1939年に発表されたジョン・スタインベックの同名小説を、ナナリー・ジョンソンの脚色で映画化した作品。 大恐慌下、混乱する国内状況で生きぬく家族を描く、監督ジョン・フォード、ヘンリー・フォンダ、ジェーン・ダーウェル、ジョン・キャラダイン共演の社会派ドラマの傑作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・フォード
製作:ダリル・F・ザナック
原作:ジョン・スタインベック
脚本:ナナリー・ジョンソン
撮影:グレッグ・トーランド
編集:ロバート・L・シンプソン
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演
ヘンリー・フォンダ:トム・ジョード
ジェーン・ダーウェル:ジョード夫人
ジョン・キャラダイン:ケーシー
ラッセル・シンプソン:ジョード
チャーリー・グレイプウィン:ウィリアム・ジャームズ・ジョード/祖父
O・Z・ホワイトヘッド:アル・ジョード
ジョン・クゥオーレン:ミューリー・グレイヴス
ドリス・ボウドン:ローズ・オブ・シャロン”ローザシャーン”リヴァース
エディー・クイラン:コニー・リヴァース
ゼフィー・ティルビュリー:祖母
フランク・サリー:ノア・ジョード
フランク・デリアン:ジョン・ジョード(伯父)
ダリル・ヒックマン:ウィンフィールド・ジョード
シャーリー・ミルズ:ルーシー・ジョード
グラント・ミッチェル:政府キャンプ支配人
ウォード・ボンド:警察官
メエ・マーシュ:ミューリーの妻
ジャック・ペニック:キャンプ手伝い
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1940年製作 128分
公開
北米:1940年3月15日
日本:1963年1月12日
製作費 $750,000
■ アカデミー賞 ■
第13回アカデミー賞
・受賞
監督
助演女優賞(ジェーン・ダーウェル)
・ノミネート
作品
主演男優(ヘンリー・フォンダ)
脚本・編集・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
刑務所を仮出所になったトム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)は、オクラホマの家族の元に帰ろうとしていた。
トムは、乗せてもらったトラックの運転手が、自分の素性を知りたがるために、殺人で投獄されていたことを明かしてトラックを降りる。
途中、元説教師ケーシー(ジョン・キャラダイン)に出会ったトムは、二人で、昔話に花を咲かせながら実家に向かう。
トムの家に着いた二人は、空き家となっていた部屋の中に、隣人の小作人ミューリー・グレイヴス(ジョン・クゥオーレン)がいることに気づく。
トムは、家族が伯父のジョン(フランク・デリアン)の所に行き、家を捨てて、カリフォルニアに行くらしいことミューリーから知らされる。
ジョード家やミューリー達は、”ダストボウル”(砂嵐)のために収穫が減り、土地を管理会社に奪われてしまい、立ち退きを命ぜられたということだった。 全てが上からの命令で、その責任の所在を訴える相手もなく、管理会社に雇われ、ミューリーの家を取り壊すトラクターの運転手でさえも、家族を養うために、仕方なく指示に従うしかなかった。 ミューリーは家族と離れ、半狂乱寸前の状態で空き家を渡り歩く浮浪者生活を送っていたのだった。 伯父ジョンの家では、トムの父(ラッセル・シンプソン)、祖父(チャーリー・グレイプウィン)、祖母(ゼフィー・ティルビュリー)らが、カリフォルニアの果樹園で人員を募集しているという話題で盛り上がっていた。 そこに、トムが姿を現し、母(ジェーン・ダーウェル)は、4年ぶりの息子の帰郷を神に感謝する。 家族達はトムの帰りを喜ぶが、そこに管理会社の者が現れて、約束通り翌日家を取り壊すことをジョンに告げる。 