1933年に発表された、S・S・ヴァン・ダインの小説”The Kennel Murder Case”を基に製作された作品。 謎の殺人事件を解決しようとする名探偵”ファイロ・ヴァンス”の活躍を描く、監督マイケル・カーティス、主演ウィリアム・パウエル、メアリー・アスター、ユージン・パレット、ラルフ・モーガン、ロバート・マクウェイド、ロバート・バラット他共演のミステリー。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マイケル・カーティス
製作:ロバート・プレスネル
原作:S・S・ヴァン・ダイン”The Kennel Murder Case”
脚本:ロバート・プレスネル
脚色
ロバート・N・リー
ピーター・ミルン
撮影:ウィリアム・リーズ
編集:ハロルド・マクレルノン
音楽:バーンハード・コーン
出演
ファイロ・ヴァンス:ウィリアム・パウエル
ヒルダ・レイク:メアリー・アスター
ヒース巡査部長:ユージン・パレット
レイモンド・リード:ラルフ・モーガン
マーカム地方検事:ロバート・マクウェイド
アーチャー・コー:ロバート・バラット
ブリスベン・コー:フランク・コンロイ
ドレマス医師:エティエンヌ・ジラルド
トーマス・マクドナルド卿:ポール・キャヴァナー
リャン:ジェームズ・リー
ギャンブル:アーサー・ホール
ドリス・デラフィールド:ヘレン・ヴィンソン
エドゥアルド・グラッシ:ジャック・ラ・ルー
サンディ:ハリー・アレン
メリッシュ巡査部長:ウェイド・ボトラー
スニトキン巡査部長:スペンサー・チャーターズ
記者:ジョージ・チャンドラー
警察の受付係:レオ・ホワイト
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1933年製作 73分
公開
北米:1933年10月28日
日本:1934年5月
製作費 $272,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロングアイランド。
ケンネルクラブのドッグショーで、名探偵ファイロ・ヴァンス(ウィリアム・パウエル)の愛犬キャプテンは、決勝戦に進出できなかった。
同じ競技者のアーチャー・コー(ロバート・バラット)は、ヴァンスに勝つことができなかったために悔しい思いをする。
おじのアーチャーに財産を管理されているヒルダ・レイク(メアリー・アスター)は、それを不満に思っていた。
ヒルダの恋人であるイギリス人貴族トーマス・マクドナルド卿(ポール・キャヴァナー)は、アーチャーの仕打ちに耐えられないと言うヒルダを慰める。
アーチャーの秘書レイモンド・リード(ラルフ・モーガン)と話していたブリスベン(フランク・コンロイ)は、執事のギャンブル(アーサー・ホール)から、兄のアーチャーが呼んでいると言われるものの、それを無視して屋敷を去る。
レイモンドはヒルダに惹かれていたが、その件をアーチャーに話しても相手にされなかった。 その後トーマス卿は、愛犬ギリーが姿を消したことをサンディ(ハリー・アレン)から知らされ、鍵が壊されていなかったために不思議に思う。 ギリーが死んで発見されたことを知ったトーマス卿は、ヒルダと共に悲しむ。 アーチャーを疑ったトーマス卿は、彼の屋敷に電話をかけ、留守だと言うギャンブルに彼を捜させる。 隣のアパートに住む恋人ドリス・デラフィールド(ヘレン・ヴィンソン)の浮気を疑ったアーチャーは、彼女と別れようとする。 アーチャーは、美術館に中国の骨董品を売る契約をしたエドゥアルド・グラッシ(ジャック・ラ・ルー)に、契約はキャンセルだと伝える。 戸惑うエドゥアルドにアーチャーは、代わりにドリスを渡すと伝えてその場を去る。 コックのリャン(ジェームズ・リー)は、アーチャーが骨董品を手に入れるために同胞を裏切ることまでしていたのだが、それを売ろうとしていることを知り、考え直すよう彼に意見する。 