1831年に発表された、ヴィクトル・ユーゴーの小説”ノートルダム・ド・パリ”を基に製作された作品。 ノートルダム大聖堂のせむし男と呼ばれる鐘突きとジプシーの少女の関係と彼女を取り巻く男たちの愛憎を描く、監督ウィリアム・ディターレ、主演チャールズ・ロートン、セドリック・ハードウィック、トーマス・ミッチェル、モーリーン・オハラ、エドモンド・オブライエン他共演の恋愛ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ディターレ
製作:パンドロ・S・バーマン
原作:ヴィクトル・ユーゴー”ノートルダム・ド・パリ”
脚本
ソニア・レヴィン
ブルーノ・フランク
撮影:ジョセフ・オーガスト
編集
ウィリアム・ハミルトン
ロバート・ワイズ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
カジモド:チャールズ・ロートン
ジャン・フロロ:セドリック・ハードウィック
クロパン・トルイユフー:トーマス・ミッチェル
エスメラルダ:モーリーン・オハラ
ピエール・グランゴワール:エドモンド・オブライエン
フェビュス・ド・シャトーペール大尉:アラン・マーシャル
クロード・フロロ大司教:ウォルター・ハンプデン
ルイ11世:ハリー・ダベンポート
リース夫人:キャサリン・アレクサンダー
検察官:ジョージ・ズッコ
貴族:フリッツ・ライバー
医師:エティエンヌ・ジラルド
フルール=ド=リ:ヘレン・ホイットニー
乞食の女王:ミーナ・ゴンベル
オリヴィエ:アーサー・ホール
学生:クルト・ボウワ
乞食:ジョージ・トビアス
フィリップ:ロッド・ラ・ロック
裁判所書記官:スペンサー・チャーターズ
フルールの友人:キャサリン・アダムス
フルールの友人:ダイアン・ハンター
テーラー:ジークフリート・アルノ
僧侶:ピーター・ゴドフリー
醜い男:ロンド・ハットン
ホイッパー:ポール・ニューラン
印刷工:チャールズ・ハルトン
兵士:エディ・ブラッケン
アメリカ 映画
配給 RKO Radio Pictures
1939年製作 116分
公開
北米:1939年12月29日
日本:1940年11月9日
製作費 $1,800,000
■ アカデミー賞 ■
第12回アカデミー賞
・ノミネート
音楽・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
15世紀末。
ヨーロッパは大きな変化を始め、”百年戦争”を経て平和を手にしたフランス王国の民は、ルイ11世の統治下で希望を抱くものの、迷信と偏見はしばしば人間の冒険心を押しつぶそうとた。
パリ。
国王ルイ11世(ハリー・ダベンポート)は、ノートルダム大聖堂の美しい鐘の音色を聴きながら、誰がならしているのかを印刷工(チャールズ・ハルトン)に尋ねる。
国王は、鐘突きである”せむし男”と呼ばれるカジモド(チャールズ・ロートン)だということを知る。
最高裁判長ジャン・フロロ(セドリック・ハードウィック)の依頼で査察に来た国王は、印刷工から印刷機を見せられ、それにより印刷された書物を確認する。
同行したフロロから、それが脅威だと言われた国王は、庶民が学ぶことができる新しい思想の表現方法だと判断し、革新技術の印刷を阻害してはならないと考える。
しかしフロロは、印刷機はジプシーと同じで悪疫だと意見し、国王の考えに反対する。
パリに入ることを制限されていたジプシーの少女エスメラルダ(モーリーン・オハラ)は、祭で賑わう街に侵入する。 貧しい路上詩人の青年ピエール・グランゴワール(エドモンド・オブライエン)は、悪党の巣窟”奇跡御殿”のリーダーである乞食の王クロパン・トルイユフー(トーマス・ミッチェル)に朗読を邪魔されてしまう。 その場で踊り始めたエスメラルダは注目を集め、それが気に入った国王は小銭を渡す。 物陰から自分を見つめる者が気になったエスメラルダは、それを皆に伝える。 捕らえられたのはせむし男カジモドで、その醜い顔を見て皆は驚く。 道化王として称えられたカジモドを見て憤慨したフロロは、彼の元に向かいノートルダム大聖堂に連れて行く。 捨て子だったカジモドは、フロロに拾われて聖堂に預けられたのだった。 