1963年に発表された、チャールズ・ウェッブの”The Graduate”を基に製作された作品。 将来を有望視された裕福で優秀な青年が不安や空虚さを感じながら実社会の壁を突き破ろうとする姿を描く、監督マイク・ニコルズ、主演アン・バンクロフト、ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、マーレイ・ハミルトン他共演のドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マイク・ニコルズ
製作
ジョセフ・E・レヴィーン
ローレンス・ターマン
原作:チャールズ・ウェッブ”The Graduate”
脚本
バック・ヘンリー
カルダー・ウィリンガム
撮影:ロバート・サーティース
編集:サム・オスティーン
音楽
ポール・サイモン
デイヴ・グルーシン
出演
アン・バンクロフト:ロビンソン夫人
ダスティン・ホフマン:ベンジャミン・ブラドック
キャサリン・ロス:エレイン・ロビンソン
マーレイ・ハミルトン:ロビンソン
ウィリアム・ダニエルズ:ブラドック
エリザベス・ウィルソン:ブラドック夫人
ノーマン・フェル:マクリーリー
バック・ヘンリー:ホテルのフロント係
ブライアン・エイブリー:カール・スミス
ウォルター・ブルック: マクガイア
アリス・ゴーストリー:シングルマン夫人
マリオン・ローン: デウィット
リチャード・ドレイファス:下宿学生
アメリカ 映画
配給 Embassy Pictures
1967年製作 105分
公開
北米:1967年12月21日
日本:1968年6月22日
製作費 $3,000,000
北米興行収入 $104,945,310
■ アカデミー賞 ■
第40回アカデミー賞
・受賞
監督賞
・ノミネート
作品
主演男優(ダスティン・ホフマン)
主演女優(アン・バンクロフト)
助演女優(キャサリン・ロス)
脚色・撮影賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロサンゼルス。
学業優秀、スポーツ万能で将来を有望視され大学を卒業したベンジャミン”ベン”ブラドック(ダスティン・ホフマン)は、帰郷するものの、将来への不安と疑問で塞ぎこむ。
そんなベンの気持ちを察していない家族は、息子のために盛大な歓迎パーティーを開く。
来客に挨拶するよう両親(ウィリアム・ダニエルズ/エリザベス・ウィルソン)に促されたベンは、仕方なく指示に従うものの、再び部屋に閉じこもってしまう。
そこにロビンソン夫人(アン・バンクロフト)が現れ、他愛ない話をしたベンは、彼女を家まで送ることになる。
自宅に着いたロビンソン夫人は、ベンを家に誘い酒を勧める。
帰ろうとするベンの話を聞こうとしないロビンソン夫人は、彼にグラスを渡して誘惑する。
動揺するベンに、娘エレイン(キャサリン・ロス)の写真を見せると言って部屋に向かったロビンソン夫人は、彼にドレスを脱ぐのを手伝わせる。 戸惑うベンは帰ろうとするが、浴室に向かったロビンソン夫人は、居間にある財布を持ってくるよう彼に指示する。 エレインの部屋に置くようにと言われたベンは、ロビンソン夫人が全裸で入って来たために焦る。 誘惑されて拒んだベンは、ロビンソン(マーレイ・ハミルトン)が帰宅したことに気づき慌てて帰ろうとする。 ゴルフから戻ったロビンソンは、バーで飲んでいたベンに気づき、妻を送ってくれたことを知り感謝する。 様子がおかしいベンが気になるロビンソンは、将来が不安だと言われ、彼を引き留めて話をする。 緊張しながらロビンソンの話を聞くベンは、女遊びなどをして人生を楽しみ冒険するようにと言われ、夫人が現われたために戸惑う。 帰ると言うベンに、エレインがバークレーから戻ることを知らせたロビンソンは、妻と共に彼を見送る。 21歳になったベンは、両親や知人に祝ってもらう。 空虚な日々を送っていたベンは、ロビンソン夫人の誘惑を断ったものの、好奇心から彼女に電話をする。 1時間で来ると言われたベンは、フロント係(バック・ヘンリー)から声をかけられる。 部屋の話ができないベンは、その場で行われていたパーティー会場に向かう。 ベンは主催者のシングルマン夫人(アリス・ゴーストリー)に歓迎されるものの、その場を離れてラウンジで過ごす。 暫くしてロビンソン夫人が現れ、緊張するベンは部屋のことを訊かれ、フロントに向かい何とか部屋を取る。 電話ボックスからロビンソン夫人に電話をかけたベンは、フロント係に疑われているようだと伝えて、部屋の番号を訊かれて答え、先に向かう。 