ウェスト・ポイントで50年もの間、士官候補生の育成に献身したマーティ・マーの自伝“Bring Up the Brass”を基に、監督ジョン・フォード、主演タイロン・パワー、モーリン・オハラ、ウォード・ボンド共演のヒューマン・ドラマの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作:ロバート・アーサー
原作:マーティ・マー“Bring Up the Brass”
脚本:エドワード・ホープ
撮影:チャールズ・ロートンJr.
編集:ウィリアム・A・ライオン
音楽:ジョージ・ダニング
出演
タイロン・パワー:マーティン”マーティ”マー
モーリン・オハラ:メアリー・オドネル
ウォード・ボンド:ハーマン・J・キーラー大佐
ハリー・ケリーJr.:ドワイト・ D・アイゼンハワー
ロバート・フランシス:ジェームズ・サンドストロムJr.
ドナルド・クリスプ:マーティン(父)
ショーン・マクローリー:ディニー・マー
ベッツィ・パーマー:キティ・カーター
フィリップ・ケリー:チャールズ・ドットソン
ウィリアム・レスリー:レッド・サンドストロム
パトリック・ウェイン:シェラブ・オーヴァートン
ピーター・グレイヴス:ルドルフ・ハインツ
マーティン・ミルナー:ジム・オカーベリー
ジャック・ペニック:軍曹
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1955年製作 137分
公開
北米:1955年2月9日
日本:1955年1月22日
製作費 $1,748,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ホワイトハウス。
ウェスト・ポイントの体育副教官を50年間勤めたマーティ・マー(タイロン・パワー)は、退職命令を受け、教え子であるアイゼンハワー大統領に、職務継続を直訴する。
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1903年。
アイルランド移民のマーティ・マーは、ウェスト・ポイントの給士係に採用される。
給士係が割に合わないと感じたマーティは、軍隊に志願するものの、移民の彼には理解できない、規則や任務に戸惑ってしまう。
しかし、面倒見のいいマーティは、次第に候補生から慕われるようになる。
そんなマーティは、若い候補生の気持ちを考えず、保身に走るルドルフ・ハインツ軍曹(ピーター・グレイヴス)と対立してしまう。
やがてマーティは、闘技主任のハーマン・J・キーラー大尉(ウォード・ボンド)の目に留まり、彼の助手になる。
マーティは、キーラー大尉の家のメイドとしてアイルランドからやってきた、メアリー・オドンネル(モーリン・オハラ)に一目惚れしてしまう。 メアリーに接近したマーティだったが、彼女はなかなか心を開かず、ハインツとデートまでしてしまう。 憤慨したマーティは、予定していた退役を取り消して、軍に残ることを決意する。 意を決してメアリーに求婚したマーティだったが、彼女は即決でそれを承諾してくれる。 メアリーが素っ気無い態度を取っていたのは、マーティの性格を知っていた、キーラー大尉の策略だったのだ。 校内の敷地の一軒家に、新居を構えたマーティとメアリーは、幸せな生活を続ける。 そんな時、マーティが貯めていた帰国資金をメアリーが引き出し、彼の父(ドナルド・クリスプ)と弟のディニー(ショーン・マクローリー)をアイルランドから呼び寄せてしまう。 ある日マーティは、体育は得意だが、科学が不得意のために落第しかけている、レッド・サンドストロム(ウィリアム・レスリー)の悩みを解決しようとする。 マーティは、教師のキティ・カーター(ベッツィ・パーマー)をレッドの家庭教師として紹介する。 その後、ディニーがニューヨークで成功し、マーティを自分の事業に誘う。 しかし、メアリーが妊娠していることがわかり、彼女の希望で、マーティはウェスト・ポイントに残ることになる。 そして、男の子が生まれ候補生から祝福されるが、子供は息を引き取り、メアリーは子供の産めない体になってしまう。 しかしマーティとメアリーは、自分達の息子のような候補生の行進を見て希望を抱き、彼は再志願する。 やがて第一次大戦参戦が近づき、1915年卒業の候補生には大きな期待がかかり、その中には、ドワイト・D・アイゼンハワー(ハリー・ケリーJr.)やオマー・N・ブラッドレーらもいた。 その後の彼らの活躍により、この年は、”星が降りかかったクラス”と呼ばれた。 アメリカはついに参戦し、1917年度生の卒業は早まり、立派に卒業したレッドは、キティと結婚した後に、同窓生のシェラブ・オーヴァートン(パトリック・ウェイン)らと共に出征する。 マーティも後を追おうとするが、キーラー大佐が戦地に向かうことになり、マーティが後を任される。 