恋人のために仲間を敵に密告した男の凋落を描く、製作、監督ジョン・フォード、主演ヴィクター・マクラグレン、ヘザー・エンジェル、プレストン・フォスター、マーゴット・グラハム、ウォーレス・フォード他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作:ジョン・フォード
原作:リーアム・オフラハティ”The Informer”
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:ジョセフ・H・オーガスト
編集:ジョージ・ヒヴリー
音楽:マックス・スタイナー
出演
”ジポ”ノーラン:ヴィクター・マクラグレン
メアリー・マクフィリップ:ヘザー・エンジェル
ダン・ギャラガー:プレストン・フォスター
ケイティ・マッデン:マーゴット・グラハム
フランキー・マクフィリップ:ウォーレス・フォード
マクフィリップ夫人:ウナ・オコナー
テリー:J・M・ケリガン
バートリー・マルホランド:ジョー・ソーヤー
トミー・コナー:ニール・フィッツジェラルド
ピーター・マリガン:ドナルド・ミーク
盲人:ダルシー・コリガン
ドナヒュー:レオ・マッケイブ
デニス・デイリー:スティーヴ・ペンドルトン
フリン判事:フランシス・フォード
マダム・ベティ:メイ・ボーリー
男:ワード・ボンド
アメリカ 映画
配給 RKO
1935年製作 91分
公開
北米:1935年5月9日
日本:1935年
製作費 $243,000
■ アカデミー賞 ■
第8回アカデミー賞
・受賞
監督
主演男優(ヴィクター・マクラグレン)
脚色・作曲賞
・ノミネート
作品・編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1922年、ダブリン。
大男で怪力の”ジポ”ノーラン(ヴィクター・マクラグレン)は、仲間を殺した警察隊”ブラック・アンド・タンズ”の隊員の殺害命令に従わなかったために、IRA/アイルランド共和軍から追放された。
親友であるフランキー・マクフィリップ(ウォーレス・フォード)の手配書を見つめるジポーは、懸賞金20ポンドの殺人犯となった彼のことを思い出す。
通りに立つジポの恋人ケイティ・マッデン(マーゴット・グラハム)は、ある紳士に近づく。
それに気づいたジポは、紳士を投げ飛ばす。
ケイティは、無一文では何もできないとジポに話しながら、旅行社の前で、アメリカ行きの渡航費用10ポンド、世界一周なら20ポンドのことを考えながら嘆く。
憤慨するジポに侮辱されたケイティは、気分を害してその場を去る。
通りに落ちていた自分の手配書に気づいたフランキーは、ブラック・アンド・タンズが近づいて来たために、銃を手にして身を隠す。 支援所のダンボーイ・ハウスに向かったフランキーは、その場で食事をしていたジポと再会する。 驚いたジポは、フランキーを見つめながら、20ポンドの懸賞金のことを考える。 ジポは、母親(ウナ・オコナー)に会ったら姿を消すと言うフランキーに、ブラック・アンド・タンズのクィンキャノンの殺害を命ぜられたものの、命乞いされたために逃がしてしまったことを話す。 リーダーのダン・ギャラガー(プレストン・フォスター)に見放されたことを話すジポは、イギリスとアイルランド双方を敵にしてしまったと言って嘆く。 そのせいで食べることもできず、仲間も寝る場所もないと話すジポは、自分が力になると言うフランキーから、母親の家が監視されているか訊かれる。 クリスマスまでは監視されていることを知ったフランキーは、ギャラガーに会い、許してくれるよう説得するとジポに約束してその場を去る。 ジポは手配書のことを考え、旅行社の前で立ち止まり、悩みながらブラック・アンド・タンズの本部に向かい、フランキーのことを密告する。 家に向かったフランキーは、驚く母と妹メアリー(ヘザー・エンジェル)に迎えられるものの、休む間もなくブラック・アンド・タンズが現れる。 銃を手にしたフランキーは、ドアを破り押し入ってきたブラック・アンド・タンズと撃ち合いになり、窓から逃げようとして射殺される。 