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英国王のスピーチ The King’s Speech (2010)

吃音症に悩みながら大英帝国国王となったジョージ6世の苦悩と彼を生涯支えた言語聴覚士ライオネル・ローグとの友情、その努力と勇気が大英帝国に君臨する真の国王を誕生させるまでを描く、監督トム・フーパー、 コリン・ファースジェフリー・ラッシュヘレナ・ボナム=カーターガイ・ピアース共演の感動のヒューマン・ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ヒューマン)


スタッフ キャスト ■
監督:トム・フーパー

製作総指揮
ポール・ブレット

ジェフリー・ラッシュ
ハーヴェイ・ワインスタイン
ボブ・ワインスタイン
製作
イアン・キャニング

エミール・シャーマン
ガレス・アンウィン
脚本:デヴィッド・サイドラー
撮影:ダニー・コーエン
編集:タリク・アンウォー
美術・装置
イヴ・スチュアート

ジュディ・ファー
衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン
音楽:アレクサンドル・デプラ

出演
ジョージ6世/ヨーク公・アルバートコリン・ファース

ライオネル・ローグジェフリー・ラッシュ
エリザベス妃/エリザベス・バウエス=ライアンヘレナ・ボナム=カーター
エドワード8世/コーンウォール公・デヴィッドガイ・ピアース
ジョージ5世マイケル・ガンボン
メアリー王妃クレア・ブルーム
ウィンストン・チャーチルティモシー・スポール
マートル・ローグ:ジェニファー・イーリー
コスモ・ゴードン・ラング/カンタベリー大主教デレク・ジャコビ
スタンリー・ボールドウィンアンソニー・アンドリュース
ウォリス・シンプソンイヴ・ベスト
ネヴィル・チェンバレン:ロジャー・パロット

イギリス 映画
配給 ワインスタイン・カンパニー

2010年製作 118分
公開
イギリス:2011年1月7日
北米:2010年11月26日
日本:2011年2月26日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $137,993,210
世界 $393,505,590


アカデミー賞 ■
第83回アカデミー賞

・受賞
作品・監督
主演男優(コリン・ファース
脚本賞
・ノミネート
助演男優(ジェフリー・ラッシュ
助演女優(ヘレナ・ボナム=カーター
撮影・編集・録音・美術
衣装デザイン・作曲賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1925年。
イギリス国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)は、大英帝国博覧会閉会式で、ヨーク公・アルバート王子(コリン・ファース)に代理スピーチを命ずる。

エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)が見守る中、緊張の面持ちでマイクに向かったアルバートは、予想通りまともなスピーチをすることが出来なかった。

1934年、ロンドンピカデリー145。
あらゆる吃音症の治療を試みるアルバートだったが、症状は改善されず、彼はそれを諦めようとしていた。

その後、エリザベス妃は身分を隠し、オーストラリア出身の言語聴覚士ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)の元を訪れる。

不躾なローグは、治療方法などを”ジョンソン夫人”(エリザベス妃)に説明し、その依頼人がアルバートと聞いて驚くものの出張での治療は断る。

エリザベス妃は仕方なくそれを承諾し、早速、治療は始めることになる。
...全てを見る(結末あり)

帰宅したローグは、妻マートル(ジェニファー・イーリー)や家族に、”特別な人”が現れたとだけを伝える。

家族団らんの時アルバートは、王女エリザベスマーガレットに、話をして聞かせる。

そしてアルバートは、エリザベス妃と共にローグを訪ねるが、彼は王子の前でも臆することなく、 対等な態度で接し自分のルールに従わせようとする。

アルバートは、自分に敬意も払わないローグに苛立ちながら、吃音が治るはずもないことをただ単に語る。

ローグは、”特別な人”に矢継ぎ早に質問し、生まれながらの吃音はないことと、彼もその例外でないことを確認し、本を朗読できるか賭けをする。

アルバートはヘッドホンの音楽で耳を塞がれ、同時に朗読を始めるが、それが何の意味もないことだと判断しその場を去ろうとする。

ローグは朗読が見事だったと言って、アルバートにそれを録音したレコードを渡し彼を見送る。

サンドリンガム・ハウス”、ノーフォーク
ジョージ5世のクリスマス放送が近づく中、王位継承者であるコーンウォール公・デヴィッド(ガイ・ピアース)が、離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリス・シンプソン(イヴ・ベスト)と交際していたため、国王アルバートに後を託すことを考え始める。