フロロの兄である大司教のクロード(ウォルター・ハンプデン)は、無許可でパリに入ったために追われたエスメラルダを匿う。 エスメラルダがジプシーだと知った大司教は、カジモドに世話をさせようとする。 カジモドの件で大司教と話をしたフロロは、聖堂から出ないように自分で説得することを指示される。 聖母マリア像の前で祈りを捧げていたエスメラルダは、現れたフロロから、異教徒は出て行けと言われるものの、彼の心には憎しみを越えた愛があることに気づく。 マリア像に国王との謁見の機会を得たいと語りかけたエスメラルダは、その場にいた国王に気づく。 エスメラルダに近づき話を聞いた国王は、ジプシーに対する処遇改善を求められ、返事をすると彼女に伝えてその場を去る。 感激したエスメラルダは、国王とマリア像に感謝する。 その場に住むことになったエスメラルダを鐘楼に案内するフロロは、鐘突きが世話をすると伝えて階段を上がる。 カジモドを見て驚いたエスメラルダは、その場から逃げようとする。 フロロから追うよう指示されたカジモドは、街に逃げたエスメラルダを捕える。 それに気づいたピエールは騒ぎを起こし、王室射手隊の隊長フェビュス・ド・シャトーペール大尉(アラン・マーシャル)にカジモドのことを伝える。 カジモドは捕らえられ、エスメラルダは、自分を救ってくれたフェビュスに惹かれる。 ピエールは乞食たちに捕らえられ、クロパンの元に連れて行かれたエスメラルダは歓迎される。 奇跡御殿に連れて行かれたピエールは、クロパンの命令で処刑されそうになるものの、詩人であり盗みも覚えられることを彼に伝える。 鈴人形から財布を盗むよう指示されたピエールは、テストされるものの失敗する。 結婚すれば処刑されないことを知ったピエールは、エスメラルダが結婚を承諾したために解放される。 二人は部屋に案内され、エスメラルダがフェビュスに恋していることを知ったピエールは、自分との結婚は哀れみと考えて悲しむ。 エスメラルダに謝罪されたピエールは、結婚が無理なら兄妹のようンな関係になりたいと伝えるものの、彼女は姿を消してしまう。 ジプシーに逮捕命令が出た街は混乱し、フロロはジプシーの女たちが捕らえられたことを知り確認するが、エスメラルダはいなかった。 捕らえられたカジモドは判事の元に連れて行かれ、名前と来月で25歳になることを伝える。 50回の鞭打ちとさらし刑が言い渡されたカジモドは、人々の前で刑を受ける。 それを止めようとしたピエールは、クロパンから、裁判長であるフロロの権限で執行されたと言われ、彼の兄である大司教の元に向かう。 聖堂の外のことには口出しできないと言う大司教は、鞭打ちが終わりさらされるカジモドが無事であることを願うしかなかった。 フロロは、カジモドがさらし刑に処せられていることを知らされる。 苦しむカジモドは水を求め、その場に現れたフロロは彼を助けようとしなかった。 その様子を見ていたピエールは、クロパンから、貴族とはあんなものだと言われ、戻って来たエスメラルダと話をする。 国王の約束を仲間たちに伝えに行っていたと言うエスメラルダは、水を求めるカジモドを気の毒に思う。 近づくエスメラルダから水を与えられたカジモドは、意識を失ってしまう。 大司教と話したフロロは、自分が知った時にはカジモドの刑は執行されていたと伝える。 後悔するフロロを気遣う大司教は、カジモドがエスメラルダを追った理由を考える。 1時間が経過し、釈放されたカジモドは聖堂に戻り、エスメラルダが水をくれたことをフロロに伝えて礼拝堂に向かい、倒れてしまう。 それ以来、心乱れるカジモドは、定刻以外に鐘を鳴らし、エスメラルダに恋したことが原因ではないかと噂される。 ピエールと共に貴族のパーティーに招待したエスメラルダに言い寄るフロロは、一目見て心を奪われたことを彼女に伝える。 街から自分と逃げることを提案したフロロは、断れば人生は終わりだとエスメラルダに伝える。 先に芸をしていたピエールは、エスメラルダを紹介して彼女の踊りが始まる。 美しいエスメラルダに見とれるフェビュスは、彼女に近づき共に踊る。 その様子を見ていたフロロ、そしてピエールは、その場を去る。 