チャールズ・ボーモントの小説を基に、彼自身が脚色して製作された作品。 社会変革のために南部の町に派遣された青年が白人を扇動し人種統合政策を撤廃させようとする行動を描く、製作、監督ロジャー・コーマン、ウィリアム・シャトナー主演の社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロジャー・コーマン
製作総指揮:ジーン・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
原作:チャールズ・ボーモント
脚本:チャールズ・ボーモント
撮影:テイラー・バイアーズ
編集:ロナルド・シンクレア
音楽:ハーマン・スタイン
出演
アダム・クレイマー:ウィリアム・シャトナー
トム・マクダニエル:フランク・マックスウェル
エラ・マクダニエル:ビヴァリー・ランスフォード
ルース・マクダニエル:キャサリン・スミス
ヴァーン・シップマン:ロバート・エムハート
サム・グリフィン:レオ・ゴードン
ヴァイ・グリフィン:ジーン・クーパー
ジョーイ・グリーン:チャールズ・バーンズ
パットン校長:チャールズ・ボーモント
アメリカ 映画
配給 Pathé-America Distrib.Co.
1962年製作 83分
公開
北米:1962年5月14日
日本:未公開
製作費 $90,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
アメリカ南部、カクストン。
福祉係だというアダム・クレイマー(ウィリアム・シャトナー)は、2~3週間の予定でホテルの部屋をとる。
人種統合政策の件で訪れたというクレイマーは、部屋に案内された後で、銃のチェックをする。
町では、週明けから、高校に黒人生徒が10人通学を許可されることになっていた。
そのため、人々はそれを不満に思いつつも、法律には従うほかなかった。
町に出てカフェに立ち寄ったクレイマーは、バイトをしている高校生のエラ・マクダニエル(ビヴァリー・ランスフォード)に、微笑みながら声をかける。
クレイマーに惹かれたエラは、迎えに来た、地元新聞社の記者である父のトム(フランク・マックスウェル)と共に帰宅する。 トムの妻ルース(キャサリン・スミス)は、娘と黒人が一緒に学ぶことをどう思うかという、不審な電話があったことを夫に伝える。 ルースが、良く思わないと答えたと知ったトムは、相手の男が、”アダム・クレイマー”と名乗ったということを確認する。 人種統合政策に反対する父が不満をぶつけるため、トムは苛立ち、決まった法律に従うべきだと言って席を外す。 翌日クレイマーは、隣部屋のセールスマン、サム・グリフィン(レオ・ゴードン)と妻ヴァイ(ジーン・クーパー)と共に、食事をすることになる。 レストランの席に着いた三人だったが、社会変革の仕事をしているとクレイマーから聞いたヴァイは、ホテルに戻ってしまう。 その後、クレイマーは黒人街を見てから、町の実力者であるヴァーン・シップマン(ロバート・エムハート)の屋敷に向かう。 クレイマーは丁寧に挨拶して、シップマンが人種統合に反対だということを確認する。 シップマンは、政策を阻止できると言って自信を見せる、力説するクレイマーの話に聞き入る。 翌日から、白人の高校に通う予定のジョーイ・グリーン(チャールズ・バーンズ)は、それを弟にからかわれる。 その夜、シップマンに車を借りたクレイマーは、エラを誘い夜を過ごす。 翌朝、牧師に勇気づけらた10人の黒人学生が、白人達に”侵入者”などと言われながら高校に向かう。 白人の不満や怒りが高まったことを確認したクレイマーは、集会を開き、人々を扇動する演説を始める。 クレイマーは、ユダヤ人と左翼に支配されている、政府の政策を痛烈に批判し戦い抜くことを誓う。 演説を聞いていたトムは、その根拠と、なぜそれに従うかをクレイマーに問う。 クレイマーは、愛するアメリカに命を捧げてもいいと言い切り、人々の心を捉え、シップマンと共にその場を去る。 興奮する白人達は、ある黒人の家族の車を取り囲み脅すが、トムがそれを制止し、現れた保安官がその場を鎮める。 翌日、シップマンと共にトムの新聞社に現れたクレイマーは、広告掲載を依頼するが断られる。 クレイマーは穏やかに引き下がり、トムは、法律を犯そうとする彼を非難する。 しかし、社の株主であるシップマンは、トムにクレイマーの考えの正当性を伝え、圧力をかけようとする。 その夜、KKKの集団を引き連れたクレイマーは、黒人居住区に向かい、十字架に火を点けて威嚇する。 サムが仕事で留守だったため、クレイマーはヴァイに言い寄り、彼女を強引に口説き愛し合う。 トムは、人種統合が、間違った法律だと考える妻ルースに意見し、迷っていた自分が、クレイマーの出現で、それが正しいことであることを確信したと伝える。 