それにプレッシャーを感じながら、アルバートは父王にスピーチの練習を強要される。

困惑するアルバートだったが、ローグから渡されたレコードに録音された、自分の完璧な朗読を聞いて驚いてしまう。

それを聞いていたエリザベス妃と共に、再びローグの元を訪れたアルバートは、治療を継続して欲しいことを彼に伝える。

そして、ローグの独特のスタイルでの発声練習などが始まり、平行して、アルバートは人前でのスピーチも試みる。

1936年1月20日、サンドリンガム
ジョージ5世が崩御し、ゴードン・ラング/カンタベリー大主教(デレク・ジャコビ)の祈りが捧げられる。

父王の死に動揺する新国王デヴィッド(エドワード8世)は、ウォリスに愛を捧げられなくなったことで涙してしまう。

ローグを訪ねたアルバートは、王位を継ぐことがなく安心したことを彼に話すが、兄王に世継ぎがいない限り、自分が王位継承者であり、それを継ぐのが娘のエリザベスであることを考え不安が募る。

アルバートは、ローグの子供の模型を作りながら、彼に左利きとX脚の矯正が典型的な吃音の原因だと指摘される。

さらにアルバートは、兄を贔屓していた最初の乳母の嫌な思い出や、癲癇の発作を持ちわずか13歳でなくなった弟ジョンのことなどをローグに話す。

ローグが、初めて本音で話せる民間人との会話だというアルバートは、次第に彼に心を開いていく。

スコットランドバルモラル城
兄王エドワードに招待されたアルバートエリザベス妃は、その場を仕切っているようなウォリスを、あからさまに毛嫌いする。

アルバートは、エドワードからウォリスと結婚することを知らされて、それを非難する。

しかし、アルバートは王の座を狙っているとエドワードから言われ、動揺し言葉が返せなくなってしまう。

ローグは、エドワードの何がアルバートの言葉を詰まらせるのか、また何を恐れているのかを探ろうとする。

二人で外に出たアルバートだったが、ローグに自分の方が兄エドワードより優れているなどと言われ逆上し、 怒りに震えながらその場を立ち去ってしまう。

首相官邸。
首相スタンリー・ボールドウィン(アンソニー・アンドリュース)は、イングランド国教会の首長である国王が、アメリカ人だからではなく、離婚したウォリス・シンプソンと結婚することは許されないとアルバートに語る。

さらにボールドウィンは、ウォリスが国王意外とも付き合っていることを問題視し、ナチス・ドイツの大使から、毎日、花を贈られているという裏情報も知らせる。

政府の助言を無視するエドワードが、退位を迫られる状況も近いことをボールドウィンアルバートに伝える。

立ち入り過ぎる言葉をかけてしまったと、さすがに気にしたローグは、アルバートに面会を申し込むが断られてしまう。

政界の大物ウィンストン・チャーチル(ティモシー・スポール)との会合を持ったアルバートは、戦争を仕掛けてくるのが間違いない、ヒトラー率いるナチスと関係を持つウォリスを危険人物と判断する。