茂みでフェビュスに迫られたエスメラルダは、誰かがいることに気づきながらも愛を語る。 その直後にフェビュスは刺殺され、短剣を手にしたエスメラルダが犯人だとされて捕らえられる。 カジモドが鐘を鳴らし、大司教はそれをやめさせることができない。 鐘を鳴らすのをやめたカジモドは、フロロが現れたことに気づく。 フロロは、ある女を愛するあまりに男を殺したことを大司教に伝え、エスメラルダは悪魔が仕向けた罠だと言って救いを求める。 殺人者は救えないと言われたフロロは、エスメラルダを死罪にする考えを伝え、納得できない大司教は兄弟の縁を切る。 そこに現れたカジモドは、フロロの様子を窺う。 捕らえられて投獄されたエスメラルダは、会いに来たピエールに、殺していないことを伝える。 必ず救い出すと言われたエスメラルダは、本物の愛ではなかったフェビュスに心を奪われていまったとピエールに伝えて謝罪する。 許してくれたピエールに、エスメラルダは感謝する。 その頃、カジモドはエスメラルダを救う方法を考える。 訴え書を書いたピエールは、印刷工の元に向かい、チラシを作り学生や乞食に協力してもらい配ろうとする。 しかし、フロロの命令により印刷機が壊されてしまう。 フロロが裁く法廷でエスメラルダの裁判は始まり、ピエールは彼女の無実を訴える。 現場にいたヤギが、魔術を使うエスメラルダの共犯者として連れて来られ、それに抗議するピエールは退廷させられる。 フロロは、罪を認めないエスメラルダを拷問することを命ずるが、そこに現れたカジモドは、彼女は無実であり自分が犯人だと告白する。 狂言だと言われたたカジモドは相手にされず、エスメラルダは拷問を受け、フロロはその様子を見つめる。 そこに国王が現れ、自白したエスメラルダに死刑が求刑される。 採決を制止した国王は、エスメラルダが拷問を受けたために自白したことを知り、無実だと言う彼女の拘束を解くよう命ずる。 神判にかけようとする国王は、エスメラルダの短剣と自分の短剣を並べて、目隠した彼女にどちらかを選ばせる。 国王の短剣を選べば無実だと言われたエスメラルダは、自分の短剣に触れてしまい、有罪が確定して、共犯者のヤギと共に絞首刑に処されることになる。 処刑が行われるノートルダム大聖堂前広場に連れて行かれたエスメラルダは、大司教に無実であることを伝えて信じてもらう。 大司教は処刑を認めないものの、エスメラルダは処刑台に連れて行かれる。 その様子を見ていたカジモドは、鐘楼から処刑台に向かい、ロープを使って彼女を助け、誰も足を踏み入れることができない”聖域”に戻る。 それをクロパンらと共に喜んだピエールは、エスメラルダに会わせてもらえず、大司教から、カジモドは害はなく、安全は保障すると言われ納得するしかなかった。 気遣ってくれるカジモドに優しく接したエスメラルダは、助けてくれた理由を尋ねる。 自分が連れ去ろうとしたにも拘らず、鞭打たれた際に水と哀れみを与えてくれたと涙しながら語るカジモドは、聖堂から離れてはいけないとエスメラルダに伝える。 聖堂の高さや鐘に名前を付けていることをエスメラルダに話したカジモドは、その鐘を鳴らして見せる。 フロロは、貴族らが国王に渡す聖域廃止の嘆願書に署名する。 エスメラルダを救うために強硬手段をとろうとするクロパンだったが、ピエールは、あくまで訴え書による説得を考える。 書面で物事は解決しないと言うクロパンは、聖堂に向かう。 貴族の聖域廃止論に対し、それを恐れる市民の抗議運動も高まる中、国王はピエールが街に撒いた訴え書を確認する。 フロロから世論は危険だと言われた国王は、現れた大司教から、民衆が奮起したことを知らされる。 それを好意的に受け止めた国王は、乞食たちが聖堂に攻め入ることを知り、死刑判決に口を出した大司教のせいだと言って彼を責める。 大司教がエスメラルダは無実だと言い張るため、国王は、彼が真犯人を知っていると考える。 問い詰められた大司教は、フロロの前で何も言えない。 自分が殺したと告白したフロロは、その場を去る。 大司教は、フロロはエスメラルダに惹かれ、死刑判決を下したのは、愛を拒まれたからだと国王に伝える。 フロロの逮捕を命じた国王は、訴え書を書いたピエールと話をする。 