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L・B・ジョーンズの解放 The Liberation of L.B. Jones (1970)

巨匠ウィリアム・ワイラーの遺作。
アメリカの南部を舞台に複雑に絡み合う人種問題を描く、リー・J・コッブアンソニー・ザーブロスコー・リー・ブラウン他共演の社会派ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)


スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ワイラー

製作:A・ロナルド・ルービン
原作:ジェシー・ヒル・フォード

脚本
スターリング・シリファント

ジェシー・ヒル・フォード
撮影:ロバート・サーティース
編集:カール・クレス
音楽:エルマー・バーンスタイン

出演
オーマン・ヘッジパス:リー・J・コッブ

ウィリー・ジョー・ワース:アンソニー・ザーブ
L・B・ジョーンズ:ロスコー・リー・ブラウン
エマ・ジョーンズ:ローラ・ファラナ
スティーヴ・マンダイン:リー・メジャース
ネラ・マンダイン:バーバラ・ハーシー
ソニー・ボーイ・モスビー:ヤフェット・コットー
スタンリー・バンパス:アーチ・ジョンソン
アイク:チル・ウィルス
市長:ダブ・テイラー
ベニー:フェイヤード・ニコラス
ママ・ラヴォーン:ゼイラ・カリー

アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ

1970年製作 102分
公開
北米:1970年3月18日
日本:1973年9月


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
テネシー州、ソマートン。
拳銃を所持する黒人青年ソニー・ボーイ・モスビー(ヤフェット・コットー)は、列車が停車する手前で飛び降りる。

それを目撃した地元警官ウィリー・ジョー・ワース(アンソニー・ザーブ)は、ソニー・ボーイに職務質問しただけで、彼を知り合いの元に向かわせる。

町の弁護士オーマン・ヘッジパス(リー・J・コッブ)は、自分のパートナーとなる甥のスティーヴ・マンダイン(リー・メジャース)と妻ネラ(バーバラ・ハーシー)を歓迎する。

ソニー・ボーイは食料品店で買い物をするが、拳銃の入った箱を置き忘れてしまい取りに戻る。

店主が箱を渡そうとしなかったため、ソニー・ボーイはそれを強引に奪い取り立ち去る。
...全てを見る(結末あり)

ヘッジパスは、オフィスにスティーヴを案内して、自分を待っていた、葬儀社を経営するL・B・ジョーンズ(ロスコー・リー・ブラウン)を紹介する。

ジョーンズは、不倫をした妻エマ(ローラ・ファラナ)との離婚を決意して、ヘッジパスに代理人を頼もうとするのだが、彼はそれに乗る気でなかった。

スティーヴがその件を引き受けようとするが、ヘッジパスは、それが複雑であり、彼の手におえる案件でないため、自ら動くことを決めて、ジョーンズに連絡を入れる。

その後、ソニー・ボーイは、育ての親ママ・ラヴォーン(ゼイラ・カリー)の経営するカフェ・ホテルに向かい再会を喜ぶ。

ソニー・ボーイは、自分が13歳の時に暴行を加えられた警官のスタンリー・バンパス(アーチ・ジョンソン)に復讐するために、この町に戻ってきたのだった。

ジョーンズは、不倫相手ワースと別れれば離婚しないことをエマに伝えるが、彼女は聞く耳を持たなかった。

そんなエマは、ジョーンズの目も気にせず、ワースとの情事を楽しむ。

そして、ジョーンズはヘッジパスの元に向かい、妻の不倫相手が白人にも拘らず、離婚に踏み切ろうとする。

ヘッジパスは、白人であるワースが、この件で身の破滅になる可能性を心配するが、スティーヴは彼の考えが理解できない。

ワースの元に向かったヘッジパスは、事が大事にならないように、エマの訴えを取り下げさせるため手を打たせようとする。

スティーヴは、尊敬していたヘッジパスを人種差別主義者だと言切り率直に意見する。

この地に住めば、気持ちは理解できると言うヘッジパスに対し、実力者であれば、そのように考える者達の意見を変えられるとスティーヴは言い放つ。

エマに会ったワースは彼女を責めるが、彼女が妊娠したことを知り、堕胎するように強要し乱暴してその場を立ち去る。

その後、ワースは逮捕した黒人の妻に夫の釈放を求められるが、彼は力になると言いながら、パトカー内でその女性を犯してしまう。

自分の葬儀のことで、ジョーンズに相談したママ・ラヴォーンは、彼の裁判では彼に雇われている、ベニー(フェイヤード・ニコラス)と共に証言台に立つことを約束し、ソニー・ボーイを紹介する。

