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独裁者 The Great Dictator (1940)

当時、世界の脅威となっていたナチスアドルフ・ヒトラーをパロディとして痛烈に批判した、喜劇王チャールズ・チャップリンが製作、監督、脚本による社会性のあるコメディ・ドラマの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(コメディ)


スタッフ キャスト ■
監督:チャールズ・チャップリン

製作:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
撮影
カール・ストラス

ローランド・トセロー
編集:ウィラード・ニコ
音楽:メレディス・ウィルソン

出演
アデノイド・ヒンケル/オムラー(ユダヤ人の理髪師):チャールズ・チャップリン

ハンナ:ポーレット・ゴダード
ベンツィーニ・ナパロニ:ジャック・オーキー
シュルツ中佐:レジナルド・ガーディナー
ガービッチ内相兼宣伝相:ヘンリー・ダニエル
ヘリング元帥/戦争相:ビリー・ギルバート
ジェケル:モーリス・モスコヴィッチ
ジェケル夫人:エマ・ダン

バクテリア大使:カーター・デ・ヘイヴン
理髪店の客:チェスター・コンクリン
ヒンケルの理髪師:レオ・ホワイト

突撃隊員:ハンク・マン

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1940年製作 124分
公開
北米:1940年10月15日
日本:1960年10月22日
製作費 $2,000,000
北米興行収入 $2,000,000


アカデミー賞 ■
第13回アカデミー賞

・ノミネート
作品
主演男優(チャールズ・チャップリン
助演男優(ジャック・オーキー
脚本・作曲賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1918年、第一次世界大戦末期。
ユダヤ人の理髪師である、トメニア軍砲兵部隊の兵卒オムラー(チャールズ・チャップリン)は、戦地で奮闘していた。

敵が前線を突破したとの連絡を受け、オムラーらは突撃を開始するが、彼は部隊とはぐれてしまう。

空軍将校シュルツ(レジナルド・ガーディナー)と出くわしたオムラーは、負傷した彼を戦闘機に乗せて敵の襲撃を逃れる。

将軍に届ける書類を、オムラーに預けたシュルツは気を失いかけ、機体は逆さまになり、燃料も亡くなってしまう。

機体は自陣に墜落し、二人は無事ではあったが、勝利のために書類を将軍に届けようとするシュルツは敗戦を知らされ、オムラーは負傷して病院に運ばれる。

20年後。
その後、世界情勢は激変し、トメニアは、独裁者アデノイド・ヒンケル(チャールズ・チャップリン)が政権を掌握する。
...全てを見る(結末あり)

オムラーは記憶を失い、長年の闘病生活で、ヒンケルの抑圧政治などを知らなかった。

アーリア人優位を唱える、ファシスト政党”ダブル・クロス”は、独裁者ヒンケルの下、戦争相のヘリング元帥(ビリー・ギルバート)と、内務相兼宣伝相のガービッチ(ヘンリー・ダニエル)を側近に従え、国民の熱狂的な支持を得る。

演説を終えたヒンケルは、国民の不満をユダヤ人に向けるよう、さらに過激な発言をすることをガービッチに指摘される。

ユダヤ人ゲットー。
家族を亡くしたハンナ(ポーレット・ゴダード)は、老夫婦ジェケル(モーリス・モスコヴィッチ/エマ・ダン)と暮らしていたが、突撃隊の嫌がらせにも怯まなかった。