その夜、母は祖父らが50年もの間暮らした土地や家族の思い出の品を整理し、旅立ちに備える。 翌日、12人の一家は、カリフォルニアに向けて出発することになるが、祖父が残ると言い出して駄々をこねる。 仕方なく、祖父を咳止め薬入りのコーヒーで眠らせて、一家は古いトラックに家財道具を積み、弟妹や妊娠している妹夫婦、それにケーシーと共に、国道66号線を西に向かう。 間もなく、疲れ果てた祖父は亡くなり、一家はケーシーの祈りで祖父を埋葬して旅を続ける。 節約しながら旅を続ける一家は、ある貧民キャンプで、カリフォルニアに仕事があると言うのは真実でなく、現実には、餓えに苦しむ人々が溢れていることを、家族を亡くした者から知らされる。 後戻りはできない一家は旅を続けるが、希望を失いかけながらも、心ある人の親切に出会ったりもする。 そして、アリゾナからコロラド川を渡りカリフォルニアに入り、苦労して砂漠を通り過ぎるが、目の前に広がる農園地帯を見ることなく、祖母が病で亡くなる。 農園を見た一家は希望に燃えるが、トラックはガス欠で動かなくなり、男達が押しながらベーカーズフィールドにたどり着く。 一家は、オクラホマ出身の親切な警察官(ウォード・ボンド)に、キャンプに行くことを勧められるが、仕事については期待するなと助言される。 臨時キャンプに着いた一家は、そのみすぼらしい光景や、自分達よりも貧しい、飢えた子供達などを見て愕然とする。 その後、労働者を雇いに来たブローカーと、雇用証明書のことで揉めごとが起きて、トムが保安官に手を出してしまう。 仮釈放中のトムの身を案じ、彼を逃がしたケーシーが罪をかぶり逮捕されてしまう。 キャンプに戻ったトムは、そこが焼き討ちに遭うという噂を聞き、一家を連れて逃げ出そうとする。 妹ローザシャーン・リヴァース(ドリス・ボウドン)の夫コニー(エディー・クイラン)が、彼女を残して逃げ去ったことを知ったトムは、妹を励まして家族でキャンプを抜け出す。 トムが保安官に手を出したことを知った母は、彼に何かがあれば、家族がバラバラになってしまうことを心配する。 仕事があると言われた土地の人々に追い払われた一家は、桃摘みの仕事があると言われキーン農園に向かう。 そして、住まいや仕事を与えられた一家は、何とか人並みの暮らしを始める。 ある日、トムはキャンプを抜け出して周辺の様子を見に行き、町を追い出されたケーシーに出くわす。 賃金を下げられることを見越した、ストライキに加わるよう言われたトムだったが、彼は、今の生活を捨てるわけにはいかなかった。 その後、暴徒が現れケーシーは殺されてしまい、トムが抵抗して、相手を殴り殺してしまう。 家に戻ったトムは、家族の迷惑を考えて独りで逃げようとするが、何も希望のない母親を見捨てられず、留まることを決める。 しかし、現れた家族の賃金を聞いたトムは、ケーシーの言葉が正しかったことに気づき、一家と共にキャンプを出る。 警察に追われるトムを匿いながら、一家は農務省が運営するキャンプにたどり着く。 支配人(グラント・ミッチェル)が管理するキャンプは、国営とは言え、住人が委員を選び運営していた。 人間らしい生活の出来る施設に、一家は喜びを感じる。 しかし、国営キャンプの存在を良く思わない農場主達が、その住民を共産主義者呼ばわりし、ダンスパーティーの最中に、キャンプで騒ぎを起こそうとしているという情報をトムは知る。 そしてダンス・パーティーは催され、不審な数人の男達を委員は警戒するが、そんな中、トムは母とダンスを踊り楽しいひと時を過ごす。 騒ぎはキャンプの委員達の手で阻止されるが、その夜、自分を捜す警察の姿を見たトムは、眠っていた母を起こして、旅立つことを告げる。 トムは、ケーシーから学んだこと、世の中の間違いを見つけ出し、それが何であるかを確かめるのが目的だと母に語る。 そして、母はトムにキスし、旅立つ息子をいつまでも見つめる。 新しい仕事を求め、再び旅立つジョード一家には、老いた夫に代わり、流れる川のごとく、立ち止まることを知らない妻、そして母親の逞しい姿があった。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
