一族の恥と思われ戦死しても昇天できない城主の息子が幽霊となり巻き起こす騒動を描く、監督、脚本ルネ・クレール、主演ロバート・ドーナット、ジーン・パーカー、ユージン・パレット他共演による、ファンタジー・タッチのロマンチック・コメディ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ルネ・クレール
製作:アレクサンダー・コルダ
原作:エリック・コウン”Sir Tristram Goes West”
脚本
ルネ・クレール
ジェフリー・カー
ラヨス・ビロ
ロバート・E・シャーウッド
撮影:ハロルド・ロッソン
編集
ヘンリー・コーンリウス
ハロルド・アール=フィッシュバッカー
音楽:ミシャ・スポリアンスキー
出演
マードック・グローリー/ドナルド・グローリー:ロバート・ドーナット
ペギー・マーティン:ジーン・パーカー
マーティン:ユージン・パレット
エド・ビグロー:ラルフ・バンカー
シェパートン:エルザ・ランチェスター
マーティン夫人:イヴリン・グレッグ
科学者:ヴィクター・リエッティ
ギャヴィン・グローリー:モートン・セルテン
マクラゲン:ヘイ・ペトリー
召使い:マーク・デイリー
羊飼いの女性:パトリシア・ヒリアード
イギリス 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1935年製作 95分
公開
イギリス:1935年12月17日
北米:1936年2月7日
日本:1936年5月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
18世紀、スコットランド。
グローリー家の城主ギャヴィン・グローリー(モートン・セルテン)は、マクラゲン(ヘイ・ペトリー)親子が押し入ってきたために、戦場に向かうと言う彼らに息子マードック(ロバート・ドーナット)が出征すると伝える。
息子達と共にマードックを軽蔑し、戦場に向かうのは遠慮してもらいたいと言うマクラゲンは、マードックは女遊びに忙しいはずと指摘して嘲り笑う。
息子共々、腰抜けだと言われたグローリーは、マクラゲン親子を追い払う。
マクラゲンの言う通り女達と戯れていたマードックは、父に呼ばれたため城に戻る。
グローリーから剣と盾を渡されたマードックは、敵のイングランドよりもマクラゲン家の者達を倒すよう父に言われて戦場に向かう。 これで安心して死ねると語ったグローリーは、グラスの酒を飲み干して息を引き取る。 戦場に着いたマードックはマクラゲン親子を捜そうとするが、羊飼いの女性(パトリシア・ヒリアード)に気を取られる。 マクラゲンもマードックが着いたことを知り、戦闘前に片を付けようとする。 女性と戯れていたマードックは、マクラゲンの息子達がいることに気づき対決しようとする。 剣がなかったため火薬の樽の陰に隠れたマードックは、砲弾の直撃を受けて爆死する。 天に向かったマードックは父に声をかけられ、天国と地獄の間だと知らされる。 情けない死に方をしたマードックを、先祖に会わせるわけにはいかないグローリーは、息子に下界をさ迷い続けるよう命ずる。 グローリー城で幽霊になるよう言われたマードックは、仕方なくそれに従う。 戦場に同行した召使い(マーク・デイリー)によって、マードックの遺品は城に運ばれる。 その時、マードックの幽霊が現れたために召使いは驚く。 名誉挽回をするまで昇天できないと父に言われたンマードックは、マクラゲンを懲らしめて跪かせるよう命ぜられる。 一人で50人のマクラゲンを倒すよう指示されたマードックは、毎日、真夜中に起きて城をさ迷い、マクラゲン家の者に頭を下げさせるのが使命となる。 20世紀。 アメリカの大手食品企業のオーナー、マーティン(ユージン・パレット)の娘ペギー(ジーン・パーカー)は、売りに出されている城に興味を示しその場を訪れる。 ペギーを歓迎したドナルドは城内を案内して彼女が気に入り、両親と共に夕食に招待する。 ドナルドから借金を回収できない商人達は、メイドに協力を求められるが、幽霊が出る城が売れるはずがないと考える。 幽霊が出る前に契約させて買主を帰せばいいとメイドに言われた商人達は、仕方なく協力することにする。 マーティンと妻あ(イヴリン・グレッグ)そしてペギーと共に食事をするドナルドは、給仕などをしながら苛立つ商人達を尻目に余裕を見せる。 