苦労の末にようやく部屋にロビンソン夫人を招き入れたベンだったが、間違っていると言いながら尻込みしてしまう。 ロビンソン夫人から初体験か訊かれたベンは、それを否定する。 帰ろうとするロビンソン夫人を引き止めたベンは、彼女と愛し合う。 その後ベンは、ロビンソン夫人との情事を繰り返す。 父から、そろそろ充電期間を終え大学院のことを考えるようにと言われたベンは、夫人を伴い訪ねて来たロビンソンから、エレインが戻ったことを知らされる。 毎晩出かけて翌日の昼に帰る理由を母に訊かれたベンは、明確に答えない。 若いベンがエレインに惹かれてしまうのが目に見えているため、ロビンソン夫人は、彼に娘と会わないいことを誓わせる。 もともとその気はなかったベンだったが、毎晩出かける息子におかしな女でもつかないかと心配した両親が、無理矢理に彼とエレインを引き合わせようとする。 仕方なくロビンソン家に向かったベンは、夫人の冷たい視線が気になる。 ロビンソンが席を外した間に言い訳をしたベンは、ロビンソン夫人に非難される。 エレインに挨拶して出かけたベンは、彼女の話に興味を示さず嫌われようとする。 ストリップ・クラブに向かったベンは、ショックを受けて流したエレインの涙を見て後悔する。 店を出たエレインを追ったベンは謝罪し、親に強制されたデートだったことを彼女に伝える。 本心ではないと言うベンにキスされたエレインは気を取り戻し、ハンバーガーを食べながら話した二人は、意気投合する。 エレインを家に送ったベンは、再び出かける。 ホテルのバーで飲むことを提案されたベンは戸惑い、馴染み客だったために、ロビーでスタッフから声をかけられる。 その場を離れたベンは車を止めて、若くて純真なエレインに惹かれたことを伝える。 様子がおかしいベンに、付き合っている人がいるか尋ねたエレインは、相手が既婚者だが関係は終わったと言われて安心する。 エレインを家に送ったベンは、翌日も会うことを約束して別れる。 翌日、雨の中、車でエレインを迎えに行ったベンは、ロビンソン夫人が乗り込んできたために驚く。 車を出すよう指示されたベンは、裏切りに怒り心頭のロビンソン夫人から、エレインを誘惑したら全てを打ち明けてしまうと言われて戸惑う。 焦ったベンはエレインの元に向かい、関係している女性のことを話そうとする。 エレインは、その場に現れた母の表情でベンの相手だと分かり、ショックを受けて取り乱し彼を追いだす。 ロビンソン夫人から別れを告げられたベンは、その後、エレインが気になり手紙を出そうとする。 ベンは、再び訪れた空虚な日々から脱するため、エレインとの結婚を決意し、それを両親に伝える。 何も知らない両親は喜ぶものの、ベンから、エレインには何も話していないと言われて戸惑う。 ロビンソン家には嫌われていると両親に伝えたベンは、エレインのいるバークレーに向かう。 UCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)。 アパートを借りたベンは、その後も大学や街でエレインの行動を追う。 ベンに気づき動揺するエレインは、バスの中で声をかけてきた彼を迷惑に思う。 ボーイフレンドのカール・スミス(ブライアン・エイブリー)に会うために動物園に向かったエレインは、付きまとうベンに彼を紹介する。 カールと去ったエレインを見つめるベンは、動物たちを見つめながら惨めに思う。 その後ベンは、アパートに訪ねて来たエレインから、母をレイプしたと言われて驚く。 裏切られた腹いせだと思い、それを否定するベンは、逆に誘惑されたとエレインに伝えるものの信じてもらえない。 取り乱したエレインは叫び声をあげ、彼女を落ち着かせたベンは、現われた管理人のマクリーリー(ノーマン・フェル)に問題ないと伝える。 他の部屋の学生(リチャード・ドレイファス)が警察を呼ぶべきだと言ったために、ベンは、エレインの様子を見せて納得させるものの、自分を嫌うマクリーリーから出て行くよう指示される。 騒ぎを起こしたエレインはベンに謝罪し、彼の気持ちを理解し、気持ちの整理ができるまでいてほしいと伝えてその場を去る。 その後、訪ねて来たエレインからキスしてほしいと言われたベンは、彼女にキスして、自分と結婚したいか尋ねる。 エレインがそれを否定しないために、ベンは構内で彼女に付きまとい結婚を迫る。 医学部のカールと結婚することをほのめかしたエレインは、ベンがどんな行動に出るか様子を見ることにする。 諦めないベンは、エレインのために指輪を用意してアパートに戻る。 部屋にロビンソンがいたために驚いたベンは、妻とのことを責める彼から、自分たちが離婚することを知らされる。 