仮出所で故郷に戻ったトム・ジョードは、家族が土地や家を奪われ、カリフォルニアに向かうことを知らされる。
トムもそれに同行して旅立つが、やがて、年老いた祖父、そして目的地を目前にして祖母が亡くなる。
希望を抱き旅立った一家だったが、その途中で、カリフォルニアには労働者が溢れ、仕事は期待できないことを知らされる。
後戻りできない一家は、目的の農園地帯に到着する。
しかし、貧しい人々を低賃金で使おうとする雇い主と、それに抵抗しようとする労働者のいざこざにトムは巻き込まれてしまう・・・。
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ジョン・スタインベックは翌1940年にピューリッツァー賞を受賞し、ノーベル文学賞(1962)も、同作が受賞理由にあげられている。
大規模な資本主義農業の広まりにより、仕事や土地をなくし、大恐慌の余波で困窮する人々が国中に溢れて、大きな社会問題となったいた当時のアメリカの世情と、犯罪者である青年が社会正義に目覚め、それを探求する旅に出るまでを、監督ジョン・フォードは見事に描き、2度目のアカデミー監督賞を受賞した。
*フォードは翌年「わが谷は緑なりき」(1941)でも同賞を受賞する。
1989年、アメリカ議会図書館が国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第13回アカデミー賞では、監督、助演女優賞(ジェーン・ダーウェル)を受賞した。
・ノミネート
作品
主演男優(ヘンリー・フォンダ)
脚本・編集・録音賞
日本での公開は23年後の1963年ということで、戦時中だったからというよりも、原作ほどではないが、資本主義社会の歪みや社会主義的問題提起が公開を遅らせたとも言える。
世の中から疎外され、惨めな生活を送る主人公一家に、彼等のプライドを傷つけないように、パンやあめを、安く分け与えるシーンは、アメリカの良心や正義を感じる。
バンジョーによる、アメリカ民謡”レッドリバー・バレー”を効果的に使った、アルフレッド・ニューマンの主題曲も心に残る名曲だ。
どうしても主人公トム・ジョードを演じたかった主演のヘンリー・フォンダは、20世紀FOXと長期契約する条件でこの役を勝ち取り、一世一代の名演技を見せた。
貧しさに苦しむ家族以上に、荒んだ性格の持ち主が見せる母への愛情、クライマックスの母親との別れのシーンは、映画史上に残る名場面となった。
アカデミー助演賞受賞のジェーン・ダーウェルの、息子を想い、また逞しく生きようとする母親役は秀逸だ。
前年「風と共に去りぬ」(1939)では貴婦人役を演じていた彼女は、フォードの西部劇を含め、やはり本作のような包容力のある役柄がよく似合う。
カリフォルニアに向かう前夜、荷造りをしながら、持参しても何の役にも立たないイヤリングを耳にあて、鏡を見つめる彼女の、寂しさと不安が入り混じる表情は忘れられない。
彼女をはじめ、元説教師ジョン・キャラダイン、父ラッセル・シンプソン、弟O・Z・ホワイトヘッド、隣人ジョン・クゥオーレン、警官ウォード・ボンド、祖父チャーリー・グレイプウィンらのお馴染みのフォード一家の面々が、見事なハーモニー物語を盛上げている。
本作では、ジョン・キャラダインとジョン・クゥオーレンが、キャリア最高とも言える名演を見せる。
他、ほんの端役ではあるが、同じくフォード一家のメエ・マーシュやジャック・ペニックも登場する。
主人公の妹ドリス・ボウドン、その夫エディー・クイラン、祖母ゼフィー・ティルビュリー、弟フランク・サリー、ダリル・ヒックマン、妹シャーリー・ミルズらが共演している。