翌朝、アーチャーに朝食を運んだギャンブルは、返事がないために鍵穴から中を覗く。 驚いたギャンブルは、アーチャーが自殺しているようだとレイモンドに伝える。 警察はギャンブルからの通報を受け、ヒース巡査部長(ユージン・パレット)が現場に向かい、その場にいた記者(ジョージ・チャンドラー)も取材を始める。 船旅でヨーロッパに出発する予定だったヴァンスは、アーチャーの事件を伝えるニュースを聴き、友人であるマーカム地方検事(ロバート・マクウェイド)に電話して、アーチャーが銃を手にして頭部を撃ち自殺したことを知る。 アーチャーをよく知るヴァンスは、彼が自殺するとは考えられなかった。 下船したヴァンスは、マーカムと共にコー邸に向かう車内で、ドッグショーでトーマス卿に勝つと息巻いていたアーチャーが自殺するはずがないと伝える。 トーマス卿の愛犬も殺されたために、ヴァンスはその関連性について考える。 コー邸に着いたヴァンスとマーカムはヒースに迎られて、ギャンブルを紹介されて話を聞き、彼が3か月前から屋敷で働いていることを知り、2階の部屋に向かう。 ヒースらがドアを壊して開けて、ヴァンスは部屋を調べ始める。 自殺と疑わないヒースは、ギャンブルに銃のことを訊き、アーチャーのものであり、いつもは1階にあったことを確認する。 ヴァンスは、外からの侵入が不可能な窓に鍵がかかっていたことと、アーチャーのパジャマ姿に疑問を抱き、片足だけ靴を履いていたのは、脱ぐ間に襲われたと推理する。 ヒースは、死人がドアの鍵をかけたことになるとヴァンスに伝える。 尋ねて来たヒルダは、レイモンドからアーチャーが自殺したことを知らされて2階に向かう。 動揺しないヒルダは、ヴァンスから犯人の心当たりを訊かれ、自分にも動機があると答えて、財産の管理をしていたアーチャーが、自分に近づく男性を妬んでいたことを話す。 手錠を手にしたヒースを制止したマーカムは、犯行の自白になるとヒルダに伝える。 ヴァンスから、中から鍵がかけられていたことを知らされたヒルダは、それならば自殺だと言って納得する。 動機のある者の心当たりを訊かれたヒルダは、アーチャーに関係した者はすべてで、骨董品の収集をする必要がなくなるコックも喜ぶとヴァンスに伝える。 アーチャーと仲が悪いブリスベンにも動機はあり、レイモンドは、昨日、午後5時の列車で彼がシカゴに向かったことをヒースに伝える。 ヒースは部下に電話をして、ブリスベンが列車に乗ったことを調べさせて、それを確認する。 ヒルダの力になろうとするレイモンドは愛を告げるものの、彼女から、トーマス卿と結婚すると言われてショックを受ける。 ヒルダは、現れたトーマス卿が事件に巻き込まれることを恐れ、去るよう説得する。 そこに現れたヴァンスは、この場でアーチャーに会っていれば、愛犬のことで彼を殺しただろうと言うトーマス卿の話を聞く。 ドレマス医師(エティエンヌ・ジラルド)が到着し、密室で起きた事件なので自殺と決めつけるものの、ヴァンスに意見されたために遺体を詳しく調べる。 疑問点が見つかったドレマスは、アーチャーが頭部を殴られていることと口の中の出血を確認し、弾痕から出血していないために、被害者は銃撃される前に死んでいたと皆に伝える。 死亡推定時刻は8~12時間前で、殴打が死の原因でないだろうということも分かる。 ドレマスは、左肩甲骨の下の刺し傷を見つけて、それを死因だと断定する。 クローゼットからコートを取り出したヴァンスは、パジャマに穴がないのにコートには穴があることをに気づき、外出着姿で襲われたと考える。 解剖のために遺体を安置所に運ぶよう指示したドレマスは、ヒースから自殺の可能性を訊かれるが、何も答えずにその場を去る。 その後、ブリスベンが電車に乗っていなかったという連絡が入り、マーカムは、彼が屋敷を出た時間をギャンブルに尋ねる。 