中国の核施設破壊計画に同意した”密書”を巡るアメリカとソ連の激しいスパイ戦を描く、監督、脚本、出演ジョン・ヒューストン、主演リチャード・ブーン、パトリック・オニール、オーソン・ウェルズ、マックス・フォン・シドー、ディーン・ジャガー、ジョージ・サンダース他共演によるサスペンス・ミステリーの秀作。 |
・オーソン・ウェルズ / Orson Welles / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・ヒューストン
製作
カーター・デヘヴン
サム・ワイゼンサル
原作:ノエル・ベーン
脚本
ジョン・ヒューストン
グラディス・ヒル
撮影:エドワード・スケイフ
音楽:ロバート・ドラスニン
出演
”ウォード”ロバート・スタデヴァント:リチャード・ブーン
チャールズ・ローン少佐/ヨルギ・ダビダシュビリ:パトリック・オニール
アレクセイ・ブレズナビッチ:オーソン・ウェルズ
ヤコブ・コズノフ大佐:マックス・フォン・シドー
エリカ・ベック/コズノフ:ビビ・アンデショーン
ジャニス:ナイジェル・グリーン
”追いはぎ”:ディーン・ジャガー
ワーロック:ジョージ・サンダース
B・A:バーバラ・パーキンス
ソフィー:リラ・ケドロヴァ
”アリス”:マイケル・マクレモア
人形職人:ラフ・ヴァローネ
提督:ジョン・ヒューストン
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1970年製作 120分
公開
北米:1970年2月1日
日本:1970年5月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ある”密書”を取り戻すために動いていたロシア人が、ソ連・KGBのヤコブ・コズノフ大佐(マックス・フォン・シドー)に捕らえられ、拷問の末に自殺してしまう。
アメリカ海軍少佐チャールズ・ローン(パトリック・オニール)は、提督(ジョン・ヒューストン)から海軍の任を解かれる。
新たな任務として、CIAに協力をするよう提督に命令されたローンは、”アリス”(マイケル・マクレモア)と接触して、現金を”ウォード”(リチャード・ブーン)に渡すよう指示される。
ウォードに金を渡し、”追いはぎ”(ディーン・ジャガー)を紹介されたローンは、用意された仲間達を集めるための行動を開始する。
ローンは、アカプルコでジャニス(ナイジェル・グリーン)を見つけ、気乗りしない彼に12万5000ドルの報酬をちらつかせて仲間に引き入れる。
さらに、ゲイのワーロック(ジョージ・サンダース)、金庫破りの天才娘”B・A”(バーバラ・パーキンス)を連れ、ローンはニューヨークに向かう。 ”追いはぎ”が指示した金庫破りではなく、その娘B・Aを連れてきたことを叱責されたローンは、スパイとしての再教育が必要だとウォードから言われ、厳しい訓練を受けさせられる。 ロシア人に成りきるための訓練を受けたローンは、初心なB・Aを慰め恋に落ちる。 そしてローンは、”ヨルギ・ダビダシュビリ”という名前が付けられ、ソ連潜入の準備が整う。 殺されたロシア人が、中国の核施設を破壊するために、アメリカが支援するという保証として、情報部高官がそれを書面にしたため、中国への宣戦布告にも成りかねない事態になったことをローンは知らされる。 アメリカ及びイギリス政府はそれに不満を表明し、情報部は、”密書”(書面)の回収を命じられ、100万ドルでそれを依頼した。 ロシア人は妻とモスクワに向かうが、KGBが、彼らと妻の母、そして妹を捕まえロシア人は死亡した。 それが、KGBのコズノフ大佐の功績と伝えられた。 KGBの監視役でもある、コズノフの部下の義父アレクセイ・ブレズナビッチ(オーソン・ウェルズ)は、”密書”に関連することと、コズノフに入る情報を知ろうとする。 ウォードらは、ブレズナビッチの在米の部下を、家族を人質に脅し、彼のモスクワの家を提供させて、コズノフへの偽情報を流す役目を強要する。 そして、全ての準備が整い、スパイ達はモスクワに潜入する。 ”追いはぎ”は、事故で自らの命を絶ち、一行はブレズナビッチの部下の家を拠点に、情報収集を始める。 ジャニスは、娼館の女主人ソフィー(リラ・ケドロヴァ)に接触して麻薬関係の筋を洗い、ワーロックは、芸術とゲイ関係に探りを入れる。 コズノフが、死んだロシア人の妻エリカ(ビビ・アンデショーン)を妻にしていることを知ったローンは、B・Aに指示し彼の家に盗聴器を仕掛けさせる。 事故死した男(追いはぎ)が、アメリカのスパイだと嗅ぎ付けたコズノフも、警戒を始める。 