を書き作家になると息巻いてアパートに戻る。

タイプライターを前に、ヘレンに捧げる小説”酒瓶”を書き始めようとしたドンだったが、たちまち行き詰まり酒を探す。

どこかに一本隠してある酒瓶の場所が思い出せないドンはあるクラブに向かう。

ドンは、酒代が足りずに横の席の女性のバッグを盗み店から追い出される。

アパートに戻ったドンは、照明に隠してあった酒瓶を見つけそれを飲み干してしまう。

翌朝、ヘレンからであろう電話のベルで目が覚めたドンは、タイプライターを持って質屋に向かうが、どこの店も閉まっていた。

その日がユダヤ教の” 贖罪の日”で、協定によりキリスト教信者の店も休みだということをドンは知らされる。

ドンは、ナットのバーで彼に泣きつき、一杯だけ酒を恵んでもらうが追い出されてしまう。

ふらつきながらもグロリアのアパートを見つけたドンは、彼女の部屋に向かう。

デートの約束を破ったことで、グロリアに責められたドンは、恥をさらしながら彼女に金を借りて立ち去るが、階段から転げ落ちてしまう。

病院で目を覚ましたドンは、看護師”ビム”ノーラン(フランク・フェイレン)から、ここが依存症病棟だと知らされる。

ドンは、厳しい監視の下、そこを出られないことをビムから聞き、夜中にコートを盗み病院を脱出する。

ドンのアパートの入り口で夜を明かしてしまったヘレンは、家主に起こされ、彼についての嫌味などを言われ気分を害して立ち去る。

酒屋に押し入り、主人からライ・ウィスキーを奪いアパートに戻ったドンは、電話のベルを無視して酒を煽る。

夜になり、ビムに言われたように、小動物が現れる幻覚を見たドンは、おぞましい光景に叫び声をあげる。

家主から連絡を受けたヘレンは、ドンの部屋に合鍵を借りて入ろうとするが、彼はドアのチェーンをかけようとする。

その寸前で鍵を開け部屋に入ったヘレンは、幻覚を見たと言って動揺するドンを介抱する。

翌朝、目覚めたドンは、ヘレンのコートを持って質屋に向かってしまう。

それを追ったヘレンは、ドンに厳しい言葉を浴びせ、彼と出会うきっかけになった、思い出のコートを取り戻そうとする。

ヘレンは質屋で、ドンが金ではなく、コートと以前預けた拳銃を交換したことを知らされる。

兄ウィック宛ての遺書を書き、自殺しようとしたドンだったが、そこにへレンが戻ってくる。

ヘレンを追い返そうとするドンだったが、彼女は拳銃を確認し、彼にわざと隠してあった酒を勧める。

隙を見て拳銃を奪ったヘレンだったが、それを取り戻したドンは彼女を帰らせようとする。

ヘレンが、絶望するドンを励まし必至に説得していたその時、ナットがタイプライターを持って現れる。

それを受け取ったヘレンは、書き始めていた”酒瓶”の原稿を手に取り、ドンに続きを書かせようとする。

わずかではあるが、ドンの書こうとする意思を感じ取ったヘレンは、朝食の準備を始める。

ドンは酒に入ったグラスを手に取るが、それに、くわえていたタバコを落とし、小説を書き上げたら、ビムとナットに著書を一冊ずつ贈る考えを語る。

書店に山積みにされた著書を見たウィックが、自分を自慢するだろうと、ドンは話し続ける。

そしてドンは、田舎へ旅立つ身支度のことではなく、窓の外のヒモで吊るされた酒瓶のことを考えていた週末についてを書くとヘレンに伝える。

一時の酔いを求め街をふらつき、悩んでいる多くの男達のことを考えながら・・・。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
小説家志望のドン・バーナムは、作品を書き上げることが出来ないプレッシャーから酒に溺れ、アルコール依存症となり、それを克服しようと努力はしていた。
弟思いの兄ウィックと、ドンを見捨てられない恋人のへレンは、何とか彼を立ち直らせようとする。
ウィックは、週末を利用して、気晴らしに田舎に行くことをドンに提案するのだが、彼は隠してあった酒のことしか頭になかった。
それをウィックに見つかり、酒を捨てられたドンは、一人になった後、旅立つまでの間に金を見つけて酒屋に足を運ぶ。
その後、ドンはナットのバーで飲み始め陽気になり、店にいた女性グロリアに声をかける。
その頃、時間になっても戻ってこないドンを見限ったウィックは、諦めきれないヘレンを残して旅立つ。
アパートに戻ったドンは、部屋の天井の照明に酒瓶を隠し、もう一本の口を開けてくつろぎ、至福の時を味わう。
翌朝、再びナットのバーで飲み始めたドンは、不機嫌な彼に、酒を止められないのは、それを自分の小説のテーマにしているからだとヘレンと出会った過去を語り始める・・・。
__________

1944年に発表された、チャールズ・R・ジャクソン同名小説を基に、ビリー・ワイルダーと盟友チャールズ・ブラケット(製作も)が脚色して製作された作品。

第二次大戦の終結直後に公開された作品で、今では当たり前のように描かれる、アルコール依存症を本格的に扱った最初の作品と言える。

まだ30代ではあるが、既にキャリアを重ねていたビリー・ワイルダーの脚本が素晴らしい。
序盤で、主人公の恋人ヘレンが、人を裏切ってまで酒に走ろうとする男を、献身的な兄までが見限る中、どうして見捨てないのかを不思議に思う。
しかし、主人公の回想などで、彼女が自分との闘いにも挑む、強い意志の女性だということが見事に描かれている。
このような難しい病気には、献身だけでは対処できないという、奥深い視点が垣間見える。

また、後のビリー・ワイルダー作品でもお馴染みである、小道具の使い方も絶妙だ。
あれだけ強調して描写する、冒頭の窓の外に吊るされた酒瓶を見逃し、シーンを巻き戻して見た方も多いはずだ。

2011年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

第18回アカデミー賞では、作品、監督、主演男優(レイ・ミランド)、脚色賞を受賞した。
・ノミネート
撮影(白黒)・編集・音楽賞(ドラマ・コメディ)

サスペンス作品のようなミクロス・ローザの音楽も印象的で、主人公の苦悩や恐怖、緊張感などを見事に伝えている。

アル中役は、映画賞に受けるという、月並みなジンクスなどは度外視して考えたい、主演レイ・ミランドの迫真の演技は絶賛され、ビリー・ワイルダーと共に、各映画賞を総なめにした。
レイ・ミランドは、それまで大根役者とも言われていたのだが、アカデミー主演男優賞とカンヌ映画祭最優秀主演男優賞を、同時に受賞した最初の俳優となった。

育ちのよいキャリア・ウーマン風でありながら、苦難に立ち向かう強い女性を好演する主人公の恋人ジェーン・ワイマン、弟を思う主人公の兄フィリップ・テリー、主人公の言動を毛嫌いしながら、クライマックスで人情味も見せるバーの主人ハワード・ダ・シルヴァ、その店に出入りする女性ドリス・ダウリング、依存症病棟の看護 師フランク・フェイレンなどが共演している。


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