5時の列車に間に合う時間だと答えたギャンブルは、苛立っていた様子のブリスベンに、持ち手が象牙のステッキを渡したことをヴァンスに伝える。 ブリスベンが戻っていないことを確認したヴァンスは、玄関の象牙のステッキを手にして、その件をギャンブルを追及する。 ヴァンスは、ブリスベンは屋敷に戻り、彼の荷物は駅の荷物預り所にあるはずだと考え、警官に確認しに行かせる。 預り所にあったブリスベンの荷物は屋敷に運ばれ、4時45分に預けられたことが分かり、ヴァンスは、バッグの中の”未解決殺人”という本に注目する。 ヴァンスは、アーチャーが夜は1人になることを知っていたブリスベンが、列車に荷物を預けて屋敷に戻り兄を殺し、アリバイ作りに次の列車に乗るはずが、何かが起きたと考える。 アーチャーにも何かが起きたと考えるヴァンスは、ブリスベンのコートの置き場所であるクローゼットをギャンブルに教えてもらう。 そこにブリスベンの死体が隠されていたため、事態は急変する。 昼食中にコー邸に呼び出されたドレマス医師は、ブリスベンの死体を調べて、アーチャーの死後に鋭利な細い刃物で刺殺されていることをヴァンスらに伝える。 針と糸を見つけたヴァンスは、ブリスベンがそれを使ってアーチャーの部屋の鍵を閉めたと考える。 そこにリャンが掃除をするフリをして現れ、何かをチェストにしまい出て行き、隠れていたヴァンスはその中を確認する。 車で待っていたヴァンスの愛犬キャプテンは、屋敷に向かう。 ヴァンスは、ブリスベンが糸と針を使いドアに鍵をかけた方法を、ヒースとマーカムに実演してみせる。 アーチャー殺しを計画したのは2人であり、1人はブリスベンだと言うヴァンスは、アーチャーが鈍器で頭を殴られたことを思い出しながら、チェストの中から乾いた血痕が付着する火かき棒を取り出す。 何かの毛も付いていることに気づいたヴァンスは、それは書斎の火かき棒だとヒースとマーカムに伝える。 その時、屋敷内にいたキャプテンが何かに反応していることに気づいたヴァンスは、その場で傷ついたドーベルマンを見つける。 ギャンブルからドリスの犬だということを知らされたヴァンスは、隣りのアパートに住む彼女に会いに行く。 ドリスは、いなくなった愛犬のフィガロがアーチャーの家で殴られていたことを知り驚く。 コー兄弟も殺されたことをヒースから知らされたドリスは、かかってきた電話にでようとする。 代わって電話に出たヒースは、ドリスがエドゥアルドと船旅の予約をしていたことを知りキャンセルする。 エドゥアルドにも会ったヴァンスは、アーチャーは自殺ではなく殺人だと伝えて、マーカムは、彼に指紋の照合の協力を求める。 その後、エドゥアルドをはじめ、今回の関係者は指紋を採取され、部屋のドアノブから不鮮明なものとリャンの指紋が発見される。 書斎を調べたヴァンスは、ゴミ箱からヒルダの口紅を、その他には凶器の短刀のさや、さらには定窯の花瓶の破片を見つけて血痕を確認する。 ヴァンスはアーチャーがこの部屋で殺されたと考え、レイモンドに花瓶のことを尋ね、昨日の6時半から7時の間は確実にこの場にあったことを確認する。 秘書を辞めることについてアーチャーと話したレイモンドは、ヒルダとの結婚の許可を求めたが、出て行けと言われたとヴァンスとマーカムに伝える。 レイモンドは、夜中に1階の物音に気づき、下を見ると、普段は静かに戻るリャンが音を立てたことを話し、ヴァンスに協力を感謝される。 キッチンを調べたヴァンスは、リャンの部屋に向かい、彼が、書斎のゴミ箱にあった壊れた花瓶を直していることに気づく。 花瓶の中の血痕を確認したヴァンスは、短刀を隠すために入れた際に割れたのだろうと考える。 ヴァンスは、昨夜ではなく今朝、花瓶を見つけたと言うリャンに、アーチャーの部屋のチェストに隠した火かき棒のことを尋ねる。 