市内の泥棒青年の家に同居し、活動を始めるB・Aをローンが心配しながら送り出す。 ジャニスは、ブレズナビッチが麻薬常習者だということを突き止める。 現夫コズノフが元夫にした拷問を知ったエリカは、街に飛び出し、ジャニスが、すかさず彼女に近づき、男娼に扮したローンを紹介する。 やがて、ブレズナビッチと死んだロシア人はゲイ仲間で、盗んだ美術品をパリで売りさばいていたことがわかる。 エリカはローンが気に入り、嫌気がさしていたコズノフから逃れようとする。 ローン達の拠点がKGBに見つかり、ジャニス、B・Aが捕らえられ、ワーロックは自殺する。 エリカに探りを入れ、仲間達の居場所を聞き出そうとしたローンは彼女に正体を見破られる。 しかし、エリカは捕らえられたスパイの情報を、ローンに知らせる。 美術品や”密書”のことをちらつかせ、ブレズナビッチを脅したローンは彼と取引しようとするが、捕らえられたスパイ達は、ウォード以外死んだことを知る。 そしてローンは、”密書”が北京にあることをブレズナビッチに伝える。 ブレズナビッチとの取引で、ウォードを助けたローンは、彼の指示でエリカを連れてパリに逃亡しようとする。 しかし、ウォードはローンのスーツを着て、現れたエリカを殺害してしまう。 エリカの死体を見つけたコズノフはローンを捕らえ、エリカの血の付いたスーツが、彼の物だということを確認する。 ローンを殺そうとしたコズノフだったが、ウォードが現れて彼に銃を向ける。 ウォードは、死んだとされる伝説のスパイ”スタデヴァント”だったのだ。 スタデヴァントは、多くの仲間を殺したコズノフを遂に捕らえ、彼を殺害する。 ローンは、復讐のためコズノフを追っていたスタデヴァントの目的と、彼がブレズナビッチと手を組んだことも知り、自分が彼の弱みを握る重要人物だということを主張する。 それに納得したスタデヴァントだったが、ローンにB・Aを救い出したことを知らせる。 スタデヴァントは、自分の立場を優位にして、帰国するローンを見送る。 B・Aを人質にされたローンは、渡されたスタデヴァントの指示書を機内で読む。 ”ブレズナビッチの部下の家族を殺せ、実行しない場合はB・Aを殺す”
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*(簡略ストー リー)
あるロシア人が、ソ連・KGBのコズノフ大佐に捕らえられて、拷問の末に自殺してしまう。
アメリカ海軍少佐ローンは、CIAへの協力を提督から指示され、工作員のウォードらと接触する。
情報部は、中国への宣戦布告にも成りかねない事態に、死んだロシア人が持っていた、”密書”の回収をウォードらに依頼したのだった。
ローンらの、スパイとしての教育も終わり、ソ連潜入の準備は整う。
モスクワ入りした工作員らは、それぞれの役目を果たして情報収集を始め、ローンは、死んだロシア人の妻エリカに近づくのだが・・・。
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1966年に発表された、ノエル・ベーンの同名小説の映画化。
個性的なスパイ達の活躍、舞台となる激寒のモスクワの雰囲気をよく出した、フィンランドのヘルシンキ・ロケ、ジョン・ヒューストンの、スリリングで無駄のない、軽快な演出は冴え渡る。
1960年代に多く作られた、冷戦下を舞台にしたスパイ映画の中でも、”ミッション:インポッシブル”と”007シリーズ”を掛け合わせたような、極めつけの娯楽性と面白さを兼ね備えた、この分野の作品でその時代の雰囲気を伝える集大成的な作品でもある。
ユーモアや皮肉を交えたセリフ、テンポの良い展開で、愉快な場面も多い作品ではあるが、ターゲットや政敵の、その家族までをも、非情な手段で始末していく冷酷さは怖い。
クライマックスで、その正体を明かす、非道な殺人者として、劇中、度々名前が登場する大物スパイであった、迫力ある演技のリチャード・ブーン、海軍を解任されたスパイを、スマートに演ずるパトリック・オニール、麻薬常習者、ゲイ、美術品密売人と、貫禄に相応しいとてつもない黒幕役オーソン・ウェルズ、非情なKGBの高官を謎めいた雰囲気で演ずるマックス・フォン・シドー、その妻ビビ・アンデショーン、巧みな情報活動などで貢献するナイジェル・グリーン、ジョージ・サンダース、バーバラ・パーキンス、ディーン・ジャガー、その他、リラ・ケドロヴァ、マイケル・マクレモア、ラフ・ヴァローネ、そして海軍の提督役でジョン・ヒューストンも特別出演している。