ある日、オムラーは病院を抜け出してしまい、数週間しかたっていないと思いながら店に戻った彼は、内部が荒れ果てていることに驚く。

オムラーは、突撃隊員が窓にユダヤ人と書いたのを知り、それを消して抵抗し、捕えられそうになったところをハンナに助けられる。

再び現れた突撃隊に、オムラーは街頭で吊るされそうになるが、司令官になっていたシュルツが偶然通りがかり、命の恩人だと言って彼を解放する。

分刻みで公務をこなすヒンケルは、隣国オストリッチ侵攻を画策し、戦費の確保のため、ユダヤ系銀行から資金調達を考える。

そのためヒンケルは一次的にユダヤ人迫害を中止するようガービッチに命ずる。

ハンナの協力で店を再開したオムラーだったが、ジェケルは、平穏なことを不思議に思っていた。

そんなジェケルは、ハンナがオムラーに恋心を抱いていることに気づき、二人の仲を取り持つ。

オムラーが、女らしさもなかったハンナの髪型などを整えてあげるなどする一方、突撃隊も友好的になり、二人は希望を抱き始める。

世界征服の第一歩、オストリッチ侵攻のための資金融資を断られたヒンケルは、シュルツを呼び、ゲットーを襲撃する命令をだす。

しかし、シュルツはそれを拒み、ヒンケルを非難したために逮捕連行される。

幸せを実感していたオムラーは、着飾ったハンナを伴い出掛けるが、ヒンケルの演説が始まり事態は一変する。

突撃隊の襲撃が始まり、オムラーやジェケルらは襲われるが、そこでもシュルツの命令により彼らは救われる。

しかし、シュルツの逮捕が知らされ、それがオムラーのせいにされたため、ハンナとジェケルは彼を逃がそうとする。

店を焼かれたオムラーは絶望するが、ハンナが、希望を捨てずにオストリッチに逃げることを提案する。

ジェケルはシュルツを匿い、クーデターを考える彼の意見を聞き、仲間の中から犠牲者を一人選ぶことになる。

焼き菓子の中のコインで、それを決めるはずだったが、ハンナが全てにコインを入れ、馬鹿げた計画を非難して中止となる。

翌日、シュルツがゲットーにいることが知られてしまい、彼と関係するオムラーが尋問されることにおなる。

ハンナとジェケルらは、オムラーとシュルツを逃がそうとするが、二人は突撃隊に捕えられ、強制収容所に送られる。

ゲットーから逃れたハンナとジェケルらはオストリッチに向かい、彼の弟のブドウ園で暮らすようになる。

オムラーは、ハンナからの手紙を支えに毎日を過ごす。

オストリッチ侵攻の準備が整ったヒンケルは、功労者であるヘリングを称える。

そこに、バクテリアの独裁者であるベンツィーニ・ナパロニ(ジャック・オーキー)が、6万の兵と共にオストリッチに迫っているという連絡が入る。

ヒンケルは、一転、ヘリングを非難してバクテリアに宣戦布告すると息巻くが、ナパロニから、オストリッチ侵攻に関しての話し合いを求められ、それを受け入れる。

ヒンケルは自らナパロニを出迎え、二人は、300万近い人々に見守られながら官邸へと向かう。

会談を前にして、あくまで優位に立った話し合いを進めるよう、ガービッチはヒンケルに助言する。

しかし、ヒンケルは、遠慮のないナパロニに圧倒され、軍隊のパレードに出席した後、舞踏会で彼を歓迎する。

その後、両者の話し合いが始まり、お互い侵攻をしないことで合意するために、ヒンケルは、国境の軍の撤退をナパロニに求める。

ナパロニは、先に誓約書の署名を求めるが、ヒンケルは撤退が先だと譲らず、二人は争いになる。

署名だけして、撤退後に侵攻すればいいと言うガービッチの助言で、ヒンケルはそれに同意する。

その頃、シュルツとオムラーは、士官の軍服を奪い収容所を脱走しオストリッチ国境に向かう。

同じ頃、猟をしていたヒンケルは、脱走したオムラーと間違われて捕えられる。

国境では、オムラーがヒンケルと思われ、侵攻準備が整った突撃隊に歓迎される。

シュルツもヒンケル(オムラー)と一緒だったために、疑われることもなく、軍と共にオストリッチの国境を越える。

その後、ユダヤ人への迫害は強まり、ハンナやジェケルも捕えられる。

オストリッチ国民はヒンケルを歓迎し、間違えられていたオムラーは、世界に向けて演説することになる。

ガービッチとヘリングは、ヒンケルがシュルツを伴っていることに疑問を抱く。

民主主義や自由を排除し、ヒンケルに服従する事こそが平和への道だと説いたガービッチは、彼を称える。

シュルツに促され演説を始めたオムラーは、支配者の奴隷になっている人々や兵士に、民主主義の考えの下にある、自分自身の中の力を、世界平和のために、独裁者達と戦い使うことを訴える。