聖堂に向かったクロパンは、エスメラルダの解放を要求し、聖域を守りに来た者たちと対峙する。 クロパンが仲間たちを呼び寄せたことを確認したカジモドは、それをエスメラルダに知らせて、ここにいれば安全だと伝える。 カジモドは、石柱などを落下させて抵抗し、入り口を壊すよう命じたクロパンは、落下した石塊に当たり倒れる。 大釜の金属を溶かしたカジモドは、それを地上に流して興奮する。 鐘楼に現れたフロロに襲われたカジモドは抵抗し、彼を抱え上げて地上に落下させる。 演説を始めたピエールは、国王がエスメラルダを解放したことを市民に伝える。 大司教は、国王がジプシーが街に住む権利を与えたことを伝える。 瀕死のクロパンに声をかけたピエールは、武力ではない方法でエスメラルダを救うと言ったはずだと伝える。 詩人の夢かと思ったと言い残したクロパンは、息を引き取る。 エスメラルダから感謝された大司教は、救ったのはカジモドと訴え書を書いたピエールだと伝える。 エスメラルダに駆け寄るピエールは彼女を抱きしめ、その様子を見ていたカジモドは、この身が石ならよかったとつぶやく。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
15世紀末、パリ。
国王ルイ11世の統治下で国民は希望を抱くものの、迷信や偏見が蔓延していた。
無許可で街に入ったジプシーの少女エスメラルダは、醜いせむし男カジモドの存在を知り、ノートルダム大聖堂に逃げ込む。
最高裁判長フロロは、捨て子だったカジモドを兄であるの聖堂の大司教クロードに預け、鐘楼で鐘突きをさせていた。
フロロは、そんなカジモドにエスメラルダの世話をさせるのだが・・・。
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ヴィクトル・ユーゴーの小説”ノートルダム・ド・パリ”を基に製作された、ロン・チェイニー主演、1923年公開の”ノートルダムの傴僂男”のリメイク。
ポール・ムニ主演の三作に続き発表したウィリアム・ディターレの作品であり、ロバート・ワイズが編集を担当した。
中世のパリを舞台に、迷信や偏見が蔓延する中で、文化や技術、それに伴う冒険心を押しつぶそうとする世の中の世情などが興味深く描かれている。
特殊効果を使った、ノートルダム大聖堂や周辺、街並みのセット、主演のチャールズ・ロートンが演ずる主人公”カジモド”の醜いメイクなども、見事な仕上がりを見せている。
第12回アカデミー賞では、音楽、録音賞にノミネートされた。
主演のチャールズ・ロートンは、前半は殆どセリフもなく、見かけにしては地味な存在として描かれているものの、中盤のジプシー少女との親交を深めるあたりから、哀愁を漂わせつつも力感溢れる演技で主人公を熱演している。
ヒロインを演ずるモーリーン・オハラの存在は注目であり、撮影当時18-19歳の彼女の”異次元”の美しさは本作で最も印象に残る。
そのヒロインに恋してしまった最高裁判長フロロのセドリック・ハードウィック、乞食の王クロパンを豪快に演ずるトーマス・ミッチェル、ヒロインに惹かれる路上詩人の青年ピエール・グランゴワール役を、デビュー作と思えない演技で好演するエドモンド・オブライエン、同じくヒロインに惹かれる王室射手隊の隊長フェビュス・ド・シャトーペール大尉のアラン・マーシャル、主人公を聖堂で育て世話をするクロード・フロロ大司教のウォルター・ハンプデン、思慮深く達観的なものの考えをする国王ルイ11世のハリー・ダベンポート、検察官のジョージ・ズッコ、貴族のフリッツ・ライバー、医師のエティエンヌ・ジラルド、フェビュスの婚約者フルール=ド=リのヘレン・ホイットニー、その母親キャサリン・アレクサンダー、乞食の女王のミーナ・ゴンベル、国王補佐オリヴィエのアーサー・ホール、学生のクルト・ボウワ、乞食のジョージ・トビアス、裁判所書記官のスペンサー・チャーターズ、フルールの友人キャサリン・アダムスとダイアン・ハンター、僧侶のピーター・ゴドフリー、醜い男のロンド・ハットン、印刷工のチャールズ・ハルトン他、ポール・ニューラン、ロッド・ラ・ロック、ジークフリート・アルノなどが共演し、そして、デビュー間もないエディ・ブラッケンが兵士役で端役出演している。