真夜中が近づき給仕役の商人達は帰り、幽霊に興味を示すペギーは、怖がる母親を説得してその時を待つ。 結局は何も起きないため、マーティンらは城を離れる。 マードックに感謝したドナルドだったが、騒ぎが起きるのを避けたメイドが、時計の針を1時間進めてあったのだった。 それに気づいたペギーは城に戻り、ドナルドに時計が進んでいたことを知らせ、一晩泊めてほしいと頼み彼に歓迎される。 そして真夜中になり、物音に気づいたペギーは屋上に向い、そこにマードックが現れる。 マードックをドナルドだと思い幽霊だとは気づかないペギーは、彼とゲームを始める。 部屋に戻ったペギーを追おうとしたマードックだったが、父に呼び止められて使命を思い出す。 翌朝、夜中のことはドナルドの悪戯だと思うペギーは、惹かれていた彼にキスする。 ドナルドは、マードックに会ったペギーが自分と勘違いしていることを察する。 商人達に借金の総額を知らされたドナルドは、契約のために現れたマーティンにその額を提示する。 1万ポンド以上は出さない予定だったマーティンは、2700ポンド余りだった提示額でも高いと言いながら契約を成立させる。 城を解体してアメリカに運ぶと言われたドナルドは驚き反対する。 アメリカに行き城の再建工事を任されることになったドナルドは、仕方なくそれを承知する。 その後、城の解体は始まり、船積みされてアメリカに向かう。 マーティンは、ライバルのエド・ビグロー(ラルフ・バンカー)も城を買ったことを知り、ドナルドに彼を紹介する。 その夜、船内では仮装舞踏会が開かれ、午前0時になり貨物室でマードックが目覚める。 マードックは、城が売られアメリカに移動していることを父から知らされる。 デッキでくつろいでいたドナルドとペギーは、今後についてなどを語る。 寒気がすると言うペギーのために、ドナルドは毛布を取りに行く。 ペギーは、現れたマードックを仮装したドナルドだと思い込む。 マードックはペギーにキスしようとするが、父に制止されて姿を消す。 毛布を持ってきたドナルドはそれをペギーにかけてあげるが、彼女は何かを感じて船内に戻る。 ドナルド(マードック)が他の女性に声をかけていたことを知ったペギーは気分を害する。 ダンスホールで写真を撮られたマードックは驚き姿を消したため、船内は幽霊が出たことで騒ぎになる。 ドナルドの説明を聞こうとしないペギーは、見たのが人間でないと言われても信じない。 マーティン夫人も幽霊が出たと言って興奮し、城を売ったドナルドを批判する。 馬鹿げた話だと言うマーティンに、夫人のためにも契約を白紙に戻すべきだと提案するドナルドだったが、幽霊が真実だと伝えても信じてもらえない。 部屋に戻ったドナルドは、その場にいたマードックと口論になるが、そこにマーティンが現れる。 ドナルドは、城を買い解体してアメリカで建て直すマーティンをマードックに紹介する。 呆然とするマーティンに挨拶したマードックは姿を消し、ドナルドはマーティンを落ち着かせる。 バーに向かった二人は契約を破棄するが、話題となることが確実だと考えるビグローは城を買おうとする。 会社にとっての絶好のPRになると考えたビグローは10万ドルで城を購入するが、マーティンは12万5000ドルを提示して譲らない。 ニューヨーク。 そんな騒ぎを余所に、マーティンと”幽霊”は市民の大歓迎を受けパレードまで行われる。 解体された城が保管されている倉庫をギャングが襲い、警備員と銃撃戦になり、それを見たマードックは、かつての戦争より酷いと言って驚く。 当分、透明にしておくと父に言われたマードックは、使命を果たせなければ昇天できないと再び警告される。 フロリダ州、サニーミード。 城は完成し、ペギーと母親もその場に到着しマーティンに迎えられる。 今後が心配なドナルドはペギーが来ていることを知り、彼女に翌日帰ることを伝える。 城の完成披露パーティーが開かれ、超常現象の専門家が幽霊についてを調べることになる。 幽霊の登場を演出することを考えるマーティンは、幽霊役のドナルドに隠れているよう指示して打ち合わせをする。 招待されたビグローは記者達の質問を受け、幽霊の話はでっち上げだろうと語る。 ドナルドが旅立ったことを父から聞いたペギーは残念に思う。 知人シェパートン(エルザ・ランチェスター)の横に着席したマーティンは、マードック・グローリーの特別席があることを知らせる。 