フランキーが殺されたことを知った母親は取り乱す。 ブラック・アンド・タンズの本部にフランキーが射殺されたという連絡が入り、ジポは、イギリス人の隊員に軽蔑されながら20ポンドを受取り、裏口に案内されて立ち去る。 男(ダルシー・コリガン)に目撃されたジポは襲いかかるが、彼が盲人だと知り、何もせずに逃げ去る。 ジポは、フランキーの手配書が貼ってあった壁を見つめながらパブに向かう。 店主のライアンに金を払いウィスキーのボトルを受け取ったジポは、今後のことを考える。 そこにケイティが現れ、通りのことをジポに謝罪した彼女は、店主がテーブルに置いた釣銭を見て驚く。 金を盗んだのか訊かれたジポは苛立ち、酔っていたアメリカの水兵から奪ったとケイティに伝える。 誰にも話すなと言われたケイティは、自分は”密告”などしないとジポに伝える。 その言葉が気に障ったジポは、ケイティに言い寄るものの、ライアンに制止される。 店を出たジポは、ウイスキーを飲み干して馬車にケイティを乗せる。 そこに盲人が現れ、ジポは彼に1ポンド渡す。 怪しまれないために、フランキーの母親の家に向かおうとしたジポは、ケイティを置いていってしまう。 家に着いたジポは、IRAの仲間バートリー・マルホランド(ジョー・ソーヤー)とトミー・コナー(ニール・フィッツジェラルド)に気づきながら、フランキーの母親とメアリーのそばに座り、大声でお悔やみを言う。 バートリーは、通夜の席だと言ってジポに注意するが、フランキーの母親は、息子の友人なのでかまわないと伝える。 バートリーからフランクの冥福を祈れと言われたジポは、立ち上がた際にポケットから小銭を落としてしまい、それを拾おうとした男を制止する。 自分で小銭を拾ったジポは、家には近づくなとフランキーに警告したとバートリーとトミーに話す。 皆から、誰も疑ってはいないと言われたジポは、涙ぐみながら、よくしてくれたことを母親に感謝して、小銭を置いてその場を去る。 追ってきたトミーと話したジポは、金のことを訊かれたために彼に襲いかかるものの、バートリーに制止される。 自分を疑っていると言って興奮するジポは、2人に説得されてギャラガーの元に向かう。 ギャラガーと話をしたジポは、相棒だったフランキーのために働いてもらうと言われ、密告者を捜すための協力を求められる。 協力しない場合は自分が疑われると言われたジポは、動揺しながら、半年前に追放されてからの苦しみを話し、ギャラガーから、密告者を見つけたら復帰させることを約束してもらう。 気分を良くしたジポは酒を飲み、ギャラガーから密告者が誰か訊かれ、仕立屋のピーター・マリガン(ドナルド・ミーク)だと答える。 酔ったジポは、マリガンが裏切ったのは、フランキーへの恨みが原因だと話し始める。 マリガンの妹スージーにフランキーが手を出したというジポの話が信じられないギャラガーらは、マリガンが密告したと言い張る彼から、ブラック・アンド・タンズの本部に入るのを目撃したことを知らされる。 ギャラガーから、それが本当なら査問があるので来るようにと言われたジポは、ケイティの元に向かうがバートリーとトミーは彼を疑う。 ギャラガーは恋人のメアリーのことが心配になり、バートリーとトミーに彼女の様子を訊き、悲しい思いをしていることを知る。 トミーから会いに行くべきだと言われたギャラガーは、今は密告者を始末するのことが先決だとと伝える。 ジポは怪しいが仲間でもあると言うギャラガーは、マリガンが密告者とも思えず、今夜中に解決することをバートリーとトミーに伝えて、ジポの尾行を指示する。 酔ったジポは、言いがかりをつける男と警官を殴り倒し、それを見ていたテリー(J・M・ケリガン)は彼をおだてる。 気分を良くしたジポは、話を聞いていた人々にフィッシュ・チップをおごり2ポンド払う。 店は騒ぎになり、その様子を見ていたバートリーは、興奮しながら出てきたジポに、査問に来るようにと伝える。 それを約束したジポは、テリーと共にその場を去り、旅行社の前でケイティのことを考えながら、2人で船旅をすることを想像する。 ケイティを侮辱したテリーは追い払われそうになるが、ジポが手にする大金を見て、マダム・ベティ(メイ・ボーリー)のもぐり酒場に連れて行く。 