1930年に執筆され翌年”The Saturday Evening Post”に掲載された、F・スコット・フィッツジェラルドの短編”Babylon Revisited”を基に製作された作品。 第二次大戦下のパリ解放時に出会った奔放な女性と従軍記者の愛を描く、監督リチャード・ブルックス、主演エリザベス・テイラー、ヴァン・ジョンソン、ウォルター・ピジョン、ドナ・リード、エヴァ・ガボール、そして若き日のロジャー・ムーア他共演のロマンス。 |
・エリザベス・テイラー / Elizabeth Taylor / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:リチャード・ブルックス
製作:ジャック・カミングス
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
”Babylon Revisited”(The Saturday Evening Post)
脚本
ジュリアス・J・エプスタイン
フィリップ・G・エプスタイン
リチャード・ブルックス
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
編集:ジョン・ダニング
音楽:コンラッド・サリンジャー
主題歌”The Last Time I Saw Paris”
作曲:ジェローム・カーン
作詞:オスカー・ハマースタイン2世
出演
ヘレン・エルスワース:エリザベス・テイラー
チャールズ・ウィルス:ヴァン・ジョンソン
ジェームズ・エルスワース:ウォルター・ピジョン
マリオン・エルスワース:ドナ・リード
ロレイン・クオール:エヴァ・ガボール
モーリス:カート・カズナー
ポール・レーン:ロジャー・ムーア
クロード・マティヌ:ジョージ・ドレンツ
ヴィッキー・ウィルス:サンディ・デスチャー
キャンベル:ジョン・ドーセット
アメリカ 映画
配給 MGM
1954年製作 115分
公開
北米:1954年11月18日
日本:1955年4月3日
製作費 $1,960,000
北米興行収入 $
世界 $4,940,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
パリ。
アメリカ人のチャールズ・ウィルス(ヴァン・ジョンソン)は、到着後に何か所かを回り思いに耽る。
あるカフェに向かったチャールズは、壁に描かれた女性に目をやる。
主人のモーリス(カート・カズナー)がチャールズに気づき、二人は2年ぶりの再会を喜ぶ。
娘に会いに来たとモーリスに伝えたチャールズは、当時のことを思い出す。
1944年8月。
第二次大戦下、ナチの占領からパリは解放され、”星条旗新聞”の記者チャールズは、喜びに沸く人々の中である女性(エリザベス・テイラー)にキスされる。
女性が気になったチャールズだったが、彼女は雑踏の中に消えてしまう。
モーリスのカフェに向かったチャールズは、店の奥で自分を見つめる女性に気づく。 テーブルに近づいたチャールズは、同席していたのが知人でフランス人のクロード・マティヌ(ジョージ・ドレンツ)だと分かり驚く。 チャールズはその女性マリオン・エルスワース(ドナ・リード)に挨拶して、彼女の父親ジェームズ(ウォルター・ピジョン)のパーティーに招待される。 その場に街角でキスした女性がいることに気づいたチャールズは、彼女がマリオンの妹ヘレンだということを知る。 マリオンは、ヘレンがこの場にいることを不審に思い、彼女が大学を放校になったことを父ジェームズから知らされる。 チャールズは奔放なヘレンと意気投合し、社に戻ると言う彼に惹かれたマリオンは再会を望む。 社からエルスワース家に電話をしたチャールズは、それに出たヘレンに、凱旋門で待っているというマリオンへの伝言を伝える。 その夜、凱旋門に現れたのはヘレンで、驚いたチャールズは、解放を喜ぶ市民達に囲まれながら再びキスをする。 惹かれ合う二人は、終戦が間近だという幸福感を味わう時間を過ごす。 翌日、差し入れを持参したチャールズはエルスワース家に向かい、資金難のジェームズが競馬で儲けようとしていることを知り手助けをする。 1945年8月。 その夜、カフェを出たチャールズは傘を忘れ、ヘレンはタクシーを拾えず、雨の中、徒歩で帰宅することになる。 それが原因で風邪をこじらせヘレンは入院してしまい、見舞に来たチャールズが傘を忘れたことを謝罪する。 ヘレンは自分のせいだと言ってチャールズを励まし、二人は愛を深める。 その後ヘレンは回復し、マリオンはクロードと結婚することになり、チャールズは彼女を祝福し自分達も結婚を決意する。 やがてチャールズとヘレンには女の子が生まれ、彼は作家を目指して努力するものの、原稿は出版に至らない。 1950年。 そんな時、チャールズは結婚と離婚を繰り返す富豪女性ロレイン・クオール(エヴァ・ガボール)にインタビューすることになり、彼女と行動を共にする。 街角でマリオンに出くわしたチャールズは帰ろうとするが、ロレインに誘われて朝帰りする。 チャールズは気まずい思いをして寝室に向かうが、ヘレンはそれを気にしない。 そこにマリオンから電話が入り、父ジェームズが所有するテキサスの土地から石油が出たことを知った彼女はそれを確かめる。 一家の生活は急変して豊かな生活になったものの、チャールズは小説の出版を再び断られる。 金銭面では苦労のないチャールズだったが、自分の夢が叶えられないことで絶望しかけヘレンに辛く当たる。 一応平穏な生活が続く二人だったが、ヘレンは若いテニス・プレイヤーのポール・レーン(ロジャー・ムーア)を紹介される。 