その後、黒人教会にダイナマイトが投げ込まれ、傷を負った牧師は、駆けつけたジョーイの腕の中で息を引き取る。 白人を扇動したことでクレイマーは拘留されるが、人々は彼を支援する。 ホテルに戻ったクレイマーは、部屋にいたサムから、ヴァイがいなくなったことを知らされる。 かつて、男遊びの激しかったヴァイのことを話したサムは、出て行ったのがクレイマーのせいだと言って、彼に銃を向ける。 ヴァイとのことを正直に話したクレイマーだったが、彼女から誘われたと言い切り、お陰で愛が深まったというサムは銃を置く。 クレイマーの本性を見抜くサムは、自分の策に溺れるだけの臆病者であった彼の弱点を指摘し、監視を続けると言って部屋を出る。 翌朝、ジョーイの家に向かったトムは、彼の両親を説得し、本人の意思に従い高校に登校させる。 ジョーイらと共に高校に向かうトムを、白人達は軽蔑の眼差しで見つめる。 その後トムは、白人達に囲まれて、彼のとった行動を責められ集団暴行を受ける。 重傷を負い右目を失ったトムを前に、エラは泣き崩れるが、妻ルースは、人種統合には反対だが、夫のとった行動を理解し誇りに思うことを伝える。 動揺するエラの前に現れたクレイマーは、トムが更に痛めつけられると警告し、それを阻止できる方法を教える。 学校でジョーイに話しかけたエラは、彼に手を貸してほしいことを伝えて倉庫に誘い、暴行を受けたと見せかける。 それを聞いたクレイマーは、白人達を再び先導して行動を開始し、人を集める。 パットン校長(チャールズ・ボーモント)に話を聞かれたエラは動揺し、それ以上何も話をしないために、帰宅するよう指示される。 担任は、真面目な生徒のジョーイがした行為には思えず、エラが嘘をついていると主張する。 シップマンと白人達を伴い、高校に現れたクレイマーは、暴行犯のジョーイを引き渡すよう校長に迫る。 連絡した保安官が現れないことを悟ったジョーイは、自ら白人達の元に向かう。 シップマンは、傲慢な態度で、ジョーイの罪を認めさせようとして彼を何度も殴る。 さすがのクレイマーも、シップマンの行為に顔をしかめ、見かねた校長が現れる。 ジョーイを信じる校長は、シップマンを痛烈に非難して、校内にジョーイを連れ戻そうとする。 二人は引き止められ、犯行を認めないジョーイは連れて行かれ、白人達の笑い者にされる。 そこに、エラを伴ったサムが現れ、彼女に全てが嘘だったことを告白させ、クレイマーが仕組んだということを伝える。 シップマンは納得し、サムは、ジョーイの縄を解き、動揺するクレイマーに、人々を統率する能力のいないことを思い知らせる。 開き直ったクレイマーは、尚も自分の正当性を叫び続けるものの、誰も耳を貸さずにその場を去る。 シップマンは、クレイマーを見限って殴り倒し、その場を立ち去る。 サムは、クレイマーに町を出て行くよう告げる。 そしてクレイマーは、誰もいなくなった公園で一人たたずむ。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
アメリカ南部、カクストン。
町に現れた、人当たりのいい好青年アダム・クレイマーは、法律で決まった人種統合政策を撤廃させようとして行動を開始する。
町の有力者シップマンを説得したクレイマーは、10人の黒人高校生が、白人の高校に通うことを利用し、白人達の反感を目覚めさせ、扇動して彼らの心を捉える。
地元新聞社の記者トムは、人種統合を認めるべきか迷っていたが、クレイマーの出現により、その法律が正しいことを確信する。
しかし、KKKとも手を組んだ、クレイマーの過激な行動は次第にエスカレートしていき、遂に、黒人の犠牲者を出す・・・。
__________
低予算映画製作で知られるロジャー・コーマンが、人種差別問題を、真正面から力強くリアルに描いた異色作。
この時代に南部でロケしたロジャー・コーマンは、殺害を予告する脅迫を何度も受けながら、撮影を終えたらしい。
本作は、評価は高かったものの、必ず利益を上げていたロジャー・コーマンが、初めて興行的に失敗した作品でもある。
内容が、一点に集中し過ぎていたことが原因で、娯楽性に欠けた点を配慮し、ロジャー・コーマンは、それ以後の教訓にしたという意味で、非常に重要な作品と考えているようだ。
当時の社会情勢を見事に映した、鮮烈なタッチで描かれた、ロジャー・コーマン作品の中でも屈指の傑作と考える批評家も多い。
テレビなどでキャリアはあったものの、若々しさも新鮮である、悪魔のような扇動家を怪演するウィリアム・シャトナー、正義感ある記者を演ずるフランク・マックスウェル、その娘ビヴァリー・ランスフォード、その母キャサリン・スミス、町の実力者ロバート・エムハート、唯のセールスマン風で登場するものの、人生経験の豊富さで、主人公の弱点を見抜く、好演するレオ・ゴードン、その妻ジーン・クーパー、黒人少年チャールズ・バーンズ、校長を演ずる、原作と脚本も担当したチャールズ・ボーモント等が共演している。