金持ちが集う場所から追い出されそうになったジポは、その場にいた女性をケイティと間違える。 ジポから金を受け取ったマダム・ベティは態度を変えて、彼とテリーを歓迎する。 ギャラガーは、危険を承知でメアリーに会い、フランキーを守れなかったことを謝罪し、愛を確認する。 フランキーのことをメアリーに尋ねたギャラガーは、兄はジポと会い、マリガンの名前は聞いていないと言う彼女に、査問に来てほしいと伝える。 ギャラガーは、自分のことを心配してくれるメアリーを抱きしめて、その場を去る。 ジポは、マダム・ベティともめた女性が警察に行くと言うので、キップ代として5ポンド渡したため、テリーに非難される。 マダム・ベティが女性に4ポンドの貸しがあると言うので、ジポは彼女にも金を渡す。 外で話を聞いていたバートリーは、ジポがここで使った金が2,5,4ポンドで、合計が11ポンドだということを確認する。 迎えに来たバートリーらと共にその場を出て査問に向かうジポは、現れたケイティに20ポンドのことを話す。 おまえのために金を手に入れたとケイティに伝えたジポは、彼女に現金を渡し、怪しむバートリーらと共に立ち去る。 メアリーを連れて査問に向かったギャラガーは、バートリーらに連れて来られた酔っているジポを静かにさせる。 病人のマリガンを気遣うジポは、自分が密告者と告発したことを思い出し、その場に、フリン判事(フランシス・フォード)らと共に盲人がいることに気づく。 突然、態度を変えたジポは、フランキーのことを密告したのはマリガンだと言って彼を責める。 マリガンは、教会に祈りに行った以外は外出していないと訴え、ギャラガーから午後の行動を訊かれる。 マリガンの話を聞いたギャラガーは、彼がブラック・アンド・タンズの本部には行けなかったと判断する。 妹のスージーのことも訊いたギャラガーは、28年間ボストンに住んでいると言うマリガンに、誰かを恨んでいるか尋ねる。 誰にも恨みはないと言うマリガンはフランキーのことを訊かれ、冥福を祈るだけだと答え、メアリーに兄を恨んでなどいないと伝える。 マリガンが真実を話していると判断したギャラガーは、彼に謝罪して車で送らせる。 ギャラガーは、納得しないジポに、ダンボーイ・ハウスでフランキーに会った後の行動を尋ねる。 ウソだと言って否定するジポは、メアリーの話を聞き、フランキーから、ダンボーイ・ハウスで会い、家が監視されていることを確認したと聞いた言われ、マリガンのことでウソをついた理由をギャラガーに追及される。 戸惑うジポは、ギャラガーから手に入れた金の使い道を訊かれ、ライアンのパブで1ポンド、盲人は1ポンド受け取ったことを証言し、フィッシュ・チップスに2ポンド、マダム・ベティに2ポンド、見知らぬ女性に5ポンド、マダム・ベティにさらに4ポンド、そしてケイティに5ポンド、合計が20ポンドになると言われて動揺する。 混乱するジポは密告したことを認め、拘束されることになる。 真実を知ったメアリーはショックを受け、仲間同士で殺し合いをしても意味がないことをギャラガーに伝える。 組織を守るためには必要なことだとメアリーに伝えたギャラガーは、彼女を送るよう部下に指示する。 ジポを始末する者を決めるクジ引きが行われ、デニス・デイリー(スティーヴ・ペンドルトン)が彼を殺すことになる。 怪力のジポは天上を押し上げて脱出し、それに気づいたデニスは発砲し、バートリーらに知らせる。 ギャラガーは、ジポがブラック・アンド・タンズ側に逃げ込まれることを阻止するため、バートリーらに指示を出す。 路地で身を潜めるジポは、手配書が貼られていた壁を見つめながらフランキーを思い出し、ケイティの元に向かう。 ジポから渡された金のことを訊かれたケイティは、彼がフランキーを密告したことを知り愕然とする。 ジポを哀れに思うケイティは、酔って疲れている彼を休ませる。 メアリーと一緒に部屋にいたギャラガーは、訪ねて来たケイティから、自分のために罪を犯した無知なジポを見逃してほしいと言われるものの、組織がブラック・アンド・タンズに壊滅されてしまうと伝える。 