戦地では激戦が続き、かつていがみ合ったハインツや若いオーヴァートン、そして終戦寸前にレッドも戦死したという報せを、マーティは受ける。 マーティは、残されたレッドの妻キティと息子のため、ついにウェスト・ポイントを離れる決心をする。 しかし、レッドの息子が、無条件でウェスト・ポイントへの入学が許可されたことを聞き、再び軍に戻ることにする。 時は流れ、レッドの息子ジェームズ(ロバート・フランシス)はウェスト・ポイントに入学し、やがて立派な上級生となる。 1941年12月7日。 そんな時、ジェームズが、卒業間近に女性との交際問題を起こし、マーティに規則違反を指摘されて苦悩する。 メアリーは、それを隠し通そうとするが、マーティは他の候補生の手前、良心がとがめる。 ジェームズは出征を決めマーティに別れを告げ、キティとメアリーは彼を誇りに思う。 戦況を心配しながら、毎日を過ごす年老いたマーティとメアリーだったが、病弱だった彼女は、やがて静かに息を引き取る。 メアリーの死後、独り寂しく暮すマーティだったが、相変わらず、彼を慕う候補生が家を訪ねてくる。 マーティがいつものように昔話を始め、候補生からクリスマスのプレゼントを受け取る。 そこに名誉の傷を負い帰国したジェームズが現れ、再会したマーティと固く抱き合う。 マーティは、アイゼンハワー大統領に、自分の全てがウェスト・ポイントにあることを語る。 その後、同席していた教え子、チャールズ・ドットソン将軍(フィリップ・ケリー)は、マーティをウェスト・ポイントに連行する。 戸惑うマーティだったが、そこでは、彼のために候補生の栄誉分列行進が行われていた。 感激するマーティの目には涙が溢れ、そして、メアリー、父、キーラー、レッド、オーヴァートンらの面影が甦る。
...全てを見る(結末あり)
日本軍の真珠湾攻撃を受け、アメリカは第二次世界大戦に参戦する。
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*(簡略ストー リー)
アイルランド移民のマーティ・マーは、給士としてウェスト・ポイント内に職を得る。
その仕事が気に入らないマーティは、軍に志願し、候補生に慕われるながら闘技主任の助手となる。
やがて、同じ移民のメアリーと結婚したマーティは、父と弟も国から呼び寄せ、二度の大戦に教え子を送り出し退役の日を迎える。
マーティは、50年間過ごしたウェスト・ポイントが全てであり、教え子の、大統領アイゼンハワーに、現役続行の許可を直訴する・・・。
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コロンビア・ピクチャーズのワンマン社長であるハリー・コーンが、大統領アイゼンハワーの功績を賞賛する作品を作ろうと考え、彼が登場するマーティ・マーの自伝の映画化権を買取り製作された作品である。
ウェスト・ポイント全面協力による、美しいロケも素晴らしく、アメリカ人の心を捉え作品は大ヒットを記録した。
士官候補生”長い灰色の線”の見事な行進も効果的に使われている。
テレビ時代に対抗するため、ジョン・フォードは、否定的ではあったシネマスコープを初めて使い、彼らしい、詩情豊かな人情味溢れる、家族、友人や教え子達との触れ合いを描いた、ヒューマン・ドラマの傑作であり、マーティ・マーの功績を称える、ラストの、候補生による栄誉分列行進は涙なくして見られない。
また、フォード自身もそうであるように、 主人公や妻のアイルランド気質を万遍なく盛り込んだ、フォード作品ならではの作風は、ファンにとって嬉しいばかりだ。
美男スターとして知られたタイロン・パワーだが、彼はそれに満足せず、本作の主人公に抜擢されて見事に才能を開花させ、遺作となる「情婦」(1957)と並ぶ、一世一代の名演を見せてくれる。
「わが谷は緑なりき」(1941)以来、フォードの最もお気に入りの女優でもある、アイルランド出身のモーリン・オハラは、夫や候補生に献身的に尽くし、静かに息を引き取る祖国出身の主人公の妻役を好演ている。
フォード一家の代表格、ウォード・ボンドの、豪快な闘技教官も、フォード作品ならではのキャラクターだ。
撮影時点で70歳を超えている「わが谷は緑なりき」(1941)でアカデミー助演賞を受賞した名優ドナルド・クリスプの、矍鑠たる演技も素晴らしい。
若き日のアイゼンハワーを演ずるハリー・ケリーJr.、パトリック・ウェインらのフォード一家の面々、本作が遺作となってしまう、期待の若手俳優ロバート・フランシス、マーティに励まされて見事に卒業するものの妻子を残して戦死するウィリアム・レスリー、その妻役ベッツィ・パーマー、主人公の弟ショーン・マクローリー、フットボールのオールアメリカンを諦めて、優秀な成績で卒業するフィリップ・ケリー、マーティと対立する軍曹ピーター・グレイヴス、若き候補生マーティン・ミルナー、他フォード一家のジャック・ペニックなども出演する。