チャーチルは、戦争になれば、国民を奮起させる必要がある国王に、エドワードが成り得るかを危惧する。

エドワードを擁護するアルバートだったが、チャーチルは彼に即位する意思を尋ねる。

アルバートは、父王の名を継ぐ”ジョージ6世”として即位する自分に期待するチャーチルに、動揺を見せ言葉が出ない。

そして、エドワードウォリスとの結婚を選び、退位文書にサインし、国民に向け声明を発表する。

1936年12月12日、セント・ジェームズ宮殿
自分が、誰からも望まれない国王であるとの考えを断ち切れないまま、アルバートは”ジョージ6世”として即位する。

次々と執り行われる行事の予定に怯え、国王は最高の栄誉を受け、同時に最悪の日となったことに涙するが、そんな彼をエリザベス妃は励ます。

その後、ローグの自宅を訪れた国王は、以前のことで彼をよく理解できたことを伝える。

国王を相手に、さすがに恐縮するローグだったが、重責に怯える彼を励ます。

ローグは、その場にいたエリザベス王妃に驚く、 何も知らせていなかった妻マートルに国王を紹介する。

ウェストミンスター寺院での戴冠式を控え、国王ローグをそれに出席させ、王族と同様に扱うことをカンタベリー大主教に伝える。

大主教はそれに不快感を示すが、遠慮しないローグ国王とのその場の打ち合わせを要求する。

その後、何の資格もない役者崩れのローグは、先の大戦(第一次大戦)で、戦闘神経症の兵士の治療をした経験を語る。

しかし、ローグの治療を受けても、話すことに全く自信の持てない国王は、彼に激しい言葉を発する。

それを聞いていたローグは、国王の勇気ある発言を称え、彼が立派な人物であることを確認させる。

それを気にした大司教は、資格のある有能な者に国王の手助けをさせようとする。

しかし国王は、自分の問題は自らの手で解決することを大主教に伝え、ローグはそれに感謝する。

そして、ローグ国王と二人だけでリハーサルを始め、その後、無事に戴冠式を終える。

首相のボールドウィンは、ヒトラーナチスに対する見識の甘さとチャーチルの考えが正しかったことを指摘し、ネヴィル・チェンバレン(ロジャー・パロット)に後を任せることを国王に伝え退陣する。