その様子をドアの陰で見ていたと言われたリャンは、昨夜8時ころ部屋に戻ると、書斎から怒鳴り声と誰かが倒れる音がしたことを話す。 リャンは、書斎に向かうと家具が乱れて火かき棒があり、花瓶が割れていたためにアーチャーの部屋に行ったことを話す。 アーチャーが死んでいることを知り、疑われると思い、花瓶の破片を集めて火かき棒を持ち部屋に戻ったことを、リャンはヴァンスらに伝える。 ヴァンスは、一旦、外出したリャンが、アリバイ作りのために夜中に戻り、わざと音を立てたという行動を確認するが、短刀のことは知らなかった。 そこに、花瓶の指紋がエドゥアルドのものだという報告が入る。 採取された足跡もエドゥアルドの靴と一致し、ヴァンスは、アーチャーのポケットにあった、骨董品を購入するつもりだと彼に伝える電報を見せる。 アーチャーの骨董品を美術館に売ろうとした取引を認めたエドゥアルドは、自分とドリスの関係を知った彼から契約を白紙にされたことを話す。 契約の件でアーチャーと揉めたエドゥアルドの立場は悪くなり、彼は火かき棒で殴ったことを否定するものの、警察に連行される。 ヴァンスは、エドゥアルドを犯人と決めつけるのは早いと考えながら、マーカムと共に、ドリスのアパートの地下から外に出てコー邸に向かい、ギャンブルと話をする。 前科を調べられたギャンブルは、5年前に足を洗ったことをヴァンスとマーカムに伝える。 裏から侵入したドリスと話したヴァンスとマーカムは、彼女が、いつも密かに屋敷に来ていたことを知る。 監視されることに我慢できないと言うドリスは、自分が犯人だとヴァンスに伝える。 フィガロは自分を追って来て守ってくれたと言うドリスは、ヴァンスから口紅(ヒルダのもの)を見せられて自分のものと認める。 ドリスはアーチャーと争って落としたとヴァンスに伝えて、弁護士を呼ぼうとする。 その時、別の部屋から叫び声が聴こえ、椅子で窓が割られる。 階段から落下したトーマス卿は刺された傷があり、致命傷ではなく、呼ばれたドレマス医師の治療を受ける。 ベッドの下から短剣が見つかり、ヴァンスは例のさやにピッタリ合うことを確認するが、指紋採取は不可能だった。 駆け付けたヒルダは、巻き込んでしまったことをトーマス卿に謝罪し、明日、出発することで意見が一致し、ヴァンスとマーカムはその話を聞いてしまう。 暗闇で何も見えなかったと言うトーマス卿が自分で刺した可能性もあり、彼に質問したヴァンスは、兄弟を殺した犯人が、この部屋から現場に向かったと考える。 その後、事件の謎を解いたヴァンスは、模型を使ってヒースとマーカムに説明を始める。 アパートのトーマス卿の部屋は、コー邸のアーチャーの部屋の真向いで、トーマス卿の部屋の真下がドリスの部屋だった。 中庭を通って、アパートからコー邸の裏口には簡単に行けた。 事件当日の午後7時から8時に、アーチャーは書斎にいた。 使用人が休息時間だと知る犯人は裏口を閉めるのを忘れ、ドリスのドーベルマン、フィガロが入ってきたしまう。 犯人は書斎に向かい、火かき棒でアーチャーを殴る。 アーチャーは、倒れながら机の引き出しの銃を探り、犯人は彼の背中を短剣で刺す。 フィガロが近づいたために犯人は火かき棒で殴り傷つけ、棒を隠そうとして誤って花瓶を割ってしまい、短剣を持って侵入した場所に戻る。 意識を取り戻したアーチャーは、朦朧としながらも2階の部屋に向かい、コートとベストをクローゼットにしまい、パジャマに着替える。 部屋に戻った犯人は、窓を開けたアーチャーを目撃して驚く。 アーチャーは、椅子に座って靴を脱ぎ始めて息絶える。 その後、アーチャーを殺すためにブリスベンが屋敷に戻り、書斎の兄の銃を手にし、玄関にステッキを置き2階に向かう。 アーチャーが椅子で眠っていると思ったブリスベンは、彼を銃撃する。 犯人は、アーチャーに止めを刺すために再びコー邸に侵入し、ブリスベンは窓を閉めて、自殺に見せかけるために兄の手に銃を握らせた。 