メアリーと話したケイティは、あなたがギャラガーを愛しているのと同じように、自分もジポを愛していると伝える。 理解してもらえないケイティは、ジポが自分の部屋にいることを話してしまい、もう一度チャンスを与えてほしいと頼むものの、ギャラガーは、これは戦争だと言って彼女の話を聞き入れない。 目覚めたジポは何者かが来たことに気づき、押し入ってきたトニーらに襲いかかり、叩きのめしてその場から逃げる。 ジポは外に出たところでバートリーの銃弾を受け、銃声を聴いたケイティは悲鳴を上げ、メアリーに抱きしめられる。 教会に向かったジポは倒れ込むが、その場で祈りを捧げていたフランキーの母親に近づき手を握り、息子を密告したことを伝えて許しを請う。 母親はジポを許し、自分のしたことが何も分かっていなかったのだからと伝える。 立ち上がったジポは、母親が許してくれたと天のフランキーに話しかけ、力尽きて倒れ込み息を引き取る。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストーリー)
1922年、ダブリン。
大男で怪力の”ジポ”ノーランは、警察隊”ブラック・アンド・タンズ”の隊員殺害命令に従わなかったために、IRA/アイルランド共和軍のリーダーであるギャラガーに追放されてしまう。
逃亡中の親友フランキーに再会したジポは、彼に20ポンドの懸賞金が懸けられていることを知り、恋人ケイティのために、敵である警察隊”ブラック・アンド・タンズ”に彼のことを密告してしまう。
母と妹メアリーにい会いに行ったフランキーは、駆け付けた警察隊に殺されてしまい、友人の死を知ったジポは20ポンドを受け取る。
街に出たジポは、フランキーの死を悲しみながらも、手にした金を酒などに使い始める。
ギャラガーの部下バートリーらは、大金を手にしたジポを疑い行動を監視するのだが・・・。
__________
1925年に発表された、リーアム・オフラハティの小説”The Informer”を基に製作された作品。
同年リーアム・オフラハティは、イギリスの文学賞としては最も古く権威のある”ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞”を受賞した。
ジョン・フォードが製作を兼ねて監督し、脚本はダドリー・ニコルズが担当した。
IRAを追放された男が絶望的な生活の中で、親友を裏切ったために生じる悲劇を描くドラマ。
緊迫感のあるサスペンスタッチのダドリー・ニコルズの脚本、疎外された一人の男の行動を通して、当時のアイルランドの混沌とする社会情勢を見事に描く、ジョン・フォードの骨太の演出は見応えがある。
一夜の出来事の中で、主人公の揺れ動く心を表現するかのような陰影を巧みに使った映像、また、マックス・スタイナーの力強い音楽なども印象に残る。
”ジョン・フォード一家”に名を連ねる多くの役者の中で、主人公を演ずる、正に”豪傑”のイメージがあるヴィクター・マクラグレンの魅力が十分に活かされ、凋落する男を見事に演じた彼の演技は絶賛された。
第8回アカデミー賞では、ジョン・フォードが最初のアカデミー監督賞(4度受賞)を、ヴィクター・マクラグレンが主演男優賞、脚色、作曲賞を受賞した。
・ノミネート
作品・編集賞
2018年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
主人公が裏切る友人の妹ヘザー・エンジェル、その恋人でIRAのリーダー、プレストン・フォスター、主人公に頼るしか生きる道がない恋人のマーゴット・グラハム、主人公に密告される親友のウォーレス・フォード、その母親ウナ・オコナー、主人公をおだててついて行く男J・M・ケリガン、主人公を疑うIRAのジョー・ソーヤー、ニール・フィッツジェラルド、スティーヴ・ペンドルトン、主人公から密告者にされそうになる仕立屋のドナルド・ミーク、主人公から金を受け取る盲人のダルシー・コリガン、査問会の判事フランシス・フォード、主人公が連れて行かれるもぐり酒場の女主人メイ・ボーリー、他ワード・ボンドも端役で出演している。