1939年9月3日。
イギリスは、ポーランドに侵攻したドイツに対し戦線を布告し、ついに国王は、その力量を問われる時が来る。

国王は、大英帝国の国民及び全軍兵士に向けスピーチを行うことになり、彼はローグを”バッキンガム宮殿”に呼び寄せる。

ローグとの最後の調整も不十分なまま、国王カンタベリー大主教チェンバレン首相、チャーチルらの前に姿を現す。

チャーチルは、自分も言語障害だったことを国王に伝えて彼を見送る。

放送室に入った国王は、エリザベス王妃に励まされ、この時を迎えローグに感謝する。

ローグは、全てを忘れ友として自分に語りかけるよう、国王に助言する。

そして国王は、たどたどしい言葉ではあるが、世界秩序及び平和のため、国民や戦場の人々に勇気を持って立ち向かうことを呼びかけ、その正しい選択を神に委ね勝利を誓う。

国王の見事なスピーチをローグは称え、迎えた人々はそれを誇りに思う。

執務室に戻った国王は、友として迎えたローグに再び感謝を述べ、エリザベス王妃とその喜びを分かち合う。

チャーチルカンタベリー大主教にも、スピーチを絶賛された国王は、王女エリザベスマーガレットの元に向かい、彼女らを抱きしめ、もう一度ローグに感謝する視線を送る。

そして国王は、、宮殿広場で待ち構える民衆の前に姿を現し、歓喜の声に迎えられる。
__________

1944年、
ジョージ6世は、”ロイヤル・ビクトリア勲章”をローグに対して叙勲。

1940年、
国王は、民間人の勇敢な行いを称える”ジョージ勲章”を設立。

その後も、国王ローグと共にスピーチを続けて国民を勇気を与え、二人の友情は生涯続いた。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
イギリス国王ジョージ5世は、王位継承者のコーンウォール公・デヴィッド王子が、離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと浮名を流していることを危惧する。
吃音症で悩むヨーク公・アルバート王子は、王位を継ぐ兄デヴィッドの動向を気にしながら、自らに王位が移ることを恐れていた。
アルバートの妻エリザベス妃は、そんな王子の、吃音治療にあらゆる手を尽くした末に、オーストラリア出身の言語聴覚士ライオネル・ローグの元を訪ねる。
相手の身分が王子と分かっても動じない不躾なローグだったが、エリザベス妃は彼を気に入り王子の治療を任せる。
その後アルバートは、ローグが自分と同等の扱いを求めることなどに戸惑う。
苛立ちを隠せないアルバートだったが、ローグと接する内に、吃音の原因などについて的確に指摘する彼と心を通わせるようになる。
しかし、父王ジョージ5世が亡くなり、国王に即位したデヴィッド(エドワード8世)は、ウォリスとの結婚を選び退位してしまう。
最も恐れていたことが、現実となってしまったアルバートは、父王の名を継いでジョージ6世として即位するのだが、その重責に泣き崩れてしまう・・・。
__________

吃音症を克服しようとする者の苦悩を描いたドラマではあるが、多くの人々に支えられた、その克服への努力が、歴史上最も過酷な試練(第二次大戦)を前にしていた、大英帝国国民にどれだけの勇気を与えたかが、見る者に伝わる素晴らしい物語である。

この歴史的意義のある出来事を、人生経験の浅い30代後半で描き切ったトム・フーパーの演出も見事だ。

以前からあった、この物語の映画化の企画が、エリザベス皇太后(エリザベス妃)存命中には明かされたくない事実として封印されていただけあり、現在に至って製作されたため、かなりくだけた描写もある。

エドワード8世の”王位を捨てた恋”他、歴史的事実もかなり細かく描かれている。
ライオネル・ローグが、吃音の原因を指摘する場面で、アルバートが模型を作りながら、左利きを矯正されたことを告白したりする細かな演出と共に、X脚や乳母の嫌な思い出、幼くして亡くした弟ジョンのことを語るシーンなども実に興味深い。

第83回アカデミー賞では、作品賞以下12部門にノミネートされ、作品、監督、主演男優(コリン・ファース)、脚本賞を受賞した。
・ノミネート
助演男優(ジェフリー・ラッシュ
助演女優(ヘレナ・ボナム=カーター
撮影・編集・録音・美術
衣装デザイン・作曲賞

北米興行収入は約1億3800万ドル、全世界では4億ドルに迫る大ヒットとなった。

どこまで脚色されているかは不明だが、言語障害に近い症状を抱える国王の描写は驚きであり、怯えと怒りに終始するジョージ6世が、心の安らぎと、自信漲る表情を見せるラストは感動的だ。

そのアルバート王子から国王ジョージ6世までを演ずるコリン・ファースは、吃音と重責に苦悩する人物を迫真の演技で演じた。
それを完璧に克服しないかたちで国民に訴える、庶民を身近に感じて終わる姿がまた心を打つ。

実力派らしく出色の演技で、非常に魅力的な愛すべきキャラクターであるライオネル・ローグを演ずるジェフリー・ラッシュは、不躾ながら物事を判断する着眼点や発想の豊かさを含めて、人間味の溢れる人物を見事に演じている。

王子、後の国王を献身的に支えるエリザベス妃役のヘレナ・ボナム=カーターの、気取りのないウィットに富んだ演技も光る。

この時代の出来事としては、自分本位的に描かれているエドワード8世役のガイ・ピアース、英国王ジョージ5世役のマイケル・ガンボンメアリー王妃クレア・ブルームウィンストン・チャーチル役のティモシー・スポールローグ(G・ラッシュ)の妻ジェニファー・イーリー、首相スタンリー・ボールドウィンアンソニー・アンドリュースカンタベリー大主教デレク・ジャコビウォリス・シンプソン夫人役のイヴ・ベスト、首相ネヴィル・チェンバレンのロジャー・パロットなどが共演している。


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