あるパーティーに出席した二人だったが、チャールズがその場にいたロレインと楽しみ始めたため、それを見たヘレンは嫉妬する。 翌日、その件でチャールズと口論になったヘレンは幸せでないことを伝え、故郷のアメリカに帰ることを提案する。 それを聞き入れようとしないチャールズは、ロレインと共にパリ–モンテカルロ間の自動車レースに出場してしまう。 パリに戻ったチャールズは、カフェでヘレンとポールの仲睦まじい姿を目撃してしまう。 チャールズは自分を相手にしないヘレンとポールに憤慨してトラブルを起こし、帰宅して入り口のドアのチェーンをかけて酔いつぶれてしまう。 ヘレンとポールはその場を去りホテルに向かうが、彼女は今後のことを気にする。 世間ではよくある関係だとポールに言われたヘレンは、彼を見限り帰宅するが、入り口のドアのチェーンで開けることができない。 チャールズを呼ぶヘレンだったが、彼は目覚めなかった。 見放され許してもらえないと思い込むヘレンは、雪の残る冬の雨に濡れながらマリオンの家に向かい気を失ってしまう。 病院に運ばれたヘレンの元に現れたチャールズは、彼女に謝罪する。 ヘレンはチャールズを責めず、ヴィッキーのことを頼み、愛を告げて息を引き取る。 自分の行動を悔いるチャールズはその場から離れようとせず、ジェームズに説得されて帰宅する。 モーリスに別れを告げてヴィッキーの元に向かったチャールズを、発作で歩行困難になり車いす生活になっていたジェームズが迎える。 作家として成功していたチャールズの元気な姿を見たジェームズは安心する。 そこにクロードに連れられたヴィッキーが戻り、チャールズは娘を抱きしめる。 許していないというマリオンのことをクロードから聞いたチャールズは、それを気にしながらヴィッキーにせがまれて公園に向かう。 苦悩するチャールズは、自分と暮らすことを望み愛を告げるヴィッキーを抱きしめる。 家に戻ったチャールズは、気まずい思いをしながら、ヴィッキーのことでマリオンに感謝する。 許す様子のないマリオンに、ヴィッキーと共に暮らしたいことを伝えるチャールズだったが、彼女はそれを拒む。 失意のチャールズはその場を去り、クロードは、彼を許さないマリオンに問う。 クロードは、許さないのは、自分の愛に応えなかったチャールズに対する仕打ちであり、それは彼が背負っている罪と同じだと言って彼女に確認する。 娘を奪われる”罰”を受け入れるしかないチャールズの苦しみをクロードに知らされたマリオンはカフェに向かう。 マリオンは、ヘレンの絵の前でたたずむチャールズに声をかけて外に出る。 孤独であるチャールズをヘレンは悲しむだろうと告げたマリオンは、その場にクロードに連れられたヴィッキーがいることを知らせる。 チャールズとヴィッキーは固く抱き合う。 二人は手をつないでその場を離れ、マリオンとクロードはそれを笑顔で見つめる。
...全てを見る(結末あり)
広島に原爆が投下されて太平洋の戦争の終結も近づき、チャールズとヘレンは愛し合うようになっていた。
記者を続けながらチャールズは多忙な日が続くが、ヘレンは娘ヴィッキー(サンディ・デスチャー)を預けて遊びまわる。
しかし、ヘレンを失ったことを自分の責任だと考えるマリオンにヴィッキーを連れて行かれたチャールズは、アメリカに帰国する決心をする。
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*(簡略ストー リー)
パリに戻ったアメリカ人チャールズ・ウィルスは、ある女性のことを想い起す。
1944年、パリ、第二次大戦下、ナチの占領から解放され市民の喜びで湧く街角で、チャールズは見知らぬ女性ヘレン・エルスワースにキスされて別れる。
その後、カフェで出会ったマリオンの自宅パーティーに招かれたチャールズは、彼女の妹がヘレンだと知る。
マリオンはチャールズに惹かれたのだが、彼はヘレンと意気投合しやがて愛し合うようになる。
結婚したチャールズとヘレンには娘ヴィッキーも生まれるのだが、作家になる夢を果たせない彼は苦悩する。
やがて、派手な生活を好むヘレンとチャールズの生活にすれ違いが生ずる・・・。
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F・スコット・フィッツジェラルドの短編の内容を第二次大戦終戦直前から戦後の激動の時代に置き換え、リチャード・ブルックスが描いたドラマ。
苦難を乗り越えた様々な人々の個々の生活感が、その時代を象徴するように描かれている。
平和を手にした人々の希望に満ち溢れた雰囲気で始まる物語は、序盤で悲劇を予感させる場面もあり、終盤でそれが現実となるメロドラマ・タッチの展開となる。
やや単調とも思えるリチャード・ブルックスの演出だが、他人への憎しみが自分も不幸にすることを悟った主人公の姉が心を開き、義弟とその娘の幸福な姿を映し出すラストは爽やかに締めくくられる。
20代前半にして既に大女優の風格さえ漂う美しいエリザベス・テイラーの魅力は際立ち、少々欲張り過ぎな感はあるが、奔放な自由人から悲劇のヒロインまで変幻自在に演じている。
MGMの黄金期を支えた人気スター、ヴァン・ジョンソンも、典型的なアメリカ青年から苦悩する姿まで実力派らしい演技を見せてくれる。
主人公の父親を砕けた雰囲気で演ずる名優ウォルター・ピジョン、主人公の姉ドナ・リード、富豪夫人エヴァ・ガボール、カフェの主人カート・カズナー、主人公と親交を深めるテニス・プレイヤーで若き日のロジャー・ムーア、主人公の義兄ジョージ・ドレンツ、そして主人公の娘を演ずる、実に表情豊かなサンディ・デスチャーなどが共演している。