1965年に発表された、イギリスのスパイ小説家ジョン・ル・カレによる同名小説の映画化。 ロシアの新型ミサイル情報を得るために東ドイツに送り込まれたポーランド人青年が挑む秘密作戦を描く、監督、脚本フランク・ピアソン、主演クリストファー・ジョーンズ、ラルフ・リチャードソン、アンソニー・ホプキンス他共演のスパイ・サスペンス。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:フランク・ピアソン
製作:ジョン・ボックス
製作総指揮:M・J・フランコヴィッチ
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:フランク・ピアソン
撮影:オースチン・デンプスター
編集:ウィリー・ケンプレン
音楽:アンジェラ・モーリー
出演
クリストファー・ジョーンズ:ライザー
ラルフ・リチャードソン:ルクレック
アンソニー・ホプキンス:ジョン・エイヴリー
ピア・デゲルマルク:アンナ
ポール・ロジャース:ホールデン
スーザン・ジョージ:スーザン
シリル・シャップス:刑事
マイケル・ロビンス:トラック運転手
アンナ・マッセイ:サラ・エイヴリー
ガイ・デギー:フリッチャ
ティモシー・ウェスト:テイラー
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1969年製作 107分
公開
北米:1970年2月4日
日本:1970年5月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
フィンランド。
イギリスの諜報員テイラー(ティモシー・ウェスト)が殺され、所持していたフィルムが紛失する。
報告を受けた、イギリス諜報部長ルクレック(ラルフ・リチャードソン)は、妊娠した恋人スーザン(スーザン・ジョージ)に会うため密入国したポーランド人のライザー(クリストファー・ジョーンズ)に目を付ける。
ルクレックは、ライザーを、自由と引き換えに東ドイツに潜入するスパイに仕立て上げる。
諜報部は、東ドイツで目撃された、ロシアの新型ミサイルの情報を得るため秘密作戦を開始する。
諜報員ジョン・エイヴリー(アンソニー・ホプキンス)は、命令でフィンランドのヘルシンキに向かうことになるが、 自分の仕事を理解しない妻サラ(アンナ・マッセイ)に、彼は怒りをぶつける。
秘密の多い夫は、浮気して自分から心が離れていたと思ったサラは、エイヴリーから、小さな子供がいる同僚が殺されたことを聞くが、やはり夫の態度が許せなかった。 フィンランドから戻ったエイヴリーは、 ルクレックにフィルムがなかったことを報告して、ライザーの訓練に加わる。 しかしエイヴリーは、ライザーがスパイとして見込みがないことをルクレック伝える。 そんな時、ライザーは諜報部員の目を盗み逃亡してしまい、スーザンのアパートに向かい楽しい時を過ごす。 しかし、スーザンが中絶したことを知ったライザーは、彼女に怒りをぶつけ、殴り倒して部屋を飛び出す。 駆けつけたエイヴリーは、ライザーが重要任務についていることをスーザンに伝える。 ルクレック、エイヴリー、ホールデン(ポール・ロジャース)、そしてライザーは西ドイツに向かい、やがてライザーは、単独で国境を越え東ドイツに潜入する。 若い兵士に気づかれそうになり、ライザーはその男を殺し、目的地のカルクシュタットに向かう。 途中ライザーは、トラック運転手(マイケル・ロビンス)と出会い、カルクシュタットまで同乗することになる。 運転手に、兵士を殺したことを見破られたライザーは、彼を殺しトラックを奪い先を急ぐ。 街道で、男の子を連れたアンナ(ピア・デゲルマルク)に出会ったライザーは、彼女の運転でカルクシュタットに向かう。 ライザーのトラックは、検問で止められて怪しまれるが、当局は、彼を泳がせて動向を探ろうとする。 湖で休息したライザーは、アンナから自分と逃げようと誘われるが、それを断り、彼女と別れカルクシュタットに向かう。 カルクシュタットに着いたライザーは、ミサイルの写真を撮った男フリッチャ(ガイ・デギー)に会い、写真が合成写真だったことを知る。 自分の役目が終わったと判断したライザーは、連絡用の無線機を処分しようとするが、当局の刑事(シリル・シャップス)に見つかり街まで送られる。 ホテルに監禁状態になったライザーは、湖で別れたアンナに再会して愛し合う。 やがて、地響きと共にミサイル運搬車が現れ、ライザーは、無線でルクレックらに連絡しようとするが、それを当局は傍受して発信地を特定する。 その時、既に東側の手に落ちたライザーは用済みとなり、諜報部の計画は中止されようとしていた。 エイヴリーは、ゲームを楽しむがごとく、最前線にいる者を切り捨てる上層部を激しく非難する。 同じ頃、無線発信するライザーは当局に発見され、アンナと共に銃殺される。 やがて、フィンランドの空港近くで、子供達がテイラーの手に入れたフィルムを発見し、意味もわからず遊び道具にする。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
冷戦下。
フィンランドでイギリス諜報員が殺され、所持していた秘密情報のフィルムが紛失する。
その報告を受けた諜報部長ルクレックは、妊娠中の恋人スーザンに会うために密入国した、ポーランド人ライザーに目を付けて代役にしようとする。
ルクレックは、ライザーの自由を約束して、彼を、スパイとして東ドイツに潜入させるための訓練を始める。
準備の整った情報部は、ライザーを目的地に送り込み、ロシアの新型ミサイルの情報を入手するために、秘密作戦を開始するのだが・・・。
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東西冷戦下、激しい諜報合戦に巻き込まれた、東側亡命希望の青年の悲劇を、フランク・ピアソンが、綿密に練られたスパイ計画と共に、青春群像のように描いた異色のスパイ・サスペンス。
表面上の平和を維持しながら、水面下でうごめく泥仕合には、消耗品のように扱われた尊い命が多数あったことを、痛烈に皮肉った作品でもあり、そのようなセリフ、場面を強調して描いている。
政治には無関心な青年が、自由のために使命を果たそうとする姿を想像もせずに、切り捨てようとする諜報部上層の、非情さや怖さなども良く伝わってくる。
常識としてそれを理解しているはずの、最前線の諜報員(アンソニー・ホプキンス)が、上司に対し、怒りを露にして非難する場面で、さらにそれを強調している。
”紅顔の美青年”クリストファー・ジョーンズの、スパイ劇には相応しくない、若者らしい屈折した役柄が新鮮でもある。
中立的ではあるが、冷戦の奥深さを理解して作戦の指揮を執る諜報部長ラルフ・リチャードソン、その後の活躍を予感させる熱演が印象に残る、若々しいアンソニー・ホプキンス、国籍不明的な魅力と美しさが際立つ、現地の女性役、スウェーデン出身のピア・デゲルマルク、そして、主人公の恋人、18歳のキュートな魅力が印象意的なスーザン・ジョージの出演も見逃せない。