針と糸を使ったブリスベンは外からドアの鍵をかけて、階段を下りるものの犯人に刺殺される。 そして犯人はブリスベンをクローゼットに隠したという推理を、ヴァンスはヒースとマーカムに話す。 翌朝、犯人は間違いに気づいたと話すヴァンスだったが、容疑者の中の誰なのかは特定できないと伝える。 ヴァンスは、容疑者全員を解放すようマーカムに指示し、ヒースはそれに従う。 ある考えが浮かんだヴァンスは、トーマス卿とレイモンドが、ヒルダの件で言い争いをするよう仕向ける。 トーマス卿に殴られたレイモンドは火かき棒を手にし、連れて来られていたフィガロは、事件の夜、自分を殴った彼に襲いかかりる。 フィガロを引き離したヴァンスは、ヒルダと結婚したいとアーチャーに伝えたレイモンドが彼に殴られたため、火かき棒で殴ったという犯行を確認する。 後は覚えていないと言うレイモンドは、ブリスベンの殺害は予定外で、トーマス卿は今でも殺したいとヴァンスに伝える。 火かき棒を手にしたことが失敗だとレイモンドに伝えたヴァンスは、後をヒースに任せる。 ヒルダとトーマス卿、そしてフィガロにも感謝したヴァンスは、自分の活躍記事に必ず名前を載せる言うヒースと握手する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストーリー)
ロングアイランド。
ヨーロッパの船旅に出発しようとしていた名探偵ファイロ・ヴァンスは、ドッグショーの宿敵であるアーチャー・コーが自殺したことを知り、友人の地方検事マーカムと共にコー邸に向かう。
事件を担当するヒース巡査部長は、状況証拠から自殺以外に考えられなかった。
現場を調べたヴァンスは、アーチャーの関係者のほとんどが彼に恨みをもっていることを知り、その中で犯人を特定しようとするのだが・・・。
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S・S・ヴァン・ダインの小説を原作に、他の作品にも登場する名探偵”ファイロ・ヴァンス”が、謎の殺人事件を解決するまでを描くミステリー。
出身のオーストリア=ハンガリー帝国他ヨーロッパ時代から活躍し、アメリカに渡ってキャリアを重ねていたマイケル・カーティスが監督した作品。
多くの関係者に恨まれながら殺された、被害者の死の真実を探る名探偵”ファイロ・ヴァンス”の見事な推理が展開する内容はスリリングであり、沈着冷静な主人公が、周囲の混乱に惑わされずに、状況証拠や供述を元に事件を解決する姿が見事に描かれている。
複雑怪奇な恐ろしい殺人事件が描かれた作品なのだが、アクセントとして常にユーモアが挿入され、観る者を飽きさせない演出も素晴らしい。
主演のウィリアム・パウエルは、優雅な雰囲気を漂わせる紳士として、鋭い観察力で推理を組み立てる名探偵ファイロ・ヴァンスを好演している。
被害者であるおじに財産を管理され、プライベートにも口出しされているために彼を嫌うメアリー・アスター、主人公と共に事件を捜査するヒース巡査部長を愉快に演ずるユージン・パレット、被害者を恨む秘書のラルフ・モーガン、主人公の友人でもある地方検事のロバート・マクウェイド、被害者である富豪のロバート・バラット、彼を憎む弟で共に殺されるフランク・コンロイ、遺体を調べる医師のエティエンヌ・ジラルド、ヒルダ(メアリー・アスター)を愛するイギリス人貴族ポール・キャヴァナー、被害者の屋敷のコックで、骨董品収集に協力した中国人ジェームズ・リー、被害者の屋敷の執事アーサー・ホール、被害者の隣りのアパートに住む恋人ヘレン・ヴィンソン、彼女と愛し合うジャック・ラ・ルー、犬の訓練士ハリー・アレン、巡査部長のウェイド・ボトラーとスペンサー・チャーターズ、記者のジョージ・チャンドラー、警察署の受付係レオ・ホワイトなどが共演している。