民衆は歓喜し、オムラーの、ハンナに語り掛けて希望を与える言葉は、絶望する彼女やジェケルらにも伝わる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1918年、第一次世界大戦末期。
ユダヤ人の理髪師オムラーは、トメニア軍の兵卒として従軍し前線で戦い、空軍将校シュルツを助ける。
戦闘機の墜落事故で負傷したオムラーは、記憶を失い闘病生活を続け、その間の国情の激変を知らなかった。
20年後、トメニアは、アーリア人の優位を唱えるファシスト政党”ダブル・クロス”の独裁者であるアデノイド・ヒンケルが政権を掌握し、ガービッチ内相兼宣伝相や戦争相ヘリング元帥らを側近に、ユダヤ人の迫害を始めていた。
その頃、病院を抜け出したオムラーは、ゲットーの理髪店に戻り、隣人ジェケルに世話になる娘ハンナと親交を深める。
そんなオムラーは、突撃隊に抵抗して殺されそうになるものの、司令官になっていたシュルツに救われる。
同じ頃ヒンケルは、バクテリアの独裁者ナパロニが、オストリッチへの侵攻を考えていることを知り、その先を行く秘策を考えるのだが・・・。
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サイレントにこだわり続けたチャップリンが、1940年代となり、ようやく手がけた初めてのトーキー映画なのだが、サイレント映画の名残を随所に挿入した、名場面の数々も見逃せない。

注目したいのは、本作の製作が始まったのが第二次大戦開戦前夜の1939年1月で、撮影は、開戦直後の同年9月からという、チャップリンの執念のようなものを感じる。

チャップリンは、アドルフ・ヒトラーのパロディ・キャラクターを演ずるのだが、彼の誕生日1889年4月16日で、ヒトラーより4日早いだけという、本作を作る運命だったとも思える、当時のナチスの勢力を考えれば、正に命懸けの企画であったとも言える。

それまでの拍子抜けした主人公から一転して、実際に当時の世界中の人々に語り掛けているような、チャップリンの6分弱にも及ぶラストの大演説は、凄まじい迫力と共に感動を与える。

それにも拘わらず、この後、人々の苦しみは4年半も続くことになるのを思うと考えさせられる。

ジャック・オーキー演ずるベンツィーニ・ナパロニは、もちろんベニート・ムッソリーニ、ガービッチ内務相はヨーゼフ・ゲッベルス、ヘリング戦争相はヘルマン・ゲーリングがモデルである。

また、本作のニューヨーク・プレミアが1940年10月15日であり、直前の9月27日に”日独伊三国同盟”が締結されていたため、当然、日本公開はされず、初公開は20年後の1960年10月となった。

作品は人々の支持を受け、チャップリン作品の中でもトップ・クラスの大ヒットとなった。

第13回アカデミー賞では、作品、主演男優(チャールズ・チャップリン)、助演男優(ジャック・オーキー)、脚本、作曲賞にノミネートされた。

主人公に心を寄せるユダヤ人娘を演じた、当時のチャップリン夫人ポーレット・ゴダード、同じ独裁者を怪演するジャック・オーキー、人道的な立場で物事を判断し、ユダヤ人や主人公の理髪師に好意的に接する将校レジナルド・ガーディナーゲッベルスの雰囲気をよく出している内相兼宣伝相ヘンリー・ダニエル、大いに笑わせてくれる戦争相ビリー・ギルバートユダヤ人老夫婦のモーリス・モスコヴィッチエマ・ダン、バクテリア大使のカーター・デ・ヘイヴンチャップリンの盟友である、理髪店の客チェスター・コンクリン、ヒンケルの理髪師役レオ・ホワイト、突撃隊員のハンク・マンなどが共演している。


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