幽霊に扮するドナルドの様子を見に行ったマーティンは、ビグローが驚く顔が目に浮かぶ。 城の屋上にいたペギーは、スコットランドの民族衣装を着て現れたドナルドをマードックだと思い声をかける。 ドナルドともう話すこともできないと嘆き彼を愛していると言うペギーに、思いは通じてきっと会えると、マードックに扮するドナルドは伝える。 そして午前0時となり、マーティンは予定通り異変を伝える。 ところが、幽霊は一向に現れず、ドナルドは自分のままで会場に向かう。 ビグローはマーティンとドナルドを批判し、自分がスコットランドの由緒ある一族”マクラゲン”の末裔であることを伝える。 驚いたドナルドはマードックを呼び寄せて、会場の皆とビグローはその場から逃げる。 ビグローを追い詰めたマードックは、グローリー家に対しての謝罪を求める。 グローリー家一人でマクラゲン家の50人を倒せることをビグローに認めさせたマードックは、彼に土下座をさせる。 姿を消したマードックは、使命を果たしたことを喜ぶ父から、希望するなら天国の先祖に合わせると言われる。 下界で疲れ果てたと言うマードックは、心からそれを望む。 ドナルドに感謝したマードックは、グローリーの名を守り続けてほしいことを伝え、別れを告げて姿を消す。 呆然とするビグローに気を遣いながら得意になるマーティンは、記者達を前に、会社の最高の宣伝になったことを確信する。 そして、ドナルドとペギーは愛を確かめ合う。
...全てを見る(結末あり)
グローリー城は売りに出され、自堕落な城主ドナルド(ロバート・ドーナット)は借金が払えずにいた。
既にマスコミは騒ぎだし、議会でも幽霊を警戒するよう国民に呼びかけるが、イギリス議会はそれに反発する。
城の再建は始まり、その後も結局は幽霊は現れず人々の期待は外れる。
*(簡略ストー リー)
18世紀、スコットランド。
女遊びに夢中の城主の息子マードック・グローリーは、イングランドとの戦いには祖国の恥となるため、出征を遠慮するようにとマクラゲン親子に言われる。
憤慨した城主グローリーはマードックを呼び、敵よりもマクラゲンを倒すよう命じ息子を出征させる。
ところが、マードックは戦場であえなく戦死してしまい、情けない死に方をしたため、幽霊となり下界をさ迷うよう先に逝った父に命ぜられる。
マクラゲンに謝罪させるまで昇天させないと言われたマードックは、幽霊として城に留まることになる。
20世紀、アメリカの大手食品企業のオーナー、マーティンは、グローリー城を購入して解体し移送して帰国することを考える。
幽霊に興味を持つマーティンの娘ペギーとドナルドは惹かれ合うようになる。
そして、解体された城と共に、幽霊のマードックもアメリカに向かうことになるのだが・・・。
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アレクサンダー・コルダに招かれたルネ・クレールがイギリスで撮った作品。
18世紀のスコットランドを舞台にして、互いに頑固なライバル一族の対立から始まる物語は、時代が変わり20世紀のアメリカに場所を移し、物事全てをビジネスとして考える商魂逞しい者達の対立となる展開が実に面白い。
また、一族同士ののどかな対立が、200年が経過した近代国家アメリカで巻き起こる騒動により、一気にハリウッド的なゴージャスな雰囲気になるサービス精神満載の作品でもある。
常に微笑みながら鑑賞できる観客の気持ちが伝わってくるような、全てが丸く収まるクライマックスに至るまで、ルネ・クレールの流れるような軽快な演出が堪能できる作品。
主人公の幽霊と現代の城主を飄々と演ずるロバート・ドーナット、主人公を愛する富豪令嬢で、ジーン・アーサーを思わせる顔立ち、またその笑顔が印象的なジーン・パーカー、その父親を愉快に演ずるユージン・パレット、彼のライバルであり主人公と対立する一族の末裔だったラルフ・バンカー、城の完成披露パーティーに出席する女性エルザ・ランチェスター、マーティン(ユージン・パレット)の妻イヴリン・グレッグ、科学者ヴィクター・リエッティ、主人公の父で先祖でもある城主モートン・セルテン、対立する一族の家長ヘイ・ペトリー、グローリー家の召使いマーク・デイリー、羊飼いの女性パトリシア・ヒリアードなどが共演している。