ワースは、ジョーンズに訴訟を取り消すよう脅しをかけ、その場に隠れていたソニー・ボーイは、バンパスが農場にいると聞き彼の元に向かう。

しかし、バンパスに銃の狙いを定めたソニー・ボーイは、彼を打つことができなかった。

その夜、ジョーンズはワースに誘き出され、警告を無視したことで乱暴を受ける。

乗せられていた車を脱出したジョーンズは、逃げるのを止めるが、尚もワースに逆らったために射殺される。

バンパスは、報復殺人を装いジョーンズを吊るし、2人は署に戻る。

2人は同僚のアイク(チル・ウィルス)に、ジョーンズを殺害して殺人を装ってきたことを話す。

ソニー・ボーイとママ・ラヴォーンは、ジョーンズの死を知り彼の遺体を運ぶ。

翌日、市長(ダブ・テイラー)に呼び出されたヘッジパスは、エマと協力者ベニーが、ジョーンズ殺害の容疑者として逮捕されたことを伝える。

報告書を見たヘッジパスは、それだけでは不十分だと言って留置場のエマとベニーの元に向かう。

ジョーンズを殺したのは、ベニーということになっていたが、彼は一晩中留置されていたため、ヘッジパスは直ちに2人を釈放させる。

その後、エマとベニーを犯人にしたくないワースが自首してくるが、ヘッジパスは全てを丸く収めるために、彼に沈黙を守るよう伝えて帰してしまう。

その頃、一度は許したバンパスを、ソニー・ボーイが殺害してしまう。

屋敷に戻ったヘッジパスは、何も変わろうとしない町の者達の考えに失望した、スティーヴとネラが出て行くことを知り、ショックを受ける。

そして、ジョーンズの葬儀は執り行われ、スティーヴとネラ、そしてソニー・ボーイは旅立つ。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
葬儀社を営む裕福な黒人L・B・ジョーンズは、妻エマの不倫を理由に離婚の代理人を、町の実力者で弁護士のヘッジパスに依頼する。
それに乗り気でなかったヘッジパスだったが、呼び寄せたパートナーとなる甥のスティーヴが、それを引き受けると言い出す。
ヘッジパスは、人種が絡む複雑な案件のため、仕方なく自分がそれを引き受けることになる。
エマの不倫相手は、白人警官ワースだったために、ヘッジパスは彼が身の破滅を招きかねないと考える。
そしてヘッジパスは、訴訟にならないよう、ワース自身で解決させようとする。
そんなヘッジパスの行動に対して、スティーヴは人種差別主義者だと言って彼を非難する。
偏見はなかったヘッジパスは、この地で生きていく方法だと言い張るが、スティーヴは、彼が、それを変える努力をすることを期待する。
一方、13年前に警官に暴行を受け、町を離れていたソニー・ボーイが、復讐のために町に戻っていた。
ジョーンズは、用心のためソニー・ボーイを紹介されるものの、事態収拾に目処がつかないワースは、ジョーンズを呼び出して、強行手段に出る・・・。
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1965年に発表された、ジェシー・ヒル・フォードの小説”The Liberation of LordByron Jones”を基に製作された作品。

今見ると、上記のように”ウィリアム・ワイラーの遺作”ということばかりが、どうしても気になってしまう。
戦時中、「ミニヴァー夫人」(1942)のような強烈な反ナチス映画も手がけたのだが、どちらかというと、力強い描写の中に、穏健派のイメージを恒に感じさせる作風が特徴だった。
本作では、人種問題を真正面から捉えてはいるが、やはりそのメッセージ性よりも、各登場人物の心理描写など、彼らしい演出は生かされ、それらがきっちりと描かれている。

撮影は、「ベン・ハー」(1989)などでもW・ワイラーと組んだロバート・サーティースで、いつもとは少し雰囲気が違う、エルマー・バーンスタインが音楽を担当している。

町の実力者でありながらも、結局はその保守的思想を変えられず、進歩的な考えの甥に見捨てられてしまう弁護士を好演するリー・J・コッブ、その甥役リー・メジャース、その妻で若き日のバーバラ・ハーシー、印象的な役を演ずる、悪徳警官のアンソニー・ザーブ、物語の中心人物で、葬儀社の経営者ロスコー・リー・ブラウン、その妻ローラ・ファラナ、暴行された警官に復讐する青年ヤフェット・コットー、その育ての親ゼイラ・カリー、青年の復讐に遭い殺される警官のアーチ・ジョンソン、その同僚チル・ウィルス、市長のダブ・テイラー、”ニコラス・ブラザース”の兄で、葬儀社で働くフェイヤード・ニコラスなどが共演している。


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