弁解するベンからエレインを愛していると言われたロビンソンは、娘に近づくなと彼に警告する。 ベンを罵倒して出て行くロビンソンの様子を見ていたマクリーリーは、ベンから電話を貸してほしいと言われるものの、警察を呼ぶと伝えて出て行くよう指示する。 エレインの元に向かったベンは、彼女が退学したことを知り行方を追う。 ロビンソン家に侵入したベンは、た夫人に見つかり警察に通報される。 夫人からエレインが結婚することを知らされたベンは、警官が駆け付けたことを知り、その場から逃げる。 バークレーに戻ったベンは、学生たちにカールのことを尋ね、サンタバーバラの教会で結婚式を挙げることを知り車で急行する。 途中、ガソリンスタンドに寄ったベンは、スミスに電話をして牧師を装い、教会の場所を確認する。 ガソリンも入れずに焦って出発したベンは、ガス欠になり走って教会に向かう。 教会に着いたベンは、結婚の誓いをしようとするエレインを見つめながら、彼女の名前を呼び叫び始める。 それに気づいたエレインは驚き、ベンの名を呼ぶ。 ロビンソンの制止を振り切ったベンは、出席者に大きな十字架を振り回す。 エレインを連れ去ったベンは、通りがかったバスに乗り込む。 そして、二人は新たな人生に向かって旅立つのだが、笑顔から表情は変わる。
...全てを見る(結末あり)
ベンは、構内でエレインを見かけるものの、声をかけようとはしない。
■ 解説 評価 感想 ■
*(簡略ストー リー)
学業優秀、スポーツ万能で、将来を有望視されて大学を卒業したベンジャミン”ベン”ブラドックは、将来への不安と疑問で塞ぎこむ。
そんなベンの気持ちを察しない両親は、彼の歓迎パーティーを盛大に開く。
知人であるロビンソン夫人を送ることになったベンは、自宅で彼女に誘惑される。
戸惑うベンはそれを拒み、そこにロビンソンが戻ったために、その日は帰宅する。
ロビンソン夫人の誘惑を断ったものの、空虚な日々が続くベンは、好奇心から彼女をホテルに誘う。
ぎこちないベンの対応にやきもきしながら、ロビンソン夫人は彼をコントロールし、そして二人は結ばれてしまう。
二人はその後も情事を繰り返し、ベンも充電期間を終え心に余裕が出来た頃、ロビンソン夫妻の娘エレインが大学から戻ってくる。
ベンが、エレインに惹かれることが明らかだと考えるロビンソン夫人は、娘に会わないよう彼に誓わせるのだが・・・。
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単にハッピーエンドで終わらず、バスで旅立つ二人の笑顔が消えるラストで、将来の期待や不安が入り混じる若者の複雑な心境までも見事に表現した、それまでにない新しい感覚は大いに受け入れ、アメリカン・ニューシネマの代表作となった。
その後、ハリウッドを代表する演技派俳優になるダスティン・ホフマンの知名度を、一気に上げた記念すべき作品でもある。
第40回アカデミー賞では作品賞以下7部門にノミネートされ、マイク・ニコルズが監督賞を受賞した。
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・ノミネート
作品
主演男優(ダスティン・ホフマン)
主演女優(アン・バンクロフト)
助演女優(キャサリン・ロス)
脚色・撮影賞
1996年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
北米興行収入は、当時としては驚異的な、1億ドルを超える記録的な大ヒットとなった。
挿入歌”サウンド・オブ・サイレンス”他、サイモン&ガーファンクルの曲が効果的に使われている。
初々しいダスティン・ホフマンのエリートではあるが不器用な姿、愉快でもありぎこちない若者の姿は、そんな時代を経験した男性ならば納得できる見事な演技は絶賛された。
その主人公を手玉に取るロビンソン夫人役アン・バンクロフトの、まだ30代半ばとは思えない魅力的な演技も素晴らしい。
実際にはアン・バンクロフトと11歳しか違わないキャサリン・ロスも、ダスティン・ホフマン同様、新鮮なイメージが印象に残る。
主人公を息子のように思ってはいるものの、結局は裏切られてしまうヒロインの父親マーレイ・ハミルトン、主人公の両親ウィリアム・ダニエルズとエリザベス・ウィルソン、脚本も兼ねるホテルのフロント係バック・ヘンリー、下宿屋の主人ノーマン・フェル、ヒロインの婚約者ブライアン・エイブリー、主人公の知人ウォルター・ブルック、ホテルで開催されているイベントの主催者アリス・ゴーストリー、同じくマリオン・ローン、そして、下宿の学生役でリチャード・ドレイファスが共演している。